処刑された元公爵令嬢ですが、どうやら乙女ゲームの悪役令嬢に転生したみたいです 〜そもそも乙女ゲームって何ですか?〜

音芽 心

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四話 元公爵令嬢、入学式の準備をする

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「つ……疲れたわ……」

 なんとか朝食会を乗り越えて、再び部屋に戻ってきた。
 本当に、大変だった……。あの後も「途中で食器を投げないなんて!」と感動されてしまったし、如何にセシリアの態度が最悪だったかを実感できたわ。

 まさか、朝食を食べるだけでこんなに疲れるだなんて思わなかった……。
 思わずベッドに倒れ込んで、両手で顔を覆う。

 王妃候補だった頃はドレスのままベッドにダイブなんて絶対できなかったけれど……。記憶の中のセシリアはドレスだろうと気にせずベッドでくつろいでいたから、このくらい許されてもいいわよね?

 実はベッドにダイブって、少し憧れていたの。でも、私はいつだって周囲に監視されていたし、少しでも公爵令嬢に相応しくないと判断されれば厳しく叱られていたから……。
 こんな小さな夢を叶えさせてくれたことは、セシリアの悪行に感謝しなくちゃね。……他の罪が重すぎるとは思うけれど……。

 そうしてしばらくベッドでごろごろしていると、侍女のノエルが部屋に入ってきた。

「失礼いたします。……もう、お嬢様ったらまたそうやってくつろいで……少しは変わったかと思いましたが、やっぱりセシリア様はセシリア様ですね。私、なんだか安心しちゃいましたよ」
「いいじゃない、少しくらい私もリラックスしてみたかったのよ」
「セシリア様がリラックスされてるのはいつものことですから今更何も言いませんけれど……それよりも、明日の準備は大丈夫なんですか?」
「明日? 明日って何かあったかしら……?」

 ノエルの言葉に、私は首を傾げる。そんな私の姿を見たノエルはやれやれと言った様子で言葉を続けた。

「全くもう……明日は、王立サポナリア学園の入学式でしょう? そのためにあんなに制服のリボンにこだわっていらしたのに……」
「そ、そうよね! いやだわ私ったら……! も、もちろん覚えていたに決まっているじゃない!」

 ____完全に忘れてたわ。

 そうよ、明日はサポナリア学園の入学式……って、ここでもやっぱり花の名前なのね……。
 サポナリアの花言葉は……確か、『友の思い出』『優しさ』……あ、あと『清らかな二人』って意味もあったかしら……?
 学校の名前としては良い意味なのかもしれないけれど……この国はどれだけ花が好きなのよ!

 まぁ、それは置いといて……そうだわ、セシリアったら確か「私が一番目立たないと嫌よ!」なんて言って、リボンをわざわざ特注したのよね……。
 こんなの、絶対に悪目立ちするし、下手したら教師や先輩方から目を付けられかねないわ。それこそ、公爵令嬢ならまだしも……伯爵令嬢がそんな風に目立つなんてダメに決まってるじゃない!

 内心焦っている私の返事を聞いて。ノエルが訝し気な目で私を見る。

「本当ですか? まぁ、どちらでも構いませんけれど……ちゃんと準備はしっかりしてくださいね。私も手伝いますから」
「えぇ、ありがとう。とても助かるわ」
「使用人にお礼を言うだなんて……やっぱりお嬢様、熱でもあるのでは……?」
「か、改心したのよ! 明日から学校なんだから、しっかりしないといけないわと思って……」
「そ、そうですか……」

 ノエルは一応納得してくれたけれど、その表情はどこからどう見ても私の不調を疑っていた。……セシリアも悪女だけれど、ノエルも大概失礼よね……?
 だからこそ、それなりに今まで上手くやっていけたんでしょうけど……。

 というか、転生して次の日に学園初日だなんて!
 流石物語の世界と言うか……ご都合主義すぎないかしら?

 それに……恐らくセシリアの悪行は、学園に通うご令嬢やご令息にも知れ渡っているでしょうね。軽く記憶を辿っただけでも、お茶会での傲慢な振舞いや舞踏会での無礼な挨拶が脳裏を過ぎるんだから……。
 なんというか、先が思いやられるわ……。

 まぁ、転生してしまった以上は仕方がないわ!
 生まれ変わったセシリアとして、二回目の学園生活を楽しまなくっちゃね!



 ……あぁ、そうだわ、大事なことを忘れていた。これだけは絶対にノエルに伝えておかなければ。
 そう思って、なんだかんだ言いつつもいそいそと制服を準備してくれているノエルに向かって私は言った。

「ノエル、ごめんなさい。やっぱりリボンは校則通りのものにしてもらえるかしら……」
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