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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト
真緒 VS ハナコ(後編)
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「マオさーん!!」
「大丈夫かマオ!!?」
リーマとフォルスは、真緒の安否を心配し駆け寄る。
「二人供、私は無事だよ。師匠が助けてくれたからね」
「いや~、偶々ですよ~」
エジタスは照れながら、真緒をそっと床へと下ろした。
「おや、お二人は怪我をされていますね?ちょっと待ってて下さい。今、回復用のポーションを渡しますね~」
そう言うとエジタスは、懐から緑色のポーションを取り出して、リーマとフォルスの二人に飲ませた。すると瞬く間に火傷や傷痕が治っていった。
「エジタスさん、ありがとうございます」
「エジタスさんが来てくれていなかったら危なかった」
「そんな~、お礼を言われる程の事はしていませんよ~……ですがポーションはあくまで外傷を治す能力です。なのでリーマさんの様な粉砕した骨は治りませんので、くれぐれも無理は為さらないで下さい」
「はい、分かりました!」
エジタスに注意を受けたリーマは、しっかりと心に刻み込むのであった。そんな光景を見ていたヴァルベルトが首を傾げる。
「エジタス…………成る程、そういう事か……ふふふふ、何とも面白い組み合わせだな」
何かに気がついたのか、エジタスを見ながら不適な笑みを浮かべるヴァルベルト。
「それで……あそこにいる巨女の人はもしかして……」
「ハナちゃんです……」
「やっぱり……それで、皆さんはどうするつもりなのですか?どうせマオさんの事ですから、助けるのでしょ?」
本来なら見捨てるべきだと言うエジタスだが、二度に渡る真緒のお人好しに考えを改めた。
「はい……ですが、このままでは助けられないかもしれません」
「魔法は効かない、矢も効かない、スキルによる斬激は少し効くがそれもすぐに治してしまう……もう打つ手が残っていない」
「ほぉ~、あのハナコさんがそこまで強くなったのですか~“能ある鷹は爪を隠す”とはよく言ったもんです」
エジタスは感心する様に腕を組み、首を縦に振って頷いた。
「師匠、私達はどうすればいいのでしょうか……」
「マオさん……そんな弱気になってどうするのですか?」
真緒の両肩に手を乗せるエジタス。
「いいですか、一度目が駄目なら二度目、二度目が駄目なら三度目、三度目が駄目なら四度目…………諦めたらそこで終わりですが、諦めなければ何かしらの成果は得られると思いますよ」
「師匠…………分かりました。私、もう一度頑張って見ます!!」
エジタスの言葉に感化された真緒は、再びハナコの前に立ちはだかる。
「(まぁ、私的には“失敗”して欲しいのですけどね…………)」
前言撤回。やはりエジタスは何も変わってはいなかった。表面上は考えを改めた様に見えたが、その中身は何も変わってはいなかった。
「さて、頑張って見るとは言ったものの……どうすればいいだろう?」
「…………そう言えば前にハナコのステータスを見た時、そんなに変わってはいなかったが称号が一個増えていなかったか?」
「そう言われてみれば、そうでしたね。もしかしたら、何かの突破口に繋がるかもしれません。スキル“鑑定”」
フォルスの助言により、真緒はハナコのステータスを更に詳しく調べる事にした。
「えーっと、あっ、あったあった…………“大食い”?」
大食い
何よりも食べる事が好きな者に与えられる称号。その能力は料理を目の前にした時、その食欲を抑えきれず周りを気にせず食べ尽くしてしまう。この行動は“何があろうとも”阻害する事は出来ない。
「「「「…………」」」」
この説明を見た瞬間、真緒達の中で沈黙が流れる。これから何の行動を起こすべきなのか、決定したのであった。
「フォルスさんと師匠は、料理の支度をお願いします!!その間に私がハナちゃんを食い止めて見せます!!」
「ああ、分かった!」
「調理器具ならお任せ下さい!」
そう言うとエジタスは、パチンと指を鳴らしてその場に調理器具一式を転移させた。
「マオさん、私にも足止めのお手伝いをさせて下さい」
「でもリーマは、怪我を負っているから無理しなくても……」
「お願いします…………」
「…………うん、分かった。一緒に頑張ろう!」
リーマの真剣な眼差しに、真緒は断るという無粋な真似は出来なかった。
「いったい、何をしているんだ?」
いきなり調理器具を出現させて、料理の支度をし始めた真緒達に困惑を隠せないヴァルベルト。
「まぁ、殺せば同じ事か……殺れ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
しかしそんな困惑はすぐに取り払い、真緒達の殺害をハナコに命令するヴァルベルト。命令を受けたハナコは、足止めをすると言った真緒とリーマの二人に襲い掛かる。
