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優しくしないで③
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下校のときも誠悟は優しくて、俺は違和感を拭えない。駅で別れるときも「気をつけてな」なんて言われたりして。そんなこと、今まで一度も言ってくれたことはない。どきどきするのに、なにかが違う。
夜、勇気を出して誠悟にメッセージを送る。
『もう優しくするのやめて』
はあ、と一つため息をつき、今日一日の誠悟を思い返す。とても優しくて、誰もがぽうっとなってしまう、まるで王子様のようだった。俺以外の人にも優しく接していて、その微笑みにみんな――男子まで頬を赤くしていた。でもそんなの誠悟じゃない。
スマホの通知音が鳴る。
『越志に好きになってもらいたいからやめない』
え、と思ったら続けてメッセージが届いた。
『なんでやめて欲しいの?』
なんで……考えて納得する。俺は優しい誠悟じゃだめなんだ。
『誠悟じゃないみたいだから』
送信。
そう、誠悟は意地悪で、現実的なことばかり言う。優しくされるのは好きだけど、誠悟には優しくされたくない。いつもどおりでいて欲しい。
もう一つ息を吐き出すと同時に通知音が鳴る。
『いつもの俺だと、越志は好きになってくれないだろ?』
そんなに俺に好かれたいのかと驚き、なんと返信しようか悩んでいたらスマホが鳴った。通知音ではなくて、着信。画面を見ると誠悟から。
「どうしたの?」
『越志はいつもの俺じゃ好きになってくれないだろ? 俺は越志に好きになってもらいたいから優しくする』
一言めからそんなことを言われ、頬が火照り一瞬口ごもる。
「……そんなのおかしいよ。誠悟は意地悪なんだよ」
『なんだそれ。俺だって優しくできる』
「優しくできるのは今日で充分わかった。でも俺は、意地悪で現実的なことを言う誠悟じゃないと嫌だ」
確かに今日一日、誠悟はすごく優しかった、けど……違う。心にある思いをそのまま伝えると、誠悟が無言になった。
『……どういう意味?』
緊張しているような声に、俺も背筋を伸ばす。
「そのままの誠悟がいい」
ちょっと声が震えてしまい恥ずかしくなる。でもこれが嘘偽りのない本心。優しい人は好きだけど、誠悟は優しくないほうがいい。
『それはそのままの俺が好きってこと?』
どくんと心臓が大きく高鳴った。
「えっと……」
好き? 誠悟を? かあっと頬が熱くなり、誠悟が目の前にいるわけでもないのにものすごく恥ずかしくて、スマホを放り投げて逃げ出したくなる。
「は、恥ずかしいよ……」
『は?』
「……好きなんて、そんな……」
『誰でもすぐ好きになる越志が言う言葉か』
確かにそのとおりなんだけど、これは違う……誰でもすぐ好きになるとかそういうことじゃなくて。
「だって、誠悟を好きなんて……そんなの……いや、嫌いじゃないんだけど……」
『つまり好きってこと?』
「それは……」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。ビデオ通話じゃないのに誠悟にこんな状態の自分がばれているのではないかと思うとどんどん頬が熱くなり、耳まで熱くなってどきどきも加速する。誠悟は意地悪だから好きになるはずがない、そう思っていた。
『俺のこと、好き?』
「……そんなのわかんないよ」
嘘だ、わかっている。こんなにどきどきしているのをごまかせるわけがない。恰好よくて意地悪で、俺に現実ばかり見せて……それが誠悟。俺はそんな誠悟が――。
「ちょっと……待って」
わかっているけれど、まだきちんと理解できていない。こんな感情……おかしくなりそうなどきどきも、頬が燃えそうなくらいに熱いのも心がそわそわするのも、今まで経験した「好き」と全然違う。
『どのくらい?』
「え?」
どのくらい、って……こういうときは「気持ちの整理ができるまで待つよ」とか「急がないでいいよ」とか言うものじゃないの? 漫画ではそうだ。
『俺は一年の頃から越志の気持ちが俺に向くのを待ってた。あとどのくらい待てばいいんだ?』
そんなに前から誠悟は俺のことを……? どきどきが止まらず、意味もなく部屋中を見回してしまう。
「……明日、話す」
『明日?』
「こ、こういうことは、きちんと顔を見て言いたいから……」
心臓が壊れそうな勢いで脈打っていて、頬の熱さにぼうっとしてくる。部屋の暖房が暑い。
『わかった。じゃあ明日な』
「う、うん」
『楽しみにしてる』
「……」
通話を終えて、楽しみにされてしまった、とスマホの画面を見つめる。メッセージアプリに表示されている文字を目で追ったら緊張してきた。
『越志に好きになってもらいたいからやめない』
明日は優しい誠悟じゃないといいな。いつもの意地悪な笑顔を思い浮かべたら緊張がとけて自然と口元が緩んだ。誰に言うでもなく、おやすみなさい、と呟いてベッドに入る。眠りの世界に旅立つまで誠悟のことと明日のことを考えた。ちゃんと言えるかな、言わなくちゃ。
