モラハラ王子の真実を知った時

こことっと

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 ノーラ・レンギン
 バルテン公爵家所属
 レーネ様専属侍女

 彼女は、マルクルとアリアーヌを見ていた。

 レーネ様はなぜ、あの馬鹿……いえ、あの方を好きなのだろう……。

 ノーラは溜息をついた。

 レーネ様は趣味が悪い……。
 まぁ、顔は悪くありませんけど。
 傲慢で、周囲を見下し態度が悪い。
 温和な口調で誤魔化すから、昔からよくフェルザー様が悪者にされていた。



「マルクル様のご両親に対して申し訳ないのですが、その……」

 口元を中心にハンカチで顔を抑えながら眉間を寄せ、不快感を表すマルクルの正室として迎えられたアリアーヌ。
 
 たった1度のその行動。 それだけでノーラはアリアーヌが嫌いになった。 ほんの数秒前までは、レーネ様を解放してくれる救世主だとか思っていたにも拘らずだ。

「そうですね……私も思うところがありますが、遠慮なくおっしゃってください。 私は貴方のその素直なところに何時だって救われているのですから」

「私だって同じです。 あの国から救い出していただいたのですから」

「アリアーヌ姫」
「マルクル様」

 見つめあい、口づけを交わす。

 背後では気分が悪いと言う顔を露わにしているノーラがいる事に二人は気づいていない。

「両親が、あのように失礼な態度を取り申し訳ありませんでした」

「気にしておりませんと、言いたいところですが……王族として他国からの客人である私を無視して離籍すると言うのは礼儀に反しますわ」

 ノーラは思う。

 レーネの体調が回復と悪化を繰り返す中、既に正室としての手続きもお披露目も終わっているのだ。 未だに客人だと言うのは如何なものだろうか? と。

「母は……昔から、あのような下品なところがある人でしたから、あれでも昔よりは良くなったのですよ。 昔は、王妃の立場にありながら、何時だって私と共にあり……良く暴力をふるう方でしたから……」

 それはアンタが!! 周囲に暴言や暴力をまき散らしていたからでしょう!! ノーラは地団駄を我慢していた。

「まぁ、お可哀そうに……それに、王族のソレも王妃となれば世間の手本になるべき存在ですのに。 バタバタと落ち着きが無く王族としての思慮と配慮にかけ、何よりあのような動きやすさに重視を置いた格好では影では笑いものにされ見下されているのではございませんか?」

 アリアーヌ姫の言葉にマルクルは悲しそうに笑って見せた。

 ノーラは、拳を握る。

 王妃様は、陛下を置き去りに戦場をかける武の方、シュッとした立ち姿は美しく男女問わず人気ですのよ!!

「えぇ、本当にお見苦しい所をお見せしてすみませんでした。 姫のようなファッションリーダーにとっては、私の両親のような者は見るだけでも気分を害されるでしょうに……」

「まさか、そのような事。 誰にでも得意不得意がございます。 私は、美しさが好きなだけ。 それに、この国の方々は皆さま野暮ったい恰好をなさっておいでですが、このお庭や、お部屋、素敵なところは大変多いですわ。 ですが……やはり、国王陛下と王妃様がアレでは周囲からの評判は悪く、何よりも国内景気の停滞に繋がり。 他国から侮られ、交流に影響が出ると言うもの。 全てにおいて、王族は国のリーダー、見本で無ければいけないと言いますのに……アレでは、国王夫婦に仕える方々が不憫ですわ。 早く、貴方がこの国の王位について正しい王として皆さんを導くべきですわ」

 アンタは!! 金遣いが荒いんですよ!! 食料支援を受けながら、よくうちの国庫から贅沢をするものね。 それも……レーネ様の正室としての今までの予算ストック分まで利用しているんですからね!!

 キー―と叫びたいのを我慢していた。

「私の母は、その……戦場で先代国王を助けると言う功績をあげ一代貴族となった父を持つ、庶民出身で……母自身も戦場に出向くような人ですから、威厳、権威、品性が欠如した野蛮で暴力的な方ですから」

 マルクルが深い溜息をついた。

「まぁ、なんて酷い……。 よく耐えてこられましたわね」

「姫に出会えた事で、私は救われました。 姫のお陰で私は母の呪縛から解放されそうです」

「マルクル様のお役に立てたなら、とても嬉しいですわ。 ところで……あの、挨拶もせず立ち去って行った小さな子は……その」

「はい、父母がその情のみで定めた私の最初の妻です。 母による私の……そう、呪いとも言うべき存在でしょうか? アレは恐ろしい子です。 馬鹿で愚かで幼稚で、何も持たず、今では役に立とうともせず……なのに周囲を魅了する悪魔のような存在。 貴方のような方を妻に迎える事となって、彼女はようやく己の分をわきまえ、側室として私に尽くすと健気な事を言ったかと思えば、矢先に病のふりをし周囲からの同情を得ようとしたのです。 私を愛しているゆえに何をしでかすか……でも……安心してください。 私が貴方を守りますから」

「ありがとうございます。 でも、とても……綺麗な子でしたわ」

「ですが、自身では何も選択できない意志を持たぬ人形のような子です」

「そうかしら? 人形は、走ったり、泣いたりしないわ」

「私を愛し、慕っている時は人形よりはマシでしょうか? ですが……そうですね。 お気に召したと言うのなら、姫も可愛がってやってください。 今は私を愛していたゆえに病気の不利をして構って欲しがっているだけでしょうから」

「そう、そうね。 ねぇ、今度、国に帰る時にはあの子を是非連れて帰りたいわ。 きっと美しく着飾れば皆があの子を気に入ると思うの」

「貴方と言う人は……、あのような者を気に掛けなくてもよろしいのですよ?」

「でも……あの子が妻だなんて妬けるわ……」

「そんな風に言わないで下さい。 姫ほど素敵な方は他にいるはずもないのですから」



 そして手を繋ぎ、イチャイチャと愛情を語りあい……口づけを交わす。



 ノーラは全く期待していた会話がなされなかった事にガックリとして、仕える方々を侮る発言に怒りを覚え……思わず小石を拾っていた。

 はぁ~あ、王位を得るための暗躍や、魔皇石、文官に押し付けている職務について語られる事を期待しておりましたのに。 あんな気分の悪くなる話ばかりを聞くのなら、残るんじゃなかったわ。 と、心の中で舌打ちを打った。
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