「ハナちゃん、こっちだよー」
「ほらほら、ハナコさんこっちですよー」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
真緒とリーマは左右に分かれ、それぞれがハナコに声を掛けて注意を向ける。
「小賢しい真似を……構わない、好きな方を殺せ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ハナコは本能に従い、未だ重症のリーマを標的に襲い掛かる。
「遅い遅い、そんな速さでは一生追い付けませんよ、ハナコさん」
なるべく時間を稼ごうと、素早く後方へと下がり距離を取るリーマ。
「ほーら、ハナちゃん。こっちだよー」
「…………」
「ハナちゃん?」
真緒が後ろからハナコの注意を惹き付ける為声を掛けるが、全く見向きもせず只じっとリーマを見つめていた。
「…………」
するとハナコは、遠くにいるリーマに向けて両腕を引いた。
「“インパクト・ベア”?……でもあんな遠くにいるのにどうして……?」
何だか嫌な予感がし始める真緒。何故遠くにいるリーマに向かって近距離攻撃の“インパクト・ベア”を放とうとするのか。その答えはすぐに思い知らされた。
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「…………!!?」
ハナコのインパクト・ベアが放たれた。その威力はとても凄まじく、何とあまりの威力に衝撃波だけでリーマを吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「がぁあああ…………!!」
「リーマ!!!」
叩きつけられた衝撃で壁にはひびが入っていた。あまり怪我の負ってない真緒や、怪我の治ったフォルスだったらそこまで酷くはならなかったのだろうが、体の骨が粉砕しているリーマにとって衝撃波だけでも、致命傷であった。
「そんな……リーマが…………まだ料理は出来ないんですか!!?」
真緒は、頼みの綱である料理を作っているフォルスとエジタスに、声を荒げて問い掛ける。
「もう少しですよ!!時間がありません。ここはいっその事、この“眠り茸”を料理に入れるのでは無く、そのまま焼いてしまいましょう」
「そうだな、それがいいと俺も思う」
エジタスとフォルスは、水色に白色の斑点が付いた茸を焼き始めた。
「念には念だ。止めを刺せ……」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
しかし、出来上がる前にハナコは倒れているリーマに止めを刺すべく、歩き始めた。
「さ、させない!!」
すると真緒は、ハナコよりも早くリーマの側へと駆け寄り、両手を広げて庇う様に立った。
「これ以上、ハナちゃんに仲間を傷つけて欲しくない!!お願いハナちゃん、思い出して!!私達の事を思い出して!!」
「無駄だ。一度我の眷属になった者は、我の命令に背く事は出来ないのだ…………殺れ、二人供々殺すのだ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
真緒の願いも虚しく、ハナコは両腕を引きインパクト・ベアの準備に入った。
「うぅ…………!!」
死の恐怖に足が震える。ハナコの両腕が真緒達に解き放たれ様とした…………その瞬間!!
「ハナコさ~ん、“ご飯”が出来ましたよ~!!!」
「!!?」
エジタスの“ご飯”という言葉に、ピタリと動きを止めるハナコ。
「ゴ……ハン……」
するとハナコは、鼻をヒクヒクと動かしながらフォルスとエジタスがいる調理場まで歩き出した。
「おい!何をしている!?そっちじゃない!!そこにいる二人を殺すんだ!おい!聞いているのか!?おい!言う事を聞け!!」
突然の出来事に、ヴァルベルトが慌てて命令するもハナコは全く言う事を聞かず、調理場へと足を運ぶ。
「は~い、今夜のメニューは特別ですよ~名付けて“眠り茸のバター焼きハナコスペシャル”です!!」
ハナコの目の前に出された皿には、こんがりと焼き色が付いたバターの香りが何とも言えない、美味しそうな茸が乗っかていた。
「さぁ、食べてくれ。お前の為に誠心誠意作ったんだからな」
「グオオオ……ゴハン……ゴハン……」
目の前に出された料理に、かぶりつくハナコ。手を使わず口だけで食べるその姿は野生の獣そのものだった。
「オイシイ……オイシイ……」
「そうだろそうだろ、何たって“特別”な茸だからな!」
「オイシイ……オイ……シイ……」
するとどうした事か、美味しそうに食べていたハナコだったが、段々と目蓋が重くなり体がふらふらと揺れ始め、遂にはその場で仰向けになって倒れてしまった。
「グゴゴゴ…………」
「ふぅー、どうやら作戦成功みたいだな」
倒れてしまったハナコは、イビキをかきながら眠っていた。
「「やったー!!」」
