王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第3章

もうひとつの未来の選択

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ルナイス・アーバスノイヤー。

アーバスノイヤー家次男として生を受け13年が経った。



来年からは高学年になる。そんなお年頃である。

少しずつ将来について真剣味を増して考えていかねばならないなっと思っていた今日この頃。


僕は珍しくお家でお仕事していたとーさまから呼び出しを受けた。




「ルナイスはなりたい職業など決まっているか?」


「いえ…にぃ様の騎士団でサポートできるお仕事できないかなぁって思ってました。」




突然始まった進路相談に、漠然と思っていたことを正直にお話しする。

ここ数年で、思っていることはなるべく素直にお話した方がいいと学んだので。





「うん……実はだな…アドルファスの補佐としてアーバスノイヤーの家業を担って欲しいと考えている。家業と言うのは騎士団の方ではなくそれ以外のことなのだが…ルナイスはそちらの仕事の才がある。アドルファスが頼りないわけではなく、ルナイスが居てくれれば今より効率よく色々な問題に着手することができると考えている。もちろん強制ではないし直ぐに答えを出す必要もない。」


思わぬ提案に固まる僕を見て、とーさまがぎこちなく、遠慮がちに言葉を綴る。


僕はずっと学園を卒業し、成人の儀を終えたらお家を出なくちゃいけないと思っていた。

騎士に憧れた時もあったけれど、残念ながらにぃ様達のように体力がつかず、筋肉も発達しなかったので諦めるしかなかった。
その代わり、優秀な先生が幼い頃から傍にいてくれたおかげで魔法は結構扱えるから、そちらでにぃ様やノヴァのお役に立てるお仕事に就きたいなっと思っていたのだ。


そんな僕に振って来たもうひとつの未来への道。






アーバスノイヤー家の家業。

とーさま達は未だ濁しているが、家業というのが裏方の仕事であることは何となく理解している。


チラリと聞いたのだ。
国が表立って裁けない問題を裁くため暗躍する。

それが昔からアーバスノイヤー家が務めてきた裏のお仕事。




うむっと考え、確かに闇属性の僕には向いている仕事かもしれないと思う。

たぶん人が死ぬことにあんまり感情が動かないタイプだし、僕。






「んと…前向きに検討します。」


「あぁ。相談したい時は私でも、アドルファスでも、ノヴァにしてもいい。あまり思いつめないように。」


「はい。」



とーさまが挙げる名前にノヴァの名前が入っているのが面白い。


ノヴァが小さい頃から気にかけていたというし、とーさまの中では家族枠なんだなって感じる。


もちろん僕もノヴァのことを他人だなんて思っていない。



僕の命を助けてくれる救世主だし、魔法を教えてくれる師で、最近はっきりと自覚したのだけれど…僕はノヴァを恋愛的な感情の好意を抱いている。



一緒に居ると落ち着くけど、ふとした言動に脈が速くなる。

ノヴァが害されることが許せないし、何かあった時には必ず守りたいって思う。






まだ…ノヴァにこの思いを伝えてはいないけれど、学園を卒業する頃に玉砕覚悟で伝えようと思っている。

たぶん、ノヴァが僕に向ける感情はにぃ様のようなものだろうし…。


伝えずにいる選択も考えたけれど、伝えてしまって振られて、すぐには無理だろうけど吹っ切って、今までのように家族のような関係でいれたらいいと思ったんだ。



恐らくお互いにぎこちなくなる期間ができてしまうだろうけど…


それも時間が解決してくれるものと考えている。









「あぁ…明後日の競技会は見に行けそうだ。楽しみにしている。」


「え…あ…見に…くる、のですか?」



お話終わりかなっと、とーさまの執務室から去ろうと思ったところでかけられた声に驚き、あからさまな反応をしてしまった。




「…何かあるのか。」


そんな僕の様子をとーさまが見逃してくれるわけもなく…



「あー…えっと…んー…あんまりおすすめしないです。」



どう伝えようか考えに考えたが、良い言い回しが思い浮かばず、ますますとーさまの眉間の溝を深くしてしまう結果となった。







「分かった。アドルファスとノヴァも連れて行こう。」



「!!」




分かったと言うから来ない方向になったと思って油断したら、まさかの増員しての参加を宣言されて、唇がぎゅっとなる。


そんな僕の顔を見てとーさまはふっと笑うが、先ほどの発言を冗談だとは言ってくれない。






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