お飾りの側妃となりまして

秋津冴

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 生まれたばかりの子供たちを、その豊かな羽毛で覆われた翼の下に囲う。
 それから、彼女はこちらに目を向ける。
 自分たちのことを間違えないで、とそんな視線がそこには含まれていた。
 そうね、あなたは鷹、というよりはもっと首が長いし、それにくちばしじゃなくて、ワニのような大きな長細い口をしている。

「鷹の頭部を持つのはグリフォンだから。そんなこと言ったらレジーが気を悪くするわ」
「レジー? 名前まで知っておいでなのですか‥‥‥」
「言ったじゃない。彼女が生まれてからずっと仲良しなんだから」

 そう言って、彼女。
 飛竜のレジーに手を伸ばすと、レジーはグリフォンなんか失礼だ、私はドラゴンですよ。と主張するかのように、頬をちょっとだけ持ち上げて見せた。
 イリヤがひいっと小さく悲鳴を上げる。
 レジーの動作は猫のそれに似ていて、頬の下には、人間の頭部大の鋭利な牙が数本、にょきっと生えていた。

「今から落ち着いているから、子供に触れることができるかもよ?」
「いいいっ、いえいえ。結構です、そんなの怖くて無理」

 食事の後に専用の歯ブラシで磨いてあげるととても嬉しそうな顔をするんだけどね?
 私の幼馴染にして、異種族の彼女はつい最近、数度目の出産を終えたばかり。
 数年前に最初に母親になった時は、さすがに彼女の面倒を見てきた飼育員と、馴染みの深い私にしか近寄ることを許さなかったけれど。
 今では私が許可をすれば見知らぬ人にでも、近づくことは許してくれた。

「もったいないの。こんな機会滅多にないのに」
「お嬢様は慣れていらっしゃるから‥‥‥」
「今ならあなたにだって、抱き上げることくらいは許してくれると思うんだけど」
「いいいえっ、結構です」

 やはり侍女のイリヤは臆病だ。
 そんなに怖がることないのに。
 慣れてくれば、ドラゴンだって余裕というものが出てくる。
 何度も出産に立ち会えば、卵の殻を破って出てきたばかりの子供に私が触れても、レジーが怒ることはまずない。
 とはいえ、人間の子供が生まれたときに、産湯に浸かるように。
 ドラゴンの子供も、母親のブレスと舌によって、清潔になるらしい。
 その儀式が終わるまでは、誰も立ち入ることが許されない。
 だから私は最後の一頭が卵から出てくるまで、その子以外の子供達と触れ合っていたのだ。


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