27 / 178
異世界へ
0027話
しおりを挟む
男たちから逃げ出したイオだったが、当然ながらそう簡単に逃げ切れる訳がない。
ドレミナに来たばかりである以上、イオはドレミナの道について詳しくなかったというのが大きい。
そんなイオに対し、男たちはこのドレミナで活動する者たちだ。
今回のゴブリンの軍勢の一件でドレミナにやって来たのかもしれないが、それでもイオより長くこの街にいるのは間違いない。
そうである以上、イオよりはドレミナの地理については詳しいのは当然だった。
「くそっ! 何だってこんなことに……!」
そのような状況でイオはドレミナの街中を逃げていたのだが、当然ながらイオも現状で逃げ切れるとは思っていない。
唯一の可能性としては、それこそ黎明の覇者が借り切っている英雄の宴亭に向かうといったものだろう。
黎明の覇者の者たちに頼るのはどうかという思いがない訳でもなかったが、今の状況で意地を張った結果どうなるのかを考えれば、ここで意地を張るのは愚行でしかない。
とはいえ、追ってくる男たちから逃げている現在は自分が具体的にどこにいるのかは分からない。
具体的には迷子になっていた。
全く見知らぬ街……それも日本の田舎で育ってきたイオにとって、剣と魔法の世界にある街、それも準都市と呼ぶべきドレミナの中で走り回って迷うなという方が無理だろう。
「ここは、どこだ……?」
追ってくる者たちから逃げ続けていたイオは、自然と自分で気が付かないうちに逃げやすい方、走りやすい方……つまり、人があまりいない場所に向かうことになっていた。
当然ながら、そのような場所というのは裏通りになる。
とはいえ、現在のドレミナにはゴブリンの軍勢から逃げるために周辺の村や街から避難している者も多い。
それだけではなく、ゴブリンの軍勢と戦うために傭兵や冒険者といった者たちも多く集まっている。
表通りでイオが走りにくかったのはそれが理由だったが、同時に表通りの人の多さが嫌になった者たちも裏通りに流れてきている。
結果として、裏通りは裏通りで普段よりも多くの者がいて……そうなれば、当然のようにイオのような見るからに鍛えていない相手は絶好のカモとなる。
杖を持っている以上は魔法使いであると考えるかもしれないが、それでもイオの様子から魔法使いでもそこまで腕利きではないと判断し……
「おっと、ここから先は通行止めだ。通りたかったら相応の通行料を払って貰おうか」
イオの前を立ち塞がった男たちは、口元に嘲笑を浮かべつつそう告げる。
イオにしてみれば、追っ手から逃げているこんなときにと苛立ちを覚えた。
幸い今は後ろから男たちが追ってくる様子はまだない。
だが、恐らくすぐにでも男たちはここに姿を現すという、そんな確信がイオにはあった。
「どいてくれ! 今はお前たちにかかわっているような余裕はないんだ!」
「なら、通行料を出しな。それと……そうだな、その杖も置いていって貰うか。そういう杖はそれなりに高く売れるし。安心しろ。俺たちは良心的だから、お前を捕らえて奴隷にするといったような真似はしない。優しいだろ?」
どこがだ! と叫びたくなったイオだったが、どうにかしてこの場を乗り越えるかを考える。
当然ながら、杖を渡す訳にはいかない。
イオにとって杖は使い捨てで、ゴブリンの軍勢から奪った杖は英雄の宴亭に戻れば黎明の覇者に預けていた分をすぐに貰える。
しかし、今のイオにとって杖というのは唯一の武器なのだ。
素手での喧嘩より、杖であっても武器はあった方がいい。
ましてや今は後ろから自分を追ってきている者たちもいる以上、よけいに杖を手放す気はない。
……もちろん、だからといって街中で流星魔法を使おうとは思わないが。
「ほら、どうした? お前は……あん?」
イオの前に立ち塞がって会話をしていた男は、不意にその言葉を止めてイオから視線を逸らす。
それもあからさまに横に視線を向けたりといったような真似ではなく、イオの後ろに視線を向けたのだ。
それが一体どういう意味を持つのかは、イオにもすぐに理解出来た。
「ちっ!」
舌打ちしながら後ろを見ると、その視線の先にはやはり見覚えのある男とその仲間の姿がある。
来るのが早すぎるだろう! そう叫びたくなったイオだったが、幸か不幸かイオが叫ぶよりも前に話は進む。
「何だてめえら! この男は俺の客だ! とっとと消えろ!」
イオの前にいた男が、新たに現れた男に向かってそう叫ぶ。
自分が恐喝しようとした男を客だと言い張るのは、イオを唖然とさせるには十分だった。
とはいえ……と、現在の状況はそう悪いものではないのか? とも思う。
裏道にいた者たちと、イオを追ってきた男たち。
双方共にイオの敵であるのは間違いないが、同時に男たち同士も敵なのだ。
三竦み――というにはイオの戦力が弱すぎるが――のこの状況は、上手くいけばイオに敵対する二組をぶつけることも不可能ではない。
「ふん、チンピラ風情が。邪魔だ、消えろ」
男は道端に落ちているゴミでも見るかのような視線を向けながら、そう告げる。
イオの前に立ち塞がったチンピラたちにしてみれば、そんな男の言葉を聞いて黙っていられる訳もない。
脅すためか、あるいは実際に使うためかは不明だったが、イオと話していた男やその仲間たちは短剣を引き抜く。
(これは……やばいな)
日本にいた頃に見た漫画では、不良がナイフを使うといったような光景は珍しくない。
しかし漫画では日本の不良ということもあって実際にナイフを使うといったことは珍しい。……漫画だからこそ過激な行動に出ることもあったが。
そんな漫画と比べると、イオの前にいるチンピラたちが持っているのは、ナイフではなく短剣だ。
言ってみれば作業用のナイフと武器の短剣。
その二つは一見すると似たような物に見えるものの、実際には大きく違う。
作業用のナイフと違い、あくまでも相手を傷つけ、殺すために使われるのが短剣なのだから、イオの思い込みのせいもあるのか、そこから受ける迫力は決定的に違うように思えた。
その刃の鋭さに思うところはあれど、ゴブリンが持っていた短剣を見ただろうと自分に言い聞かせる。
今はその刃の鋭さに怯えているような場合ではない。
三つ巴のこの状況において、一番弱い自分がこの場から脱するには、チンピラたちと自分を追ってきた男たちに争って貰う必要がある。
その隙を突く形でこの場を逃げ出すしか、イオに出来ることはない。
まともな戦いになった場合、イオは自分ではこの状況をどうしようもないと、そう理解しているのだ。
もしイオが流星魔法の才能ではなく武器の才能であったり、あるいは格闘戦の才能といったものがあるのなら、また少し話は違ったかもしれないが。
今の状況でそのようなことを考えても意味はない。
とにかく現在は息を殺し、ゴブリンに見つからない程度に気配を殺せるようになったその技術を最大限に利用して、チンピラたちとウルフィの信者と呼ぶべき者たちをぶつかるのを待つしかない。
「逃げ出すなら今だけだぞ。このまま俺たちと戦ったら、お前たちはただですまない」
イオを追ってきた男が、チンピラに向かってそう告げる。
言葉では逃げ出せばそれ以上は追わないといった様子を匂わせているものの、自分たちが侮られたと理解したチンピラたちは苛立ちも露わに叫ぶ。
「ふざけるな! てめえら、やっちまうぞ!」
気が短い人物だったためだろう。チンピラのその叫びと共に、周囲にいたチンピラたちは武器を手にして男たちに近付いていく。
イオの前にいたチンピラたちだけではなく、周囲の通路から他のチンピラたちも姿を現して男たちに襲いかかる。
「うおおおお! 死ねぇっ!」
そう言いながら、チンピラは短剣で男たちの顔面を狙う。
死ねという言葉は脅しでも何でもなく、本気で相手の頭部に短剣を突き刺そうとしているかのような動き。
躊躇なくそのような真似が出来る辺り、裏道であるこの辺りの戦いにおいて相手を殺すといったようなことは普通に行われているのだろう。
