379 / 422
第5章
にぃ様の好物が超進化してました
しおりを挟む昼食をとってから僕達は王都へ買い物に出かけることにした。
こうして2人きりで王都に足を運ぶのも初めてだ。
何時もなら護衛が居るのだけど、今日はヨハネスもガンナーもレオもコルダもみーんなお休みって言ってあるから本当に2人きり。
男爵くらいの家格なら護衛なしで歩くこともあるけれど、公爵家の大事な後継者が護衛なしで出歩くなんて本来は許されることじゃない。
というか、普通に危険すぎて無理。
だけどにぃ様は凄く強いし、僕も万が一の時は自分の身くらいは守れるのでとーさまから許可が下りた。
『アドルファスが限界で使い物にならんのも困るので許したが…ルナイス、今度は私とも一緒に休日を過ごそう』
と嬉しいことを言ってくださったとーさま。
今のとーさまは近衛騎士団長の座から降りたから前ほど忙しくなくなったみたい。
それでも元近衛騎士団長として、アーバスノイヤー家当主としてまだまだ忙しい身である。
しかし国のことも落ち着いて、ちゃんとした休日を得られるようになったと言っていて、また僕とお休みを合わせてお出かけする予定なのだ。
今はにぃ様との休日を存分に楽しみたいので、とーさまとのおでかけの予定は頭の隅に追いやらせてもらっておきたい。
「あっ!にぃ様!雲飴があります!」
「…覚えていたのか」
目的地なく歩いていると雲飴を売っているお店を発見してにぃ様をそのお店の方へと促せば、にぃ様は照れくさそうにそう言うから、当たり前です!と胸を張りにぃ様の手を引いて店内へ足を踏み入れた。
「いらっしゃ…いませー!」
入店してきた僕達を見て、店員さんが一瞬動きを止めたけれど、すぐに復活して何故か目を輝かせて気合十分な感じで僕達に挨拶をしてくれる。
完全なるプライベートなので今日の僕達の格好は持っている服の中でも割と装飾が少なくシンプルなものにしているのだけれど…まったく平民達と同じ格好ていうわけにはいかなくてよほど地方の者でない限りは僕達がどこの誰であるかは一目で分かってしまう。
何だか反応が気になる店員さんだけど…萎縮されるよりはいい…のだろうか?
「…あの…雲飴2つください」
にぃ様の背に少し隠れるような形を無意識にとってしまったけれど、警戒しながらも店員さんに注文をする。
「はい!あ!あの私お二人のファンでして!決して怪しいものではございませんし、危害を加えるつもりなど赤子の爪の先程にもございませんのでご安心ください!!」
警戒心むき出しの僕に店員さんが慌ててそう言ってくるけど…ファンて?
いや、にぃ様なら分かる。
だって近衛騎士団副団長だし近衛騎士ってだけで結構モテるんだ。
例え既婚者であってもキャーキャー言われるし、アピールもされる。
それににぃ様は弟の贔屓目なしに格好いい人。
でも僕はファンがつくような要素ってひとつもない。
公爵家の次男だし、周りが凄い人多くて僕の存在って霞んでるって思ってたけど…
「お二人の仲睦まじいご様子は平民の間でも話題です!そんなお二人が私のお店に来てくれるなんて感激して…気合が入りすぎてしまいました。申し訳ございません」
「謝罪は必要ない。私達こそ必要以上に警戒をしてしまい申し訳ない」
反省した様子で頭を深く下げる店員さんに僕がぼーっとしている間ににぃ様が対応してしまった。
彼女の謝罪の原因は間違いなく僕なので、僕も慌てて謝る。
「雲飴のお味はいかがなさいますか?最近だと二種類の味を混ぜるのが人気ですよ!」
謝る僕達にとんでもないと慌てる店員さんは、場の空気を変えようと雲飴について話し出してくれたので僕達も謝罪を止めてどの味にするか真剣に悩む。
「では私は雷と雪味で」
僕が悩んでいる間ににぃ様はすっと決めてしまって、すぐに二種類をまぜてその場で雲飴を作った店員さんはにこやかににぃ様へ雲飴を渡す。
にぃ様の手に渡された雲飴は黄色と白が交互に混じっていて、すごく可愛いアイテムとなっている。
格好いいにぃ様がそれを持っていると、アンバランスな感じなんだけどそのアンバランスさがまた可愛い。
「んっと…僕は雷と雨味で」
「はい!……おまたせしました!バチバチしますよ!」
バチバチ?
雷味がパチパチするのは知っているけど…バチバチとは?と首を傾げながらもガブリと一口食べて驚き、思わず足をバタバタと踏み鳴らす。
「ルナイスどうした」
そんな貴族の子供として品のない行動ににぃ様が驚いて心配そうなお顔で僕の頬を両掌で包み込み近距離から観察される。
顔を左右に振られるけど、閉じられた口の中がバチバチと音を立てて咥内を刺激している。
始めは驚いたけれど、その感覚に慣れると今度は楽しく思ってきた。
突然バタバタするのを止めてじっと止まる僕ににぃ様も店員さんもすごく心配して、医者に連れていかれそうになったところで慌てて新触感の雲飴に驚いただけなのだと伝える。
どうやら水に電気が混じってバチバチするのを楽しめるように安全の配合で作っているらしく、僕達はこの店の店主に後日アーバスノイヤー家とウォード家に来て料理人へ講習を開いてくれと頼んだのであった。
455
あなたにおすすめの小説
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜
なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。
藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!?
「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」
……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。
スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。
それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。
チート×獣耳×ほの甘BL。
転生先、意外と住み心地いいかもしれない。
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました
ちとせ
BL
美形王子×容姿端麗悪役令息
——これ、転生したやつだ。
5歳の誕生日、ノエル・ルーズヴェルトは前世の記憶を取り戻した。
姉が夢中になっていたBLゲームの悪役令息に転生したノエルは、最終的に死罪かそれ同等の悲惨な結末を迎える運命だった。
そんなの、絶対に回避したい。
主人公や攻略対象に近づかず、目立たずに生きていこう。
そう思っていたのに…
なぜか勝手に広まる悪評に、むしろ断罪ルートに近づいている気がする。
しかも、関わるまいと決めていた第2王子・レオンには最初は嫌われていたはずなのに、途中からなぜかグイグイ迫られてる。
「お前を口説いている」
「俺が嫉妬しないとでも思った?」
なんで、すべてにおいて完璧な王子が僕にそんなことを言ってるの…?
断罪回避のはずが、いつの間にか王子に捕まり、最後には溺愛されるお話です。
※しばらく性描写はないですが、する時にはガッツリです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる