58 / 74
【番外編②】甘く溶かして
【番外編】甘く溶かして ④
しおりを挟む
藍流と流風の看病のおかげで三日後には熱が下がってだるさもなくなった。明日からはバイトに行けそうだ。
でもバレンタインはすぎてしまった。今年はバレンタインなしにはなったけれど、十代最後のバレンタインがこんなふうに終わってしまうなんてやはりショックだ。
藍流が夕飯を作っているのをじっと見る。流風ももうすぐ帰ってくる。せめて今からでもなにかできないかな、と考えるけれど浮かばない。
「ただいま」
「おかえり、流風」
「もう夕飯できるよ」
荷物を置いて手を洗ってきた流風もテーブルについて、三人で食事を始める。今日は豚汁に銀鱈の西京焼き。ほうれん草の白和えもおいしい。
「片づけ手伝うよ」
「奏は座ってて。俺と藍流でやるから」
「……わかった」
せめてテーブルを拭くくらいは、と布巾を手に取るけど、すぐ終わってしまった。食器がかちゃかちゃあたる音がして、流水音が止まった。ふたりが洗い物を終え、また椅子に座る。
「奏も座って」
なんだろうと思いながら流風に言われたとおりに椅子に座る。二対一で向かい合った状態で、どうしたのかな、とふたりを見る。
「これ」
「俺と藍流から」
すっとテーブルに載せられたのは、見覚えのある包装紙に包まれた箱。これはチョコだ。しかも、俺が初めてふたりにあげたものと同じ。
「バレンタインはなしなんじゃ……」
「奏のバレンタインはなしだけど、俺と藍流のバレンタインはあるの」
「風邪がよくなるまで延期してただけ」
愛おしい人達と、思い出のチョコ。交互に見たら視界が涙でゆらゆらしてくる。
「……ふたりとも覚えてるの? 俺が初めてあげたチョコ」
「奏とのことで忘れることなんてひとつもないよ」
藍流が微笑みながらチョコを差し出すので、ゆっくり手を伸ばして受け取る。ぽつり、と涙がひと粒零れた。
「でも、ちょっと中身が変わったみたいなんだ。まったく同じじゃないのが残念だけど、それでも俺と藍流の気持ちはたくさんこもってるから」
流風まで涙腺がさらに緩むことを言うので、チョコの箱をきゅっと胸に抱く。好きだよ、好きだよ……たくさんの「好き」が聞こえてくる。
「うん……すごく気持ちがこもってるの、わかる」
こんなサプライズがあるなんて思わなかった。もったいないから大切に食べよう。
俺もふたりにチョコを贈りたかった。風邪でなしになってしまうなんてやはり寂しい。
「……俺も藍流と流風にチョコあげたかったな」
風邪なんてひかなければちゃんとチョコを贈れたのに。でも風邪をひいたから、ふたりとの絆が深まった。だから悪いことばかりではない。
「じゃあ今度三人でデザート作りしようか」
「!」
藍流の提案にぱっと心に光が灯った気がした。
「それなら寂しくない?」
思わず自分の頬に触れてしまう。寂しく感じたのが顔に出ていたのだ。
「ありがとう、藍流、流風」
ふたりの気持ちに応える、甘いデザートを作りたい。
でもバレンタインはすぎてしまった。今年はバレンタインなしにはなったけれど、十代最後のバレンタインがこんなふうに終わってしまうなんてやはりショックだ。
藍流が夕飯を作っているのをじっと見る。流風ももうすぐ帰ってくる。せめて今からでもなにかできないかな、と考えるけれど浮かばない。
「ただいま」
「おかえり、流風」
「もう夕飯できるよ」
荷物を置いて手を洗ってきた流風もテーブルについて、三人で食事を始める。今日は豚汁に銀鱈の西京焼き。ほうれん草の白和えもおいしい。
「片づけ手伝うよ」
「奏は座ってて。俺と藍流でやるから」
「……わかった」
せめてテーブルを拭くくらいは、と布巾を手に取るけど、すぐ終わってしまった。食器がかちゃかちゃあたる音がして、流水音が止まった。ふたりが洗い物を終え、また椅子に座る。
「奏も座って」
なんだろうと思いながら流風に言われたとおりに椅子に座る。二対一で向かい合った状態で、どうしたのかな、とふたりを見る。
「これ」
「俺と藍流から」
すっとテーブルに載せられたのは、見覚えのある包装紙に包まれた箱。これはチョコだ。しかも、俺が初めてふたりにあげたものと同じ。
「バレンタインはなしなんじゃ……」
「奏のバレンタインはなしだけど、俺と藍流のバレンタインはあるの」
「風邪がよくなるまで延期してただけ」
愛おしい人達と、思い出のチョコ。交互に見たら視界が涙でゆらゆらしてくる。
「……ふたりとも覚えてるの? 俺が初めてあげたチョコ」
「奏とのことで忘れることなんてひとつもないよ」
藍流が微笑みながらチョコを差し出すので、ゆっくり手を伸ばして受け取る。ぽつり、と涙がひと粒零れた。
「でも、ちょっと中身が変わったみたいなんだ。まったく同じじゃないのが残念だけど、それでも俺と藍流の気持ちはたくさんこもってるから」
流風まで涙腺がさらに緩むことを言うので、チョコの箱をきゅっと胸に抱く。好きだよ、好きだよ……たくさんの「好き」が聞こえてくる。
「うん……すごく気持ちがこもってるの、わかる」
こんなサプライズがあるなんて思わなかった。もったいないから大切に食べよう。
俺もふたりにチョコを贈りたかった。風邪でなしになってしまうなんてやはり寂しい。
「……俺も藍流と流風にチョコあげたかったな」
風邪なんてひかなければちゃんとチョコを贈れたのに。でも風邪をひいたから、ふたりとの絆が深まった。だから悪いことばかりではない。
「じゃあ今度三人でデザート作りしようか」
「!」
藍流の提案にぱっと心に光が灯った気がした。
「それなら寂しくない?」
思わず自分の頬に触れてしまう。寂しく感じたのが顔に出ていたのだ。
「ありがとう、藍流、流風」
ふたりの気持ちに応える、甘いデザートを作りたい。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
ずるい男
すずかけあおい
BL
酔った勢いで関係を持った相手が、勤務先である居酒屋のアルバイト面接に来た話です。
〔攻め〕今埜(こんの)21歳、大学三年生。名前は匠真(たくま)。
〔受け〕羽田(はだ)31歳、居酒屋副店長。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる