笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 血の繋がり

フェスタス

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 「あなたが……師匠の……お姉さん……?」



 真緒は驚きの顔を隠せなかった。勿論、エジタスに家族がいる事位は分かっていた。エジタスだって人の子なのだから。しかしまさか現代まで生き延びているとは思いもしなかった。いや、正確には輪廻転生を繰り返していた訳だが、だとしてもまさかこの場で合間見える事になるとは、想像もしていなかった。



 「そう、だから私にはエジタスを蘇らせる権利があるって事よ!!」



 「…………」



 確かにそうかもしれない。殺した訳でも、他人という訳でも無い。血の繋がった家族としてもう一度、エジタスに会いたい。そんな純粋な思いを誰が否定できるだろうか。



 「……違う……」



 「何ですって?」



 「違う!! 間違ってる!!」



 いた。少なくともここに一人。真緒だけはエイリスに対してハッキリと間違っていると良い放った。



 「私はエジタスの家族なのよ!? それとも私が嘘を付いているとでも!?」



 「確かに……その可能性も頭に浮かびました。だけど、今さらそんな嘘を付く程、あなたが浅はかな人間じゃ無い事は分かります」



 「なら……「ですが」……」



 「それでも師匠を蘇らせる訳にはいきません」



 「……そう……あくまで私に楯突こうというのね……フェスタス!!」



 「な、何だよ!!?」



 味方である筈のフェスタスは、エイリスがエジタスの姉であった事実に動揺していた。その為、急にエイリスに声を掛けられ、思わず大声が出てしまう。



 「何をぼけっとしているの? 早くマオ達を殺したら? もう止めたりはしないから……行きなさい」



 「……分かった……」



 そんな情けない姿を見せるフェスタスだったが、エイリスから殺しの許可が降りた事で一気に戦闘体勢に移行した。



 凄まじいプレッシャー。まるで電流が流れる様に皮膚がピリピリする。内に眠る本能が危険信号を発信する。



 「待たせたな……ここからは俺様の時間だぁあああああ!!!」



 「来るぞ!!」



 フェスタスは首をポキポキと鳴らし、そして右腕を骨肉魔法で巨大化させる。膨れ上がった右腕を振りかぶりながら、真緒達目掛けて襲い掛かる。



 真緒達は咄嗟に身構え、迫り来るフェスタスに備えた。



 「なっ!!?」



 「「「「!!?」」」」



 が、その途中でフェスタスは真横から衝撃を食らい、そのまま吹き飛ばされてしまった。突然の出来事に、真緒達は一瞬混乱してしまった。



 「ちょっとちょっと、あたし達の事を無視するだなんて、良い根性してるじゃない?」



 「エレットさん!!」



 「ほらほら、こんな雑魚は私に任せて、あんた達はエイリスに集中しな」



 「ありがとうございます!!」



 「あぁ、それと……あいつによろしく伝えておいてね」



 「……分かりました、必ず伝えます。皆、行こう!!」



 エレットの助太刀により、窮地を脱した真緒達。エレットの言葉に甘える様に、四人はエイリスが待つ祭壇へと走り出した。



 「くそっ!! 行かせ……っ!!?」



 横切る真緒達を行かせまいと、急いで立ち上がろうとするフェスタスだったが、突如彼の頭上に巨大な岩が降って来た。



 「な、何だこれは!!?」



 「オトナシクシロ」



 結果、岩と地面の間に挟まれ、身動きが取れなくなってしまった。それはまるで西遊記の孫悟空を見ているかの様だった。



 岩を置いたのは勿論ゴルガ。決して逃げられない様に自身の体を削り取り、それをフェスタスの頭上から落としたのだ。



 「ふざけやがって!! こんなのすぐに……」



 しかし、岩はびくともしない。骨肉魔法で腕を巨大化させようとするが、少し浮いた所で上からゴルガに押さえ付けられてしまい、結局全く動けなくなってしまった。



 「くそっ!! くそっ!!」



 「いい加減諦めなさい。あんたの実力じゃ、この岩を退ける事は絶対に無理よ」



 「無理かどうかは俺が決める事だ!!」



 「絶対無理よ。だって、体の一部しか巨大化させられないんでしょ?」



 「!!!」



 「悪いけど、マオ達と違ってあたしは無謀な戦いをする程、愚か者じゃないわ。当然、あんた達の情報は入手済みよ」



 フェスタス最大の弱点。以前、記憶の森で真緒達と対峙した時もそうだったが、これまでフェスタスは体の一部、右腕や左腕、右足や左足などしか巨大化しなかった。いや、出来なかった。



 「骨肉魔法は“禁じられた魔法”に分類される。禁じられた魔法の特徴として、そのあまりに強大な力と残虐性故に歴史の闇に葬られた。しかし禁じられた魔法の特徴はそれだけじゃない。何より扱いが非常に難しいと言われている。まぁ、エジタスって奴が意図も容易く扱ったせいで、そうとは思えないかもしれないけどね」



 「…………」



 「でも、あなたは違う。あなたは扱うのが難しい事をよく知ってるわよね?」



 「…………」



 フェスタスを煽るかの様に、挟まっているフェスタスを上から見下ろすエレット。



 「もし骨肉魔法を上手く扱えるのであれば、片腕だけを巨大化させるのでは無く、全身を巨大化させた方が確実にあたし達を始末する事が出来た筈……でもそれをしなかった……いや、出来なかった。何故ならあなたは骨肉魔法を上手く扱う事が出来ないから」



 「黙れ……」



 「でも自分を誇りに思って良いのよ。本来、禁じられた魔法なんて誰にも扱う事が出来ないんだから、腕や足の一部だけを巨大化させるだけでも立派よ。でもまぁ、エジタスの息子としては情けない話よね」



 「黙れ……」



 「オイ、アマリオコラセルナヨ」



 「あっ、ごめんなさい。エジタスの息子じゃなくて……“自称”エジタスの息子だったわね」



 「黙れぇえええええ!!!」



 「「!!!」」



 その瞬間、フェスタスは全身を巨大化させた。膨れ上がった体は、上にのし掛かっていた岩を退け、フェスタスを自由にした。



 「お前に……お前なんかに何が分かる!! 母にとってエジタスは全てだった!! 母はエジタスを……俺を必要としていた!! けど、俺が拒絶したせいで母は……だから俺は亡き母の為にも、エジタスの息子として生きなければならないんだ!!」



 エジタスの息子を名乗る本当の理由。それは自身が殺めてしまった母への償いだった。母を狂わせた切っ掛けはエジタスだが、死の原因を作ったのは自分。ならば一生掛けて罪悪感を背負いながら生きていくしか、償いの方法は無いと思ったのだ。



 「……何だ、そんな理由だったの。しょうもないわね」



 「何だと!!?」



 そんなフェスタスの本心をガッカリとした態度で呟くエレット。



 「さっきから聞いていれば母、母、母……そんなの現実から逃げてるだけよ。亡き母親の思想に蝕まれて、自分で考える事を放棄しているに過ぎない!!」



 「ち、違う!!」



 「あなたは母親の愛情を得られなかった。だから母親の思いを受け継ぐ事で、擬似的に愛情を得ようとした」



 「違う違う違う違う違う違う違う!!」



 両手で頭を抱え、左右に激しく振り乱すフェスタス。



 「あなたがやっているのは、只の自己満足にしか過ぎないのよ!!」



 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁああああああい!!!」



 とうとう錯乱したフェスタスが、巨大化した足でエレットを踏み潰そうとする。



 「アブナイ!!」



 咄嗟にゴルガが助けに入ろうとするが、何故かエレットに手を出すなと掌を突き付けられた。



 するとどうした事か、踏み潰そうとしたフェスタスの足が、エレットに直撃する直前で止まってしまった。そしてその姿勢のまま、前のめりに倒れる。激しい地響きと大量の砂煙が舞い上がる。



 「コレハイッタイ……?」



 「心臓発作よ」



 「ナンダト!?」



 「骨肉魔法は自身、または他者の肉や骨を自由自在に操る事が出来る魔法。エジタスは他者の死体で臓器の交換等を行っていたらしいけど、フェスタスは違う。見た感じ、自身の肉体を使用していた」



 「ソレガナンダトイウンダ?」



 「今までフェスタスは体の一部を巨大化させる為に、他の部位の肉を移動させて巨大化させていた。だけど今回、全身を巨大化させてしまった。自身の肉だけで全身を巨大化させる為には、何処かを補わなければならない」



 「ドコナンダ?」



 「……臓器よ、臓器を最小限に縮ませ、その分の肉を全身に割り当てた。けど、肺や心臓なんかも小さくしちゃったもんだから、大きな体に充分な空気と血液を送る事が出来ず、そのまま……って訳よ」



 「ナントオロカナ……」



 「まぁ、それだけこの男にとって母親の話題は禁句だったって事ね」



 「……キサマ、サイショカラコレガネライダッタダロウ……」



 「あれ? バレてた?」



 全てはこの為。わざと怒らせる様な煽り発言をしたのも、フェスタスに全身を巨大化させて殺す為だった。



 「ズルガシコイナ」



 「だって私“サキュバス”だもん。男を手玉に取るのは得意なのよ」



 ヘッラアーデ幹部フェスタス。こうして彼の人生は呆気なく幕を閉じてしまうのであった。
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