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いつまでも
いつまでも①
しおりを挟むもう逃げない……逃がさない。
『ふたりで』の衛介視点が読みたいと他サイトでコメントをいただいたので書いてみました。
*****
たくさん泣いたからか、尚紀はよく寝ている。
頬に残る涙の痕を指でなぞったら、瞼が上がった。
「おはよう、尚紀」
なぜか尚紀は気まずそうに視線を彷徨わせる。
「おはよう…あの、昨日はごめん。俺…」
「気にするな」
できるだけ優しく笑いかけると、尚紀がほっとした顔をする。
「だけど飲み過ぎるのは、もうだめだ」
「うん」
「俺も尚紀も、まだ自分の飲み方がわかってないんだから少しずつ飲もうな」
「うん…!」
俺の言葉に嬉しそうな尚紀。
そうだな…尚紀はいつでも俺の言葉を待って、そのとおりにしてきた。
それを俺も望んでいた。
「衛介…」
可愛いなと思っていたら、尚紀が顔を近付けてくるので避ける。
「今は酔ってないよ」
「夜まで待て」
「夜?」
「…今日は、絶対抱く」
「!!」
抱き締めて宣言すると、尚紀がびくっとする。
もう止まらない。
俺は決めた。
欲望のままに、求められるままに尚紀を抱く。
「だから尚紀も覚悟しておけ」
「あ…の」
「『嫌だ』は聞かない」
昨日はキスまでで拒絶された。
でも、また拒絶されたとしても、今日は抱く。
「あれは、衛介が嫌だったわけじゃなくて…」
「いい。なにも考えるな」
「え?」
「もういいから。尚紀はあれこれ考えなくていい」
いつものように、俺に任せていればいい。
髪を撫でると、尚紀がちょっと思案するような目をする。
考えなくていいと言ってるんだけどな、と少し笑いがこみ上げた。
「……俺が考えるの、嫌?」
「?」
「俺、衛介のことも考えちゃいけない?」
「……」
予想外の言葉に固まってしまう。
俺のことを考えたい?
尚紀が?
それは…。
どこかで恐怖が生まれる。
尚紀が自分で考えるようになること、それは俺から離れて行くことではないか…?
でも、尚紀がそれを求めるなら。
「俺以外のなにを考えるんだ」
「だって、考えなくていいって…」
「俺は別じゃないのか」
「……別だよ?」
本心では俺のことは一番考えて欲しくない。
俺は汚れているから。
他のなにを考えても、俺のことは深く知らないで欲しいと心の奥底で思っている。
それを隠してこれまでそばにいたことが尚紀にバレるのも怖い。
そんな俺の複雑な気持ちも知らずに、尚紀は誘うようなとろんとした瞳で俺を見る。
キスをしたくなる衝動を隠して尚紀の鼻をつまむ。
「どこでそういう顔を覚えた?」
「へ?」
「…まったく」
ベッドから出てはっとする。
すぐに立ち止まって尚紀に手を差し出す。
「?」
「またベッドから落ちたら大変だ」
「…ありがとう」
昨夜、ベッドから落ちたときに怪我をしていないだろうか。
本人はなんともないと言う顔をしているけれど。
俺の手に手を重ねながらなにかを考えている尚紀。
やっぱりこのままじゃいけないのかもしれない。
手をきゅっと軽く握られるので、強く握り返す。
尚紀の手が、そうだよ、と言ってるように感じてどきっとする。
「……」
その手を見た後、尚紀はじっと俺を見る。
「どうした?」
「衛介も覚悟しろ!」
「……」
覚悟ならできている。
なんならこのまま…そう思いかけて、尚紀の鼻をまたつまむ。
なんでこいつはこんなに馬鹿なんだ。
誘っている自覚はないんだろうけれど、見たことのない顔を見せる尚紀は魅力的ですぐに押し倒したくなる。
「朝ご飯作るから顔洗ってこい」
ぱっと手を離して先に部屋を出る。
ドアを閉めたら大きな溜め息が零れた。
本当にこれで抱けるのか。
でも、もう後戻りしたくない。
「……衛介の馬鹿」
部屋の中から聞こえてきたので。
「馬鹿は尚紀だ」
即、返してキッチンに行く。
本当に……抱くのか。
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