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【番外編②】甘く溶かして
【番外編】甘く溶かして ③
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流風と一緒に病院に行き、風邪と診断された。病院で体温を測ると少し熱が上がっていた。これからさらに上がるかもしれないからバイトは無理だ。そうでなくても行かないけれど。
「風邪でよかったって言うのも変だけど、とりあえず安心した」
「うん……。藍流はまだ怒ってるかな」
きちんと謝れなかったのも心に引っかかっている。不安な気持ちで流風を見上げると微笑んでくれた。
「怒ってないよ」
先程藍流がしてくれたように俺の頭を撫でてくれる。
藍流も流風も、俺を心配してくれている。その優しさに対して浅はかなことを言ってしまった後悔が重くのしかかってくる。風邪で気持ちが弱っているのか、心細くて流風の手を握る。
「どうしたの?」
「なんでもないんだけど……」
「うん」
無理に話させようとしない。俺が口を噤めば無理に聞き出そうとしないだろう。
「……なんか、俺って馬鹿だなと思って」
もう一回頭を撫でられる。その手の温もりに心の波立ちが落ち着いていく。
「奏は馬鹿なんじゃなくて真面目すぎるだけだよ。それが奏のいいところだってことも、俺達は知ってる」
「うん……」
「大丈夫。ゆっくり休んだらすぐよくなるよ」
「……うん」
帰宅したらお昼をすぎていて、流風がおかゆを作ってくれた。ひと口ひと口冷まして食べさせてもらい、薬を飲んで横になる。バイトの休みの連絡は自分でした。
目を閉じて深呼吸。バレンタインなしは残念だけれど、今は元気になるのが優先だ。
どのくらい寝ていたのだろう。流風がまたおかゆを持ってきてくれる。今度は鮭が入っている。
「ありがとう」
「熱は少し下がったかな。でも薬が効いてるからかもしれないから、まだゆっくり寝て」
「うん。流風、バイトは?」
そろそろ流風は出かけないといけない時間だ。
「もう出ないといけないんだよね。ひとりにするの心配だから本当は休みたいけど、パーティーの予約だからごめん」
「大丈夫、ちゃんと寝てるから」
「これで無理して買い物に行ったりしたら俺も藍流も、怒るどころじゃ済まないよ」
苦笑する流風の表情に、たくさん心配をかけてしまっているなと感じる。よくなるまでおとなしくしていよう。
流風がおかゆを作ってくれたけど、ふと高校生の頃を思い出した。料理酒とみりんは同じようなものだと言っていた人が、ずいぶん変わったなとしみじみしてしまう。藍流と流風の失敗作を食べたりもした。今ではふたりのほうが料理上手なのではないか……少し悔しいかもしれない。
「奏?」
「え?」
「ご機嫌なのはいいけど、絶対おとなしくしてること」
「うん」
顔に出ていたようで、流風が心配そうな顔をしている。
「なにかあったら藍流に連絡して。もうすぐ帰るって連絡きたから」
「わかった」
きちんと謝らないといけない。
「くれぐれも――」
「大丈夫だよ。本当に反省してるから」
念を押す流風に笑ってしまう。笑いごとではないのだけれど、そこまで俺は自分勝手なことを言ってしまったのだな、と後悔していて、でももう泣きたくない。
「それならいいけど」
バッグを持って寝室を出て行く流風に手を振る。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
玄関のドアが開いて閉じる音がする。
流風が出かけたら急に部屋がしんとして寂しくなった。薬も飲んだので寝よう、と目を閉じたらすぐに眠気がやってきて、吸い込まれるように夢の世界に旅立った。
瞼を上げると藍流がベッドの横の椅子に座ってうたた寝をしている。
「藍流……」
声をかけると、はっとしたようにこちらを見て、気まずそうな表情をする。
「さっきはきつく言いすぎた……ごめん」
「ううん、藍流は悪くないよ。俺がいろんなことをきちんと考えてなかったんだ。ごめんなさい」
いつでも俺を一番に考えてくれる人達があれだけ怒ったのだから、それだけ心配をかけてしまうことを言ったのだ。きちんと反省しないと。
「熱は?」
「夕方に薬飲んだから下がってるけど、ちょっとお腹空いた」
「それはよかった。なにか軽いもの作るよ」
頭を撫でられて、優しくて温かくてほっとする。
藍流は卵雑炊を作ってくれた。もしふたりに風邪をうつしたらどうしようと思うのに、ひとりでいられない。ごめんね、ともう一度謝ると「なんで?」と聞かれた。
「そばにいて欲しいと思っちゃうから」
我ながら甘えんぼだと思うのだが、今は特にひとりでいたくない。風邪で心が弱っているのだろう。
「それでいいの」
「でも、ふたりに風邪がうつったらよくないよね……」
「俺達はいいの。むしろ奏の風邪を俺達以外がもらうのはだめ」
その言葉の真意がわからず首を傾げてしまう。
「なんで?」
「奏からのものは、全部俺と流風のものだから」
頬を撫でられ、触れられたところがぽうっと熱くなる。どきどきし始めて、いつでも藍流と流風には心臓が暴れる自分が好きだと感じる。どんなに時間が経っても慣れることなんてない。ふたりにいつも恋をしている。
「ゆっくりよくなって」
「早くよくなるよ」
「俺達は奏の看病ができるのも嬉しいから。だから焦らなくていいの」
「うん……」
