才能は流星魔法

神無月 紅

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異世界へ

0091話

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「凄いわね……」

 改めてメテオを見たソフィアの口からそんな言葉が漏れる。
 今までにもメテオは何度か見てきた。
 そんな中でも、こうしてじっくりと見るのは初めてだ。
 ゴブリンとベヒモスのときは遠くから見ただけでしかない。
 暗黒のサソリとの戦いの最中にもメテオは使われたが、そのときはソフィアも戦いの最中だったのでしっかりと見ることは出来なかった。
 そういう意味では、今回のように間近でメテオを見たのは始めたなのだ。

「そうですね。使った俺が言うのもなんですが、迫力という点ではもの凄いと思います」

 ソフィアの言葉にイオはそう返す。
 今までメテオやミニメテオを何度も使ってきたのは間違いないが、そんなイオの目から見てもメテオがもの凄いは効力なのは間違いなかった。
 イオにとっては何度メテオを見てもその迫力には目を奪われるものがある。
 それでも他の者たちと比べると何度も見ている……そして実際に流星魔法を使っているだけに、他の者たちよりも多少は慣れがあった。

「ふふっ、そうね。……まぁ、それはそれとして。よく見ておきなさい。ここからでも逃げ出している者たちが分かるでしょう?」

 ソフィアの視線を追うと、かなり離れた場所にいた勢力の一つが、それこそ多くの者たちと共にその場から逃げ出しているのが分かった。
 ソフィアの目ではその光景をかなりはっきりと見ることが出来るのだろう。
 だが、イオにしてみればそんな敵の様子はよく見て、それでようやく理解出来るくらいのものだ。
 イオの視力も、決して悪い訳ではない。
 突出していい訳でもないのだが、そんなイオよりもソフィアの視力は明らかによかった。
 ……そんなソフィアの基準で言われても、イオとしては状況を把握するのがかなり難しい。

(そう言えば、サバンナとかで狩りをして暮らしている民族って、視力が日本で暮らしているような人たちとは比べものにならないくらいにいいって話だったけど……この世界でも、ある意味そういう感じなのか?)

 もちろん、この世界でも学者や研究者のように頻繁に本を読む者であれば視力が落ちるのそうおかしな話ではない。
 しかしここにいるのは傭兵なのだ。
 そうである以上、敵の姿をはっきりと見つけるといったような真似は必須となるのは間違いなかった。

(このまま黎明の覇者に所属するのかどうかは分からないけど、もしそうする場合はその辺をどうにかした方がいいかもしれないな。……問題なのは、そもそも視力をどうにか出来るのかということだけど)

 視力を強化するようなマジックアイテムの類があれば、イオにとってはありがたい。
 しかし、今の状況を思えばそういうのがあった方がいいとは思う。

「イオさん、これをどうぞ」

 その言葉に視線を向けると、そこには杖を持ったレックスの姿があった。
 渡された杖を受け取ったイオは感謝の言葉を口にする。

「悪い、助かった、やっぱりミニメテオはともかく、普通のメテオを使うと壊れるんだよな。ゴブリンの持っている杖だったから、品質の問題かもしれないけど」

 イオにしてみれば、出来ればもっとしっかりとした杖が欲しい。
 あるいはゴブリンの杖ではなく、普通の杖であってもメテオを使えばやはり壊れるのかどうかというのが心配だった。
 今のような状況を思えば、その辺はしっかりとしておきたい。
 今回の一件が終わったら、是非ともその辺に確認しておきたいと思うのだった。

「それで、新しい杖がありますけど……どうします? またメテオを使いますか?」
「そうね。使ってもらうけど、ちょっと待ってくれる? さっきの一撃で逃げ出そうとする勢力も多いはずよ。特にミニメテオを数回使ったあとでメテオを使ったのは大きかったし」

 もしイオがメテオだけしか使えないのなら、そのときはいきなりのメテオで黎明の覇者と敵対している勢力も混乱し、場合によってはその混乱によって黎明の覇者に向かって来てもおかしくはない。
 しかし、今回はメテオを使う前にミニメテオを使った。
 それによって、威力そのものは高くない――それでも隕石が命中すればあっさりと人は死ぬが――ものの、黎明の覇者と敵対している勢力は何度も降ってくる隕石を目にすることになる。
 その結果として、ミニメテオのあとに放たれたメテオを見て、混乱はしつつも黎明の覇者に向かってくるよりも逃げた方がいいと判断する者は多いはずだった。
 ソフィアがその辺りについての事情を説明すると、イオも納得した様子を見せる。
 イオだけではなく、レックスもまた同様にソフィアの言葉に納得した様子を見せていた。

「なるほど、話は分かりました。けど……それなら、ここでもう一回脅しとしての一撃を放っておいた方がいいんじゃないですか? ミニメテオが連発されて、それに続いてメテオも連発されたとなれば、破れかぶれで攻撃をするなんてことも考えるようなことはないでしょうし」

 イオのその言葉に、しかしソフィアは首を横に振る。

「ここですぐに追撃の一撃を放ってしまえば、私たちにとって面白くない状況になる可能性が高いわ」
「それは……何でですか?」

 ソフィアの言う面白くない状況。
 それが一体何なのか、イオには分からない。
 今までの話の流れから考えれば、ここでメテオを追加で使っても十分効果を発揮出来るように思えた。

「こればかりは明確な理由がないわね。そういう場の流れ……あるいは匂いとでも言うべきかしら」
「明確な理由がないんですか? えっと、それはその……そういう判断で行動を決定しても問題はないんですか?」
「ないわね」

 きっぱりと、イオに反論を許さないような口調でソフィアが告げる。
 ソフィアにしてみれば、今自分が感じているのは理屈ではない何かなのだ。
 黎明の覇者がここまで大きく、強くなったのは、もちろん黎明の覇者に所属する傭兵の力もあるだろうが、そんなソフィアの感覚の力も大きい。
 イオやレックスはそんなソフィアの感覚は分からなかったが、今のソフィアの言葉を聞いても周囲にいる傭兵の誰もが反対する様子はなかった。
 それはつまり、ソフィアがそのように言う何らかの理由がここにはあるということなのだろう。

「分かりました。取りあえず待機してますね」

 ソフィアの感覚については分からずとも、周囲にいる他の者たちが納得している様子を見れば、イオもここで自分が何かを言ったところで意味はないと判断する。
 そうである以上、イオはそう言って杖を握る。
 今の杖は、新しい杖だ。
 ……正確にはゴブリンの軍勢が持っていた中から拾った杖なので、新しいという言葉は正確には違うのだろうが。
 それでもイオが使う杖という意味では新しい杖であるのは間違いなかった。

「ええ、お願いね。……もっとも、そう遠くないうちに再びメテオを使って貰うことになると思うけど」
「それもやっぱり何となくそんな風に感じるんですか?」
「そうよ。今の状況を思えば、そう遠くないうちにまたメテオの一発が必要になるわ。多分……今の一撃でも逃げ出さなかった連中に大して、最後の一撃を放つ感じになるんじゃないかしら」

 ミニメテオの連発と通常のメテオの一発。
 それを行った上でも、まだ逃げずに生き残っている者たちがいるということを、それは意味していた。
 そんな相手がいるのか?
 流星魔法を使ったイオだけに、そんな風に疑問を抱く。
 今のこの状況において、まだ逃げずにすむのか。
 そんな疑問を抱くのは当然だろう。
 イオにしてみれば、もし自分が今のように流星魔法を何度も使われれば、とてもではないが勝ち目がないと判断する。
 それこそ降伏するか逃げ出すだろう。
 だというのに、何故かまだ残って攻撃をしているというのだ。
 何故そのような真似が出来るのかと、疑問を抱くなという方が無理だろう。

「ソフィア様、周辺の偵察に出ていた者が戻ってきました。まだ確認したのはこの近辺だけですが、それでも近くにいた勢力は逃げている者が大半です」

 その報告に、ソフィアの周囲にいた者達の多くは喜びの声を上げる。
 そんな中で何人かは少し不満そうな様子を見せてもいた。
 その中の一人、ギュンターが口を開く。

「大半がって話だったな? それはつまり、撤退しないでまだ残っている奴もいるということだな?」
「ああ、そうなる。そして……ギュンターが心配しているようなことにもなりそうなのは事実だよ」

 そう告げる言葉の中身は、恐らく……いや、間違いなくまだ残っている者たちは黎明の覇者に対する攻撃を諦めていないということを意味していた。
 もちろん、ここまで人数が減ってしまった以上、正面から黎明の覇者に攻撃するといった真似は難しいだろう。
 やれるとすれば、それこそどうにかして黎明の覇者の陣地内に侵入し、そこでイオを連れ去る……もしくはどうしようもない場合は、イオを殺すといったようなことだろう。
 もちろん連れ去るのが最善なのは間違いない。
 だが連れ去ることが出来ない場合、誰かに流星魔法を好きに使われるよりは誰にも使えなくした方がいいと、そう考えるのは普通だった。

「そうか。なら、そろそろこの戦いも終わりそうだな。……とはいえ、この戦いが終わったあとでどういうことになるのかが問題だが」

 ギュンターにしてみれば、この戦いがようやく終わりに向かっている。
 そうである以上、敵がどういう行動をするのかを楽しみに待っていた。

「降伏してきた者たちの陣地はどうなっているの? 私たちは攻撃をされても問題はないだろうけど、そっちの方から攻められると対処するのが難しくなるのは困るわよ」
「そちらの方は問題はありません。こちらからも何人か人を派遣していますし、何かあっても十分に対処出来るかと。そして対処が出来なければ、すぐに連絡してくると思います」

 ソフィアはその言葉に満足そうに頷く。
 仲間割れをしていたときに、イオがミニメテオを使ったのは十分に効果があったと思いながら。

「それでは、歓迎の準備をしましょうか。向こうはもうどうしようもなくなってやってくるはずだから、対処は難しくないはずよ。……ただ、何らかの奥の手があるかもしれないから、そちらは気を付けてね」

 そんなソフィアの言葉に、皆が頷くのだった。
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