大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第三十一話 怒り狂う狂信者

 メアリーさんはゆっくりと眠りに落ちた。死んではいない、しっかりと寝息を立てて眠っている。

 胴体には問題ないようだが、顔面は痣だらけになっており、手の指はほとんど全滅、足はアキレス腱が切られてしまっており、人間としては再起不能だと一目で分かる。

 だが、ここは魔法が存在する世界だ。立ち上がる事が不可能になった身体でもきっと治せるはず。

「行けるか?ボニーさん?」

「は、はい!ワタシの全魔力を使って治して見せます!!」

「OK。それじゃあ、ここから離れて。俺はコイツと話したいから」

 ボニーさんを連れてきておいて本当に良かったと心の底から安心する。同時に、目の前にいる友達だった敵に今まで抱いた事もないようなどす黒い殺意を覚えた。

 一方、アンリは頬を赤らめ火照った顔でこちらを見つめている。その顔はまさに発情するメスの顔。普段の明るい彼女からは考えられない顔だ。

「コウスケ♡私の大事な人・・・♡どうしてここが分かったの?」

「路地裏をくまなく探してたら見つけた。ただそれだけの事さ」

 場所を絞って探したのは正解だった。お陰で早期に発見する事ができた。

「何故、こんな事をした。確かに前からアモーラ教にお熱なのは分かっていたが、ここまでする必要は無かったんじゃないか?」

 幸助は怒っている。静かに心の奥底で怒りを燃やしている。

「あの時、俺が話した事覚えてる。メアリーを仲間に引き入れたあの日の話」

「あの、妄言?勿論覚えてるよ!確か・・・『他の神は存在していると証明もできないし、存在していないとも証明できない』だっけ?」

「一言で纏められるくらいには覚えていてくれたみたいだな。だけども、意味は無かったみたいだな」

「当たり前じゃん!頭のおかしい人に頭をおかしくさせられちゃった愛する人の言葉なんて納得するわけがないじゃん!もし、あの妄言を言ったのがコウスケじゃなくて他の誰かだったら私、殺してたかも?」

「・・・まさかとは思うが、メアリー以外の人にも既に手を加えたのか?」

「うん♪勿論!!契約の神とか、医療の神とか、闘神とか!!そんな存在しない神を信じてるヤツなんてここで、というかこの世界で生きてる価値無いでしょ!」

 もしかしたら、説得で考えを改めてくれると思っていた俺がバカだったようだ。コイツは既に手遅れだ。考え方も犯した罪の数も。既に後戻りできない領域まで達してしまっている。

 諦めた幸助はゆっくりと剣を抜き、構えた。

「・・・やるの?勝てると思ってるの?私はあれからすっごい強くなったんだよ?コウスケのパーティに入る為にね、いっぱいいっぱい頭のおかしい人を斬って来たんだよ?ほら、みてよこのステータスカード!レベルが11まで上がった!!」

 レベルだけじゃない。筋力等のステータスも大幅に向上している。俺よりも遥かに強い。彼女のいう通り、数字だけみたら勝ち目はないだろう。だが、数字が全てではない。

 幸助は構えを解く事な無かった。

「あ、そう。やるんだ。なら、良いや。ちょっと早くなっちゃったけど、結婚のプラン始めちゃおっか♡」

「・・・そのプランって?」

「ちょっと長い計画だから、最初の方だけ簡潔的に話すね♪まずは~~・・・」

 アンリは抜剣するや、否や幸助を斬りにかかった。幸助は既に戦闘体勢に入っているという事もあり、難なく盾で防いでみせる。

「コウスケの手足を斬って、ワタシの助けなしじゃ生きられない身体にしてあげる♡」

「介護だけはあと、数十年待ってほしい・・・なッッ!!」

 はじき返してがら空きになったアンリの胴体を幸助のブロードソードが襲う。だが、彼女は意図も簡単に避けてしまった。

「へぇ~~腕を上げたねコウスケ♪魔物に襲われてた時とは別人みたい♪」

「なあ、一体いつ俺に惚れたんだ?俺は君に惚れられるような事はした覚えはないが」

「したじゃん!私のハート!私の庇護欲を湧き上がらせるような事を!目の前で!!」

「・・・もしかして初めて会った時?俺が魔物に襲われて、アンリに助けられたあの日?」

「そう、正解。あの時に血まみれになりながらびくびくしてる姿を見てたらさぁ、その・・・うずいちゃってさ。気持ち悪いよね・・・でも、そんな私もしっかりと愛してくれると嬉しいなって・・・」

「ああ、相当気持ち悪い。それにオマエ到底愛する事ができなさそうだ。何故なら今のオマエに抱いてる感情は憎しみだからな!!」

 幸助の怒りの混じったラッシュが始まる。力強くて、それでも剣筋はしっかりとした斬撃の連続。しかし、そんな攻撃もかけ離れたレベル差の前では無意味。レベルの上昇と共に上がった身体能力で避けられ、カウンターを受けてしまう。

 カウンターもとても強力で足で踏ん張っていなければ吹き飛ばされてもおかしくない威力だ。

「フフフ、カワイイ♡勝てない事は分かってるのに一生懸命頑張っちゃってさ♪」

 愉快そうな口調と共に鋭いアンリの剣の一撃が防具も何も装備していない幸助の腹部に刺さる。

「イテェ!?」

 深く刺さる前に後ろに下がって、致命傷になるのは防げたが、幸助は今の一撃でアンリに勝てない事を確信してしまったようだ。

 だが、ここでアンリを倒さなくてはまた俺とメアリーを痛めつけに戻ってくるのは目に見えている。だが、攻撃が俺のよりも遥かに鋭くて、強くて勝てる気がしない。攻撃さえなければ倒せるのだが──────

「・・・!!そうか、その手があったか!!」

 何かを閃いた幸助は、剣を下ろすと、木の盾を前に構え始めた。

「本当にカワイイね!コウスケはさぁ!!そんな安物の盾で私の攻撃が防ぎきれるわけないじゃんっ!!」

 アンリの容赦ない連続攻撃が幸助の盾を壊していく。縁取っていた鉄の輪は外れ、盾を構成する木は外側からじわじわと破壊されていく。

「アハハ!もろーーい!!まるでコウスケみたい!!それじゃあ、仲良く一緒に貫いてあげる!!」

 アンリの鋭い突きの一撃が襲い掛かってくる。幸助は避けることなく、盾を構え続ける。

 ザクッ!・・・肉が裂かれる音が路地裏に響く。裂かれたのは幸助の右腕、盾を握っている腕だ。腕の肉を斬られた痛みで幸助の顔が苦痛で歪むが、すぐに幸助の顔は笑みを浮かべた。

「かかったな、バカアマ!!」

 アンリに向かって暴言を吐き捨てると、現在進行形で右腕の肉に食い込んでいるアンリの剣の刃を素手で掴み、攻撃を封じた。

「死ねぇぇぇぇ!!」

 怒りがこもった一撃がアンリの首筋を襲う。幸助は素早く剣を引き、首の動脈を斬ってみせた。

「ぐ・・・あああ・・・!!」

「へへへ・・・ざまぁみろ・・・」

 剣を掴み、攻撃手段を失わせる作戦大成功である。レベル差による身体能力の差があるので、肉を斬らせて骨を断つ状態になってしまったが、まあ、良いだろう。

「この勝負・・・俺の勝ちだぜ・・・」

 そう言い残すと幸助は仰向けになって倒れた。
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