なんて温かいのだろう、と涙がこみ上げてくる。これほど愛してくれる人達がそばにいてくれることをきちんとと感謝しないといけない。
早くよくならないと……焦ってしまうけれど、ゆっくりきちんと治すのがふたりに返せること。
「風邪でよかったって言うのも変だけど、とりあえず安心した」
「うん……。藍流はまだ怒ってるかな」
きちんと謝れなかったのも心に引っかかっている。不安な気持ちで流風を見上げると微笑んでくれた。
「怒ってないよ」
先程藍流がしてくれたように俺の頭を撫でてくれる。
藍流も流風も、俺を心配してくれている。その優しさに対して浅はかなことを言ってしまった後悔が重くのしかかってくる。風邪で気持ちが弱っているのか、心細くて流風の手を握る。
「どうしたの?」
「なんでもないんだけど……」
「うん」
無理に話させようとしない。俺が口を噤めば無理に聞き出そうとしないだろう。
「……なんか、俺って馬鹿だなと思って」
もう一回頭を撫でられる。その手の温もりに心の波立ちが落ち着いていく。
「奏は馬鹿なんじゃなくて真面目すぎるだけだよ。それが奏のいいところだってことも、俺達は知ってる」
「うん……」
「大丈夫。ゆっくり休んだらすぐよくなるよ」
「……うん」
帰宅したらお昼をすぎていて、流風がおかゆを作ってくれた。ひと口ひと口冷まして食べさせてもらい、薬を飲んで横になる。バイトの休みの連絡は自分でした。
目を閉じて深呼吸。バレンタインなしは残念だけれど、今は元気になるのが優先だ。
どのくらい寝ていたのだろう。流風がまたおかゆを持ってきてくれる。今度は鮭が入っている。
「ありがとう」
「熱は少し下がったかな。でも薬が効いてるからかもしれないから、まだゆっくり寝て」
「うん。流風、バイトは?」
そろそろ流風は出かけないといけない時間だ。
「もう出ないといけないんだよね。ひとりにするの心配だから本当は休みたいけど、パーティーの予約だからごめん」
「大丈夫、ちゃんと寝てるから」
「これで無理して買い物に行ったりしたら俺も藍流も、怒るどころじゃ済まないよ」
苦笑する流風の表情に、たくさん心配をかけてしまっているなと感じる。よくなるまでおとなしくしていよう。
流風がおかゆを作ってくれたけど、ふと高校生の頃を思い出した。料理酒とみりんは同じようなものだと言っていた人が、ずいぶん変わったなとしみじみしてしまう。藍流と流風の失敗作を食べたりもした。今ではふたりのほうが料理上手なのではないか……少し悔しいかもしれない。
「奏?」
「え?」
「ご機嫌なのはいいけど、絶対おとなしくしてること」
「うん」
顔に出ていたようで、流風が心配そうな顔をしている。
「なにかあったら藍流に連絡して。もうすぐ帰るって連絡きたから」
「わかった」
きちんと謝らないといけない。
「くれぐれも――」
「大丈夫だよ。本当に反省してるから」
念を押す流風に笑ってしまう。笑いごとではないのだけれど、そこまで俺は自分勝手なことを言ってしまったのだな、と後悔していて、でももう泣きたくない。
「それならいいけど」
バッグを持って寝室を出て行く流風に手を振る。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
玄関のドアが開いて閉じる音がする。
流風が出かけたら急に部屋がしんとして寂しくなった。薬も飲んだので寝よう、と目を閉じたらすぐに眠気がやってきて、吸い込まれるように夢の世界に旅立った。
瞼を上げると藍流がベッドの横の椅子に座ってうたた寝をしている。
「藍流……」
声をかけると、はっとしたようにこちらを見て、気まずそうな表情をする。
「さっきはきつく言いすぎた……ごめん」
「ううん、藍流は悪くないよ。俺がいろんなことをきちんと考えてなかったんだ。ごめんなさい」
いつでも俺を一番に考えてくれる人達があれだけ怒ったのだから、それだけ心配をかけてしまうことを言ったのだ。きちんと反省しないと。
「熱は?」
「夕方に薬飲んだから下がってるけど、ちょっとお腹空いた」
「それはよかった。なにか軽いもの作るよ」
頭を撫でられて、優しくて温かくてほっとする。
藍流は卵雑炊を作ってくれた。もしふたりに風邪をうつしたらどうしようと思うのに、ひとりでいられない。ごめんね、ともう一度謝ると「なんで?」と聞かれた。
「そばにいて欲しいと思っちゃうから」
我ながら甘えんぼだと思うのだが、今は特にひとりでいたくない。風邪で心が弱っているのだろう。
「それでいいの」
「でも、ふたりに風邪がうつったらよくないよね……」
「俺達はいいの。むしろ奏の風邪を俺達以外がもらうのはだめ」
その言葉の真意がわからず首を傾げてしまう。
「なんで?」
「奏からのものは、全部俺と流風のものだから」
頬を撫でられ、触れられたところがぽうっと熱くなる。どきどきし始めて、いつでも藍流と流風には心臓が暴れる自分が好きだと感じる。どんなに時間が経っても慣れることなんてない。ふたりにいつも恋をしている。
「ゆっくりよくなって」
「早くよくなるよ」
「俺達は奏の看病ができるのも嬉しいから。だから焦らなくていいの」
「うん……」
なんて温かいのだろう、と涙がこみ上げてくる。これほど愛してくれる人達がそばにいてくれることをきちんとと感謝しないといけない。
早くよくならないと……焦ってしまうけれど、ゆっくりきちんと治すのがふたりに返せること。
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