1 / 6
ひとつ上の幼馴染①
しおりを挟む
「攫いに来た! 一緒に行こう!」
チャペルに突然現れた男は、花嫁を連れて行ってしまった。
まるでドラマかなにかのように。
◇◆◇
「司、今日は付き合って」
「今日“も”だろうが…」
定時で帰ってきた俺の部屋のインターホンを鳴らしたのはひとつ上の幼馴染、梁井慎一。
先月、花嫁に逃げられた男。
三年ほど付き合って結婚となり、俺も参列していた結婚式で誓いの言葉を交わそうというときに現れた男に頷いた花嫁は、ドレスを翻して花婿を置いて行き、残されたイケメンはぼんやりとチャペルの入り口を見つめていた。
「慰めてよ!」
「はいはい」
買ってきた缶ビールをリビングでひとりで飲み始める慎一。
式の翌日から毎晩の光景。
「司も座って、飲んで」
「慎一、弱いんだからあんま飲むなよ。明日に響くぞ」
「飲まないでいられないんだよ!」
そりゃそうだろうけど。
…ちょうど式から一か月か。
カレンダーを横目に見る。
慎一は昔からのめり込むタイプだったから、そう簡単には忘れられないんだろうな。
職場恋愛だった慎一と花嫁。
当然大騒ぎになったけれど、週の明けた月曜日、花嫁は普通に出社したと聞いた…すごい。
話し合いの結果、かかった費用の一切は花嫁側が持つこととなり、慎一も『幸せにね』とかなんとか言ったらしい。
でも毎晩俺のところにきて絡みまくる。
あの事件以前は、近くに住んでいても年に一、二回くらいしか会わなかった。
それが毎日会うようになり、なんだか変な感じだ。
慎一とは小中高と一緒だったから、その頃に戻ったような気分。
事情はだいぶ違うけど。
「司ぁ…飲んでよー」
「飲んでる」
「じゃあ俺を慰めて!」
「どうやって」
いつものことだけど、慎一はすぐ酔うのに酒好きなんだよな。
まあ、今は飲ませておいたほうが気持ちが楽になるのかもしれない。
俺は二十歳で初めて飲んだときから、自分で想像していたより酒は強いほうだった。
だから酔い潰れた慎一を介抱する係になってしまう。
会社の飲み会でも、酔い潰れた人をタクシーに乗せる係になることが多い。
「……ヤらせて」
「は?」
「溜まってるんだよ! でも女は嫌なんだよ!」
性欲はなくなってないのか。
まあ、二十七にして性欲なくしちゃったらそれも大変そうだ。
でも。
「なんで俺が」
「他に頼める人いないんだよー」
しなだれかかってくるのを押し返す。
でもまだ俺に擦り寄ってくる慎一は頬が赤い。
「飲み過ぎだ、馬鹿」
「飲んでなくてもヤりたい!」
「……」
「司にしか頼めないんだよ…」
俺がそういう頼まれ方に弱いことを知っていてやるのはずるいだろ。
『司にしか頼めない』、『大瀬にしか頼めない』……そう言われると俺は渋々でも頷いてしまう。
「司…だめ?」
わかっててやってるに違いない。
でもその思惑通りになってしまう俺も嫌だ。
「………一回だけだぞ」
「ありがとう!!」
昔からこんな感じだ。
なんだかんだで慎一のお願いを聞いてしまう。
慎一が、俺が断れない頼み方ばかりしてくるからなんだけど。
でも早まったかもしれない。
もっと真剣に考えるべきだったのかも。
だって俺は彼女ができたことがない。
慎一のような整った顔立ちならいくらでも彼女ができたのかもしれないけれど、俺は悲しいことに平凡な顔立ちで、しかもいつも慎一と一緒にいたからそれが際立つ。
いいな、と思った女子はみんな慎一を好きになり、それに慣れてしまった俺は感覚が麻痺して、“もう俺はずっとひとりでいいんじゃないの?”になった。
だから当然童貞だし、キスだってしたことない。
慎一の顔が近付いてきて避ける。
避けた先にまた顔が近付いてくる。
避ける。
「なんで避けるの?」
「嫌だから」
「ヤらせてくれるんじゃないの?」
「それとこれは別」
キスは嫌だ。
「あ、そっか。司はキスしたことないんだっけ。じゃあしないでおく」
「キスだけかよ。他もしないでくれていいんだけど」
「やだ。だって司がいいって言ってくれたんだから」
言ってくれたって……言わせたんだろうが。
そういう頼み方をしたんだろうが!
飛び出しそうな言葉をぐっと呑み込む。
花嫁に逃げられた男を慰めるだけ…それだけ。
「脱がせていい?」
「自分で脱ぐ」
やっぱり早まったよなぁ…でも俺にできることなら、してやりたいし。
そんな気持ちだった。
「司、大きくなったね」
「どういう意味だ」
「いや、大人の身体してるなと思って」
「……」
そりゃもう俺だって二十六だからな。
そう言おうとしたけど言えなかった。
肌にキスが落ちてきたから。
くすぐったい。
「気持ちいいとこ、どこ?」
「…知らない」
「そっか」
昂りをやんわり握られて、びくんと反応してしまう。
目を逸らして声を堪えていると、慎一の指が奥の部分に触れた。
酒がいい具合に現実感を失くさせてくれる。
指が挿入ってきて、うっとなる。
中を探られ、ほぐされる。
これは性欲処理。
だから慎一が気持ちよくなればいい。
そう思ったのに。
「あっ!」
堪えていたのに、声が飛び出す。
慎一が同じ場所に触れると電流が走るように快感が駆け巡る。
「司、すごいよ…」
「っいいから、も、いれろ…っ」
「うん」
指が抜かれて慎一の昂りがゆっくり滑り込んでくる。
ぎゅっと目を瞑って手の甲を噛む。
おかしな声が出ないように。
「噛んだら痛いでしょ」
「んぅ…あ、あっ…!」
手を口から外されてゆっくり動かれると声が出てしまう。
慎一の身体が熱いのが酒のせいなのか興奮なのかわからないけれど、とりあえず俺は役目を果たせているようだ。
奥を突かれる度に訪れる快感に、目の前がチカチカしてすぐに意識が霞んできて―――。
チャペルに突然現れた男は、花嫁を連れて行ってしまった。
まるでドラマかなにかのように。
◇◆◇
「司、今日は付き合って」
「今日“も”だろうが…」
定時で帰ってきた俺の部屋のインターホンを鳴らしたのはひとつ上の幼馴染、梁井慎一。
先月、花嫁に逃げられた男。
三年ほど付き合って結婚となり、俺も参列していた結婚式で誓いの言葉を交わそうというときに現れた男に頷いた花嫁は、ドレスを翻して花婿を置いて行き、残されたイケメンはぼんやりとチャペルの入り口を見つめていた。
「慰めてよ!」
「はいはい」
買ってきた缶ビールをリビングでひとりで飲み始める慎一。
式の翌日から毎晩の光景。
「司も座って、飲んで」
「慎一、弱いんだからあんま飲むなよ。明日に響くぞ」
「飲まないでいられないんだよ!」
そりゃそうだろうけど。
…ちょうど式から一か月か。
カレンダーを横目に見る。
慎一は昔からのめり込むタイプだったから、そう簡単には忘れられないんだろうな。
職場恋愛だった慎一と花嫁。
当然大騒ぎになったけれど、週の明けた月曜日、花嫁は普通に出社したと聞いた…すごい。
話し合いの結果、かかった費用の一切は花嫁側が持つこととなり、慎一も『幸せにね』とかなんとか言ったらしい。
でも毎晩俺のところにきて絡みまくる。
あの事件以前は、近くに住んでいても年に一、二回くらいしか会わなかった。
それが毎日会うようになり、なんだか変な感じだ。
慎一とは小中高と一緒だったから、その頃に戻ったような気分。
事情はだいぶ違うけど。
「司ぁ…飲んでよー」
「飲んでる」
「じゃあ俺を慰めて!」
「どうやって」
いつものことだけど、慎一はすぐ酔うのに酒好きなんだよな。
まあ、今は飲ませておいたほうが気持ちが楽になるのかもしれない。
俺は二十歳で初めて飲んだときから、自分で想像していたより酒は強いほうだった。
だから酔い潰れた慎一を介抱する係になってしまう。
会社の飲み会でも、酔い潰れた人をタクシーに乗せる係になることが多い。
「……ヤらせて」
「は?」
「溜まってるんだよ! でも女は嫌なんだよ!」
性欲はなくなってないのか。
まあ、二十七にして性欲なくしちゃったらそれも大変そうだ。
でも。
「なんで俺が」
「他に頼める人いないんだよー」
しなだれかかってくるのを押し返す。
でもまだ俺に擦り寄ってくる慎一は頬が赤い。
「飲み過ぎだ、馬鹿」
「飲んでなくてもヤりたい!」
「……」
「司にしか頼めないんだよ…」
俺がそういう頼まれ方に弱いことを知っていてやるのはずるいだろ。
『司にしか頼めない』、『大瀬にしか頼めない』……そう言われると俺は渋々でも頷いてしまう。
「司…だめ?」
わかっててやってるに違いない。
でもその思惑通りになってしまう俺も嫌だ。
「………一回だけだぞ」
「ありがとう!!」
昔からこんな感じだ。
なんだかんだで慎一のお願いを聞いてしまう。
慎一が、俺が断れない頼み方ばかりしてくるからなんだけど。
でも早まったかもしれない。
もっと真剣に考えるべきだったのかも。
だって俺は彼女ができたことがない。
慎一のような整った顔立ちならいくらでも彼女ができたのかもしれないけれど、俺は悲しいことに平凡な顔立ちで、しかもいつも慎一と一緒にいたからそれが際立つ。
いいな、と思った女子はみんな慎一を好きになり、それに慣れてしまった俺は感覚が麻痺して、“もう俺はずっとひとりでいいんじゃないの?”になった。
だから当然童貞だし、キスだってしたことない。
慎一の顔が近付いてきて避ける。
避けた先にまた顔が近付いてくる。
避ける。
「なんで避けるの?」
「嫌だから」
「ヤらせてくれるんじゃないの?」
「それとこれは別」
キスは嫌だ。
「あ、そっか。司はキスしたことないんだっけ。じゃあしないでおく」
「キスだけかよ。他もしないでくれていいんだけど」
「やだ。だって司がいいって言ってくれたんだから」
言ってくれたって……言わせたんだろうが。
そういう頼み方をしたんだろうが!
飛び出しそうな言葉をぐっと呑み込む。
花嫁に逃げられた男を慰めるだけ…それだけ。
「脱がせていい?」
「自分で脱ぐ」
やっぱり早まったよなぁ…でも俺にできることなら、してやりたいし。
そんな気持ちだった。
「司、大きくなったね」
「どういう意味だ」
「いや、大人の身体してるなと思って」
「……」
そりゃもう俺だって二十六だからな。
そう言おうとしたけど言えなかった。
肌にキスが落ちてきたから。
くすぐったい。
「気持ちいいとこ、どこ?」
「…知らない」
「そっか」
昂りをやんわり握られて、びくんと反応してしまう。
目を逸らして声を堪えていると、慎一の指が奥の部分に触れた。
酒がいい具合に現実感を失くさせてくれる。
指が挿入ってきて、うっとなる。
中を探られ、ほぐされる。
これは性欲処理。
だから慎一が気持ちよくなればいい。
そう思ったのに。
「あっ!」
堪えていたのに、声が飛び出す。
慎一が同じ場所に触れると電流が走るように快感が駆け巡る。
「司、すごいよ…」
「っいいから、も、いれろ…っ」
「うん」
指が抜かれて慎一の昂りがゆっくり滑り込んでくる。
ぎゅっと目を瞑って手の甲を噛む。
おかしな声が出ないように。
「噛んだら痛いでしょ」
「んぅ…あ、あっ…!」
手を口から外されてゆっくり動かれると声が出てしまう。
慎一の身体が熱いのが酒のせいなのか興奮なのかわからないけれど、とりあえず俺は役目を果たせているようだ。
奥を突かれる度に訪れる快感に、目の前がチカチカしてすぐに意識が霞んできて―――。
8
あなたにおすすめの小説
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
酔った俺は、美味しく頂かれてました
雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……?
両片思い(?)の男子大学生達の夜。
2話完結の短編です。
長いので2話にわけました。
他サイトにも掲載しています。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる