処刑された元公爵令嬢ですが、どうやら乙女ゲームの悪役令嬢に転生したみたいです 〜そもそも乙女ゲームって何ですか?〜

音芽 心

文字の大きさ
8 / 10

八話 元公爵令嬢、もう一人の転生者と出会う

しおりを挟む
 少女を保健室に運んでから、大体二十分が経った頃。
 気を失っていた少女が、ゆっくりと瞼を開いた。

「ん……うぅ……ここはどこ……?」

 開口一番、そんなお決まりのセリフが飛び出してきたものだから、つい笑みが溢れる。

「ここはサポナリア学園の保健室よ。あなた、叫んだ勢いで気を失って倒れちゃったの。覚えてないかしら?」
「えっ…………セ、セっ、セセ……!」
「? せ?」
「セシリア様だぁぁぁ! ほ、本物のセシリア様、可愛すぎるよぉ!!」

 ……そう叫びながら、少女が勢いよくベッドから飛び起きた。

 テンションの高さはこの際一旦置いておいて……本物って、一体どう言うこと?
 ま、まさか偽物のセシリアがいるわけ!?


 ____いや、冷静になるのよ、私。
 恐らくそうじゃないわ。彼女は私の名前を知っていたもの。
 それに彼女が倒れる前、「本当ならここで攻略対象の誰かが来てくれるはず」と言っていた。

 そこから導かれる答えは、つまり……。


「……ねぇ、もしかして、あなたはこの世界……いや、この『物語の世界』について何か知っているの?」

 心臓がドキドキする。今にも内蔵が口から飛び出してしまいそうなほど、私は緊張していた。

 少女はぱちくりと瞬きをしてから、一瞬で真剣な顔になる。
 それから、先程とは打って変わって静かな声で話し出した。

「……セシリア様。やっぱりあなたは……私と同じ転生者……ですよね?」
「同じということは、あなたもなのね」
「はい。私の前世は普通の女子大生だったんですが、ある日交通事故に遭ってしまって……。目覚めたら、ヒロインの身体に転生してしまっていたんです」

 …………???

「……ごめんなさい、じょしだいせい?というのは、何かしら……?」
「え? セシリア様も日本からの転生者じゃないんですか? 全然格好が違ったから、てっきりセシリア様もこのゲームの履修者なのかと……」
「……にほん? げーむ?」

 沈黙が流れる。
 どうしましょう、彼女の単語が全く理解できないわ。

 とりあえず、私も自分の身の上を話していた方が良さそうね。
 どうやら彼女とは、境遇が随分違いそうだわ……。

 そう思って、公爵令嬢時代に散々叩き込まれたカーテシーを披露する。

「申し遅れました。私はランカスター伯爵家のセシリアと申します。……前世では、レノックス公爵令嬢のセラフィーナと名乗っておりました。まぁ、処刑されてしまいましたけれど……」

 少女はポカン……と大口を開けて固まっている。
 曲がりなりにもおそらく彼女も令嬢なのだから、そのような表情はしない方がいいと思うけれど……。
 今は、それどころではなさそうね。

「……セシリア様は、私と違って前世もお貴族様だった……ってことで、合ってますか……?」
「お貴族様って言われるとなんだか複雑だけれど……まぁ、そういうことになるわね」
「す、すごい……! だから、ゲームの中のセシリア様とは気品が全然違うんですね!」

 少女は目をキラキラさせて私を見ている。
 私はその目を見なかったことにして、一番気になっていたことを聞くことにした。

「……さっきから気になっていたけど、その『げーむ』って、なんのことなの……?」

 少女は私の問いに、「あ、そうですよね。公爵令嬢だったなら、ゲームなんて知らないか……」と呟いてから、私に笑いかけた。



「一から説明しますね。私が生まれ育った国のこと。そして……このちょっと不思議な『世界』のことも」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...