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第八章 冒険編 血の繋がり
輪廻転生
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結論から言えば、私は蘇った。いや、正確には蘇ったとは言えない。矛盾とも思える発言だけど、そうとしか言えない。
“輪廻転生”。私はエイリスという人間では無く、全くの別人として再びこの世に生を授かったのだ。しかしそこには大きな問題があった。それは記憶が無くなっていたという事。
当然と言えば当然だった。誰も前世の記憶など残ってはいない。残ってたとしてもそれは一時的、時と共に薄れてしまい、やがて綺麗さっぱり消えてしまう。
何故、記憶を引き継げないのか。それが自然の摂理だからなのか。それとも人生という道を楽に登らせない為の神による制限なのか。いくら考えても答えは出て来ない。
話が逸れてしまった。とにもかくにも、私は前世に関する事やエジタスの事を忘れてしまっていた。名前も“アンドリュー”という名前になっていた。
今の名前で気づいたかもしれないが、そう私は“男”に生まれ変わっていた。小さな村に住む男の子アンドリュー。そんな何処にでも居そうな男として生まれた私は普通に暮らし、普通に恋をし、普通に結婚し、普通に父親になり、そして普通にその生涯を終えた。
二度目の死。察しが良い人なら分かるでしょう。そう、私は二度目の輪廻転生を果たした。勿論、エイリスだった頃の記憶は愚か、アンドリューだった頃の記憶も無くなっていた。今度は“ガイオン”という名の亜人だった。どうやら転生は種族など関係無いらしい。
そんな人生を迎えては終えて、迎えては終えてを繰り返した。人間→人間→亜人→人間→動物→魔物→人間→魔物→魔族→人間…………気が遠くなる程の輪廻転生の繰り返し。正気を保てたのは、始まる度に記憶が無くなっていたお陰だと思うわ。
じゃあ何故今、その記憶が残っているのか。その答えは至極シンプル。思い出したから。これまで歩んで来た人生を全て思い出した。
どんな物事にも必ず切っ掛けや理由が存在する。勿論、私の記憶が戻ったのにも切っ掛けと理由があった。私の記憶が戻ったあの日……正に運命とも言うべき出会いだった。
***
それは一年前、私がまだ“ルリーナ”という名前だった時の事。とある貴族の令嬢として生まれ変わり、将来を誓い合った婚約者との結婚を前日に控えていた。
「……嫌な空ですわ……」
窓の外では空一面が真っ赤に染まっており、雲では無い何かが蠢いていた。
「大丈夫。何があっても君の事は、この僕が守って見せるよ」
「あぁ、ユース……嬉しい」
側には婚約者のユースがいて、頼もしい言葉を聞きながら彼の胸にそっと寄り添っていた。
「明日は私達二人の結婚式だというのに……不安だわ」
「心配する事は無い。明日にはこの嫌な空も晴れるさ」
「そうだと良いんだけど……あっ!!」
明日の結婚式に影響しないか不安を募らせていると、地平線の向こう側から巨大な黒い影が姿を表した。
「な、何だあれは!!?」
「ルリーナ!!」
「ユース!!」
突然現れた謎の物体に恐れおののいていると、私の事を心配した両親とユースの両親が部屋を訪ねて来た。
「ルリーナ!! 無事だったかい!?」
「お父様、お母様。私は平気です」
「ユース、お前はどうだ!?」
「父上、僕は大丈夫です。それよりも、何なんですかあれは!?」
「まるで分からない。とにかくもしあれがこっちまでやって来たら大変だ。出来る限り遠くへ避難するぞ」
「そんな!!? 明日の結婚式はどうなるんです!!?」
「今は諦めろ!! 結婚式はいつでも出来る。だが、避難は今しか出来ないんだ。結婚と命、どちらが大切なのか聞かなくても分かるだろう?」
「…………っ!!!」
やりきれない思い。ここまで進めて来た準備が全てパァになる。しかし、ユースの父親の言う通り、今は避難するのが最優先。命には代えられない。
「……分かりました……行こうルリーナ……ルリーナ?」
「…………」
が、私はその場から動こうとはしなかった。只、じっと地平線の向こう側にいる巨大な影を見つめていた。
「ルリーナ? どうした?」
「……あっ、ごめんなさい……少しボーッとしてたわ」
「ともかく急いでここを離れよう」
そう言ってユースは私の手を取って、部屋から出ようとするが、何故か私はその手を払い除けてしまった。
「ルリーナ?」
「ごめんなさい……もうちょっとだけ……ここにいさせて貰えないかしら? 何だか、妙に気になるの……」
そして再び窓へと近づき、遥か彼方にいる黒い影を見つめ始めた。
「ルリーナ、いったいどうしたの?」
「お母様……私、何か感じるの……心の奥底……忘れていた何かを思い出す様な……っ!!?」
その瞬間、激しい頭痛に襲われた。
「ああああああ!!!」
「ルリーナ!!」
両手で頭を抑えながら、膝から崩れ落ちて苦しむ私に全員が駆け寄る。頭が痛い。割れる様に痛い。そのあまりの痛さに、私は遂に意識を手放した。
***
気が付くと、真っ暗な世界に一人立っていた。しかし自分の姿はハッキリと確認出来た。
「…………」
ここは何処かと辺りを見回しながら歩いていると、前方に一人の女性を発見した。
「あ、あなたは……?」
「思い出しなさい。あなたの……私の本当の名前を……」
「本当の名前?」
「そして思い出しなさい。あの子の事を……」
「あの子? あの子って誰の事ですか!?」
「私達の大切な弟……」
「弟……うっ!!」
頭痛だ。しかしさっきよりは激しくは無い。それに頭痛と一緒に何か声が聞こえて来る。
「……ゃん」
「だ、誰……?」
「………ねえちゃん」
「誰なの……?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」
焼き爛れた肌に剥き出しの歯茎。見るも堪えない様な姿をした少年。だが、不思議と私は全く気持ち悪いとは思わなかった。寧ろ、心が暖かくなった。そして……。
「エジ……タス……!!!」
私は全てを思い出した。
***
目を覚ますと、そこには見覚えのある天井が広がっていた。ルリーナの寝室。どうやら私が気絶した後、結局避難はせずにベッドまで運んだ様だ。側にはユースがおり、ずっと私の手を握っていた。
「ルリーナ!! 気が付いたんだね!!」
「ユース……」
「心配したんだよ!!? 突然倒れて、三日も寝込んでいたんだから!!」
「三日……あの黒い影は……?」
「黒い影? あぁ、あれか。君が倒れてから数時間後に突然消えてしまったよ」
「……そう……」
あれは間違い無くエジタスだった。エジタス……もう二度と会えないと思っていた。でも、生きてた。会いたい……エジタスに会いたい。でもその前に……。
「……ユース……」
「何だい?」
あぁ、ユース。可愛そうなユース。その無邪気な笑顔。まるであの子を彷彿とさせる。もしかしたらあなたとルリーナが結婚する事は、運命だったのかもしれないわね。でも、私はもうルリーナじゃない。
「ごめんなさい……“ファイア”」
「ユース、何を!!?」
貴族の令嬢として、多少なりの魔法は扱える。私が放った火属性魔法はユースに直撃し、全身を真っ赤に燃やし始める。
「あ……ああ……ぎゃああああああああああああ!!!」
悲鳴を上げながら焼けていくユース。そんなユースをまるで巣立って行く子供を見守るかの様に優しい眼差しで見つめるエイリス。
「今の悲鳴は何だ!!? こ、これはいったい!!?」
そこに悲鳴を聞き付け、慌てて駆け付けて来た父と母、ユースの両親。息子の焼け逝く姿を目の当たりにし、驚きながら困惑した表情を浮かべる。
「ちょうど良かったわ。今、探しに行こうと思っていた所なの」
「ルリーナ?」
「ごめんなさいね」
そうして私はたった一日で、それまで一緒に暮らして来た両親と婚約者、その家族までも一人残らず皆殺しにした。
何故なら、この世に“ルリーナ”という存在を知る者を全て消し去りたかった。そうすれば私は再び“エイリス”として、エジタスの為に動く事が出来る。
「エジタス……待っててね、姿は変わっちゃったけど、お姉ちゃんが会いに行くからね」
そして私は、エジタスを求めて旅に出た。
***
しかし、待っていたのは悲しい現実。
「嘘……嘘よ!!!」
エジタスは勇者一行の手によって、討ち滅ぼされていた。会えると思った矢先、再び私の目の前からいなくなってしまった。
「エジタス……エジタス……いえ、まだ……まだ諦めるには早い!!」
輪廻転生を繰り返した私だからこそ言えた。もしかしたらエジタスも私と同じ様に転生しているかもしれない。例え転生していなくても、賢いエジタスの事だ。何らかの方法を使って蘇る算段を立てているかもしれない。
あのエジタスが黙って殺される様な子じゃない事は、姉である私が一番良く知ってる。
それならまず必要なのは情報。エジタスが生活していた住居なんかを見つけられれば、そこから何か掴めるかもしれない。
後は手駒も必要ね。さすがに一人だけじゃ手が回らない。集めるとしたら、やっぱり私の様にエジタスの事を第一に考えている人達が良いわね。後は……。
