20 / 178
異世界へ
0020話
しおりを挟む
ギュンターは黎明の覇者の中でもかなりの実力者なのは間違いない。
それはイオも理解していたし、恐らくは実質的にソフィアに次ぐ地位……副団長的な立場にいるのではないかと思っていた。
イオは黎明の覇者についてまだそこまで詳しい訳でもないので、もしかしたらもっと別の人員がいる可能性も否定は出来ない。
出来ないが、現在イオが知ってる限りではやはりギュンターこそがソフィアに次ぐ人物であるというのは間違いなかった。
そんなギュンターから強い視線を受けたのだから、レックスが後退るのはイオにも理解出来る。
……冷静にそう考えているイオだったが、そんなイオも我知らず、いつの間にか後方に下がってた。
「ふん」
後ろに下がったレックスを見て、ギュンターは鼻で笑う。
その程度の覚悟なのか、と。
「ぐ……」
そんなギュンターの様子にここは退く訳にはいかないと判断したのか、レックスは最初に下がっただけで、それ以後は持ち堪える。
「ほう」
そんなレックスの様子に、ギュンターは少しだけ感心したように呟く。
黎明の覇者の中でも実力者として知られているギュンターだけに、自分の実力についても十分に理解している。
そうである以上、自分が視線に力を込めて睨み付けるといったような真似をした場合、ギュンターの視線の圧力は半ば物理的な圧力すらあるのではないかと思えるくらいのものになる。
そのような視線を向けられても、最初こそ後ろに下がりはしたが、立て直すといったような真似が出来たのだ。
レックスが踏みとどまったことに感心したり驚いたりとしたのは、ギュンターだけではない。
ギュンターの周囲にいた者たちもまた、そんなレックスの様子に思うものがあった。
言葉には出さず、視線でそれなりに見所があるのは? と意見を交わす。
中には、レックスは自分が鍛えてやりたいと思う者もいた。
「なるほど。能力はともかく、やる気に関しては問題ないようだな。そうなると、これからどうするかだが……いや、その前に改めて聞こう。レックスだったな? お前は黒き蛇に所属していたはずだが、本当に黎明の覇者に所属したいと思っているのか?」
「えっと……はい。出来ればそうしたいです」
実際のところ、レックスはイオに黎明の覇者を紹介されても自分がそこに所属出来るとは思っていなかった。
だが、レックスにしてみればランクA傭兵団と話すことが出来るという時点で、イオと一緒に行動してみたいと思うには十分だった。
もちろん、傭兵団に……英雄に憧れていたレックスだ。
もし本当にイオが黎明の覇者に紹介してくれて、そちらに移れるというのなら、その機会を逃すつもりはない。
黒き蛇に所属しているレックスだったが、憂さ晴らしに殴られ、暇だからといって殴られ、何となくといったような理由で殴られる。
雑用しか出来ないからと、それでも自分は黒き蛇の一員であるということを頼りに生活していたものの、それでも黒き蛇での生活を思えば、それは決して喜ぶべきことではない。
こうして黎明の覇者の傭兵団……それも見るからに幹部と思われるギュンターを前にしてみれば、そんなことをしみじみと感じてしまうのは間違いのない事実だった。
だからこそ、ギュンターの言葉にそう返したのだ。
「しかし、黒き蛇というランクD傭兵団でも雑用だったのだろう? そのような者が黎明の覇者に入ってきて、それで傭兵としてやっていけると思うのか?」
「それは……」
容赦なく言ってくるギュンターの言葉に、レックスは反論出来ない。
事実、それは決して間違っていることではないのだから。
黎明の覇者に所属を希望する者の中には、それこそランクB傭兵団で活動していた者や、個人としてランクAやBを持つ傭兵もそこまで珍しくはない。
そういう意味では、個人としてはランクのGでしかないレックスが黎明の覇者に入るというのは、かなり厳しいのは事実だった。
なお、傭兵や冒険者のランクというのは、最高のSから最低のGまでの八段階となっている。
その中でランクGというのは、傭兵や冒険者になったばかりの者が得られるランクだ。