「リーマ!リーマ!!」
フォルスとエジタスの二人が喜ぶ中、真緒は負傷してしまったリーマに声を掛けていた。
「お願いリーマ、死なないで!!!」
「エジタスさん!早くポーションを!!」
「分かってますとも!!」
エジタスはパチンと指を鳴らすと、一瞬で真緒達のいる場所へと転移した。
「マオさん、ポーションです。急いで飲ませてあげて下さい」
「は、はい!!」
真緒は意識を失っているリーマにポーションを飲ませようとするが、意識が無い為飲ませられない。
「お願い……飲んで……!!」
そこで真緒は、まず自分がポーションを口に含み、それをリーマに無理矢理流し込んだ。言わば口移しという行為だ。こうでもしなければリーマは死んでしまう。汚いの何のとは言ってられない。
「お願い……目を覚まして……」
真緒はリーマの手を握り、目を覚ますのを願った。
「………………マオ……さん?」
「リーマ!!?良かった!!目を覚ましたんだね!!」
「私は……いったい……痛!」
「あっ、動かないで!まだ中の骨は治っていないから……」
何とか一命は取り止めたものの、今度こそ動けなくなってしまった。
「ハナちゃんは……作戦は……成功……したのですか?」
「うん、大成功だよ。ハナちゃんならイビキをかきながら寝ちゃっているよ」
「あはは……料理で倒されるだなんて、ハナコさん……らしいですよね……」
「全くだね……あははは」
ハナコの倒し方に、真緒とリーマが笑っていると……。
「ふふふ……はははは!!!」
「「「「!!!!」」」」
突然、玉座に座っていたヴァルベルトが高笑いをし始めた。
「ははは……まさか、こんなふざけた方法で我の最強の眷属が敗れ去るとは……アッパレだ」
ゆっくりと腰を上げ、玉座から立ち上がるヴァルベルト。
「しかし……残念だが、絶望はまだ続く……次はこの我が直々に相手してやろう……」
一難去ってまた一難。真緒達はかつて無い危機に瀕していた。
「大丈夫かマオ!!?」
リーマとフォルスは、真緒の安否を心配し駆け寄る。
「二人供、私は無事だよ。師匠が助けてくれたからね」
「いや~、偶々ですよ~」
エジタスは照れながら、真緒をそっと床へと下ろした。
「おや、お二人は怪我をされていますね?ちょっと待ってて下さい。今、回復用のポーションを渡しますね~」
そう言うとエジタスは、懐から緑色のポーションを取り出して、リーマとフォルスの二人に飲ませた。すると瞬く間に火傷や傷痕が治っていった。
「エジタスさん、ありがとうございます」
「エジタスさんが来てくれていなかったら危なかった」
「そんな~、お礼を言われる程の事はしていませんよ~……ですがポーションはあくまで外傷を治す能力です。なのでリーマさんの様な粉砕した骨は治りませんので、くれぐれも無理は為さらないで下さい」
「はい、分かりました!」
エジタスに注意を受けたリーマは、しっかりと心に刻み込むのであった。そんな光景を見ていたヴァルベルトが首を傾げる。
「エジタス…………成る程、そういう事か……ふふふふ、何とも面白い組み合わせだな」
何かに気がついたのか、エジタスを見ながら不適な笑みを浮かべるヴァルベルト。
「それで……あそこにいる巨女の人はもしかして……」
「ハナちゃんです……」
「やっぱり……それで、皆さんはどうするつもりなのですか?どうせマオさんの事ですから、助けるのでしょ?」
本来なら見捨てるべきだと言うエジタスだが、二度に渡る真緒のお人好しに考えを改めた。
「はい……ですが、このままでは助けられないかもしれません」
「魔法は効かない、矢も効かない、スキルによる斬激は少し効くがそれもすぐに治してしまう……もう打つ手が残っていない」
「ほぉ~、あのハナコさんがそこまで強くなったのですか~“能ある鷹は爪を隠す”とはよく言ったもんです」
エジタスは感心する様に腕を組み、首を縦に振って頷いた。
「師匠、私達はどうすればいいのでしょうか……」
「マオさん……そんな弱気になってどうするのですか?」
真緒の両肩に手を乗せるエジタス。
「いいですか、一度目が駄目なら二度目、二度目が駄目なら三度目、三度目が駄目なら四度目…………諦めたらそこで終わりですが、諦めなければ何かしらの成果は得られると思いますよ」
「師匠…………分かりました。私、もう一度頑張って見ます!!」
エジタスの言葉に感化された真緒は、再びハナコの前に立ちはだかる。
「(まぁ、私的には“失敗”して欲しいのですけどね…………)」
前言撤回。やはりエジタスは何も変わってはいなかった。表面上は考えを改めた様に見えたが、その中身は何も変わってはいなかった。
「さて、頑張って見るとは言ったものの……どうすればいいだろう?」
「…………そう言えば前にハナコのステータスを見た時、そんなに変わってはいなかったが称号が一個増えていなかったか?」
「そう言われてみれば、そうでしたね。もしかしたら、何かの突破口に繋がるかもしれません。スキル“鑑定”」
フォルスの助言により、真緒はハナコのステータスを更に詳しく調べる事にした。
「えーっと、あっ、あったあった…………“大食い”?」
大食い
何よりも食べる事が好きな者に与えられる称号。その能力は料理を目の前にした時、その食欲を抑えきれず周りを気にせず食べ尽くしてしまう。この行動は“何があろうとも”阻害する事は出来ない。
「「「「…………」」」」
この説明を見た瞬間、真緒達の中で沈黙が流れる。これから何の行動を起こすべきなのか、決定したのであった。
「フォルスさんと師匠は、料理の支度をお願いします!!その間に私がハナちゃんを食い止めて見せます!!」
「ああ、分かった!」
「調理器具ならお任せ下さい!」
そう言うとエジタスは、パチンと指を鳴らしてその場に調理器具一式を転移させた。
「マオさん、私にも足止めのお手伝いをさせて下さい」
「でもリーマは、怪我を負っているから無理しなくても……」
「お願いします…………」
「…………うん、分かった。一緒に頑張ろう!」
リーマの真剣な眼差しに、真緒は断るという無粋な真似は出来なかった。
「いったい、何をしているんだ?」
いきなり調理器具を出現させて、料理の支度をし始めた真緒達に困惑を隠せないヴァルベルト。
「まぁ、殺せば同じ事か……殺れ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
しかしそんな困惑はすぐに取り払い、真緒達の殺害をハナコに命令するヴァルベルト。命令を受けたハナコは、足止めをすると言った真緒とリーマの二人に襲い掛かる。
「ハナちゃん、こっちだよー」
「ほらほら、ハナコさんこっちですよー」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
真緒とリーマは左右に分かれ、それぞれがハナコに声を掛けて注意を向ける。
「小賢しい真似を……構わない、好きな方を殺せ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ハナコは本能に従い、未だ重症のリーマを標的に襲い掛かる。
「遅い遅い、そんな速さでは一生追い付けませんよ、ハナコさん」
なるべく時間を稼ごうと、素早く後方へと下がり距離を取るリーマ。
「ほーら、ハナちゃん。こっちだよー」
「…………」
「ハナちゃん?」
真緒が後ろからハナコの注意を惹き付ける為声を掛けるが、全く見向きもせず只じっとリーマを見つめていた。
「…………」
するとハナコは、遠くにいるリーマに向けて両腕を引いた。
「“インパクト・ベア”?……でもあんな遠くにいるのにどうして……?」
何だか嫌な予感がし始める真緒。何故遠くにいるリーマに向かって近距離攻撃の“インパクト・ベア”を放とうとするのか。その答えはすぐに思い知らされた。
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「…………!!?」
ハナコのインパクト・ベアが放たれた。その威力はとても凄まじく、何とあまりの威力に衝撃波だけでリーマを吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。
「がぁあああ…………!!」
「リーマ!!!」
叩きつけられた衝撃で壁にはひびが入っていた。あまり怪我の負ってない真緒や、怪我の治ったフォルスだったらそこまで酷くはならなかったのだろうが、体の骨が粉砕しているリーマにとって衝撃波だけでも、致命傷であった。
「そんな……リーマが…………まだ料理は出来ないんですか!!?」
真緒は、頼みの綱である料理を作っているフォルスとエジタスに、声を荒げて問い掛ける。
「もう少しですよ!!時間がありません。ここはいっその事、この“眠り茸”を料理に入れるのでは無く、そのまま焼いてしまいましょう」
「そうだな、それがいいと俺も思う」
エジタスとフォルスは、水色に白色の斑点が付いた茸を焼き始めた。
「念には念だ。止めを刺せ……」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
しかし、出来上がる前にハナコは倒れているリーマに止めを刺すべく、歩き始めた。
「さ、させない!!」
すると真緒は、ハナコよりも早くリーマの側へと駆け寄り、両手を広げて庇う様に立った。
「これ以上、ハナちゃんに仲間を傷つけて欲しくない!!お願いハナちゃん、思い出して!!私達の事を思い出して!!」
「無駄だ。一度我の眷属になった者は、我の命令に背く事は出来ないのだ…………殺れ、二人供々殺すのだ」
「グォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
真緒の願いも虚しく、ハナコは両腕を引きインパクト・ベアの準備に入った。
「うぅ…………!!」
死の恐怖に足が震える。ハナコの両腕が真緒達に解き放たれ様とした…………その瞬間!!
「ハナコさ~ん、“ご飯”が出来ましたよ~!!!」
「!!?」
エジタスの“ご飯”という言葉に、ピタリと動きを止めるハナコ。
「ゴ……ハン……」
するとハナコは、鼻をヒクヒクと動かしながらフォルスとエジタスがいる調理場まで歩き出した。
「おい!何をしている!?そっちじゃない!!そこにいる二人を殺すんだ!おい!聞いているのか!?おい!言う事を聞け!!」
突然の出来事に、ヴァルベルトが慌てて命令するもハナコは全く言う事を聞かず、調理場へと足を運ぶ。
「は~い、今夜のメニューは特別ですよ~名付けて“眠り茸のバター焼きハナコスペシャル”です!!」
ハナコの目の前に出された皿には、こんがりと焼き色が付いたバターの香りが何とも言えない、美味しそうな茸が乗っかていた。
「さぁ、食べてくれ。お前の為に誠心誠意作ったんだからな」
「グオオオ……ゴハン……ゴハン……」
目の前に出された料理に、かぶりつくハナコ。手を使わず口だけで食べるその姿は野生の獣そのものだった。
「オイシイ……オイシイ……」
「そうだろそうだろ、何たって“特別”な茸だからな!」
「オイシイ……オイ……シイ……」
するとどうした事か、美味しそうに食べていたハナコだったが、段々と目蓋が重くなり体がふらふらと揺れ始め、遂にはその場で仰向けになって倒れてしまった。
「グゴゴゴ…………」
「ふぅー、どうやら作戦成功みたいだな」
倒れてしまったハナコは、イビキをかきながら眠っていた。
「「やったー!!」」
「リーマ!リーマ!!」
フォルスとエジタスの二人が喜ぶ中、真緒は負傷してしまったリーマに声を掛けていた。
「お願いリーマ、死なないで!!!」
「エジタスさん!早くポーションを!!」
「分かってますとも!!」
エジタスはパチンと指を鳴らすと、一瞬で真緒達のいる場所へと転移した。
「マオさん、ポーションです。急いで飲ませてあげて下さい」
「は、はい!!」
真緒は意識を失っているリーマにポーションを飲ませようとするが、意識が無い為飲ませられない。
「お願い……飲んで……!!」
そこで真緒は、まず自分がポーションを口に含み、それをリーマに無理矢理流し込んだ。言わば口移しという行為だ。こうでもしなければリーマは死んでしまう。汚いの何のとは言ってられない。
「お願い……目を覚まして……」
真緒はリーマの手を握り、目を覚ますのを願った。
「………………マオ……さん?」
「リーマ!!?良かった!!目を覚ましたんだね!!」
「私は……いったい……痛!」
「あっ、動かないで!まだ中の骨は治っていないから……」
何とか一命は取り止めたものの、今度こそ動けなくなってしまった。
「ハナちゃんは……作戦は……成功……したのですか?」
「うん、大成功だよ。ハナちゃんならイビキをかきながら寝ちゃっているよ」
「あはは……料理で倒されるだなんて、ハナコさん……らしいですよね……」
「全くだね……あははは」
ハナコの倒し方に、真緒とリーマが笑っていると……。
「ふふふ……はははは!!!」
「「「「!!!!」」」」
突然、玉座に座っていたヴァルベルトが高笑いをし始めた。
「ははは……まさか、こんなふざけた方法で我の最強の眷属が敗れ去るとは……アッパレだ」
ゆっくりと腰を上げ、玉座から立ち上がるヴァルベルト。
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