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第3章
その選出に不満あり
しおりを挟むこれでやっとしばらくは観客でいられる。
ここからしばらくの間は上学年の種目になる。
上学年の競技はやはり小・中学年とは違い魔法の威力も剣の技も段違いであった。
戦闘の技術もそうだけれど、知識を駆使していたり、魅せ方も上手かった。
にぃ様達もじっと見ていて、偶に皆でぼそぼそっと話しているから期待できる人材に卒業後声をかけるつもりであるのだろう。
なるほど…将来この国の頂点に立ち、この国を支えていく立場にある人物からすればこの競技会は良き人材を見出すまたとない機会ということか。
僕に会うというのはカモフラージュで、本来の目的はそこにあるのだろう。
なるほど、なるほどっと思いながら僕も上学年達を見る…というより観察する。
見ていると参考にできそうなことを発見できて、競技会が終わったらこれをしてみよう、あれをしてみようって沢山やってみたいことが頭に浮かぶ。
そうやって夢中で見ていると、あっという間に上学年の競技が終わり、最後に各学年2名が代表となり模擬戦闘が行われる。
リズメモワール学園競技会の名物競技だ。
代表者2名は当日、司会者に呼ばれる。
周りも本人も名前を呼ばれるまで誰が選ばれるのか知らないのだ。
「次に中学年からテトラ・ハデス!ルナイス・アーバスノイヤー!」
下学年の子2人の名前が呼ばれ、恐る恐る競技場へ出てくるのを温かい気持ちで見守っていたら、突然良く知っている名前が呼ばれ、その後に自分の名前が呼ばれ体が固まる。
隣に居たテトラ君は何故かやる気満々で肩をゴキゴキ鳴らしている。
「い、いやだ…」
「呼ばれたら強制参加だ。」
小さく呟いた僕の言葉をテトラ君は容赦なくぶっ潰して、固まって動かない僕の背に手を回し強制的に競技場へ引きずり出す。
僕だって魔法何でも使っていいなら喜んで参加するよ?
でも制限が割と沢山ある僕は倍考えて戦わないといけないので、それはもうすっっっっごく疲れる。
いやだいやだと言う僕を無視して上学年からも2名呼ばれ、司会者がいよいよ開始の声を上げた。
開始の声と共に飛んできた火の玉をさっと避ける。
テトラ君は僕と逆方向に避けたので相手の思惑通りに僕達は分散されたことを直ぐに理解した。
ガキン!
そしてそうなった時、すぐに次の手が飛んでくる。
競技が始まる前にテトラ君によって手に持たされていた剣で振り下ろされた剣を横へいなし、真っ直ぐ前に剣を突き出したが、後ろへ飛びと避けられた。
僕達に攻撃をしかけてきたのはやはり上学年の生徒で、テトラ君と剣を交えているのは優秀だと噂の先輩。
そして僕の目の前でニヤニヤと笑っているのは力は凄いが、性格に難ありと噂の先輩だ。
先輩はその後も剣をどんどん振り上げてくるが、一向に息を切らす様子はなく楽しそうに笑って、偶に炎魔法を飛ばしてくる。
僕の背後にいる下学年何てどうでもいい。
そんな攻撃ばかりで正直背後の彼等を庇いながらはしんどい。
下学年の男女生徒は、始まりの合図と共に始まった先輩達の戦闘に震え、男の子の方がどうにか自分たちの周りに結界を張っている状況。
彼等の薄い結界では目の前の先輩の攻撃は防げそうにない。
僕が結界の得意人間なら彼等に結界を張って、気にせず戦うのだけど…結界を張ってさらに戦闘ってなると僕には難しい。
結界は得意じゃないから意識しないとよわよわ結界になってしまうんだ。
テトラ君もそういった魔法はあまり得意じゃないし…
あ、そうだ
「ぐっ!」
「ねぇ君達、結界張りながら司会者の近くまで行ける?」
暗視魔法で先輩の視界を奪ってから一気に後ろへ飛躍し、下学年2人に声をかけると2人はビクゥっと肩を跳ね上げさせた。
すごくびっくりさせてしまって申し訳ないのだけど、視界は奪っていても、性格に難はあっても、実力はある先輩はあまり時間をくれそうにないので理解してもらいたい。
僕の質問に男の子が頷いたのを見て、「じゃあ…行って。」ぽんっと2人の背を押し走らせる。
走っていく2人は僕が付与した気配遮断魔法で僕以外の人間には認識しずらいようにしてたので、僕とテトラ君が負けても先輩達は下学年の子を見つけられないだろう。
テトラ君を相手にしている先輩がどんな人物かは分からないけれど、僕と対等している先輩は容赦なく下学年の子に剣を振るうだろう。
下学年の子が可哀想って気持ちもあるけれど、それ以上に僕達を倒した後楽に倒せると思っていた下学年の子の姿が見当たらないでイライラして時間制限で優勝できなくしてやろうって魂胆がある。
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