王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

文字の大きさ
265 / 422
第4章

色んな爆弾を落として寝ようとする猪

しおりを挟む

え?まだ用事あるの?しんどいんですけど?


という顔で僕を見てきた神獣改め死霊獣に「当たり前だろ!」と心の中で突っ込みながら眠らないように声を張り上げる。



「まず、何勝手にノヴァに記憶渡してるの!ほいほい事を進めて自己完結しないで!」


『有力な情報だぞ?いらなかったのか?』


「要ります!要りますけど!記憶の譲渡何てそんな負荷が大きいことを本人の許可なくやるなって言ってるの!」


『要るのなら問題ないではないか。それに吾輩はきちんと人と魔族の子なら大丈夫であると判断した上で記憶を渡したのだ。』




怒る僕に冷静に返す死霊獣の目は可哀想なやつを見る目なのが解せん。


どうして僕が駄々をこねている子供のような扱いなのだ!






「ルナイス、大丈夫だ。彼のおかげでまったく掴めなかった犯人像を掴むことができた。」


「んぐ…でもぉ…」


『はぁー…まぁ番が害されたとなれば怒るのも無理ないか。吾輩が悪かった。』



「っ…声を荒げてすみませんでした。」




どーどーっとノヴァにあやされたうえ、死霊獣に謝罪され、声を荒げていた自分が何だか恥ずかしくなって僕も謝る。

他にも僕が無意識に彼に行使した魔法が死者蘇生なことも、その魔法を知っていることも聞きたいことは沢山あるけれど…今は聞ける空気じゃない。






『あぁ、そうだ。龍神の子よ。死者蘇生の術は術者にも大きな負担がかかるうえ、世の理に反する。極力使わぬほうがいいだろう。』


「待て。寝るな。」



思い出したようにポツリと僕に注意を促し再び眠ろうとする死霊獣を呼び起こしたのは、ノヴァ。




「術者の負担とはなんだ。見たところ身体に異常はないようだが…ルナイス無理をしているのか。」



『死者蘇生っていうのは大量の力を失い、理に反した罰が下る。なんの罰が下されるかは知らん。神の機嫌を損ねれば命を失う罰が与えられることも過去あったのでな、気をつけよ。』




僕の全身をパンパン叩いて確認するノヴァに何ともないと告げ落ち着かせていたら、何か物騒なこと言われた。

世話しなく動いていたノヴァも動きを止めて固まっている。






「命を失う罰?」


『今回は神獣の吾輩を救ったのだ。そのような罰が下ることはないだろう。安心せい。』



のほほーんとしている死霊獣に安心できるわけないだろっと口には出さず突っ込む。





「あの時君はまだ死んではなかったのに死者蘇生の魔法が成立したのはなぜですか?」



『其方が魔法を行使している間に死にそして生き返った。死者蘇生は死んで時間の経ったものまでは蘇生できぬ。それは神ですら許されておらん行為でいくら加護持ちの子であろうとただの人の子にそんな術は使えん。蘇生できるのは死んで数秒のものだけだ。』




「なるほど。」




『もう良いか?吾輩は寝るぞ?』




自分が行使した術について何となく理解したところで、もう耐えられないという様子で死霊獣が寝る体制を取る。





「ねぇ、行く宛がないのなら僕達と来てみませんか?」


そんな寝る体制を取った死霊獣に提案するとチラッと片目だけ瞼が持ち上げられた。



「今僕達は貴方を傷つけた輩共を追っています。自らの力で痛い目に合わせてやりたいと思いませんか。」



僕の呼びかけに死霊獣の瞼がぴくぴくっと動く。

どうやら僕の思惑通り、この話に興味を持ってくれているらしい。




「輩共の狙いは東の地にあると予測しているのです。人の手だけでは」


『何?東の地だと?』




僕の言葉を遮った死霊獣はカッカッカという音を鳴らしてその巨体を起こした。

纏う雰囲気が一気に変わり、彼が怒っていることをひしひしと感じる。





『なるほど…だから龍神の子が動いているのか。東の地は決して穢されてはならん!』


ブフーと吐き出された鼻息で髪や服がひっくり返る。


そして彼は大きな勘違いをしている。
僕は龍神様に頼まれて此処にいるのではない。

神殿には来なさいよっとは言われているが…





「…力を貸してくれますね?」


『無論!』




よく分からないが、のんびり屋そうな彼が怒りを露わにしやる気をだしたところで確認をすれば先ほどまでとは打って変わってハキハキとした力ある返事が貰えたので良しとしよう。



戦力ゲット。







しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。 途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。

【完結】悪役令息⁈異世界転生?したらいきなり婚約破棄されました。あれこれあったけど、こんな俺が元騎士団団長に執着&溺愛されるお話

さつき
BL
気づいたら誰かが俺に?怒っていた。 よくわからないからボーっとしていたら、何だかさらに怒鳴っていた。 「……。」 わけわからないので、とりあえず頭を下げその場を立ち去ったんだけど……。 前世、うっすら覚えてるけど名前もうろ覚え。 性別は、たぶん男で30代の看護師?だったはず。 こんな自分が、元第三騎士団団長に愛されるお話。 身長差、年齢差CP。 *ネーミングセンスはありません。 ネーミングセンスがないなりに、友人から名前の使用許可を頂いたり、某キングスゴニョゴニョのチャット友達が考案して頂いたかっこいい名前や、作者がお腹空いた時に飲んだり食べた物したものからキャラ名にしてます。 異世界に行ったら何がしたい?との作者の質問に答えて頂いた皆様のアイデアを元に、深夜テンションでかき上げた物語です。 ゆるゆる設定です。生温かい目か、甘々の目?で見ていただけるとうれしいです。 色々見逃して下さいm(_ _)m (2025/04/18) 短編から長期に切り替えました。 皆様 本当にありがとうございます❤️深謝❤️ 2025/5/10 第一弾完結 不定期更新

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息  ——これ、転生したやつだ。 5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。 姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。 そんなの、絶対に回避したい。 主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。 そう思っていたのに… なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。 しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。 「お前を口説いている」 「俺が嫉妬しないとでも思った?」 なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?  断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。 ※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです

処理中です...