リライト・ザ・ブルー

潮海璃月

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06

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 夏休みの夕方、昴夜が家にいるのかは知らない。連絡をとれば待ち合わせて会うことはできたけれど、そこまでする勇気がなかった。正確には、会いたい気持ちの中に不安があって、“残念ながら会えなかった”という結末を期待していなくもなかった。

 ……いまは十四年後じゃない。それは分かってる。このときの私と昴夜はごく普通の友達で何の気まずさもなかったはずだから、どんな顔をするもなにもない。それでも、どんな顔をして会えばいいのか分からない。


〈北山駅、北山駅――〉
 

 電車を降りた途端、じりじりと西日が肌を焼く。北山駅のホームは吹き曝しで、せいぜい後方車両のあたりに屋根があるくらいだ。

 タクりたい……。迷わずそう考えてしまうくらいには暑かった。でも私のお財布に入っているのはせいぜい二千円、そうでなくとも高校生でタクシーなんて使っていたら破産する。ただ、こんな一本道を走るタクシーは見当たらないので、理性が働くまでもなかった。

 記憶を頼りに道を選び、周囲を見回しながら目的地へ向かう。昴夜の家は駅からほとんどまっすぐで、駅から出さえすれば迷う余地はない。

 数えるほどしか歩いたことないけど、この道も変わってないな。……違うか、十四年前だから記憶のとおりの道なのか。

 まだ惚けたことを考えながら歩いて二十分弱、たどりついた家の表札を見て、懐かしい名前を指先でなぞる。

 「桜井」という苗字は、昴夜とはまったく関係のない相手でさえ、それなりに私の心を揺らす破壊力を持っている。大学生のときなんて、好みでもなんでもない男のことが「桜井」という苗字であるだけで気になって仕方がなかった始末、それが昴夜本人の苗字となればなおさらだ。

 昴夜は一人暮らしだった。お母さんはイギリス人で、でも早くに亡くなってしまっていて、中学生まではお父さんとお祖父さんの三人暮らし。でもそのお祖父さんも中三の頃に亡くなって、お父さんも単身赴任でここを離れ、昴夜だけが残ることにしたそうだ。だから、昴夜の家は私のお祖母ちゃんの家と似たような日本家屋だった。

 昴夜は、家にいるだろうか。おそるおそる玄関の前に立って、引き戸の前で耳を澄ませる。少なくとも音はしない。お庭のほうに回り込んで中の様子をうかがいたいのを堪え、震える手でインターフォンを押す。
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