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異世界へ
0014話
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「見えてきたわね」
馬車に乗って移動すること、数時間。
その間、イオはソフィアとずっと話し続けていた。
本来なら、この広い馬車にはソフィア以外にも護衛であったり世話をするメイドであったりがいるのだが、メイドは今回は危険だということで一緒に行動しておらず、護衛もまたイオが相手ならいらないだろうとソフィアが言い、その言葉には誰も異論がなかったので用意されていない。
実際、もしイオがソフィアに襲いかかっても、身体能力も戦闘技術も明らかにソフィアの方が上だ。
イオがソフィアと戦って勝つとなれば、それこそ流星魔法くらいなのだろうが……まさかこんな場所で流星魔法を使う訳にもいかない。
メテオを使ってゴブリンの軍勢を倒したときは、その衝撃波が山にいるイオまで到達することはなかった。
本物の隕石ではなく流星魔法のメテオだったためか、その衝撃波の範囲はかなり狭かったのだが……だからといって、自分のすぐ側で流星魔法を使った場合にどうなるのかはまだ分からない。
イオとしては自分の魔法の効果に興味がない訳でもなかったが、自分の身体を張って……それこそ命懸けで試してみたいとまでは思わなかった。
そのような理由で現在馬車にはイオとソフィアの二人のみが乗っており、ゴブリンの軍勢がいた場所からドレミナまでの数時間、二人きりで話をしたのだ。
これはイオにとってはこの世界の常識を仕入れるという意味ではありがたいことだったし、何よりソフィアのような絶世の美女と二人きりの空間にいられたというのはかなり嬉しい。
とはいえ、イオだけに一方的に利益があった訳ではない。
ソフィアもまた、イオがどのような人物なのかを数時間の会話の中で知ることが出来た。
最初からイオを黎明の覇者に引き込むつもりだったが、それでもイオがどのような性格をしているのかによって、扱いは変える必要がある。
そういう意味では、イオは流星魔法こそ戦略兵器と呼ぶに相応しいものがあるが、それ以外は普通の……本当に普通の男でしかない。
ソフィアは自分の美貌について自覚している。
また、自分の身体が男好きのする魅力的な肢体であることも理解していた。
もしイオが猫を被っているのなら、馬車の中で本性を剥き出しにして襲いかかってもおかしくはない。
当然だが、そのような場合はイオは撃退されていただろう。
それこそ男の象徴を失うといったような事態になっていてもおかしくはない。
しかし、イオは特に迫ってくるような真似はせず――それでも自分の顔や胸に何度も視線は向けていたが――に、ずっと話をしていた。
その辺りからも、取りあえずイオは信頼出来る人物であろうというのは判断している。
そもそも本当に信頼出来ないような者であれば、馬車で二人きりになるのをギュンターが認めるはずもなかったのだが。
そんな状況で時間が経過し、やがて黎明の覇者の一団は現在契約をしている領主が治めるドレミナへと戻ってきたのだ。
ソフィアの言葉に、イオもまた窓からドレミナを見て……驚きの声を上げる。
「凄い、ですね。これは……」
城郭都市という言葉が相応しい光景がそこには広がっていた。……規模としては街だとソフィアから聞いているのだが。
街そのものが完全に城壁に覆われているその姿は、見る者を圧倒する。
慣れてくればそうでもないのかもしれないが、日本で育ったイオにしてみれば、城郭都市というのは本やTV番組の特集くらいでしか知らない。
それが実際に現在目の前にあるのだから、圧倒されるなという方が無理だった。
「この辺りの街や村は、みんなあんな感じなんですか?」
「まさか。そんなことはないわよ。こういう真似が出来るのは、あくまでもここが準都市と呼ばれるだけの規模を持つ街だからね。他の場所だと資金的な問題で完全に城壁で街を覆うのは難しいと思うわ」
「なら、そういうのが無理な村や街はどうなってるんです?」
「城壁といったような立派なものではないけど、木の板を使って街や村を覆ったりしてるわね。ただ……木の板である以上、当然だけど壊そうと思えば壊せるし、場合によっては出入り出来るだけの小さな穴を開けたりといったような真似も出来るわ」
「それは……野生の動物はともかく、ゴブリンのようにある程度知恵のあるモンスターがいるとなると、どうしようもないんじゃないですか?」
山の中で散々ゴブリンを命懸けの鬼ごっこをしたイオだ。
だからこそ、イオはゴブリンが知性を持つ……いや、悪知恵が働くだけに、木の板程度でゴブリンの行動を防ぐといったような真似は出来ない。
「そうね。だからこそ、村や街の住人の中には自分たちで敵と戦うといった真似をしているし、その村や街の出身の冒険者や傭兵が頑張ったりするんでしょうね。……あら、かなり並んでいるわね」
イオと会話をしながら馬車の窓から外の様子を見ていたソフィアは、そう呟く。
そんなソフィアの言葉に、イオもまた窓の外を見る。
するとそこには、ソフィアが言うように多くの住人がドレミナに入ろうと並んでいた。
(日本とかなら、村や街に入るには特に何か手続きをする必要はないんだけど、この世界だと何らかの手続きが必要なんだろうな。……あれ? それって俺はどうすればいいんだ?)
当然ながら、イオは地球からこの世界にやって来たのだ。
服装こそこの世界に相応しい物にはなっていたものの、自分の身分を証明する者……日本では学生証や免許証といったような物は当然持っていない。
「ソフィアさん、俺は何らかの身分証とかそういうのがないんですけど。どうすればいいですか?」
「その辺は問題ないわ。私たちは黎明の覇者、ランクA傭兵団なんだから、イオの後見人としては十分よ。……とはいえ、何の身分証もないというのは困るわね。このまま黎明の覇者に所属するのなら、ある程度なんとかなるかもしれないけど。どうするかはまだ決まってないんでしょう?」
「はい。どうなるか分かりませんけど、色々と考えてみたいと思っています」
実際のところ、イオはまだ自分がどうすればいいのか……そしてどうしたいのかは、全く決めていない。
そうである以上、自分がこの世界でどう生きていくのかといったことを決める必要があった。
(とはいえ、俺の売りとなるのは流星魔法である以上、やっぱり傭兵が冒険者のどっちかなんだろうな。商人は……今回のように敵が一ヶ所に纏まっていれば、流星魔法を使ってそれを倒して魔石とか素材を売ったり、他にも流星魔法の隕石を素材として売ったりとかは出来そうだけど)
考えれば商人としても結構いけそうな気がするイオだったが、田舎の高校生が生き馬の目を抜くような世界で活躍している商人と交渉でやり合えるかと言われれば、その答えは否だろう。
商人として経験を積めばそのような真似も出来るようになるかもしれないが、そこまでして商人になりたい訳でもない。
とはいえ、実際に商人として活動した場合には面白いかもしれない以上、多少の興味があるのも事実。
日本にいたときに知った知識を使い、一気に大商人になる……といったようなことが出来る可能性もあるのだから。
そんな風にこれからのことを考えていると、やがて黎明の覇者はドレミナの門の前に到着する。
一瞬、他に並んでいる者たちと同じように並ぶのか? と疑問に思ったのだが、並んでいる者たちの横を通って門に近付いて行く。
「あれ? いいんですか?」
てっきり行列の後ろに並ぶのだと思っていたイオが、そう尋ねる。
だが、ソフィアはそんなイオの言葉を聞いても特に気にした様子もなく頷く。
「ええ、私たち黎明の覇者はランクA傭兵団として優遇されてるのよ。それに……もし私たちがランクA傭兵団でなくても、恐らく今回に限っては並んだりせず、すぐに門を通るように言われたでしょうね」
「それって、やっぱりゴブリンの軍勢の件が?」
イオの問いにソフィアが頷くのと、馬車が一旦停まるのは同時だった。
そして先頭を進んでいた騎兵が門の側にいた警備兵と少し話し……やがて数人の警備兵がソフィアのいる場所にやってくる。
(これって、明らかに俺が目的だよな)
その目的というのが、具体的にどのような意味なのかによって、これからイオがどうなるのかも決まってしまう。
イオが流星魔法をによってゴブリンの軍勢を倒したというのを知り、それをドレミナの領主に知らせる必要があるからイオの身柄を確保したいのか、それとも単純に黎明の覇者の中に傭兵ではなイオがいると聞いたから、確認のために顔を見に来たのか。
あるいは、もっと別の……イオには思いも寄らないような理由からやってきたのか。
その辺の理由は、正直なところイオには分からない。
いっそこのままここにいるのは危険なので、逃げるか? とも思ったものの、そのような真似をすればそれはそれでイオが何かに後ろ暗いことでもあるようにも思えてしまう。
そう考えると、どう考えた場合でも逃げるという選択肢を選ぶ必要はない。
「大丈夫よ」
そんなイオにそう声をかけてきたのは、当然ながらイオと一緒の馬車にいるソフィア。
イオの様子から、緊張しているということに気が付き、そう声をかけてきたのだろう。
ソフィアの言葉に、イオは不思議と落ち着く。
これがその辺にいる誰かの言葉であれば、ここまで落ち着いたりはしなかっただろう。
それでもイオが落ち着いたのは、ソフィアが持つ一種のカリスマ性が影響しているのだと思えた。
そして警備兵がソフィアの乗っている馬車に恐る恐るといった様子で近付いて来る。
ソフィアの馬車を牽いてるのが馬ではなく黒い虎のモンスターが二匹で牽いてる馬車だ。
馬とは違って凶悪な圧力を感じるのは当然だった。
それでもきちんと仕事をこなしたのは、警備兵という仕事に誇りを持っているからか、それともソフィアと話したいという欲望からか。
ともあれ、警備兵がやって来た以上は扉を開けるしかなく……
「失礼します。こちらに黎明の覇者に所属していない人が一人いると聞いたのですが……ああ、そっちの人ですね。こちらの人は黎明の覇者が後見人になるということで構わないでしょうか?」
「ええ、構わないわ。料金の方もこちらで支払うわ」
「分かりました」
警備兵はソフィアと短く言葉を交わし……そしてイオにソフィアと二人きりで馬車に乗っていたことに対して羨ましそうな視線を向けると、そのまま話は終わるのだった。
馬車に乗って移動すること、数時間。
その間、イオはソフィアとずっと話し続けていた。
本来なら、この広い馬車にはソフィア以外にも護衛であったり世話をするメイドであったりがいるのだが、メイドは今回は危険だということで一緒に行動しておらず、護衛もまたイオが相手ならいらないだろうとソフィアが言い、その言葉には誰も異論がなかったので用意されていない。
実際、もしイオがソフィアに襲いかかっても、身体能力も戦闘技術も明らかにソフィアの方が上だ。
イオがソフィアと戦って勝つとなれば、それこそ流星魔法くらいなのだろうが……まさかこんな場所で流星魔法を使う訳にもいかない。
メテオを使ってゴブリンの軍勢を倒したときは、その衝撃波が山にいるイオまで到達することはなかった。
本物の隕石ではなく流星魔法のメテオだったためか、その衝撃波の範囲はかなり狭かったのだが……だからといって、自分のすぐ側で流星魔法を使った場合にどうなるのかはまだ分からない。
イオとしては自分の魔法の効果に興味がない訳でもなかったが、自分の身体を張って……それこそ命懸けで試してみたいとまでは思わなかった。
そのような理由で現在馬車にはイオとソフィアの二人のみが乗っており、ゴブリンの軍勢がいた場所からドレミナまでの数時間、二人きりで話をしたのだ。
これはイオにとってはこの世界の常識を仕入れるという意味ではありがたいことだったし、何よりソフィアのような絶世の美女と二人きりの空間にいられたというのはかなり嬉しい。
とはいえ、イオだけに一方的に利益があった訳ではない。
ソフィアもまた、イオがどのような人物なのかを数時間の会話の中で知ることが出来た。