レックスはギルドで登録してランクGの傭兵となってすぐに黒き蛇に所属することになり、そこからはずっと雑用だけをさせられていたこともあり、個人としてのランクが上がることはなかった。
「それでも、僕は黎明の覇者という最高の傭兵団で自分の力を試してみたいんです!」
「……なるほど。どうやら決意は固いようだな。分かった」
レックスの言葉にギュンターは頷く。
……実際のところ、冷たい態度をとっていたものの、ギュンターはレックスを拒絶するといった気持ちはなかった。
その理由は、当然イオを自分たちの仲間に引き込むためだ。
イオの能力を惜しんだソフィアは、イオを何としても黎明の覇者に引き込もうとしている。
ギュンターもゴブリンの軍勢を一人で……それも魔法を一度使っただけで壊滅させたイオは、どうにかして引き入れたいというソフィアの意見には賛成だった。
だからこそ、イオが連れて来たレックスが黎明の覇者に所属するようなことになれば、イオもそう簡単に黎明の覇者から離れられないでのではないか。
そんな打算があったのは事実だが、それでもレックスが思ったよりも根性があり、拾いものだったのは間違いなかった。
「分かった。レックスは黎明の覇者で受け入れよう。黒き蛇に関しても、こちらで手を打つ。何か持ち出す道具はあるか?」
「え? そ、その……部屋にある着替えとかそういうのくらいです」
「……武器の類はないのか?」
呆れた様子で告げるギュンター。
仮にも傭兵団に所属していたというのに、武器の類を持ってこなくてもいいのかと、そう言いたいのだろう。
だが、ギュンターのそんな呆れの言葉に、レックスは恥ずかしそうにしながら口を開く。
「お前はどんくさいんだから、武器を持っていれば間違って味方を攻撃すると言われてしまって……それで、武器の類は持たせて貰えませんでした」
「それは、また……ちなみに一応聞くが、実際にそのようなことがあったのか?」
念のためといった感じで尋ねるギュンターだったが、そんなギュンターの言葉にレックスは何も言えずに視線を逸らす。
それを見れば、実際にそのようなことがあった可能性は高いと、そう思ってしまうには十分だった。
ギュンターにとって、レックスのその言葉は衝撃を受けるには十分なものだ。
ギュンター本人は戦いに才能があり、味方を攻撃するといったようなことはした覚えがない。
また、黎明の覇者に来る者は当然のように才能がある者ばかりで、イオの件があってもレックスを本当に入れてもいいのか? と、思ってしまうには十分だった。
ギュンターと一緒に座っていた者たちも、先程までは自分がレックスを鍛えたいと言っていたのが嘘のように驚きの表情を浮かべている。
当然だろう。ここにいる以上は、ギュンターほどではないにしろ、相応の技量を持つ者たちだ。
戦いの中で味方に攻撃が命中するなどといったようなことは……何らかの連携の際にミスをして、といったようなことはあるかもしれないが、レックスのようなことはまずない。
だからこそ、レックスのその言葉に今のような反応を見せたのだ。
「そこまで不器用と……いっそ弓? いや、弓で味方を誤射したら、目も当てられない」
その言葉に、イオは日本にいたときに何かで聞いた『一発だけなら誤射かもしれない』といった言葉を思い出す。
とはいえ、実際に誤射された方にしてみればそれは洒落にならないことだろう。
「これは……いや……」
ギュンターにしてみれば、普通ならとてもではないがレックスを黎明の覇者に受け入れるといったような真似は出来ない。
だが、レックスの存在によってイオを黎明の覇者に引き入れようという狙いがある以上、このまま放り出すといったような真似をする訳にもいかない。
であれば、レックスをどうにかして何かに使うといったように考える必要があるのだが……
(高い回復能力持ちというのを上手く使えば……攻撃が苦手となると、遠距離からの弓を使った攻撃も到底無理だ。だとすれば……)
ギュンターは考えながらイオに視線を向け、ふと気が付く。
(イオの流星魔法は強力極まりないが、言ってみればそれだけだ。つまり、接近されたらどうしようもない。いずれは鍛えるとしても、最初のうちは……そしてレックスは高い回復能力というスキルがある。だとすれば、いけるか?)