その夜、誠悟の夢を見た。
俺の隣で幸せそうに微笑む姿に、俺も幸せな気持ちになった。
おわり
夜、勇気を出して誠悟にメッセージを送る。
『もう優しくするのやめて』
はあ、と一つため息をつき、今日一日の誠悟を思い返す。とても優しくて、誰もがぽうっとなってしまう、まるで王子様のようだった。俺以外の人にも優しく接していて、その微笑みにみんな――男子まで頬を赤くしていた。でもそんなの誠悟じゃない。
スマホの通知音が鳴る。
『越志に好きになってもらいたいからやめない』
え、と思ったら続けてメッセージが届いた。
『なんでやめて欲しいの?』
なんで……考えて納得する。俺は優しい誠悟じゃだめなんだ。
『誠悟じゃないみたいだから』
送信。
そう、誠悟は意地悪で、現実的なことばかり言う。優しくされるのは好きだけど、誠悟には優しくされたくない。いつもどおりでいて欲しい。
もう一つ息を吐き出すと同時に通知音が鳴る。
『いつもの俺だと、越志は好きになってくれないだろ?』
そんなに俺に好かれたいのかと驚き、なんと返信しようか悩んでいたらスマホが鳴った。通知音ではなくて、着信。画面を見ると誠悟から。
「どうしたの?」
『越志はいつもの俺じゃ好きになってくれないだろ? 俺は越志に好きになってもらいたいから優しくする』
一言めからそんなことを言われ、頬が火照り一瞬口ごもる。
「……そんなのおかしいよ。誠悟は意地悪なんだよ」
『なんだそれ。俺だって優しくできる』
「優しくできるのは今日で充分わかった。でも俺は、意地悪で現実的なことを言う誠悟じゃないと嫌だ」
確かに今日一日、誠悟はすごく優しかった、けど……違う。心にある思いをそのまま伝えると、誠悟が無言になった。
『……どういう意味?』
緊張しているような声に、俺も背筋を伸ばす。
「そのままの誠悟がいい」
ちょっと声が震えてしまい恥ずかしくなる。でもこれが嘘偽りのない本心。優しい人は好きだけど、誠悟は優しくないほうがいい。
『それはそのままの俺が好きってこと?』
どくんと心臓が大きく高鳴った。
「えっと……」
好き? 誠悟を? かあっと頬が熱くなり、誠悟が目の前にいるわけでもないのにものすごく恥ずかしくて、スマホを放り投げて逃げ出したくなる。
「は、恥ずかしいよ……」
『は?』
「……好きなんて、そんな……」
『誰でもすぐ好きになる越志が言う言葉か』
確かにそのとおりなんだけど、これは違う……誰でもすぐ好きになるとかそういうことじゃなくて。
「だって、誠悟を好きなんて……そんなの……いや、嫌いじゃないんだけど……」
『つまり好きってこと?』
「それは……」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。ビデオ通話じゃないのに誠悟にこんな状態の自分がばれているのではないかと思うとどんどん頬が熱くなり、耳まで熱くなってどきどきも加速する。誠悟は意地悪だから好きになるはずがない、そう思っていた。
『俺のこと、好き?』
「……そんなのわかんないよ」
嘘だ、わかっている。こんなにどきどきしているのをごまかせるわけがない。恰好よくて意地悪で、俺に現実ばかり見せて……それが誠悟。俺はそんな誠悟が――。
「ちょっと……待って」
わかっているけれど、まだきちんと理解できていない。こんな感情……おかしくなりそうなどきどきも、頬が燃えそうなくらいに熱いのも心がそわそわするのも、今まで経験した「好き」と全然違う。
『どのくらい?』
「え?」
どのくらい、って……こういうときは「気持ちの整理ができるまで待つよ」とか「急がないでいいよ」とか言うものじゃないの? 漫画ではそうだ。
『俺は一年の頃から越志の気持ちが俺に向くのを待ってた。あとどのくらい待てばいいんだ?』
そんなに前から誠悟は俺のことを……? どきどきが止まらず、意味もなく部屋中を見回してしまう。
「……明日、話す」
『明日?』
「こ、こういうことは、きちんと顔を見て言いたいから……」
心臓が壊れそうな勢いで脈打っていて、頬の熱さにぼうっとしてくる。部屋の暖房が暑い。
『わかった。じゃあ明日な』
「う、うん」
『楽しみにしてる』
「……」
通話を終えて、楽しみにされてしまった、とスマホの画面を見つめる。メッセージアプリに表示されている文字を目で追ったら緊張してきた。
『越志に好きになってもらいたいからやめない』
明日は優しい誠悟じゃないといいな。いつもの意地悪な笑顔を思い浮かべたら緊張がとけて自然と口元が緩んだ。誰に言うでもなく、おやすみなさい、と呟いてベッドに入る。眠りの世界に旅立つまで誠悟のことと明日のことを考えた。ちゃんと言えるかな、言わなくちゃ。
その夜、誠悟の夢を見た。
俺の隣で幸せそうに微笑む姿に、俺も幸せな気持ちになった。
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