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異世界へ
0028話
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突然周囲に響き渡った怒声は、そこで行われていた乱闘……もしくは戦いを止めるには十分な迫力を持っていた。
それだけなら、イオも特に気にする必要はなかっただろう。
だが、その場から何とか逃げ出そうとしていたイオの足すらも止められてしまったのだから、それは痛い。
大きな声に込められた迫力は、イオの足を止めるには十分な威力を持っていた。
そうして足を止めたところで、イオは恐る恐る声のした方に視線を向ける。
もしこれで怒声を発した相手がイオに敵対的な相手である場合、最悪の結果になるかもしれないと思ったからだ。だが……
「え?」
怒声を発した人物を見たイオの口からは、そんな間の抜けた声が上がる。
当然だろう。声を発した人物にはイオも見覚えがあったのだから。
黎明の覇者と別れてドレミナを見て回っているときに、イオの不注意でぶつかってしまった相手。
強面のその顔とは裏腹にイオに絡んでくるようなこともなく、軽く注意だけをしていった相手だった。
本人はぶつかったイオに寛容ではあったものの、その周辺にいた者たちはイオを睨んでいたのが強くイオの記憶に残っている。
そのような人物がここに姿を現すというのは、イオにとっても驚きだったのは間違いない。
「な……何でジャミレさんが……?」
そう呟いた声がイオの耳に入ってくる。
それを口にしたのは、ウルフィの信奉者とも言える男だった。
イオのウルフィに対する言葉遣いが気にくわないと、そう絡んで来た男。
チンピラたちに対してはゴミでも見るような視線を向けていた男だったが、新たに現れた強面の男……ジャミレという人物を前にしては、何も言えなくなっている。
(あの様子からすると、多分あのジャミレさんって人もウルフィさんに負けず劣らず凄い人なんだろうな。ウルフィさんがソロで傭兵をやっていて凄かったというのを考えると、あのジャミレさんは……)
ジャミレの側には何人もの取り巻き、もしくは部下がいるのを見て、ソロではないと判断する。
それはつまり、ジャミレは傭兵団を率いてるか何か……それも男の言葉を考えれば、恐らくそれなりに高ランク傭兵団を率いているのだろうと予想は出来た。
「おい、そこの。……ん? お前、街中で会ったな?」
ジャミレは気配を消していたイオを、まるでそこにいるのが当然だとでもいうように気が付いて視線を向ける。
とはいえ、それも当然だろう。
イオの気配を消すという能力は非常に未熟で、ゴブリン程度にしか効果がないのだから。
このまま黙っていては、自分の状況は今以上に悪くなる。
そう判断したイオは、ジャミレに向かって頭を下げた。
「はい、さっきはこっちの不注意で間違ってジャミレさんにぶつかってしまいました。イオといいます」
ジャミレの周囲にいる者たちは、その言葉でイオのことを思い出したのか、何人かはイオに不満そうな視線を向けるものの、多くは特に気にしている様子はなかった。
イオとジャミレがぶつかってから、ある程度時間が経っている。
そのおかげで、多少は頭を冷やした者もいたのだろう。
それでもジャミレに対してぶつかったというのが許せない者は何人かいたのだが。
「ああ、そう言えばそんなこともあったな。気にするな。見たところ、お前はドレミナに来たばかりだったんだろう? なら落ち着かなくてもおかしくない。……それで……」
そこで一旦言葉を切ったジャミレは、改めてイオに視線を向ける。
その視線にはかなりの力が込められており、ジャミレの視線を真っ向から受けたイオは、その迫力に押されるように数歩後退ってしまう。
そんなイオの様子には気が付いていたのだろうが、ジャミレはそのまま言葉を続ける。
「ここでこういう喧嘩騒ぎがあったのは、どういう理由だ? 見たところ、お前がかかわってるんだろう?」
その言葉は、イオを驚かせるには十分だったが、同時に納得もする。
二つの集団が争っていたその場所に、どちらの集団にも属さないイオがいたのだ。
この騒動にイオがかかわっていないと考えるような真似は、とてもではないが出来ないだろう。
「はい。その、かかわっているというか……そっちにいる男たちが俺を追ってきたので逃げていたら、この辺りに入り込むことになって。そうしたらここにいた男たちから通行料として金や杖を寄越せと言われて……ちょうどその時に追ってきた者たちに追い付かれてしまったんです」
「なるほど。それでお互いがお前の存在を相手に譲らないで、戦いになったのか。……おい、お前はウルフィの関係者だったな? 何でお前がこの男を狙った? ウルフィの指示か?」
まさか、と。
イオはジャミレの言葉に驚きを露わにする。
ウルフィは自分に対して親切にしてくれた。
とはいえ、ウルフィはイオの秘密を知っている。
そうである以上、その秘密についてもっと知りたくなってイオを捕らえようと考えてもおかしくはない。
「違う!」
だが、イオがウルフィを疑い始めたそのタイミングを見計らっていたかのように、ウルフィの信奉者の男が叫ぶ。
「この男はウルフィさんに失礼な真似をした。それを教育してやろうと考えたんだ!」
「教育……? 坊主、お前ウルフィに何かしたのか?」
ジャミレは男の言葉に訝しげにイオに尋ねる。
ウルフィは有名人で、ジャミレも知っていた。
そんなジャミレにしてみれば、人当たりのいいウルフィに対してイオが失礼な真似をしたと言われても納得出来なかったのだろう。
ジャミレに話を向けられたイオは、当然のように首を横に振る。
「別に何もしていません。普通に会話をしていただけですよ。ウルフィさんも俺との会話を楽しんでいましたし。そうしたら、その人が突然怒鳴ってきたんです。そのときはウルフィさんが気にしないで欲しいと言ったので気にしなかったんですが……」
そこでイオはウルフィの信奉者の男に視線を向ける。
イオの様子を見て、ジャミレは大体の話の流れを理解したのだろう。
あるいは、以前にも似たような話を聞いたり、あるいは直接見たことがあったのかもしれない。
「はぁ、結局お前がウルフィのためってことで暴走しただけか」
ジャミレの言葉に、ウルフィの信奉者はそんなことはないと、叫ぶ。
「俺は、ウルフィさんのためを思って行動したんだ! ウルフィさんは以前俺を助けてくれた! それが、何故こんな奴に対等な口調で話されなければならないんだ!」
喋っているうちに興奮してきたのか、男は周囲に聞こえるように大きく叫ぶ。
そんな男の言葉に、ジャミレやその仲間たちだけではなく、チンピラたちまでもが理解不能といった表情を浮かべていた。
(可能性としては、俺が口を滑らせたあの決定的な一件についてもっと詳しく情報を知りたいから、こいつらを嗾けてきた……ってことも考えてたんだけど、この様子を見ると違うな)
イオにしてみれば、助かったという思いがあると同時に面倒臭い相手に絡まれたという思いもある。
(とはいえ、ウルフィさんは何だってこんな奴に好かれてるんだろうな? ランクB傭兵というのは凄いのかもしれないけど、それでもここまで信服……いや、信仰か? こんな感じになるというのは、正直なところ意味が分からない)
ウルフィがこの男を助けたという話は聞いているものの、それだけでこんなになるか? というのが、イオの正直な感想だ。
もっとも、実際にこのようになっている以上、それを否定するような真似は出来ないのだが。
「あー、もういい。お前……イオだったな? こいつやそっちの連中……」
と、ジャミレはチンピラたちの方に視線を向ける。
「どっちもあとは俺に任せて、お前はとっとと行け」
ジャミレのその言葉は、イオにとって想外だった。
まさかこの状況で自分を解放してくれるとは、と。
「え? いいんですか?」
「ああ、構わねえよ。それとも何だ? まだここに残っていたいってのなら、俺は構わねえが。どうする?」
「いえ、残っていたいとは思いません。ありがとうございます」
この絶好のチャンスを逃してなるものかと、イオはジャミレに感謝の言葉を口にする。
そんなイオの態度は、ジャミレの周囲にいた者たちは悪くない感触だったのだろう。
数時間前にジャミレにぶつかったときは面白くなさそうな視線を向けてきた者たちだったのが、今のイオの言葉を聞くと満足そうな様子を見せていた。
ジャミレに心酔しているだけあってか、イオが絡まれている場面にジャミレが助けに入り、助けられたイオがジャミレに感謝の言葉を口にするというのは悪くない流れだったのだろう。
(下手をしたら、この取り巻きもウルフィさんの信奉者みたいな男になったりしないよな?)
ジャミレの周囲にいる者たちを見てそんな風に思うイオだったが、とにかく今は出来るだけ早くここから離れた方がいいだろうと、自分の中から聞こえてくる声に従ってその場をあとにする。
だが、そんなイオを簡単に見逃すことが出来ない者もいる。
イオをここで止めたチンピラは、ジャミレの持つ雰囲気から自分ではどうしようもないと判断したのか、口を開くような真似はしていない。
それどころか、この場にいる仲間には決して軽率な行動をするなと視線で注意していた。
チンピラたちにしてみればイオはいいカモではあったが、言ってみればそれだけでしかない。
もしイオがいなくなっても、惜しいとは思うがそれだけだ。
だが、ウルフィの信奉者にしてみれば、ここでイオを逃すといった選択肢はない。
せっかくここまで追い詰めた以上、ここでイオを逃がすというのは許容出来なかった。
「ジャミレさん、何を勝手なことを言ってるんですか!」
「ああ? お前、俺の判断に不満でもあるのか? ウルフィにこの件は言っておくからな」
「そんな真似は許容出来ません!」
ジャミレと男たちの間にある実力差は非常に大きい。
それでもここでジャミレの言葉を素直に聞くといった真似は出来ずに叫ぶ。
そのような叫びを聞きながらも、イオは少しでも早くここから離れようとして走り去る。
そんなイオに向かって男は叫ぶが、イオはそれを無視し……そして十分離れたところで、背後から再びジャミレの怒声が響き渡るのだった。
それだけなら、イオも特に気にする必要はなかっただろう。
だが、その場から何とか逃げ出そうとしていたイオの足すらも止められてしまったのだから、それは痛い。
大きな声に込められた迫力は、イオの足を止めるには十分な威力を持っていた。
そうして足を止めたところで、イオは恐る恐る声のした方に視線を向ける。
もしこれで怒声を発した相手がイオに敵対的な相手である場合、最悪の結果になるかもしれないと思ったからだ。だが……
「え?」
怒声を発した人物を見たイオの口からは、そんな間の抜けた声が上がる。
当然だろう。声を発した人物にはイオも見覚えがあったのだから。
黎明の覇者と別れてドレミナを見て回っているときに、イオの不注意でぶつかってしまった相手。
強面のその顔とは裏腹にイオに絡んでくるようなこともなく、軽く注意だけをしていった相手だった。
本人はぶつかったイオに寛容ではあったものの、その周辺にいた者たちはイオを睨んでいたのが強くイオの記憶に残っている。
そのような人物がここに姿を現すというのは、イオにとっても驚きだったのは間違いない。
「な……何でジャミレさんが……?」
そう呟いた声がイオの耳に入ってくる。
それを口にしたのは、ウルフィの信奉者とも言える男だった。
イオのウルフィに対する言葉遣いが気にくわないと、そう絡んで来た男。
チンピラたちに対してはゴミでも見るような視線を向けていた男だったが、新たに現れた強面の男……ジャミレという人物を前にしては、何も言えなくなっている。
(あの様子からすると、多分あのジャミレさんって人もウルフィさんに負けず劣らず凄い人なんだろうな。ウルフィさんがソロで傭兵をやっていて凄かったというのを考えると、あのジャミレさんは……)
ジャミレの側には何人もの取り巻き、もしくは部下がいるのを見て、ソロではないと判断する。
それはつまり、ジャミレは傭兵団を率いてるか何か……それも男の言葉を考えれば、恐らくそれなりに高ランク傭兵団を率いているのだろうと予想は出来た。
「おい、そこの。……ん? お前、街中で会ったな?」
ジャミレは気配を消していたイオを、まるでそこにいるのが当然だとでもいうように気が付いて視線を向ける。
とはいえ、それも当然だろう。
イオの気配を消すという能力は非常に未熟で、ゴブリン程度にしか効果がないのだから。
このまま黙っていては、自分の状況は今以上に悪くなる。
そう判断したイオは、ジャミレに向かって頭を下げた。
「はい、さっきはこっちの不注意で間違ってジャミレさんにぶつかってしまいました。イオといいます」
ジャミレの周囲にいる者たちは、その言葉でイオのことを思い出したのか、何人かはイオに不満そうな視線を向けるものの、多くは特に気にしている様子はなかった。
イオとジャミレがぶつかってから、ある程度時間が経っている。
そのおかげで、多少は頭を冷やした者もいたのだろう。
それでもジャミレに対してぶつかったというのが許せない者は何人かいたのだが。
「ああ、そう言えばそんなこともあったな。気にするな。見たところ、お前はドレミナに来たばかりだったんだろう? なら落ち着かなくてもおかしくない。……それで……」
そこで一旦言葉を切ったジャミレは、改めてイオに視線を向ける。
その視線にはかなりの力が込められており、ジャミレの視線を真っ向から受けたイオは、その迫力に押されるように数歩後退ってしまう。
そんなイオの様子には気が付いていたのだろうが、ジャミレはそのまま言葉を続ける。
「ここでこういう喧嘩騒ぎがあったのは、どういう理由だ? 見たところ、お前がかかわってるんだろう?」
その言葉は、イオを驚かせるには十分だったが、同時に納得もする。
二つの集団が争っていたその場所に、どちらの集団にも属さないイオがいたのだ。
この騒動にイオがかかわっていないと考えるような真似は、とてもではないが出来ないだろう。
「はい。その、かかわっているというか……そっちにいる男たちが俺を追ってきたので逃げていたら、この辺りに入り込むことになって。そうしたらここにいた男たちから通行料として金や杖を寄越せと言われて……ちょうどその時に追ってきた者たちに追い付かれてしまったんです」
「なるほど。それでお互いがお前の存在を相手に譲らないで、戦いになったのか。……おい、お前はウルフィの関係者だったな? 何でお前がこの男を狙った? ウルフィの指示か?」
まさか、と。
イオはジャミレの言葉に驚きを露わにする。
ウルフィは自分に対して親切にしてくれた。
とはいえ、ウルフィはイオの秘密を知っている。
そうである以上、その秘密についてもっと知りたくなってイオを捕らえようと考えてもおかしくはない。
「違う!」
だが、イオがウルフィを疑い始めたそのタイミングを見計らっていたかのように、ウルフィの信奉者の男が叫ぶ。
「この男はウルフィさんに失礼な真似をした。それを教育してやろうと考えたんだ!」
「教育……? 坊主、お前ウルフィに何かしたのか?」
ジャミレは男の言葉に訝しげにイオに尋ねる。
ウルフィは有名人で、ジャミレも知っていた。
そんなジャミレにしてみれば、人当たりのいいウルフィに対してイオが失礼な真似をしたと言われても納得出来なかったのだろう。
ジャミレに話を向けられたイオは、当然のように首を横に振る。
「別に何もしていません。普通に会話をしていただけですよ。ウルフィさんも俺との会話を楽しんでいましたし。そうしたら、その人が突然怒鳴ってきたんです。そのときはウルフィさんが気にしないで欲しいと言ったので気にしなかったんですが……」
そこでイオはウルフィの信奉者の男に視線を向ける。
イオの様子を見て、ジャミレは大体の話の流れを理解したのだろう。
あるいは、以前にも似たような話を聞いたり、あるいは直接見たことがあったのかもしれない。
「はぁ、結局お前がウルフィのためってことで暴走しただけか」
ジャミレの言葉に、ウルフィの信奉者はそんなことはないと、叫ぶ。
「俺は、ウルフィさんのためを思って行動したんだ! ウルフィさんは以前俺を助けてくれた! それが、何故こんな奴に対等な口調で話されなければならないんだ!」
喋っているうちに興奮してきたのか、男は周囲に聞こえるように大きく叫ぶ。
そんな男の言葉に、ジャミレやその仲間たちだけではなく、チンピラたちまでもが理解不能といった表情を浮かべていた。
(可能性としては、俺が口を滑らせたあの決定的な一件についてもっと詳しく情報を知りたいから、こいつらを嗾けてきた……ってことも考えてたんだけど、この様子を見ると違うな)
イオにしてみれば、助かったという思いがあると同時に面倒臭い相手に絡まれたという思いもある。
(とはいえ、ウルフィさんは何だってこんな奴に好かれてるんだろうな? ランクB傭兵というのは凄いのかもしれないけど、それでもここまで信服……いや、信仰か? こんな感じになるというのは、正直なところ意味が分からない)
ウルフィがこの男を助けたという話は聞いているものの、それだけでこんなになるか? というのが、イオの正直な感想だ。
もっとも、実際にこのようになっている以上、それを否定するような真似は出来ないのだが。
「あー、もういい。お前……イオだったな? こいつやそっちの連中……」
と、ジャミレはチンピラたちの方に視線を向ける。
「どっちもあとは俺に任せて、お前はとっとと行け」
ジャミレのその言葉は、イオにとって想外だった。
まさかこの状況で自分を解放してくれるとは、と。
「え? いいんですか?」
「ああ、構わねえよ。それとも何だ? まだここに残っていたいってのなら、俺は構わねえが。どうする?」
「いえ、残っていたいとは思いません。ありがとうございます」
この絶好のチャンスを逃してなるものかと、イオはジャミレに感謝の言葉を口にする。
そんなイオの態度は、ジャミレの周囲にいた者たちは悪くない感触だったのだろう。
数時間前にジャミレにぶつかったときは面白くなさそうな視線を向けてきた者たちだったのが、今のイオの言葉を聞くと満足そうな様子を見せていた。
ジャミレに心酔しているだけあってか、イオが絡まれている場面にジャミレが助けに入り、助けられたイオがジャミレに感謝の言葉を口にするというのは悪くない流れだったのだろう。
(下手をしたら、この取り巻きもウルフィさんの信奉者みたいな男になったりしないよな?)
ジャミレの周囲にいる者たちを見てそんな風に思うイオだったが、とにかく今は出来るだけ早くここから離れた方がいいだろうと、自分の中から聞こえてくる声に従ってその場をあとにする。
だが、そんなイオを簡単に見逃すことが出来ない者もいる。
イオをここで止めたチンピラは、ジャミレの持つ雰囲気から自分ではどうしようもないと判断したのか、口を開くような真似はしていない。
それどころか、この場にいる仲間には決して軽率な行動をするなと視線で注意していた。
チンピラたちにしてみればイオはいいカモではあったが、言ってみればそれだけでしかない。
もしイオがいなくなっても、惜しいとは思うがそれだけだ。
だが、ウルフィの信奉者にしてみれば、ここでイオを逃すといった選択肢はない。
せっかくここまで追い詰めた以上、ここでイオを逃がすというのは許容出来なかった。
「ジャミレさん、何を勝手なことを言ってるんですか!」
「ああ? お前、俺の判断に不満でもあるのか? ウルフィにこの件は言っておくからな」
「そんな真似は許容出来ません!」
ジャミレと男たちの間にある実力差は非常に大きい。
それでもここでジャミレの言葉を素直に聞くといった真似は出来ずに叫ぶ。
そのような叫びを聞きながらも、イオは少しでも早くここから離れようとして走り去る。
そんなイオに向かって男は叫ぶが、イオはそれを無視し……そして十分離れたところで、背後から再びジャミレの怒声が響き渡るのだった。
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