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初めての学園
⑥
しおりを挟む「ファレスさんってリトリスさんと付き合ってるんっすか?」
食器を綺麗に洗っていきながらもいきなり聞かれた疑問に苦笑いする。
私とクロスが付き合うわけないよ、釣り合わないしね。
「付き合ってないですよ。 友達です」
てか、最初にクロスとは友達だって言ったはずなんだけどな。
今は恋愛とかしてる暇ないし。
むしろ、彼氏出来たことないから恋愛ってよくわかんないんだよねー。
「でも、仲良いっすよね?」
「店の常連であり、私の弟の師匠でもありますから」
しょぼんとしたようなクロスが見えるけど変に期待を持たせるのは嫌だからね。
それに多分年齢が離れてるでしょ、クロスが何歳か知らないけど。
それにこの世界の人間じゃない私が誰かと付き合ったり、結婚したりするのは無理でしょ。
出身地不明の怪しい人物じゃん。
「へぇー」
「シルク、そんなに聞いたら失礼ですよ。 貴方は女性の気持ちがわからないんですから」
「ベルモントは女にモテるもんな」
「貴方も男性にモテるでしょう」
バチバチと火花が散ってるかのように睨み合う二人は仲が良いのか悪いのか。
そんな二人にオロオロしてるラインベルトさんが可愛い。
「シッ、シルクくんっ、ベルちゃんっ、喧嘩なんかしちゃ駄目だよっ! ……確かにシルクくんは男の人に襲われた事があったり告白されたりしたし、ベルちゃんも女の子達から王子様って言われてるけどっ」
ラインベルトさんの言葉にアイランくんもセオルさんも黙ってしまう。
嫌味とかじゃなくて本気で言ってるから何も言えないんだね。
本人は黙ってしまった二人にきょとんとしてるけど。
「ごちそうさま。 アヤミ、学園が終わればまたシフォンへ行く」
「もう行くの?」
「もう少しで授業が始まるからな」
クロスの言葉に三人は時計を見れば三人は慌てていた。
時間のこと気にしてなかったのかな。
「あーっ、私たちも早く行かなきゃ遅刻しちゃうよ!」
「次の授業何だっけっ?」
「次はレイジー先生の歴史の授業ですっ」
三人は『ごちそうさまです』と手を合わせれば食器を片付けようと立ち上がる。
「私が片付けておきますので授業へどうぞ」
「ありがとうございます! 行くぞ!」
私に頭を下げた三人はバタバタと走りながら食堂を出て行った。
勉強は嫌いだけど学校って感じで楽しそうだなー。
「クロスも早く行った方がいいんじゃない?」
みんなが食べていた食器を洗いながらもまだクロスが居るので告げる。
私は片付けが終われば帰るし、学生なんだから遅刻しないように早く行かないと。
と、思っていた。
「えっ……」
「アヤミ」
後ろからクロスに抱き締められているのは何故。
えっ、いやいや、何でクロスは私を抱き締めてるわけ?
いや、クロスが私に好意があるであろう事は知っていたけども。
今まで何も言われてないしされてないから私も何もしてないけどっ、……何これ。
体全体が熱い気がする。
だって、クロスが好きってわけじゃないけど私今まで彼氏居なかったし、正直慣れてないわけっ。
しかも、クロスってめっちゃイケメンだしっ。
男慣れしてない私がイケメンのクロスに抱き締められたらそりゃ照れますよっ!
私より身長は低いけど恥ずかしいよっ!
「……アヤミは俺の事嫌いか?」
クロスの真剣な男の声に心臓が壊れそうなくらい鳴ってるのがわかる。
いつもみたいに捨てられた子犬のような瞳で見られたら弟みたいだと思えるけどこれは違う。
細いけどしっかりと筋肉がついてる。
クロスは弟じゃなくて、はっきり男なんだって思ってしまった。
……ヤバい。
でも、クロスの為には振った方がいいのかもしれない。
気を持たせてるわけじゃないけどハッキリさせた方がクロスも新しい恋を見つけられるだろうし。
よし、ここはハッキリ……。
「誰か居るんですかぁ?」
……言おうとしていたのに。
食堂の方から可愛らしい声が聞こえれば流石にクロスも私から離れた。
調理場のドアが開けば可愛らしい声に負けないくらいふんわりとした可愛い女の子が現れる。
……何でこんな可愛い子が居るのに私になんて惚れるんだろう。
「貴女は誰ですかぁ?」
「私はアヤミ・ファレスと言います。 今日からこの食堂で働く事になりまして」
「そうですかぁ。 ファーはファーレス・リリールですぅ、ここの教師をやってまぁす!」
ああ、教師だったのか。
身長低くてお人形さんみたいにめっちゃ可愛い。
声もロリロリしててイメージ通り。
「それでぇ、リトリス君とどんな関係なわけ?」
にっこりと笑顔を浮かべれば私の耳元に顔を寄せる。
甘いような可愛らしい声がだんだんと底冷えしそうな低い声になった。
あれ……?
「あんたみたいなデブが私のクロスに近付いてるんじゃないわよ」
……女って怖いね。
こんなに可愛いのに男の為に変わるなんて、やっぱり私は恋人なんていらないかも。
友情より恋愛を優先する女にはなりたくないもん。
「リトリスくぅん、行きましょう?」
私に向ける低い声色とは全く違う甘ったるい声色でクロスの腕に抱きつくリリース先生。
別にぶりっ子でもいいとは思うけどね、天然作るとかは私は嫌いだけど。
「クロス、行ってらっしゃい」
クロスが何か言う前に私はクロスに言う。
正直クロスには申し訳ないけど私は恋愛に巻き込まれたくない、今更かもしれないし、私が最低な人間って事はわかってる。
「……わかった」
「あぁん、リトリスくぅん!」
クロスは捨てられた子犬のような瞳のままリリース先生の腕を離させて調理場から出て行った。
リリース先生は私を一度睨み付けてからクロスを追って行く。
一人になった調理場はシンっとしていて何の音もなかった。
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