11 / 422
第1章
僕はやばいらしい
しおりを挟む
兄は僕を離そうとせず、けして抱かれ心地は良くないものだったけど食後の僕はおねむの時間だ。
うつらうつらする僕を兄は相変わらず、キラキラした瞳で見てくる。
少し離れた所にいるばぁやも流石に僕をベビーベッドに寝かせようとするが、兄がぎゅっと僕を抱き寄せて阻止するので困り顔だ。
「う…うやーーー!!」
眠たいのに眠らせてもらえない状況に遂に涙が溢れ出した僕。
前世の記憶はあれど、体は生まれてまだ1ヶ月なのだ。
理性よりも本能が勝るのも仕方のないことだろう。
ガチャ
「アドルファス。ルナイスを寝させてやれ。」
僕が泣いても離そうとしない兄に遂に父が召喚されたようだ。
父の一声に兄は泣きそうに顔を顰めたが、そっと泣き続けてしゃくりあげている僕を父の腕に渡した。
「ひっ…ぅ~…あ~!!」
「今日はお前もルナイスと一緒に寝るといい。しかし明日からはきちんと稽古を受けろ。」
トントンと一定のリズムで背中を叩かれる心地良さに少しずつ眠れない辛さも和らぎ、瞼が落ちてくる。
暫くしてふわふわに体が包まれて、すぐ近くで兄の気配を感じた。
兄はぎゅっと僕の手を握ってきて少し意識が上がりかけたけど、頭を撫でる心地よい手に意識が途切れ眠りの世界へと落ちた。
ーーーーーー
「ルナイス坊っちゃま、アドルファス様。朝ですよー!起きてくださいましー!」
突如鼓膜を刺激した音に驚いてバチッと目を開ける。
とても気持ち良い朝とは言えない目覚めだ。
「アドルファス様は稽古がありますからねぇ。ルナイス様、これから頑張るアドルファス様を一緒にお見送りしましょうねぇ。」
いつもならこんな風に起こさないのに…と不思議に思っていると、どうやら兄の稽古の時間が迫っているらしい。
兄は寝ぼけながらも、どこからともなく現れたメイドさん達によって着替えさせられている。
「行ってくる。」
「あ~(行ってらっしゃい)」
暖かいタオルで顔を拭かれて、腰に剣らしき物を佩剣するとシャキッとした顔に変わった兄の言葉に返事をすると兄は一瞬ふわっと笑って部屋を出ていった。
兄を見送った後は、ばぁやとしばらく遊ぶ。
魔法のキラキラを出してもらったり、ばぁやがカラカラと振る訳の分からない玩具を眺めたり…。
そうやって遊んでいるとコンコンと扉がノックされた。
「旦那様がお越しになりました。」
「はい。」
ばぁやが返事をするとゆっくりと扉が開かれ、相変わらずお綺麗な顔をしたパパさんがやって来た。
父は何を言うでもなく手に持っていた宝石のようなものを僕の手に握らせた。
僕が握るとその宝石っぽい物はキラキラと輝き、父の目の前には前世のゲームでよく見ていたステータス表示のようなものが出ている。
「…やはり、な。」
父はそう呟くとじっと僕を凝視する。
一人で納得して何も説明をしてくれないから、僕とばぁやは首を傾げるしかない。
「だ…旦那様?坊ちゃまに何かございますでしょうか?」
何も言わない父にばぁやが耐え切れず尋ねた。
「保有魔力量が平均よりもかなり多い。このままでは魔力暴走を起こしかねない。」
「なんてこと!」
父の言葉にばぁやは口を覆って声を上げた。
口を覆う手が小刻みに震えていることから良くない状況なのだと分かる。
「ノヴァ・ウォードに来てもらおう。」
「すぐに!」
何だか分からないが僕がやばくて誰かを呼びに行ったらしいばぁや。
父は僕から宝石ぽい物を取ろうとしたが僕はそれを阻止した。
驚いた表情の父が再び僕から取ろうとしてまた僕は阻止。
「将来有望だな。」
ちょっとした悪戯心でしたいじわるに父は何故か満足気に頷くので、宝石っぽいものはそっとお返ししておいた。
うつらうつらする僕を兄は相変わらず、キラキラした瞳で見てくる。
少し離れた所にいるばぁやも流石に僕をベビーベッドに寝かせようとするが、兄がぎゅっと僕を抱き寄せて阻止するので困り顔だ。
「う…うやーーー!!」
眠たいのに眠らせてもらえない状況に遂に涙が溢れ出した僕。
前世の記憶はあれど、体は生まれてまだ1ヶ月なのだ。
理性よりも本能が勝るのも仕方のないことだろう。
ガチャ
「アドルファス。ルナイスを寝させてやれ。」
僕が泣いても離そうとしない兄に遂に父が召喚されたようだ。
父の一声に兄は泣きそうに顔を顰めたが、そっと泣き続けてしゃくりあげている僕を父の腕に渡した。
「ひっ…ぅ~…あ~!!」
「今日はお前もルナイスと一緒に寝るといい。しかし明日からはきちんと稽古を受けろ。」
トントンと一定のリズムで背中を叩かれる心地良さに少しずつ眠れない辛さも和らぎ、瞼が落ちてくる。
暫くしてふわふわに体が包まれて、すぐ近くで兄の気配を感じた。
兄はぎゅっと僕の手を握ってきて少し意識が上がりかけたけど、頭を撫でる心地よい手に意識が途切れ眠りの世界へと落ちた。
ーーーーーー
「ルナイス坊っちゃま、アドルファス様。朝ですよー!起きてくださいましー!」
突如鼓膜を刺激した音に驚いてバチッと目を開ける。
とても気持ち良い朝とは言えない目覚めだ。
「アドルファス様は稽古がありますからねぇ。ルナイス様、これから頑張るアドルファス様を一緒にお見送りしましょうねぇ。」
いつもならこんな風に起こさないのに…と不思議に思っていると、どうやら兄の稽古の時間が迫っているらしい。
兄は寝ぼけながらも、どこからともなく現れたメイドさん達によって着替えさせられている。
「行ってくる。」
「あ~(行ってらっしゃい)」
暖かいタオルで顔を拭かれて、腰に剣らしき物を佩剣するとシャキッとした顔に変わった兄の言葉に返事をすると兄は一瞬ふわっと笑って部屋を出ていった。
兄を見送った後は、ばぁやとしばらく遊ぶ。
魔法のキラキラを出してもらったり、ばぁやがカラカラと振る訳の分からない玩具を眺めたり…。
そうやって遊んでいるとコンコンと扉がノックされた。
「旦那様がお越しになりました。」
「はい。」
ばぁやが返事をするとゆっくりと扉が開かれ、相変わらずお綺麗な顔をしたパパさんがやって来た。
父は何を言うでもなく手に持っていた宝石のようなものを僕の手に握らせた。
僕が握るとその宝石っぽい物はキラキラと輝き、父の目の前には前世のゲームでよく見ていたステータス表示のようなものが出ている。
「…やはり、な。」
父はそう呟くとじっと僕を凝視する。
一人で納得して何も説明をしてくれないから、僕とばぁやは首を傾げるしかない。
「だ…旦那様?坊ちゃまに何かございますでしょうか?」
何も言わない父にばぁやが耐え切れず尋ねた。
「保有魔力量が平均よりもかなり多い。このままでは魔力暴走を起こしかねない。」
「なんてこと!」
父の言葉にばぁやは口を覆って声を上げた。
口を覆う手が小刻みに震えていることから良くない状況なのだと分かる。
「ノヴァ・ウォードに来てもらおう。」
「すぐに!」
何だか分からないが僕がやばくて誰かを呼びに行ったらしいばぁや。
父は僕から宝石ぽい物を取ろうとしたが僕はそれを阻止した。
驚いた表情の父が再び僕から取ろうとしてまた僕は阻止。
「将来有望だな。」
ちょっとした悪戯心でしたいじわるに父は何故か満足気に頷くので、宝石っぽいものはそっとお返ししておいた。
1,213
あなたにおすすめの小説
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜
なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。
藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!?
「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」
……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。
スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。
それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。
チート×獣耳×ほの甘BL。
転生先、意外と住み心地いいかもしれない。
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました
ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息
——これ、転生したやつだ。
5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。
姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。
そんなの、絶対に回避したい。
主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。
そう思っていたのに…
なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。
しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。
「お前を口説いている」
「俺が嫉妬しないとでも思った?」
なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?
断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。
※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる