王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第2章

馬鹿が組むとこうなるんだなぁ

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ただひたすら脱出方法を考え夢魔が仕掛けてくる攻撃をハリセンで交わして(おそらく)数時間。



夢の中だからお互い体力無限大。
でも何だか思考がぼんにゃりするようになってきたから…たぶんあんまし良くない状態。

現実の体に負荷がかかっているのかも…。




んー…いちかばちかやってみるか!



瞬間移動の扉〇〇ドア!」


襲ってきた夢魔をハリセンで一旦遠くへ飛ばし、すぐにあのピンクの扉を出現させる。


前世の記憶の青たぬきが出してくれる例のドアであるが、こちらの世界では普通に転移魔法なんだよね。




でも転移魔法が得意でないうえに上手くイメージができなかったので、前世の記憶のピンクの扉を頼ってみた。






お願い!夢世界からもういい加減でたい!っと強く願いながら扉を開き真っ白な空間に飛び込んだ。





飛び込んでパッと目を開くと真っ黒な空間が広がっていた。

縛られて動かない体と横たわる体に伝わる冷たい石の感触…現実の世界に…戻って来れた?



半信半疑でもぞもぞっと体を動かし、取り合えず僕の体を縛る縄を風魔法で切ろうとして魔法が使えない状態であることに気が付いた。

体になんのか、僕が居る空間になのか…どうやら妨害魔法が展開されているらしい。





とにかく足の拘束だけはどうしても取っておきたかったので、手探りで尖っている大き目の石がないか探り、見つけた石の場所に何度も足を擦りつける。

肉が抉られる痛みに思わず舌打ちが出るが、動きを止めるわけにはいかなかった。



徐々に近づいてくる気配と憤怒のオーラ。



夢魔も現実世界に戻ってきていて、夢世界から逃れた僕を殺しに来たに決まっている。






剣術を習っていてもこの場には剣がないし、魔法は使えない。

対して相手は言わば魔力の塊。
魔法のプロフェッショナルだ。



縛られた身一つでどうにか出来る相手じゃない。








ザク



「てぇめぇぇええええ!!!よくもよくもぉぉおおお!!!」


足の縄が切れたのと同時にすぐ傍で夢魔の大きな声と風を切る音が聞こえてきて、慌ててその場から飛び跳ねて声とは反対の方向へ体を打ち付けた。

ぐっと声が漏れて体中に酷い痛みが走るけれど、今はそれを気にしている暇はない。







「やめなさい!は大切な切り札なんだから殺しちゃったら使えないでしょ!!」


再び僕へ攻撃をしかけようとする夢魔の動きを感じ取ると同時に別の位置から甲高い女の人の声が聞こえてきてばっとその場が光で照らされた。

その光から感じるのは暖かな聖魔法の気。



夢魔はぐぅっと顔を手で覆い

「やめろぉぉぉおお!!!馬鹿かてめぇはぁぁああ!!!ぐっ…そ、それはぁ俺を焼くんだよおぉぉおおお!!!」


痛い痛い、消える消えるっと騒ぐ夢魔を嘲笑ってこっちに視線を向けた人物。




それはやはり予想通りの人物であった。





「初めまして。深窓のご令息、ルナイス・アーバスノイヤー。」


勝ち誇った高飛車な態度でそう言ったのはロロア・ジョーズ子爵令嬢。



言いたいことは山ほどあるのだけど…

僕も身の回りで色々されて大分ご立腹である。




「うるせー!このちんちくりん!!」


「んな!だ、誰がちんちくりんですってぇ!!!」



あ、ちんちくりんって今世でも通じるんだっと思いながら顔を真っ赤にして怒る令嬢を更に煽る。





「見た目もちんちくりんだし、やってることもちんちくりんじゃん!!もう魔獣ちんちくりん自己陶酔女じゃん!!」


「このっ!調子にのるなよこのクソガキ!!お前が今どういう立場にあるか思い知らせてやる!!」


そう言ってパッと視線を僕の横に向けた女は次の瞬間慌てて光を放っていた聖魔法を消した。




僕が煽ったことによって強まった聖魔法で夢魔は悶えていたからだ。

彼女は僕の大きな煽り言葉に気を取られていたようだけど、ずっと傍で夢魔は叫んでいました。


馬鹿同士が群れるとこうなるんだなぁっとのんびり眺めながら、実はこっそり壁に見つけた鋭めな石で腕を拘束している縄を切る。






これで体は自由になったけど…妨害魔法が解除された気配はない。


そして夢魔もロロア・ジョーズ子爵令嬢も魔法を使ったことからこの場に妨害魔法が展開されているのではなく、僕に直接魔法が掛けられているという結論が出る。




でも…



両手、両足が自由になった今




そんなことは僕には関係なくなる。








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