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第5章
ドラゴンの管理者として参加する会議②
しおりを挟む子爵達の不安も分かる。
彼等は貴族と言えど限りなく平民に近い。
貴族は貴族になった理由があって、王家の血族を除いた貴族達の祖先は財力を持って貴族になった者、圧倒的な身体能力を持って貴族になった者、高い魔力量を持って貴族になった者、人を動かす話術を持って貴族になった者等、他とは一線超えた遺伝子を継いだ者達がアーナンダ国の貴族なのだ。
つまり平民達は貴族に比べありとあらゆる力が弱い者が多い。
ゼロではないが。
謂わば平民に限りなく近い彼等も弱者の立場にある。
弱者にとって圧倒的な力の差があるドラゴンという上位生命体が見える範囲で暮らすということは、いつ自分の身が脅かされるか…大切な人を失うことになるかという不安に毎日震えることになる。
しかし平民が貴族に物申すなど基本的には出来ない。
そこで、平民達を代表して貴族に意見を出せるのが彼等のような人達なのである。
彼等は此処で、僕から平民達が納得できる答えを引き出さなくてはならないのだから、先程の僕の発言で意見があるのはもっともなことだと思う。
「ルナイス様。貴方はドラゴンに愛されているから何も不安はないでしょうが、我等はそうではありません。故意でなくドラゴンを傷つけてしまうことやご気分を害してしまうことがないとは言い切れません。その時に我等の命が脅かされると分かっていることを見過ごすわけにはいけないのです」
「えぇ。理解していますよ」
「ならば!」
「ドラゴンは故意であるかどうかを判断できぬほど知能は低くありません。あぁ…でもレッドドラゴンはあんまり…んー」
話しながらつい顎に手を当てて考えこんでしまう僕。
僕の周りに居るユエやホルス様、パンやククちゃんなんかはその辺りが分からないようなドラゴンではないのだけど…レッドドラゴンは直情型だからカーっとなって考える前に手が出るタイプ。
レッドドラゴンが居るのは基本的には王国騎士団の敷地内のはずだから、平民がレッドドラゴンと遭遇する危険性は低いと思うけれど…
「うん。レッドドラゴンは危険ですね」
「えぇ!?ど、どうするのですか!」
どうするって言われてもレッドドラゴンについては王国騎士団の管轄だと思うんだよね。
あれ?でもドラゴンの管理官として国から正式に職を与えられている僕ってもしかして僕と関係のないドラゴンのことまで対応しないと駄目な感じじゃない?
「…レッドドラゴンについては早急に王国騎士団と会議を開きます。対策が決定するまでは家にいるドラゴンのホルス様にレッドドラゴンがアーナンダ国民を傷つけないよう見張ってもらいます」
「ル、ルナイス様。早急に!早急にお願いしますね!!」
「…はい」
うげぇっと思いながらも、しっかりと子爵達の質問に答えて今回の会議は一旦終了することにした。
後日王国騎士団とレッドドラゴンについての対策をどうするか話し合った会議の結果を子爵達に報告することになったのであった。
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