このとき、ギュンターの頭の中にあったのは、防御専門の盾役というものだった。
黎明の覇者の中にも、当然のように前線で戦うときは敵の攻撃を防ぐための壁役はいる。
いるのだが、それでも普通は盾役もこなしながら攻撃をするというもので、本当の意味で完全に防御に特化した存在というのは珍しい。
だが、レックスは高い身長とがっしりとした身体をしており、それでいて回復能力が高いのだから、イオを守る盾役としては申し分がない。
ギュンターにしてみれば、イオという存在は強力無比な攻撃力を持っているものの、防御力や近接戦闘の技術は人並み以下――あくまでも黎明の覇者の傭兵の基準として――でしかない。
そうである以上、防御特化の存在をイオの側に置いておくのは、悪い話ではないはずだった。
「レックスだったな。これは提案だが、防御に特化した壁役になるという気はあるか?」
「え?」
ギュンターの口から出たのは、レックスにとっても意外な言葉だったのだろう。
いや、それはレックスだけではなく、ギュンターの側にいる他の傭兵たちにとっても同様だった。
防御に特化した壁役というのは、それだけ大きな衝撃を与えたのは間違いない。
誰であろうとも、防御だけに特化した……攻撃をしないといったような存在には、なりたいとは思わない。
敵の攻撃に耐えるだけというのは、それだけの恐怖をもたらすのだから。
イオもまた、それは難しいのでは? と思いつつ、味方に間違って攻撃するような不器用さを考えれば、それも悪くないのでは? と他人事のように考える。
実際、イオにしてみればまだ黎明の覇者に所属すると決めた訳でもなかったので、他人事なのは間違いなかったが。
そしてイオがどうするのかとレックスに視線を向けると、レックスは悩んだ様子を見せつつ、やがて口を開く。
「やります。それで黎明の覇者に所属出来る傭兵になるのなら……お願いします」
そう、頭を下げるのだった。
それはイオも理解していたし、恐らくは実質的にソフィアに次ぐ地位……副団長的な立場にいるのではないかと思っていた。
イオは黎明の覇者についてまだそこまで詳しい訳でもないので、もしかしたらもっと別の人員がいる可能性も否定は出来ない。
出来ないが、現在イオが知ってる限りではやはりギュンターこそがソフィアに次ぐ人物であるというのは間違いなかった。
そんなギュンターから強い視線を受けたのだから、レックスが後退るのはイオにも理解出来る。
……冷静にそう考えているイオだったが、そんなイオも我知らず、いつの間にか後方に下がってた。
「ふん」
後ろに下がったレックスを見て、ギュンターは鼻で笑う。
その程度の覚悟なのか、と。
「ぐ……」
そんなギュンターの様子にここは退く訳にはいかないと判断したのか、レックスは最初に下がっただけで、それ以後は持ち堪える。
「ほう」
そんなレックスの様子に、ギュンターは少しだけ感心したように呟く。
黎明の覇者の中でも実力者として知られているギュンターだけに、自分の実力についても十分に理解している。
そうである以上、自分が視線に力を込めて睨み付けるといったような真似をした場合、ギュンターの視線の圧力は半ば物理的な圧力すらあるのではないかと思えるくらいのものになる。
そのような視線を向けられても、最初こそ後ろに下がりはしたが、立て直すといったような真似が出来たのだ。
レックスが踏みとどまったことに感心したり驚いたりとしたのは、ギュンターだけではない。
ギュンターの周囲にいた者たちもまた、そんなレックスの様子に思うものがあった。
言葉には出さず、視線でそれなりに見所があるのは? と意見を交わす。
中には、レックスは自分が鍛えてやりたいと思う者もいた。
「なるほど。能力はともかく、やる気に関しては問題ないようだな。そうなると、これからどうするかだが……いや、その前に改めて聞こう。レックスだったな? お前は黒き蛇に所属していたはずだが、本当に黎明の覇者に所属したいと思っているのか?」
「えっと……はい。出来ればそうしたいです」