それから数ヶ月後、彼女はエジタスの隠れ家を発見。エジタスの日記を手に入れると、それを用いてエジタスの事を神と崇める者達をまとめ上げ、“ヘッラアーデ”を設立するのであった。
“輪廻転生”。私はエイリスという人間では無く、全くの別人として再びこの世に生を授かったのだ。しかしそこには大きな問題があった。それは記憶が無くなっていたという事。
当然と言えば当然だった。誰も前世の記憶など残ってはいない。残ってたとしてもそれは一時的、時と共に薄れてしまい、やがて綺麗さっぱり消えてしまう。
何故、記憶を引き継げないのか。それが自然の摂理だからなのか。それとも人生という道を楽に登らせない為の神による制限なのか。いくら考えても答えは出て来ない。
話が逸れてしまった。とにもかくにも、私は前世に関する事やエジタスの事を忘れてしまっていた。名前も“アンドリュー”という名前になっていた。
今の名前で気づいたかもしれないが、そう私は“男”に生まれ変わっていた。小さな村に住む男の子アンドリュー。そんな何処にでも居そうな男として生まれた私は普通に暮らし、普通に恋をし、普通に結婚し、普通に父親になり、そして普通にその生涯を終えた。
二度目の死。察しが良い人なら分かるでしょう。そう、私は二度目の輪廻転生を果たした。勿論、エイリスだった頃の記憶は愚か、アンドリューだった頃の記憶も無くなっていた。今度は“ガイオン”という名の亜人だった。どうやら転生は種族など関係無いらしい。
そんな人生を迎えては終えて、迎えては終えてを繰り返した。人間→人間→亜人→人間→動物→魔物→人間→魔物→魔族→人間…………気が遠くなる程の輪廻転生の繰り返し。正気を保てたのは、始まる度に記憶が無くなっていたお陰だと思うわ。
じゃあ何故今、その記憶が残っているのか。その答えは至極シンプル。思い出したから。これまで歩んで来た人生を全て思い出した。
どんな物事にも必ず切っ掛けや理由が存在する。勿論、私の記憶が戻ったのにも切っ掛けと理由があった。私の記憶が戻ったあの日……正に運命とも言うべき出会いだった。
***
それは一年前、私がまだ“ルリーナ”という名前だった時の事。とある貴族の令嬢として生まれ変わり、将来を誓い合った婚約者との結婚を前日に控えていた。
「……嫌な空ですわ……」
窓の外では空一面が真っ赤に染まっており、雲では無い何かが蠢いていた。
「大丈夫。何があっても君の事は、この僕が守って見せるよ」
「あぁ、ユース……嬉しい」
側には婚約者のユースがいて、頼もしい言葉を聞きながら彼の胸にそっと寄り添っていた。
「明日は私達二人の結婚式だというのに……不安だわ」
「心配する事は無い。明日にはこの嫌な空も晴れるさ」
「そうだと良いんだけど……あっ!!」
明日の結婚式に影響しないか不安を募らせていると、地平線の向こう側から巨大な黒い影が姿を表した。
「な、何だあれは!!?」
「ルリーナ!!」
「ユース!!」
突然現れた謎の物体に恐れおののいていると、私の事を心配した両親とユースの両親が部屋を訪ねて来た。
「ルリーナ!! 無事だったかい!?」
「お父様、お母様。私は平気です」
「ユース、お前はどうだ!?」
「父上、僕は大丈夫です。それよりも、何なんですかあれは!?」
「まるで分からない。とにかくもしあれがこっちまでやって来たら大変だ。出来る限り遠くへ避難するぞ」
「そんな!!? 明日の結婚式はどうなるんです!!?」
「今は諦めろ!! 結婚式はいつでも出来る。だが、避難は今しか出来ないんだ。結婚と命、どちらが大切なのか聞かなくても分かるだろう?」
「…………っ!!!」
やりきれない思い。ここまで進めて来た準備が全てパァになる。しかし、ユースの父親の言う通り、今は避難するのが最優先。命には代えられない。
「……分かりました……行こうルリーナ……ルリーナ?」
「…………」
が、私はその場から動こうとはしなかった。只、じっと地平線の向こう側にいる巨大な影を見つめていた。
「ルリーナ? どうした?」
「……あっ、ごめんなさい……少しボーッとしてたわ」
「ともかく急いでここを離れよう」
そう言ってユースは私の手を取って、部屋から出ようとするが、何故か私はその手を払い除けてしまった。
「ルリーナ?」
「ごめんなさい……もうちょっとだけ……ここにいさせて貰えないかしら? 何だか、妙に気になるの……」
そして再び窓へと近づき、遥か彼方にいる黒い影を見つめ始めた。
「ルリーナ、いったいどうしたの?」
「お母様……私、何か感じるの……心の奥底……忘れていた何かを思い出す様な……っ!!?」
その瞬間、激しい頭痛に襲われた。
「ああああああ!!!」
「ルリーナ!!」
両手で頭を抑えながら、膝から崩れ落ちて苦しむ私に全員が駆け寄る。頭が痛い。割れる様に痛い。そのあまりの痛さに、私は遂に意識を手放した。
***
気が付くと、真っ暗な世界に一人立っていた。しかし自分の姿はハッキリと確認出来た。
「…………」
ここは何処かと辺りを見回しながら歩いていると、前方に一人の女性を発見した。
「あ、あなたは……?」
「思い出しなさい。あなたの……私の本当の名前を……」
「本当の名前?」
「そして思い出しなさい。あの子の事を……」
「あの子? あの子って誰の事ですか!?」
「私達の大切な弟……」
「弟……うっ!!」
頭痛だ。しかしさっきよりは激しくは無い。それに頭痛と一緒に何か声が聞こえて来る。
「……ゃん」
「だ、誰……?」
「………ねえちゃん」
「誰なの……?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」
焼き爛れた肌に剥き出しの歯茎。見るも堪えない様な姿をした少年。だが、不思議と私は全く気持ち悪いとは思わなかった。寧ろ、心が暖かくなった。そして……。
「エジ……タス……!!!」
私は全てを思い出した。
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目を覚ますと、そこには見覚えのある天井が広がっていた。ルリーナの寝室。どうやら私が気絶した後、結局避難はせずにベッドまで運んだ様だ。側にはユースがおり、ずっと私の手を握っていた。
「ルリーナ!! 気が付いたんだね!!」
「ユース……」
「心配したんだよ!!? 突然倒れて、三日も寝込んでいたんだから!!」
「三日……あの黒い影は……?」
「黒い影? あぁ、あれか。君が倒れてから数時間後に突然消えてしまったよ」
「……そう……」
あれは間違い無くエジタスだった。エジタス……もう二度と会えないと思っていた。でも、生きてた。会いたい……エジタスに会いたい。でもその前に……。
「……ユース……」
「何だい?」
あぁ、ユース。可愛そうなユース。その無邪気な笑顔。まるであの子を彷彿とさせる。もしかしたらあなたとルリーナが結婚する事は、運命だったのかもしれないわね。でも、私はもうルリーナじゃない。
「ごめんなさい……“ファイア”」
「ユース、何を!!?」
貴族の令嬢として、多少なりの魔法は扱える。私が放った火属性魔法はユースに直撃し、全身を真っ赤に燃やし始める。
「あ……ああ……ぎゃああああああああああああ!!!」
悲鳴を上げながら焼けていくユース。そんなユースをまるで巣立って行く子供を見守るかの様に優しい眼差しで見つめるエイリス。
「今の悲鳴は何だ!!? こ、これはいったい!!?」
そこに悲鳴を聞き付け、慌てて駆け付けて来た父と母、ユースの両親。息子の焼け逝く姿を目の当たりにし、驚きながら困惑した表情を浮かべる。
「ちょうど良かったわ。今、探しに行こうと思っていた所なの」
「ルリーナ?」
「ごめんなさいね」
そうして私はたった一日で、それまで一緒に暮らして来た両親と婚約者、その家族までも一人残らず皆殺しにした。
何故なら、この世に“ルリーナ”という存在を知る者を全て消し去りたかった。そうすれば私は再び“エイリス”として、エジタスの為に動く事が出来る。
「エジタス……待っててね、姿は変わっちゃったけど、お姉ちゃんが会いに行くからね」
そして私は、エジタスを求めて旅に出た。
***
しかし、待っていたのは悲しい現実。
「嘘……嘘よ!!!」
エジタスは勇者一行の手によって、討ち滅ぼされていた。会えると思った矢先、再び私の目の前からいなくなってしまった。
「エジタス……エジタス……いえ、まだ……まだ諦めるには早い!!」
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あのエジタスが黙って殺される様な子じゃない事は、姉である私が一番良く知ってる。
それならまず必要なのは情報。エジタスが生活していた住居なんかを見つけられれば、そこから何か掴めるかもしれない。
後は手駒も必要ね。さすがに一人だけじゃ手が回らない。集めるとしたら、やっぱり私の様にエジタスの事を第一に考えている人達が良いわね。後は……。
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