そういう意味では、レックスに殴る蹴るといった暴行をしていた黒き蛇の傭兵が行っていたのはそこまで酷いことではなかったのかもしれない。
自分の顔面を狙って振るわれた短剣を、男は鼻で笑いながら長剣を振るう。
鞘に収まったままなのは、この程度の相手を殺すまでもないと思っていたのか。
頭部を狙った短剣はあっさりと回避されたチンピラは、顔面を鞘で思い切り殴られる。
鞘とはいえ、長剣が入っている状態では棍棒のような打突武器としても使える代物だ。
そのような武器で顔面を殴られれば……それも手加減も何もなく殴られれば、最悪頭蓋骨が骨折して命にかかわってもおかしくない。
意図的に殺そうとは思わないが、死ぬなら死んでもいいと思っているのが分かるような攻撃だった。
「てめぇっ!」
そんな男の態度に、イオに絡んできたチンピラ……出来るだけ見つからないようにしているイオの目から見て、恐らくはチンピラたちを率いているのだろう人物であると思しき男が激高して叫ぶ。
仲間がやられて怒っているのはその男だけではない。
他のチンピラたちも同様に、頭に血が上って興奮した様子で武器を構え……一気にイオを追ってきた男たちに襲いかかる。
人数ではチンピラたちの方が多く、イオを追ってきた男たちの数倍はいる。
しかしイオを追ってきた男たちは傭兵として活動している者たちで、それこそ技量がチンピラたちよりも上だった。
質と量の戦いとでも呼ぶべきそんな戦いを見ながら、イオは出来るだけ早くこの場から逃げようと隙を窺う。
幸いなことに、チンピラたちもイオを追ってきた男たちも、今は目の前の相手に対処することに必死になっており、イオの存在を気にしている様子はない。
そのような意味で、イオにとっては最善の状況だった。
(行くぞ、行くぞ、行くぞ……今!)
戦いの隙を突いてその場から走り出そうとしたイオ。
一歩、二歩と進み、速度に乗ってその場を走り出そうとしたその瞬間、不意に周囲に怒声が響き渡る。
「何をしてやがる、てめえらぁっ!」
その怒声は、周辺一帯に響き渡るようなそんな大きさだった。
ドレミナに来たばかりである以上、イオはドレミナの道について詳しくなかったというのが大きい。
そんなイオに対し、男たちはこのドレミナで活動する者たちだ。
今回のゴブリンの軍勢の一件でドレミナにやって来たのかもしれないが、それでもイオより長くこの街にいるのは間違いない。
そうである以上、イオよりはドレミナの地理については詳しいのは当然だった。
「くそっ! 何だってこんなことに……!」
そのような状況でイオはドレミナの街中を逃げていたのだが、当然ながらイオも現状で逃げ切れるとは思っていない。
唯一の可能性としては、それこそ黎明の覇者が借り切っている英雄の宴亭に向かうといったものだろう。
黎明の覇者の者たちに頼るのはどうかという思いがない訳でもなかったが、今の状況で意地を張った結果どうなるのかを考えれば、ここで意地を張るのは愚行でしかない。
とはいえ、追ってくる男たちから逃げている現在は自分が具体的にどこにいるのかは分からない。
具体的には迷子になっていた。
全く見知らぬ街……それも日本の田舎で育ってきたイオにとって、剣と魔法の世界にある街、それも準都市と呼ぶべきドレミナの中で走り回って迷うなという方が無理だろう。
「ここは、どこだ……?」
追ってくる者たちから逃げ続けていたイオは、自然と自分で気が付かないうちに逃げやすい方、走りやすい方……つまり、人があまりいない場所に向かうことになっていた。
当然ながら、そのような場所というのは裏通りになる。
とはいえ、現在のドレミナにはゴブリンの軍勢から逃げるために周辺の村や街から避難している者も多い。
それだけではなく、ゴブリンの軍勢と戦うために傭兵や冒険者といった者たちも多く集まっている。
表通りでイオが走りにくかったのはそれが理由だったが、同時に表通りの人の多さが嫌になった者たちも裏通りに流れてきている。
結果として、裏通りは裏通りで普段よりも多くの者がいて……そうなれば、当然のようにイオのような見るからに鍛えていない相手は絶好のカモとなる。