実際のところ、レックスはイオに黎明の覇者を紹介されても自分がそこに所属出来るとは思っていなかった。
だが、レックスにしてみればランクA傭兵団と話すことが出来るという時点で、イオと一緒に行動してみたいと思うには十分だった。
もちろん、傭兵団に……英雄に憧れていたレックスだ。
もし本当にイオが黎明の覇者に紹介してくれて、そちらに移れるというのなら、その機会を逃すつもりはない。
黒き蛇に所属しているレックスだったが、憂さ晴らしに殴られ、暇だからといって殴られ、何となくといったような理由で殴られる。
雑用しか出来ないからと、それでも自分は黒き蛇の一員であるということを頼りに生活していたものの、それでも黒き蛇での生活を思えば、それは決して喜ぶべきことではない。
こうして黎明の覇者の傭兵団……それも見るからに幹部と思われるギュンターを前にしてみれば、そんなことをしみじみと感じてしまうのは間違いのない事実だった。
だからこそ、ギュンターの言葉にそう返したのだ。
「しかし、黒き蛇というランクD傭兵団でも雑用だったのだろう? そのような者が黎明の覇者に入ってきて、それで傭兵としてやっていけると思うのか?」
「それは……」
容赦なく言ってくるギュンターの言葉に、レックスは反論出来ない。
事実、それは決して間違っていることではないのだから。
黎明の覇者に所属を希望する者の中には、それこそランクB傭兵団で活動していた者や、個人としてランクAやBを持つ傭兵もそこまで珍しくはない。
そういう意味では、個人としてはランクのGでしかないレックスが黎明の覇者に入るというのは、かなり厳しいのは事実だった。
なお、傭兵や冒険者のランクというのは、最高のSから最低のGまでの八段階となっている。
その中でランクGというのは、傭兵や冒険者になったばかりの者が得られるランクだ。
レックスはギルドで登録してランクGの傭兵となってすぐに黒き蛇に所属することになり、そこからはずっと雑用だけをさせられていたこともあり、個人としてのランクが上がることはなかった。
「それでも、僕は黎明の覇者という最高の傭兵団で自分の力を試してみたいんです!」
「……なるほど。どうやら決意は固いようだな。分かった」
レックスの言葉にギュンターは頷く。
……実際のところ、冷たい態度をとっていたものの、ギュンターはレックスを拒絶するといった気持ちはなかった。
その理由は、当然イオを自分たちの仲間に引き込むためだ。
イオの能力を惜しんだソフィアは、イオを何としても黎明の覇者に引き込もうとしている。
ギュンターもゴブリンの軍勢を一人で……それも魔法を一度使っただけで壊滅させたイオは、どうにかして引き入れたいというソフィアの意見には賛成だった。
だからこそ、イオが連れて来たレックスが黎明の覇者に所属するようなことになれば、イオもそう簡単に黎明の覇者から離れられないでのではないか。
そんな打算があったのは事実だが、それでもレックスが思ったよりも根性があり、拾いものだったのは間違いなかった。
「分かった。レックスは黎明の覇者で受け入れよう。黒き蛇に関しても、こちらで手を打つ。何か持ち出す道具はあるか?」
「え? そ、その……部屋にある着替えとかそういうのくらいです」
「……武器の類はないのか?」
呆れた様子で告げるギュンター。
仮にも傭兵団に所属していたというのに、武器の類を持ってこなくてもいいのかと、そう言いたいのだろう。
だが、ギュンターのそんな呆れの言葉に、レックスは恥ずかしそうにしながら口を開く。
「お前はどんくさいんだから、武器を持っていれば間違って味方を攻撃すると言われてしまって……それで、武器の類は持たせて貰えませんでした」
「それは、また……ちなみに一応聞くが、実際にそのようなことがあったのか?」
念のためといった感じで尋ねるギュンターだったが、そんなギュンターの言葉にレックスは何も言えずに視線を逸らす。
それを見れば、実際にそのようなことがあった可能性は高いと、そう思ってしまうには十分だった。
ギュンターにとって、レックスのその言葉は衝撃を受けるには十分なものだ。
