王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

国王様にお願い

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馬車に揺られること3時間


通常なら1時間ほどあれば王都へ着くし、転移の魔法陣を利用すれば一瞬で辿り着くのだけど今回僕たちは休憩も兼ねてのんびりゆっくりと王都へやって来たのだ。

途中よった村でお昼ご飯も食べ、約束の時間より少し前に城へ着いた。




「本日は貴重なお時間を頂き誠に感謝申し上げます」

ノヴァが国王へ礼をしたのに倣って僕もノヴァの一歩後ろに立ち頭を下げる。



「よい。しかしあまり時間もないので早速だが本題について話してくれ」

そう言った国王様の目の下には薄っすらとくまが見える。

アイダオ国の制圧も無事完了し、侵略してくる敵も今の所はいなくなって落ち着きはしたが、これまでのことの後処理に城務めの者達は追われており残業続きで皆寝不足で疲労困憊だ。



とーさまも退職ではなく休暇扱いであったがために国王の補佐人として招集されており、長らく家にご帰宅されていないとのこと。

しかしワイアットが厳重にとーさまの健康管理をしてくれているそうだからそこまで心配はしていなかったのだけれど…今目の前の国王様の様子を見るととーさまのことが心配になってきた。





「捉えた刺客とアイダオ国第二王子との面会の許可が欲しいです」


「…何故だ」


「刺客はアイダオ国で強制的に従わされていたと耳にしました。家族を人質に取られていたとしても簡単には口を割らなかったことやあの戦闘力の高さは只失うには惜しいのではないかと思います。それから第二王子に関しては自身も危険ななか情報を提供しアーナンダ国に助力した功績は無視できないという点から対処に悩んでいると聞きました。でしたら元アイダオ国の領主になってもらい、こちらの者を監視兼補助人としてつけてはいかがかと思いまして」




「なるほど…まず第二王子に関してだが話し合いの結果先程貴殿が言ったように処理をするのが妥当であろうと結論が既に出ている。しかし第二王子が裏切ったことで不満や怒りを抱えている者は多くいる。領主としておいたところで3日も持たず亡き者となるやもしれん危険があるなかすぐに動かすわけにはいかん。この事に関しては慎重にすすめねばならん件であるから貴殿はでしゃばらないように…とだけ言っておこう」



「出過ぎた真似をしましたこと、深く謝罪いたします」




ふぅっと深く息を吐き出した国王様の言葉になるほどっとすぐに頭を下げた。


確かに第二王子の処遇について国の重鎮でもない僕が意見するのは良くなかった。
国際会議等に出て意見を求められることが多かったから僕も国のことに関して意見する立場にあると勘違いをしてしまっていたと気が付き恥ずかしい気持ちになる。



隣のノヴァも僕と同じように頭を下げていて、そんなことをさせてしまったことがとても申し訳なくて落ち込む。








「よい。最近はドラゴンのことなど貴殿に頼ることが幾度とあった故、貴殿も混乱していることだろう。して次に捕らえたアイダオ国からの刺客についてだが…狙った相手が貴殿だけならば貴殿の好きなようにしてよいとも言えようが、今回捕らえた者の中には私含めた王族に刃を向けた者もいる。奴等が祖国を奪った我等を恨んでないとも言えん状況下で奴等を野放しにし駒にする余裕が今のアーナンダ国にはない」


僕の失言についてさりげなくフォローする言葉をくださった国王様に気持ちを持ち直す。

そして刺客については簡単に許可は得られないだろうと思っていたので国王様の言葉に気落ちすることはない。




「なので面会をし、彼等に話を聞きたいのです。彼等の隠密の練度は素晴らしいので是非習いたいというのと、後々信頼関係を築けたら僕の仕事の助手をさせたくて…でもそれはもちろんあの者共がこちらを害さないことを誓約書に誓ってもらうことを前提として考えています」

正直僕やコルダは毒で殺されかけているので、この野郎って気持ちはあるけれど…それ以上にあの高精度な隠密スキルは評価しているし、純粋にすごいって思う。

あのスキルを習得することが出来ればもっと仕事が楽にできるだろうし、仕事も楽になる。



僕のお仕事は通常ではそう忙しいものではない。
怪しい噂に常時耳を立て、怪しい者があれば早急に情報を収集し、証拠が揃えば国に影が落ちる前に事態を収束する。

それが僕の主な仕事で、怪しい者が居なければ基本的には僕が大きく動くようなことはない。


しかしこれが有事の際には仕事が増える。
それもう僕が一人では追いつかないほどに忙しいのだと今回の件でよく分かった。




僕はまだ領地のこと等大部分をにぃ様が担ってくれているから裏家業だけに集中することが出来るけれど、とーさまは兄弟がいなかったし両親も早くに亡くしているから全てを一人で担ってきたのだと日々尊敬の念を抱いている。


とーさまは優秀な従者達が居たからやってこれたのだと言うけれど、従者達はとーさまのたゆまぬ努力あってこそと言っていて、お互いに理想的な関係だと思う。

そんなとーさまのように仕事を熟したい気持ちはあれど、今の僕には出来る自信が少しもない。




なので優秀な部下を常に欲しているのだ。





以前それをとーさまに話したことがあるが、人を使えるのもまた才能だと言っていたので僕は僕のやり方でお仕事をすればいいと自分自身に言い聞かせている。






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