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優しくしないで②
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授業中、あれはなんだったんだろう、と誠悟の言葉を思い返す。俺を好きになれ、って、誠悟は意地悪だから無理だ。でも優しくするって言っていた……いや、元が意地悪で厳しいんだからできるわけがない。高一で知り合って一年以上経つけれど、いつも厳しいことばかり言うんだ。それでも誠悟は根がいい奴だから一緒にいて楽しい……恰好よくてモテるくせに俺とばかりいるのは不思議だけど。
でも恋愛的に好きかって聞かれたら違う。だって俺は優しい人が好き。
誠悟も優しくするって言っていたから、俺は誠悟を好きになる? ――ううん、ならない。なるはずない。それに誠悟はもともとが意地悪なんだからそう簡単に優しくなんてできないに決まっている。
……授業に全然集中できない。
お昼休みになり、パンを買いに購買に行こうとすると誠悟に呼び止められた。
「もう買ってある。越志はいつも同じパン食べるからそれ買ってきたけど、合ってるよな?」
「そうだけど……急にどうしたの? そんなのしてくれたことないじゃん」
問いかけると優しい微笑みを向けられた。
「優しくするって言っただろ? だから――」
「……『だから』……」
誠悟の言葉は続かなかったけれど、朝の言葉を思い出す。授業中にも何回も思い出した言葉。
――俺を好きになれ。
かあっと頬が熱くなり、誠悟の微笑みから目を逸らす。
「こんなの反則」
「正攻法だ」
文句を言うと誠悟はちょっと意地悪に笑い、その笑顔を見てほっとした。このほうが誠悟らしい。でも優しい誠悟も悪くない……かも。どきどきしながら俺の席で二人でパンを食べ始めると、女子が三人寄ってきた。
「誠悟くん、ちょっといい? 話があるんだけど……」
三人のうちの一人が頬を赤く染めて誠悟に声をかける。あ、これは告白パターンだ、とぼんやりその様子を見ながら、かわいそうなことに誠悟は冷たくあしらうんだよな、と見慣れた光景を想像する。
「せっかく声をかけてくれたけど、ごめん。もう食べ始めちゃったから」
「!」
誠悟が優しく接している……。その微笑みに女子三人がぽうっと赤くなり、それから「こっちこそごめんね」とぱたぱた去って行く。告白はいいんだろうか。……いや、この微笑みに「それでも!」と言う勇気がなかったんだろう。ある意味かわいそうだ。
「どうした?」
「え?」
「食欲ないのか?」
パンを食べずに誠悟を見ていたら心配そうな表情で聞かれ、優しくされているのにちくりと胸が痛む。
「そんなことない。……食べるよ」
でもなんだかお腹が食べ物を受けつけない。もやもやするし、なにかがおかしい。それでも無理矢理食べると味がしない。
「越志、口元にソースついてる」
「え、どこ?」
指で拭おうとしたら、誠悟がこちらに手を伸ばしてきた。
「ここ」
唇の端を指で優しく拭われ、心臓が大きく跳ねて頬がどんどん熱くなっていく。少し俯いたら誠悟がちょっと笑うのを感じた。
「……こんな王道な手には引っかからない」
「そういうとこ、すごくかわいい」
「反則反則反則!」
誠悟の微笑みに俺がわめくと頭をぽんぽんと撫でられて、また鼓動が速くなる。
「ほんとにかわいいな」
「っ……」
なんだよ、これ誰だ……。優しさにどきどきしながら違和感を覚える。一緒にいるのが誠悟じゃないみたいで、胸になにかが詰まったような感覚に苦しくなった。
でも恋愛的に好きかって聞かれたら違う。だって俺は優しい人が好き。
誠悟も優しくするって言っていたから、俺は誠悟を好きになる? ――ううん、ならない。なるはずない。それに誠悟はもともとが意地悪なんだからそう簡単に優しくなんてできないに決まっている。
……授業に全然集中できない。
お昼休みになり、パンを買いに購買に行こうとすると誠悟に呼び止められた。
「もう買ってある。越志はいつも同じパン食べるからそれ買ってきたけど、合ってるよな?」
「そうだけど……急にどうしたの? そんなのしてくれたことないじゃん」
問いかけると優しい微笑みを向けられた。
「優しくするって言っただろ? だから――」
「……『だから』……」
誠悟の言葉は続かなかったけれど、朝の言葉を思い出す。授業中にも何回も思い出した言葉。
――俺を好きになれ。
かあっと頬が熱くなり、誠悟の微笑みから目を逸らす。
「こんなの反則」
「正攻法だ」
文句を言うと誠悟はちょっと意地悪に笑い、その笑顔を見てほっとした。このほうが誠悟らしい。でも優しい誠悟も悪くない……かも。どきどきしながら俺の席で二人でパンを食べ始めると、女子が三人寄ってきた。
「誠悟くん、ちょっといい? 話があるんだけど……」
三人のうちの一人が頬を赤く染めて誠悟に声をかける。あ、これは告白パターンだ、とぼんやりその様子を見ながら、かわいそうなことに誠悟は冷たくあしらうんだよな、と見慣れた光景を想像する。
「せっかく声をかけてくれたけど、ごめん。もう食べ始めちゃったから」
「!」
誠悟が優しく接している……。その微笑みに女子三人がぽうっと赤くなり、それから「こっちこそごめんね」とぱたぱた去って行く。告白はいいんだろうか。……いや、この微笑みに「それでも!」と言う勇気がなかったんだろう。ある意味かわいそうだ。
「どうした?」
「え?」
「食欲ないのか?」
パンを食べずに誠悟を見ていたら心配そうな表情で聞かれ、優しくされているのにちくりと胸が痛む。
「そんなことない。……食べるよ」
でもなんだかお腹が食べ物を受けつけない。もやもやするし、なにかがおかしい。それでも無理矢理食べると味がしない。
「越志、口元にソースついてる」
「え、どこ?」
指で拭おうとしたら、誠悟がこちらに手を伸ばしてきた。
「ここ」
唇の端を指で優しく拭われ、心臓が大きく跳ねて頬がどんどん熱くなっていく。少し俯いたら誠悟がちょっと笑うのを感じた。
「……こんな王道な手には引っかからない」
「そういうとこ、すごくかわいい」
「反則反則反則!」
誠悟の微笑みに俺がわめくと頭をぽんぽんと撫でられて、また鼓動が速くなる。
「ほんとにかわいいな」
「っ……」
なんだよ、これ誰だ……。優しさにどきどきしながら違和感を覚える。一緒にいるのが誠悟じゃないみたいで、胸になにかが詰まったような感覚に苦しくなった。
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