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第4章
とーさま達の影に怯える料理人
しおりを挟む「「「お帰りなさいませ」」」
家に帰ると留守番組の従者達が門前で出迎えてくれた。
僕達はただいまっと言うのだけれど、此処でもタシターニさんは緊張気味。
「後で料理人の講師を紹介したいから立食の用意を。君達の分もね」
「かしこまりました。ルナイス様、アーバスノイヤー家より公爵様方が来訪されるとのことですが、いかがなさいますか?」
「あー…やっぱり来てくれるよねぇ。とーさま達の用意も一緒に。どうせ紹介する予定だったし」
使用人の一人からとーさま達が来ることを聞いて、やっぱりねっと苦笑い。
にぃ様とは何度か手紙のやり取りはあったけれど、直接顔を合わせてはいない。
新婚旅行中は色々あって心配をかけた自覚があるし…特ににぃ様は必ず帰還日に会いに来てくれると思っていたので事前に使用人達には食料を多めに用意しておくよう伝えていたので問題はない。
ただ一つ問題があるとすれば…
タシターニさんである。
彼の貴族としては無礼と取れる行動等を心配はしていない。
そんなものを気にする家ではないから。
問題はそこではなく…
とーさま達に会ったタシターニさんが緊張でぶっ倒れないかが心配なのだ。
事前に伝えるべきか…黙っておくべきか…
取り合えず使用人達にタシターニさんを部屋に案内させて、僕達は部屋でタシターニさんにアーバスノイヤー家の面々が訪れることを伝えるか伝えないかを決める会議を開いた。
「どうするノヴァ。言わなかったらタシターニさん気絶しちゃうんじゃない?」
「あぁ。俺もそう思う。事前に伝えた瞬間気絶してしまう可能性もあるが…そこは無理矢理起こせばどうにかなるだろうし、やはり事前に伝えておこう」
念の為ヨハネス達とも話し合って、やはり皆が事前に伝えておいた方が良いという判断だったので意を決してタシターニさんの部屋へと乗り込んだ。
「……」
「……」
「…もしかしてこれ…目を開いたまま気絶してる?」
「…かもな」
タシターニさんの部屋に突撃し、とーさま達が来ることを伝えた後のタシターニさんは驚きに目を見開いたまま動かなくなってしまった。
数秒待ってみたけれどタシターニさんはその後ピクリとも動かず(瞬きすらしてない)固まってしまった。
つんつんっと突いてみても無反応。
「タシターニさん」
名前を呼んでぺしぺしと頬を軽く叩くこと数回…
はっと意識を取り戻したタシターニさんは直ぐ近くにいる僕を視界に捉え、そして目をうるうると潤ませ始めた。
屈強な漢のうるうるお目目は特に可愛くもないし庇護欲も湧かないが、可哀想には思う。
「大丈夫です。とーさま達は自分達の敵以外には優しい人達ですから仲良くなれますよ」
「な…仲良く、なるなんて……うぐぅ」
一生懸命宥めてみるのだけれど、タシターニさんは奇妙な呻き声を上げ、頭を抱えてしまう。
「タシターニ、安心しろ。ルナイス気に入りの料理人と伝えればアーバスノイヤー家が君を害することはない。公爵様方には最初に伝えよう」
「お…お願い、します」
見かねたノヴァがタシターニさんの肩を叩きそう言うと、タシターニさんはノヴァに深く腰を折って切実に頼み込み始めた。
僕の実家…そんなに怖い所だったっけ?
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