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元婚約者と、理想の結婚相手
しおりを挟む次の日、招かれざる……という程でもないけれど、ちょっと気まずい客がきた。
まだ開店一時間前の店内に、ゴンゴンと扉を叩く音が響き渡った。ギルバートが怖い顔で扉を開けると、そこには真っ赤な薔薇の花束を抱えた元婚約者のオークリー様が立っていた。
「オークリー様?」
驚いて名前を呼ぶと、私に気づいた彼が満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「ミア! 君の噂は聞いてるよ……! 今や大変な実業家じゃないか」
「ありがとうございます! お祝いにわざわざ?」
事業がうまく言ってることを聞きつけて、お祝いに来てくれたのか。律儀な方だと感心していると、彼は「それだけじゃないんだ」とはにかんで、私に頭を下げた。
「あの時は本当にごめん」
「いえいえ、私もあの時は動揺してちゃんと挨拶もできず……」
さすがに十の頃から七年婚約していた彼との別れにしてはちょっと失礼すぎたかなと、後で少し反省したのだ。あの時はそれどころじゃなかったけど。
「仕方ない、当然だよ。……君がそこまで僕のことを愛してくれているとは思わなかった」
「?」
聞き間違いかな。すごい誤解が生じてる気がするんだけど……。
「あの、今なんて……」
「オルブライトの爵位が守れるのなら、父も君との結婚を反対しないと言っている」
「は?」
ぽかーんとする私に、オークリー様はほんの少しだけ頬を染めて、ずいっと薔薇の花束を差し出した。
「結婚しよう」
「え、いやです」
「えっ」
間髪入れずに答えると、オークリー様もギルバートもとんでもないびっくり顔でこっちを見る。いや、なんでびっくりしてるんだ君たちは。
三者三様に戸惑う中、一番先に口を開いたのはオークリー様だった。
「……す、拗ねているのか? 意地を張らないでくれ」
「拗ねてはないですかね……オークリー様に恋をしたことは一度もないというか、あ、もちろん、嫌いじゃないですけど!」
そう言うと、オークリー様が愕然と膝をついた。
「そうだったのか……」
「あの……何か、すみません……」
「いや、僕が悪いんだ……今日は帰るよ……」
オークリー様はしおしおと萎れて帰っていった。呆然とその後ろ姿を見送ると、一連の流れに固まっていたギルバートが躊躇うように口を開いた。
「……オークリー様とご結婚なさりたくて、頑張っていたのではないのですか?」
「まさか!」
むしろ今日まで綺麗さっぱり存在を忘れていた。
大体没落寸前に見放して、立て直した瞬間に戻ってくる男なんてちょっと信頼できない気がする。
「好きな人と結婚できないのが貴族だとしても、せめて信じられる人と結婚したいわ」
「信じられる人」
「そう。どんな時も側にいてくれて、隣で一緒に頑張ってくれるような人がいいなあ」
欲を言うなら強くて筋肉質でパリピじゃなくて美味しいものを作ってくれるイケメンがいいけど、強欲と思われても嫌なので内緒にしておく。
「ギルバートは? どんな人と結婚したいの?」
「私は……」
たっぷり十秒思案して、ギルバートは口を開いた。
「……支えたいと思うような、ひたむきな方が良いです」
そう言ったギルバートはしばし口元を押さえて、何やら考え込んでいるようだった。心当たりがありそうな顔にちょっとムッとして、開店準備を急き立てた。
その夜、なんだか清々しい顔をしたギルバートに「試作です」と言われ、プリンを渡された。お弁当のお供にデザートがあったら嬉しいんじゃないかと思ったそうだ。天才か。
試作のプリンを口に含む。私好みの硬さにほろ苦いカラメルプリンが絶妙だ。
ガラスの瓶に巻かれた青いリボンには「愛を込めて」と書かれている。
メッセージ付きのリボンとは……売れる予感。さすがギルバート。マーケティングまでできる男だとは思わなかった。
だけれどこれはずるいと思う。仕事の試作とわかっていても、頬がゆるむ。
「ギルバートは私に幸せをくれる大天才」
ギルバートの頰がかすかに赤くなる。照れるギルバートはかわいくてかっこよくて、私は思わず見惚れてしまった。
私の騎士は、剣が上手で、料理上手で、誠実で。
この世界で一番、ううん、前世も今世も来世も含めて全ての世界で一番信頼できる人である。
ずっと昔から大好きだった。
願わくばいつか、私が彼を幸せにする大天才になれますように。
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サクッと終わられたのですね!
二人のこのあとがどうなったか考えるのも楽しいですね(^^)
感想ありがとうございます!
スランプ打破のために軽く書いた短編だったのですが、両思いになるところまで書けば良かったですー💦
この後はオークリーの新しい婚約者がライバル店を作ったり、ギルバートにも面倒ごとが起きたり…みたいな構想だけはあるので、落ち着いたら書きたいな〜と思っています☺️✨その時はぜひちらっと読んで頂けると嬉しいです💕
ええっ
こ、ここで終わり?!
終わり??
ま、まあ、ある意味とても爽やかで幸せな未来を読者に想像させる良い終わり方…
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面白く可愛らしい素敵な短編でした
書いてくれてありがとうございました😊
ほこっとしました(*´∇`*)
こ、ここで終わりで大変申し訳ありません…!
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嬉しいお言葉ありがとうございます!いつか気持ちが通じ合うまでを書きたいなあと思いますので、その時はよろしくお願いします♡✨
主人公の前向きさが好き。私も続きが読みたいです。(欲をいえば「第二部」として!)首を長くして待っています。宜しくお願いします。(-人-)
わーとっても嬉しいです!!
一応この後の話の構想自体はあるので、同じくらいの短さにはなるのかな?と思いますが、いつか第二部を書いてみたいなと思っているのでその時は読んでくださると嬉しいです(*´∀`*)♡