大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第三十話 愛より怖い思いはない

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 蘭丸が幸助と合流する数分前。

「・・・はぐれちゃった」

 メアリーは蘭丸からの「離れるな」という注意勧告を受けた直後に彼を見失ってしまい、自警団の下に大人しく戻るか、蘭丸を探すかで迷っていた。路地裏で。

「・・・相手は人を殺そうとした事がある犯罪者だし、私が追いかけても足手まといになるだけだから帰るべきか」

 1分程悩んだ末、メアリーは自警団の下へ帰る事に決める。しかし、決断が遅かった。路地裏はいわば社会の裏側。どんな犯罪行為を行っても自警団からは中々見えないし、事後に発見されるのも遅い。

「それじゃあ、戻──────きゃあっ!!」

 きっと表に出て考えたら彼女は犯罪に巻き込まれる事はなかっただろう。

「だ、誰!?」

「・・・私だよ。知ってるでしょ?ドロボウ」

 愛ゆえの犯罪に。

「あ、貴女は確かギルドのコウスケさんのお友達でしたっけ?」

「ええ、そう。現コウスケの友達で、未来で恋人・・・いいや、伴侶になる女。アンリ・ラパンだよ」

 泥沼のように光ない淀んだ目が怯えるメアリーを睨みつける。この瞬間、彼女はアンリが関わらない方が良い人だと理解した。しかし、既に理解して脱出するには遅かった。遅すぎたのだ。

「わ、私に何の用でしょうか・・・?」

 何となく彼女の目的を理解したが、知らない振りをする。そうする事で解放される事を望んだからだ。しかし、すっとぼけを見抜けない程、アンリはバカではなかった。

 バキッ!!

「痛い!!」

 メアリーの右頬にアンリの強烈なパンチが炸裂する。合図なく放たれたその一撃はメアリーを絶望させるには十分な一撃だった。

「これは・・・とぼけた罰だよ。そして今から始まるのは」

 腰に帯びた剣が抜かれ、メアリーの色白の腕にあてがわれる。

「私の伴侶に手を出した罪だよ・・・この、非国民が!!」

「た、助け・・・!!」

 助けを呼ぶ為に叫ぼうとした瞬間に口が手で塞がれてしまう。どんなに叫んでも手が声を遮ってしまう。

「小賢しい真似してんじゃないわよ!!」


「メアリー?あのちっさい魔術師の女か?」

「ああ、その様子だと帰ってきてなさそうだな」

「そんな所だ。でも、大丈夫。きっと戻ってくるさ」

 蘭丸は双子を自警団まで持っていってメアリーを探すのに協力してもらおうとしたが、皆あまり乗り気ではないようだ。・・・1人を除いて。

「なあ、異国の旦那。そのメアリーってゲンコツ魔術師のメアリーか?」

「何だその二つ名は?確かに彼女は拳を使って戦う珍しい妖術使いだが・・・」

「ううむ・・・だとしたらちとマズイかもしれんな」

 自警団の中の1人の男の表情が急に曇る。何か引っかかる事があるようだ。

「最近な、路地裏で身分性別関係なしの無差別傷害事件が起きているんだよ」

「何・・・?何でそれを早く言わなかった」

「悪い。その話を聞いたらアンタら依頼を引き受けてくれないと思ってさ・・・報酬は弾むからさ、許しておくれよ」

「ちっ・・・まあ良い。もっとその情報を寄越せ。良ければ場所も詳しく」

「大体被害者はいつも商売エリアの路地裏で発見されるんだ。全員死んでなくて、意識も戻ってるんだが、全員顔も性別もわかんないんだそうだぜ」

「そうか。では、向かうとするk──────」

「まてまて!まだ情報がある!」

「なんだ、早く言ってくれ。急いでいるんだ」

「実はな、被害者にはある共通点があるんだ。その共通点とはずばり・・・アモーラ信者ではない事なんです」

「この国では宗教が多く在していると聞いている。たまたまではないのか?」

「そうだと良いんですが・・・彼女、大丈夫ですかね・・・アモーラ教どころかどの神も崇めていないのに・・・」

 男は心配そうに呟いたが、すでに走っていた蘭丸の耳には届いていなかった。

「我々も行くぞ!」

「「「はい!!」」」

 自警団の数人も蘭丸の後をついていった。


「よぉぉぉし、次はぁ・・・右手のぉ、薬指!!」

 ボキッ!・・・と、細長い骨が折れる音が路地裏に小さく響く。折られた薬指はアンリの手によって手の甲につく程にまでゆっくりと曲げられていく。なるべく痛みをメアリーに感じてもらえるようにじわじわと。 まるで無邪気な子供が玩具で遊ぶが如くアンリはメアリーの身体を壊していく。

「んんーーーーーーー!!!んんんんんんんn!?!?」

 真っ当な痛覚を持っているメアリーは勿論泣き叫んだ。美しい銀の目からボロボロと塩辛い水を流しながら大声で。しかし、手で口が塞がれている為、叫びは表で買い物している住民と商売を営んでいる商人には聞こえる事は無かった。

 唯一の反撃手段であるエンチャントによる殴打攻撃は、既に指が左手の小指以外使用不可能となってしまった為、使う事はできない。足はアキレス腱を切られてしまっていて、走る事も蹴る事もできない。それ以前に魔術を練り上げる想像力も失われてしまっている。

「今まで私はアモーラ様を信じていない愚か者達を及び腰で中々動かない教皇に代わって裁いてきた。でも、安心して、殺してないから!だって殺したらコウスケは人殺しの夫になっちゃうから♪だからね、私は貴女を殺さない。1万回殺したいくらい憎んでいるけど、殺さない。感謝してね?だけどね、女としては殺させてもらうから♪まずは、その無駄に綺麗な顔からぐちゃぐちゃにしてあげる!」

 それでもコウスケさんは犯罪者の夫になるぞ!そう言ってやりたかったが、もうそんな気力も無ければ、理性も残っていない。今にもこの死ぬよりも辛いこの状況に発狂しないように理性で抑えるのがやっとのくらい。今すぐ発狂したい気分だが、したらしたでまた何処かを痛みつけられる事は分かり切っているのでぐっと堪える。

「それじゃあ、そのお顔にばいばいしようね♪」

 イカれた女の指の爪が顔面の皮膚に食い込む。嗚呼、止めてそれだけは・・・!手も足も失ってもいい!だから顔だけはやめてくれ!顔を失ったら私は・・・私は・・・。

「それじゃ、ばいばー・・・ぐぼぉ!?」

 変な声と共に女が視界から消え、同時に顔を皮膚を抉ろうとしていた手は顔から取り払われる。支えるものがない私の身体は重力に従って、地面へと落ちていく・・・はずだった。だが、落下は誰かが支えてくれた事で防げたようだ。その誰かの顔は私の目にしっかりと映った。

「コウスケ・・・さん・・・」

 呼びかけに反応したコウスケさんは私の目を見ると、柔らかな笑みを浮かべてこう言った。

「ごめんね、メアリー。すぐに片づけるから・・・」

 その言葉に安心したのか、私の意識は眠る時のように遠退いていった。
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