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第1章
シェフの圧
しおりを挟む今日はとーさまもにぃ様もお休みの日。
今日まで二人ともとっても忙しそうにしていたから、本当は二人に会いに行きたいけど我慢してばぁやとヨハネスを連れて朝食を取りに食堂へ静かに向かう。
食堂について椅子に座るとすぐに料理が目の前に置かれた。
今日の朝食は芋スープと色んな野菜が挟まったサンドイッチ。
本当はお部屋で食べようかとも思ったんだけど、もしかしたらとーさまかにぃ様が食堂に来るかも…何て少しの期待をして食堂に来たけれど、やっぱり二人ともお疲れのようで食堂には来そうにない。
朝食を食べ終えて、少しお腹を落ち着かせてから立ち上がろうとしたところで突然スッと机の上に置かれたチィの実のタルト。
びっくりして固まっている僕の横でシェフが
「本日は食後のデザートがございます。」
と静かな声で言った。
いつも朝食にデザートはないし、おやつの時間がある僕には朝食のデザート何て必要はないのに…。
突然のシェフのデザートに首を傾げながらも、浮かしていたお尻をまた椅子にくっつける。
シェフのお顔を見てもシェフはニコっと微笑むだけで何も言わない。
無言の食べてくれって圧がすごい。
とりあえずフォークを握ってケーキに差し込む。
口に運ぶ前にもう一度シェフの方を見るけれど変わらない圧の笑顔。
シェフの圧に負けて一口食べればチィの実の瑞々しさとタルト生地の外はサクっと中はしっとりさが最高のタルトケーキだった。
でもよくシェフが作ってくれるいつもの最高のタルトケーキであって特に変化は感じられない。
何か新しく改良して味見して欲しかったとかでもなさそうである…。
眉間に皴を寄せてシェフを睨みつける。
何を企んでいる。
ガチャ
「ルナイスおはよう。」
「おはよう。ルナイス。」
睨む僕と微笑むシェフの無言の戦いの最中、食堂に訪れたのはカチッとしていないとーさまとにぃ様。
カチっとしてないと言っても、けしてだらしない恰好をしている訳ではない。
何時もよりラフな感じで服装もぎんぎらしていないんだ。
そんなことよりも、僕は会えないと思っていたとーさまとにぃ様の突然の登場に口を開けて間抜けな顔をしている。
「遅くなってしまってすまない。」
「食べ終わってしまったのか。」
デザートを刺したフォークを握っている僕を見て、とーさまもにぃ様も眉を下げている。
「お腹…すいて…すみません。」
フォークを一旦置いて、ご飯を食べて少し膨らんでいるお腹を隠して謝る。
待っていたらよかったんだと気が付いて顔がカーっと熱くなる。
「謝らなくていい。」
とーさまは慌てた様子で僕の元へ来て僕を抱き上げてくれた。
「僕と父上が起きるのが遅かったんだ。」
にぃ様がそう言って僕の頭を撫でてごめんと謝る。
このままだと皆でごめんね会が止まらないなってところでばぁやがとーさまとにぃ様に席に着くように促す。
僕は再び席に着いて、シェフにお礼を告げる。
あの圧の意図を理解したから。
そうしてとーさまとにぃ様と時折話しながら食べたケーキはいつもより美味しく感じた。
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