最初からイオを黎明の覇者に引き込むつもりだったが、それでもイオがどのような性格をしているのかによって、扱いは変える必要がある。
そういう意味では、イオは流星魔法こそ戦略兵器と呼ぶに相応しいものがあるが、それ以外は普通の……本当に普通の男でしかない。
ソフィアは自分の美貌について自覚している。
また、自分の身体が男好きのする魅力的な肢体であることも理解していた。
もしイオが猫を被っているのなら、馬車の中で本性を剥き出しにして襲いかかってもおかしくはない。
当然だが、そのような場合はイオは撃退されていただろう。
それこそ男の象徴を失うといったような事態になっていてもおかしくはない。
しかし、イオは特に迫ってくるような真似はせず――それでも自分の顔や胸に何度も視線は向けていたが――に、ずっと話をしていた。
その辺りからも、取りあえずイオは信頼出来る人物であろうというのは判断している。
そもそも本当に信頼出来ないような者であれば、馬車で二人きりになるのをギュンターが認めるはずもなかったのだが。
そんな状況で時間が経過し、やがて黎明の覇者の一団は現在契約をしている領主が治めるドレミナへと戻ってきたのだ。
ソフィアの言葉に、イオもまた窓からドレミナを見て……驚きの声を上げる。
「凄い、ですね。これは……」
城郭都市という言葉が相応しい光景がそこには広がっていた。……規模としては街だとソフィアから聞いているのだが。
街そのものが完全に城壁に覆われているその姿は、見る者を圧倒する。
慣れてくればそうでもないのかもしれないが、日本で育ったイオにしてみれば、城郭都市というのは本やTV番組の特集くらいでしか知らない。
それが実際に現在目の前にあるのだから、圧倒されるなという方が無理だった。
「この辺りの街や村は、みんなあんな感じなんですか?」
「まさか。そんなことはないわよ。こういう真似が出来るのは、あくまでもここが準都市と呼ばれるだけの規模を持つ街だからね。他の場所だと資金的な問題で完全に城壁で街を覆うのは難しいと思うわ」
「なら、そういうのが無理な村や街はどうなってるんです?」
「城壁といったような立派なものではないけど、木の板を使って街や村を覆ったりしてるわね。ただ……木の板である以上、当然だけど壊そうと思えば壊せるし、場合によっては出入り出来るだけの小さな穴を開けたりといったような真似も出来るわ」
「それは……野生の動物はともかく、ゴブリンのようにある程度知恵のあるモンスターがいるとなると、どうしようもないんじゃないですか?」
山の中で散々ゴブリンを命懸けの鬼ごっこをしたイオだ。
だからこそ、イオはゴブリンが知性を持つ……いや、悪知恵が働くだけに、木の板程度でゴブリンの行動を防ぐといったような真似は出来ない。
「そうね。だからこそ、村や街の住人の中には自分たちで敵と戦うといった真似をしているし、その村や街の出身の冒険者や傭兵が頑張ったりするんでしょうね。……あら、かなり並んでいるわね」
イオと会話をしながら馬車の窓から外の様子を見ていたソフィアは、そう呟く。
そんなソフィアの言葉に、イオもまた窓の外を見る。
するとそこには、ソフィアが言うように多くの住人がドレミナに入ろうと並んでいた。
(日本とかなら、村や街に入るには特に何か手続きをする必要はないんだけど、この世界だと何らかの手続きが必要なんだろうな。……あれ? それって俺はどうすればいいんだ?)
当然ながら、イオは地球からこの世界にやって来たのだ。
服装こそこの世界に相応しい物にはなっていたものの、自分の身分を証明する者……日本では学生証や免許証といったような物は当然持っていない。
「ソフィアさん、俺は何らかの身分証とかそういうのがないんですけど。どうすればいいですか?」
「その辺は問題ないわ。私たちは黎明の覇者、ランクA傭兵団なんだから、イオの後見人としては十分よ。……とはいえ、何の身分証もないというのは困るわね。このまま黎明の覇者に所属するのなら、ある程度なんとかなるかもしれないけど。どうするかはまだ決まってないんでしょう?」
「はい。どうなるか分かりませんけど、色々と考えてみたいと思っています」
実際のところ、イオはまだ自分がどうすればいいのか……そしてどうしたいのかは、全く決めていない。
そうである以上、自分がこの世界でどう生きていくのかといったことを決める必要があった。
(とはいえ、俺の売りとなるのは流星魔法である以上、やっぱり傭兵が冒険者のどっちかなんだろうな。商人は……今回のように敵が一ヶ所に纏まっていれば、流星魔法を使ってそれを倒して魔石とか素材を売ったり、他にも流星魔法の隕石を素材として売ったりとかは出来そうだけど)
考えれば商人としても結構いけそうな気がするイオだったが、田舎の高校生が生き馬の目を抜くような世界で活躍している商人と交渉でやり合えるかと言われれば、その答えは否だろう。
商人として経験を積めばそのような真似も出来るようになるかもしれないが、そこまでして商人になりたい訳でもない。
とはいえ、実際に商人として活動した場合には面白いかもしれない以上、多少の興味があるのも事実。
日本にいたときに知った知識を使い、一気に大商人になる……といったようなことが出来る可能性もあるのだから。
そんな風にこれからのことを考えていると、やがて黎明の覇者はドレミナの門の前に到着する。
一瞬、他に並んでいる者たちと同じように並ぶのか? と疑問に思ったのだが、並んでいる者たちの横を通って門に近付いて行く。
「あれ? いいんですか?」
てっきり行列の後ろに並ぶのだと思っていたイオが、そう尋ねる。
だが、ソフィアはそんなイオの言葉を聞いても特に気にした様子もなく頷く。
「ええ、私たち黎明の覇者はランクA傭兵団として優遇されてるのよ。それに……もし私たちがランクA傭兵団でなくても、恐らく今回に限っては並んだりせず、すぐに門を通るように言われたでしょうね」
「それって、やっぱりゴブリンの軍勢の件が?」
イオの問いにソフィアが頷くのと、馬車が一旦停まるのは同時だった。
そして先頭を進んでいた騎兵が門の側にいた警備兵と少し話し……やがて数人の警備兵がソフィアのいる場所にやってくる。
(これって、明らかに俺が目的だよな)
その目的というのが、具体的にどのような意味なのかによって、これからイオがどうなるのかも決まってしまう。
イオが流星魔法をによってゴブリンの軍勢を倒したというのを知り、それをドレミナの領主に知らせる必要があるからイオの身柄を確保したいのか、それとも単純に黎明の覇者の中に傭兵ではなイオがいると聞いたから、確認のために顔を見に来たのか。
あるいは、もっと別の……イオには思いも寄らないような理由からやってきたのか。
その辺の理由は、正直なところイオには分からない。
いっそこのままここにいるのは危険なので、逃げるか? とも思ったものの、そのような真似をすればそれはそれでイオが何かに後ろ暗いことでもあるようにも思えてしまう。
そう考えると、どう考えた場合でも逃げるという選択肢を選ぶ必要はない。
「大丈夫よ」
そんなイオにそう声をかけてきたのは、当然ながらイオと一緒の馬車にいるソフィア。
イオの様子から、緊張しているということに気が付き、そう声をかけてきたのだろう。
ソフィアの言葉に、イオは不思議と落ち着く。
これがその辺にいる誰かの言葉であれば、ここまで落ち着いたりはしなかっただろう。
それでもイオが落ち着いたのは、ソフィアが持つ一種のカリスマ性が影響しているのだと思えた。
そして警備兵がソフィアの乗っている馬車に恐る恐るといった様子で近付いて来る。
ソフィアの馬車を牽いてるのが馬ではなく黒い虎のモンスターが二匹で牽いてる馬車だ。
馬とは違って凶悪な圧力を感じるのは当然だった。
それでもきちんと仕事をこなしたのは、警備兵という仕事に誇りを持っているからか、それともソフィアと話したいという欲望からか。
ともあれ、警備兵がやって来た以上は扉を開けるしかなく……
「失礼します。こちらに黎明の覇者に所属していない人が一人いると聞いたのですが……ああ、そっちの人ですね。こちらの人は黎明の覇者が後見人になるということで構わないでしょうか?」
「ええ、構わないわ。料金の方もこちらで支払うわ」
「分かりました」
警備兵はソフィアと短く言葉を交わし……そしてイオにソフィアと二人きりで馬車に乗っていたことに対して羨ましそうな視線を向けると、そのまま話は終わるのだった。
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