ギュンター本人は戦いに才能があり、味方を攻撃するといったようなことはした覚えがない。
また、黎明の覇者に来る者は当然のように才能がある者ばかりで、イオの件があってもレックスを本当に入れてもいいのか? と、思ってしまうには十分だった。
ギュンターと一緒に座っていた者たちも、先程までは自分がレックスを鍛えたいと言っていたのが嘘のように驚きの表情を浮かべている。
当然だろう。ここにいる以上は、ギュンターほどではないにしろ、相応の技量を持つ者たちだ。
戦いの中で味方に攻撃が命中するなどといったようなことは……何らかの連携の際にミスをして、といったようなことはあるかもしれないが、レックスのようなことはまずない。
だからこそ、レックスのその言葉に今のような反応を見せたのだ。
「そこまで不器用と……いっそ弓? いや、弓で味方を誤射したら、目も当てられない」
その言葉に、イオは日本にいたときに何かで聞いた『一発だけなら誤射かもしれない』といった言葉を思い出す。
とはいえ、実際に誤射された方にしてみればそれは洒落にならないことだろう。
「これは……いや……」
ギュンターにしてみれば、普通ならとてもではないがレックスを黎明の覇者に受け入れるといったような真似は出来ない。
だが、レックスの存在によってイオを黎明の覇者に引き入れようという狙いがある以上、このまま放り出すといったような真似をする訳にもいかない。
であれば、レックスをどうにかして何かに使うといったように考える必要があるのだが……
(高い回復能力持ちというのを上手く使えば……攻撃が苦手となると、遠距離からの弓を使った攻撃も到底無理だ。だとすれば……)
ギュンターは考えながらイオに視線を向け、ふと気が付く。
(イオの流星魔法は強力極まりないが、言ってみればそれだけだ。つまり、接近されたらどうしようもない。いずれは鍛えるとしても、最初のうちは……そしてレックスは高い回復能力というスキルがある。だとすれば、いけるか?)
このとき、ギュンターの頭の中にあったのは、防御専門の盾役というものだった。
黎明の覇者の中にも、当然のように前線で戦うときは敵の攻撃を防ぐための壁役はいる。
いるのだが、それでも普通は盾役もこなしながら攻撃をするというもので、本当の意味で完全に防御に特化した存在というのは珍しい。
だが、レックスは高い身長とがっしりとした身体をしており、それでいて回復能力が高いのだから、イオを守る盾役としては申し分がない。
ギュンターにしてみれば、イオという存在は強力無比な攻撃力を持っているものの、防御力や近接戦闘の技術は人並み以下――あくまでも黎明の覇者の傭兵の基準として――でしかない。
そうである以上、防御特化の存在をイオの側に置いておくのは、悪い話ではないはずだった。
「レックスだったな。これは提案だが、防御に特化した壁役になるという気はあるか?」
「え?」
ギュンターの口から出たのは、レックスにとっても意外な言葉だったのだろう。
いや、それはレックスだけではなく、ギュンターの側にいる他の傭兵たちにとっても同様だった。
防御に特化した壁役というのは、それだけ大きな衝撃を与えたのは間違いない。
誰であろうとも、防御だけに特化した……攻撃をしないといったような存在には、なりたいとは思わない。
敵の攻撃に耐えるだけというのは、それだけの恐怖をもたらすのだから。
イオもまた、それは難しいのでは? と思いつつ、味方に間違って攻撃するような不器用さを考えれば、それも悪くないのでは? と他人事のように考える。
実際、イオにしてみればまだ黎明の覇者に所属すると決めた訳でもなかったので、他人事なのは間違いなかったが。
そしてイオがどうするのかとレックスに視線を向けると、レックスは悩んだ様子を見せつつ、やがて口を開く。
「やります。それで黎明の覇者に所属出来る傭兵になるのなら……お願いします」
そう、頭を下げるのだった。
10
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる