ひとつ上の幼馴染

すずかけあおい

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ひとつ上の幼馴染①

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「攫いに来た! 一緒に行こう!」

チャペルに突然現れた男は、花嫁を連れて行ってしまった。
まるでドラマかなにかのように。


◇◆◇


つかさ、今日は付き合って」
「今日“も”だろうが…」

定時で帰ってきた俺の部屋のインターホンを鳴らしたのはひとつ上の幼馴染、梁井やない慎一しんいち
先月、花嫁に逃げられた男。
三年ほど付き合って結婚となり、俺も参列していた結婚式で誓いの言葉を交わそうというときに現れた男に頷いた花嫁は、ドレスを翻して花婿を置いて行き、残されたイケメンはぼんやりとチャペルの入り口を見つめていた。

「慰めてよ!」
「はいはい」

買ってきた缶ビールをリビングでひとりで飲み始める慎一。
式の翌日から毎晩の光景。

「司も座って、飲んで」
「慎一、弱いんだからあんま飲むなよ。明日に響くぞ」
「飲まないでいられないんだよ!」

そりゃそうだろうけど。
…ちょうど式から一か月か。
カレンダーを横目に見る。
慎一は昔からのめり込むタイプだったから、そう簡単には忘れられないんだろうな。

職場恋愛だった慎一と花嫁。
当然大騒ぎになったけれど、週の明けた月曜日、花嫁は普通に出社したと聞いた…すごい。
話し合いの結果、かかった費用の一切は花嫁側が持つこととなり、慎一も『幸せにね』とかなんとか言ったらしい。
でも毎晩俺のところにきて絡みまくる。
あの事件以前は、近くに住んでいても年に一、二回くらいしか会わなかった。
それが毎日会うようになり、なんだか変な感じだ。
慎一とは小中高と一緒だったから、その頃に戻ったような気分。
事情はだいぶ違うけど。

「司ぁ…飲んでよー」
「飲んでる」
「じゃあ俺を慰めて!」
「どうやって」

いつものことだけど、慎一はすぐ酔うのに酒好きなんだよな。
まあ、今は飲ませておいたほうが気持ちが楽になるのかもしれない。
俺は二十歳で初めて飲んだときから、自分で想像していたより酒は強いほうだった。
だから酔い潰れた慎一を介抱する係になってしまう。
会社の飲み会でも、酔い潰れた人をタクシーに乗せる係になることが多い。

「……ヤらせて」
「は?」
「溜まってるんだよ! でも女は嫌なんだよ!」

性欲はなくなってないのか。
まあ、二十七にして性欲なくしちゃったらそれも大変そうだ。
でも。

「なんで俺が」
「他に頼める人いないんだよー」

しなだれかかってくるのを押し返す。
でもまだ俺に擦り寄ってくる慎一は頬が赤い。

「飲み過ぎだ、馬鹿」
「飲んでなくてもヤりたい!」
「……」
「司にしか頼めないんだよ…」

俺がそういう頼まれ方に弱いことを知っていてやるのはずるいだろ。
『司にしか頼めない』、『大瀬おおせにしか頼めない』……そう言われると俺は渋々でも頷いてしまう。

「司…だめ?」

わかっててやってるに違いない。
でもその思惑通りになってしまう俺も嫌だ。

「………一回だけだぞ」
「ありがとう!!」

昔からこんな感じだ。
なんだかんだで慎一のお願いを聞いてしまう。
慎一が、俺が断れない頼み方ばかりしてくるからなんだけど。

でも早まったかもしれない。
もっと真剣に考えるべきだったのかも。
だって俺は彼女ができたことがない。
慎一のような整った顔立ちならいくらでも彼女ができたのかもしれないけれど、俺は悲しいことに平凡な顔立ちで、しかもいつも慎一と一緒にいたからそれが際立つ。
いいな、と思った女子はみんな慎一を好きになり、それに慣れてしまった俺は感覚が麻痺して、“もう俺はずっとひとりでいいんじゃないの?”になった。
だから当然童貞だし、キスだってしたことない。

慎一の顔が近付いてきて避ける。
避けた先にまた顔が近付いてくる。
避ける。

「なんで避けるの?」
「嫌だから」
「ヤらせてくれるんじゃないの?」
「それとこれは別」

キスは嫌だ。

「あ、そっか。司はキスしたことないんだっけ。じゃあしないでおく」
「キスだけかよ。他もしないでくれていいんだけど」
「やだ。だって司がいいって言ってくれたんだから」

言ってくれたって……言わせたんだろうが。
そういう頼み方をしたんだろうが!
飛び出しそうな言葉をぐっと呑み込む。

花嫁に逃げられた男を慰めるだけ…それだけ。

「脱がせていい?」
「自分で脱ぐ」

やっぱり早まったよなぁ…でも俺にできることなら、してやりたいし。
そんな気持ちだった。

「司、大きくなったね」
「どういう意味だ」
「いや、大人の身体してるなと思って」
「……」

そりゃもう俺だって二十六だからな。
そう言おうとしたけど言えなかった。
肌にキスが落ちてきたから。
くすぐったい。

「気持ちいいとこ、どこ?」
「…知らない」
「そっか」

昂りをやんわり握られて、びくんと反応してしまう。
目を逸らして声を堪えていると、慎一の指が奥の部分に触れた。
酒がいい具合に現実感を失くさせてくれる。
指が挿入ってきて、うっとなる。
中を探られ、ほぐされる。
これは性欲処理。
だから慎一が気持ちよくなればいい。
そう思ったのに。

「あっ!」

堪えていたのに、声が飛び出す。
慎一が同じ場所に触れると電流が走るように快感が駆け巡る。

「司、すごいよ…」
「っいいから、も、いれろ…っ」
「うん」

指が抜かれて慎一の昂りがゆっくり滑り込んでくる。
ぎゅっと目を瞑って手の甲を噛む。
おかしな声が出ないように。

「噛んだら痛いでしょ」
「んぅ…あ、あっ…!」

手を口から外されてゆっくり動かれると声が出てしまう。
慎一の身体が熱いのが酒のせいなのか興奮なのかわからないけれど、とりあえず俺は役目を果たせているようだ。
奥を突かれる度に訪れる快感に、目の前がチカチカしてすぐに意識が霞んできて―――。


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