杖を持っている以上は魔法使いであると考えるかもしれないが、それでもイオの様子から魔法使いでもそこまで腕利きではないと判断し……
「おっと、ここから先は通行止めだ。通りたかったら相応の通行料を払って貰おうか」
イオの前を立ち塞がった男たちは、口元に嘲笑を浮かべつつそう告げる。
イオにしてみれば、追っ手から逃げているこんなときにと苛立ちを覚えた。
幸い今は後ろから男たちが追ってくる様子はまだない。
だが、恐らくすぐにでも男たちはここに姿を現すという、そんな確信がイオにはあった。
「どいてくれ! 今はお前たちにかかわっているような余裕はないんだ!」
「なら、通行料を出しな。それと……そうだな、その杖も置いていって貰うか。そういう杖はそれなりに高く売れるし。安心しろ。俺たちは良心的だから、お前を捕らえて奴隷にするといったような真似はしない。優しいだろ?」
どこがだ! と叫びたくなったイオだったが、どうにかしてこの場を乗り越えるかを考える。
当然ながら、杖を渡す訳にはいかない。
イオにとって杖は使い捨てで、ゴブリンの軍勢から奪った杖は英雄の宴亭に戻れば黎明の覇者に預けていた分をすぐに貰える。
しかし、今のイオにとって杖というのは唯一の武器なのだ。
素手での喧嘩より、杖であっても武器はあった方がいい。
ましてや今は後ろから自分を追ってきている者たちもいる以上、よけいに杖を手放す気はない。
……もちろん、だからといって街中で流星魔法を使おうとは思わないが。
「ほら、どうした? お前は……あん?」
イオの前に立ち塞がって会話をしていた男は、不意にその言葉を止めてイオから視線を逸らす。
それもあからさまに横に視線を向けたりといったような真似ではなく、イオの後ろに視線を向けたのだ。
それが一体どういう意味を持つのかは、イオにもすぐに理解出来た。
「ちっ!」
舌打ちしながら後ろを見ると、その視線の先にはやはり見覚えのある男とその仲間の姿がある。
来るのが早すぎるだろう! そう叫びたくなったイオだったが、幸か不幸かイオが叫ぶよりも前に話は進む。
「何だてめえら! この男は俺の客だ! とっとと消えろ!」
イオの前にいた男が、新たに現れた男に向かってそう叫ぶ。
自分が恐喝しようとした男を客だと言い張るのは、イオを唖然とさせるには十分だった。
とはいえ……と、現在の状況はそう悪いものではないのか? とも思う。
裏道にいた者たちと、イオを追ってきた男たち。
双方共にイオの敵であるのは間違いないが、同時に男たち同士も敵なのだ。
三竦み――というにはイオの戦力が弱すぎるが――のこの状況は、上手くいけばイオに敵対する二組をぶつけることも不可能ではない。
「ふん、チンピラ風情が。邪魔だ、消えろ」
男は道端に落ちているゴミでも見るかのような視線を向けながら、そう告げる。
イオの前に立ち塞がったチンピラたちにしてみれば、そんな男の言葉を聞いて黙っていられる訳もない。
脅すためか、あるいは実際に使うためかは不明だったが、イオと話していた男やその仲間たちは短剣を引き抜く。
(これは……やばいな)
日本にいた頃に見た漫画では、不良がナイフを使うといったような光景は珍しくない。
しかし漫画では日本の不良ということもあって実際にナイフを使うといったことは珍しい。……漫画だからこそ過激な行動に出ることもあったが。
そんな漫画と比べると、イオの前にいるチンピラたちが持っているのは、ナイフではなく短剣だ。
言ってみれば作業用のナイフと武器の短剣。
その二つは一見すると似たような物に見えるものの、実際には大きく違う。
作業用のナイフと違い、あくまでも相手を傷つけ、殺すために使われるのが短剣なのだから、イオの思い込みのせいもあるのか、そこから受ける迫力は決定的に違うように思えた。
その刃の鋭さに思うところはあれど、ゴブリンが持っていた短剣を見ただろうと自分に言い聞かせる。
今はその刃の鋭さに怯えているような場合ではない。
三つ巴のこの状況において、一番弱い自分がこの場から脱するには、チンピラたちと自分を追ってきた男たちに争って貰う必要がある。
その隙を突く形でこの場を逃げ出すしか、イオに出来ることはない。
まともな戦いになった場合、イオは自分ではこの状況をどうしようもないと、そう理解しているのだ。
もしイオが流星魔法の才能ではなく武器の才能であったり、あるいは格闘戦の才能といったものがあるのなら、また少し話は違ったかもしれないが。
今の状況でそのようなことを考えても意味はない。
とにかく現在は息を殺し、ゴブリンに見つからない程度に気配を殺せるようになったその技術を最大限に利用して、チンピラたちとウルフィの信者と呼ぶべき者たちをぶつかるのを待つしかない。
「逃げ出すなら今だけだぞ。このまま俺たちと戦ったら、お前たちはただですまない」
イオを追ってきた男が、チンピラに向かってそう告げる。
言葉では逃げ出せばそれ以上は追わないといった様子を匂わせているものの、自分たちが侮られたと理解したチンピラたちは苛立ちも露わに叫ぶ。
「ふざけるな! てめえら、やっちまうぞ!」
気が短い人物だったためだろう。チンピラのその叫びと共に、周囲にいたチンピラたちは武器を手にして男たちに近付いていく。
イオの前にいたチンピラたちだけではなく、周囲の通路から他のチンピラたちも姿を現して男たちに襲いかかる。
「うおおおお! 死ねぇっ!」
そう言いながら、チンピラは短剣で男たちの顔面を狙う。
死ねという言葉は脅しでも何でもなく、本気で相手の頭部に短剣を突き刺そうとしているかのような動き。
躊躇なくそのような真似が出来る辺り、裏道であるこの辺りの戦いにおいて相手を殺すといったようなことは普通に行われているのだろう。
そういう意味では、レックスに殴る蹴るといった暴行をしていた黒き蛇の傭兵が行っていたのはそこまで酷いことではなかったのかもしれない。
自分の顔面を狙って振るわれた短剣を、男は鼻で笑いながら長剣を振るう。
鞘に収まったままなのは、この程度の相手を殺すまでもないと思っていたのか。
頭部を狙った短剣はあっさりと回避されたチンピラは、顔面を鞘で思い切り殴られる。
鞘とはいえ、長剣が入っている状態では棍棒のような打突武器としても使える代物だ。
そのような武器で顔面を殴られれば……それも手加減も何もなく殴られれば、最悪頭蓋骨が骨折して命にかかわってもおかしくない。
意図的に殺そうとは思わないが、死ぬなら死んでもいいと思っているのが分かるような攻撃だった。
「てめぇっ!」
そんな男の態度に、イオに絡んできたチンピラ……出来るだけ見つからないようにしているイオの目から見て、恐らくはチンピラたちを率いているのだろう人物であると思しき男が激高して叫ぶ。
仲間がやられて怒っているのはその男だけではない。
他のチンピラたちも同様に、頭に血が上って興奮した様子で武器を構え……一気にイオを追ってきた男たちに襲いかかる。
人数ではチンピラたちの方が多く、イオを追ってきた男たちの数倍はいる。
しかしイオを追ってきた男たちは傭兵として活動している者たちで、それこそ技量がチンピラたちよりも上だった。
質と量の戦いとでも呼ぶべきそんな戦いを見ながら、イオは出来るだけ早くこの場から逃げようと隙を窺う。
幸いなことに、チンピラたちもイオを追ってきた男たちも、今は目の前の相手に対処することに必死になっており、イオの存在を気にしている様子はない。
そのような意味で、イオにとっては最善の状況だった。
(行くぞ、行くぞ、行くぞ……今!)
戦いの隙を突いてその場から走り出そうとしたイオ。
一歩、二歩と進み、速度に乗ってその場を走り出そうとしたその瞬間、不意に周囲に怒声が響き渡る。
「何をしてやがる、てめえらぁっ!」
その怒声は、周辺一帯に響き渡るようなそんな大きさだった。
0
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる