王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第2章

素敵な筋肉の彼のお名前とお話をきいてみよう

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長椅子に鬼さんを座らせて、その隣に僕も腰を落とす。


ノヴァはそんな僕に微妙な顔をしながらも黙っていてくれて、そっと僕の隣に小さな木でできた椅子を寄せて座った。

本当は鬼さんをそちらの椅子に座らせるべきだって分かっているけど、ちょっと今は許していただいて…。




「鬼さん、お名前は?僕はルナイス・アーバスノイヤーです。」


まずは自己紹介せねばっと挨拶をする。

ぺこっとお辞儀して再び鬼さんに目を向ければ、鬼さんはじっと僕を見ていてバッチリ視線がかち合いました。


鋭いお目目だけど怖くない。
だって彼は今にも泣いてしまいそうなんだもの。




「ガンナー。」

ぽつりと零された音はきっと彼の名前なんだろう。

魔物は個人名をもたないけれど、知性をもった魔人などは個人名を持っていたりする。
やっぱり彼には名前があったと、自分の予想が当たって満足した僕はうんうん頷く。


そんな僕をノヴァもガンナーさんも不思議そうに見ていることには気が付いているけど、大したことじゃないので気にしないでいただいて。








「ガンナーさん。どうしてになったのか覚えてますか?」

自己紹介も済んだところで、さっそく本題に入らしてもらおう。




「…曖昧な、ところが…ある。」

ガンナーさんは喋りずらそうに、眉間に深い皺を刻みながら答えてくれる。

まだ体が回復しきっていないのに加え、恐らく未だに支配の影響が残っているのだろう。


休ませてあげたい気持ちはあるけど、もしかしたら彼にお話が聞けない状態になる…ていうことも考えると早くお話しておきたいので無視しますね。




「分かる範囲でいいから教えて。」

そう言いながら僕はそっとガンナーさんの素晴らしい筋肉のついた腕に触れる。

かっちかちだ。



ガンナーさんの腕に触れた僕の手はノヴァによってすぐに話され、ガンナーさんは苦笑いして僕から少しだけ離れてしまった。




「まだ…完全、じゃ、ない…触れたり、しない、ほうが…いい。」


ガンナーさんの言葉に気持ち悪いと思われたわけじゃないんだとほっとする。

確かに、ガンナーさんの意思とは関係なく結界の外に出ている今、再び体が勝手に動き出す可能性もあるわけだ。
浅慮せんりょであった。反省。











「俺、は…10人、ほどの…仲間、と…旅を、しな、がら…生きて、きた。……休憩…して、たら……とつ、ぜん…頭…割れる、くらい…痛み……体、かってに…うご、きだす。…あと、は…あらが、っても…」


とぎれとぎれながらも教えてくれたガンナーはやはり体への負荷が大きいのか最後の方には息を切らしだしていた。




「ノヴァ。」


「うん。強制支配魔法を受けた。と考えて間違いなさそうだ。それも抗おうとすればするほど脳へのダメージが大きく、弱い個体であれば自我を取り戻すことができなず廃人とかす禁術である可能性が高いと思う。」




ガンナーのお話を聞いてどう思うかノヴァを呼べば、言葉にしなくても理解して教えてくれた。


そしてノヴァが教えてくれた可能性の禁術がなかなかえぐい。






「ガンナーの仲間は?」


「っ…3…名……はん、のう…しない!」


ガンナーの仲間はどうなのかと問えば、ガンナーは顔をぐしゃっと顰めて悔しそうに声を上げた。



「廃人になりつつある…何体かはそんな悪鬼が見受けられる。」


「じゃあ未だに唸って暴れだそうとしている悪鬼が魂を歪められて作られた悪鬼かもしれないね。」



結界の中に居る悪鬼達を見ながらそう言えばガンナーが驚いた顔をして僕を見た後、僕達と同じように結界の中に目を向けた。

作られた悪鬼がいることには気が付いていなかったのだろう。
ガンナーは数体の団体で移動して生活していたようだし、同種がどれくらい居るのかは把握していなかったんだろう。



そして捉えた悪鬼達の中に違和感を感じた人間はほとんどいなかった。

つまりそれだけ禁術でありながら完成度の高い術であるとうこと…。





ノヴァと同じくらい…もしくはノヴァ以上。









ノヴァ以上の魔法使いあるいは魔術師が存在していて、その者がその力を大勢の生き物にとって良いとは言えない使い方をしている…っとなるとなかなかに厄介なことだ。


これは国が荒れそうだなっと考えため息が零れだした。






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