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ひとつ上の幼馴染③
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◇◆◇
慎一との関係はこれまでと同じ。
毎晩俺の部屋に来ては飲んで絡まれる。
慎一はなぜか俺を抱き締めて寝るようになった。
気が付くと俺の部屋に慎一の着替えが置かれている。
たまに自宅に帰っているけれど、ほとんど俺の部屋に泊まっている慎一は、もしかしたら寂しいのだろうか。
あの女と同棲してた部屋に帰るのが辛いのかもしれない。
「慎一、引っ越せば?」
「え?」
なんとなく酒を飲みながら切り出してみた。
慎一は疑問符を浮かべている。
「なんで?」
「同棲してた部屋に帰るのが嫌なんだろ? だったら思い切って引っ越せば? 俺も手伝うから」
「やっぱり司は優しいなぁ…」
嬉しそうに微笑むけど、そうじゃない。
優しくなくてもこの提案はすると思う。
「じゃあ司の部屋に引っ越していい?」
「は? なんでそうなる」
「だって司のそばにいたい」
なに言ってんだ。
すすす、と俺の隣に寄ってくる慎一。
「ねえ、司」
「なに」
「俺と付き合わない?」
「もう酔ったのか」
しょうがないな。
と思ってたら俺の腰に手が回った。
「酔ってない。俺、本気で司がいいんだけど」
「はい?」
「前に抱かせてもらった日から、司が可愛く見えて仕方ない」
「なに言って…」
顔を覗き込まれて、どきっとする。
慎一の瞳があまりに真剣だから。
どうしたらいいかわからなくて視線を逸らすと、慎一が苦笑する。
「昔から、困るとそういう顔するよね」
「……どういう顔?」
「『困ってます』って書いてある顔」
そりゃ困ってるからな。
どう答えたらいいかわからない。
慎一のことは好きだけど、付き合うとかそういう好きなのかどうか、はっきりしない。
「俺が可愛いはず、ないだろ」
「始まった。司の自分否定」
「……」
「でもそういうときでも、なんて言ったら司が頷くか、俺は知ってる」
俺の腰を抱く慎一の手に力がこもる。
耳元に顔が近付いてきて。
「司じゃなきゃだめ。司がいい」
「っ…! ずるいだろ、それは…っ」
「司にしかこんなこと言わない」
俺だけって言われると、くらっとなる。
なんでだめなんだかわからなくなる。
「司はさ、誰かに求められたいんだよね」
「んっ…」
耳元で囁きながら、反対の耳たぶを指でなぞられる。
身体の中心に熱が灯って疼く。
「俺は司を求めてるよ」
「…っ」
「司、頷いて」
「っ…だめ、だ…」
「司」
「だめ……だめ、だ…」
刺激が強過ぎてくらくらする。
そこにスマホが鳴って、天の助けと立ち上がる。
「はい」
誰からの着信か見ずに出てしまった。
それくらい慌てていた。
心臓がバクバク言ってる。
慎一のほうを見られない。
「あ、母さん? なに?」
『なにじゃないわよ、誰かわからないで出たの?』
「うん、ごめん」
『いい話があって電話したの』
「なに…え……」
なんか面倒なことがまた降ってきた。
「おばさん、なんだって?」
「いや、たいしたことじゃない」
本当はかなりたいしたことだけど。
母からの用件は、俺にお見合いをしろとのことだった。
だってそうじゃなきゃ一生相手見つからないよって。
なにそれ。
両親なりに心配してくれてのことだろうけど、慎一にあんなことがあって二か月ちょっとしか経ってないのに。
もうちょっと時間を見てってならないのか。
「俺、もう寝たい」
「じゃあ俺も寝る」
俺がベッドに横になると、当然のように慎一も俺の隣に寝る。
こういうのが当たり前になってるってこと、父さんも母さんも知らないんだよな。
いや、俺が毎日慎一と会ってること自体、知らないだろう。
スマホが短く鳴る。
見ると母さんからのメッセージ。
お見合い日時と場所が書かれている……俺、会うなんて一言も言ってないのに。
「なにそれ」
慎一が横からスマホを覗き込む。
「見るなよ」
「見えたんだよ。その日、出かけるの? おじさんとおばさんと外で食事でもするの?」
「いや、お見合いだって」
「は?」
びっくりしてる。
そりゃ驚くだろう。
俺だって驚いてる。
「え…司、お見合いするの?」
「なんかよくわかんないけど会えって言われた」
「なんで断らないの? 俺じゃだめなの?」
「なんでって言われても…」
諾否を言う間もなかった。
一番しっくりくる言葉が、“強制”じゃないか。
「やだよ、司…お見合いなんてしないで」
「そう言われても…」
「じゃあ行けないようにすればいいんだね?」
「え?」
慎一が俺の手を掴む。
あまりの力の強さに顔が歪む。
「痛いって…離せよ」
「嫌だ。司を閉じ込めて絶対行かせない」
「なに言って…」
「俺、さっき言ったよね? 司と付き合いたいって」
「あれは…」
「本気なんだけど。本気で司が好きなのに、司はお見合いなんてするの?」
「……」
そう言われても。
俺にはよくわからないし。
答えを返せずにいると、慎一が俺を抱き締める。
「お願い、俺以外の誰のものにもならないで。一生俺がそばにいるから、司も俺のそばにいて」
「……そんなの…」
なんか違うんじゃないか。
慎一はただ寂しさを埋めたくて俺を求めてるだけに感じる。
あの日、抱いた相手が俺だったから俺しか見えないと思い込んでるだけで、俺以外だったら……。
「……?」
俺以外だったら…?
胸が引き攣る。
慎一が俺以外を抱いて、その相手にのめり込んで。
想像しただけで心臓が嫌な音を立てる。
「司、どうしたの?」
「………」
「司?」
「……腕、痛いから」
離せ、と強く言って離させる。
慎一に背を向けると、背後から包むように抱き締められた。
「司…」
「……」
「ごめんね、司」
「……」
なにを謝ってるのかわからないけど、とりあえず今は寝る。
明日になったら慎一も冷静になっているだろうと考えて。
……………
…………
………
……
…
翌日、目を覚ますと慎一はいなかった。
耳に残る『ごめんね』だけが、俺を包んでいた。
慎一との関係はこれまでと同じ。
毎晩俺の部屋に来ては飲んで絡まれる。
慎一はなぜか俺を抱き締めて寝るようになった。
気が付くと俺の部屋に慎一の着替えが置かれている。
たまに自宅に帰っているけれど、ほとんど俺の部屋に泊まっている慎一は、もしかしたら寂しいのだろうか。
あの女と同棲してた部屋に帰るのが辛いのかもしれない。
「慎一、引っ越せば?」
「え?」
なんとなく酒を飲みながら切り出してみた。
慎一は疑問符を浮かべている。
「なんで?」
「同棲してた部屋に帰るのが嫌なんだろ? だったら思い切って引っ越せば? 俺も手伝うから」
「やっぱり司は優しいなぁ…」
嬉しそうに微笑むけど、そうじゃない。
優しくなくてもこの提案はすると思う。
「じゃあ司の部屋に引っ越していい?」
「は? なんでそうなる」
「だって司のそばにいたい」
なに言ってんだ。
すすす、と俺の隣に寄ってくる慎一。
「ねえ、司」
「なに」
「俺と付き合わない?」
「もう酔ったのか」
しょうがないな。
と思ってたら俺の腰に手が回った。
「酔ってない。俺、本気で司がいいんだけど」
「はい?」
「前に抱かせてもらった日から、司が可愛く見えて仕方ない」
「なに言って…」
顔を覗き込まれて、どきっとする。
慎一の瞳があまりに真剣だから。
どうしたらいいかわからなくて視線を逸らすと、慎一が苦笑する。
「昔から、困るとそういう顔するよね」
「……どういう顔?」
「『困ってます』って書いてある顔」
そりゃ困ってるからな。
どう答えたらいいかわからない。
慎一のことは好きだけど、付き合うとかそういう好きなのかどうか、はっきりしない。
「俺が可愛いはず、ないだろ」
「始まった。司の自分否定」
「……」
「でもそういうときでも、なんて言ったら司が頷くか、俺は知ってる」
俺の腰を抱く慎一の手に力がこもる。
耳元に顔が近付いてきて。
「司じゃなきゃだめ。司がいい」
「っ…! ずるいだろ、それは…っ」
「司にしかこんなこと言わない」
俺だけって言われると、くらっとなる。
なんでだめなんだかわからなくなる。
「司はさ、誰かに求められたいんだよね」
「んっ…」
耳元で囁きながら、反対の耳たぶを指でなぞられる。
身体の中心に熱が灯って疼く。
「俺は司を求めてるよ」
「…っ」
「司、頷いて」
「っ…だめ、だ…」
「司」
「だめ……だめ、だ…」
刺激が強過ぎてくらくらする。
そこにスマホが鳴って、天の助けと立ち上がる。
「はい」
誰からの着信か見ずに出てしまった。
それくらい慌てていた。
心臓がバクバク言ってる。
慎一のほうを見られない。
「あ、母さん? なに?」
『なにじゃないわよ、誰かわからないで出たの?』
「うん、ごめん」
『いい話があって電話したの』
「なに…え……」
なんか面倒なことがまた降ってきた。
「おばさん、なんだって?」
「いや、たいしたことじゃない」
本当はかなりたいしたことだけど。
母からの用件は、俺にお見合いをしろとのことだった。
だってそうじゃなきゃ一生相手見つからないよって。
なにそれ。
両親なりに心配してくれてのことだろうけど、慎一にあんなことがあって二か月ちょっとしか経ってないのに。
もうちょっと時間を見てってならないのか。
「俺、もう寝たい」
「じゃあ俺も寝る」
俺がベッドに横になると、当然のように慎一も俺の隣に寝る。
こういうのが当たり前になってるってこと、父さんも母さんも知らないんだよな。
いや、俺が毎日慎一と会ってること自体、知らないだろう。
スマホが短く鳴る。
見ると母さんからのメッセージ。
お見合い日時と場所が書かれている……俺、会うなんて一言も言ってないのに。
「なにそれ」
慎一が横からスマホを覗き込む。
「見るなよ」
「見えたんだよ。その日、出かけるの? おじさんとおばさんと外で食事でもするの?」
「いや、お見合いだって」
「は?」
びっくりしてる。
そりゃ驚くだろう。
俺だって驚いてる。
「え…司、お見合いするの?」
「なんかよくわかんないけど会えって言われた」
「なんで断らないの? 俺じゃだめなの?」
「なんでって言われても…」
諾否を言う間もなかった。
一番しっくりくる言葉が、“強制”じゃないか。
「やだよ、司…お見合いなんてしないで」
「そう言われても…」
「じゃあ行けないようにすればいいんだね?」
「え?」
慎一が俺の手を掴む。
あまりの力の強さに顔が歪む。
「痛いって…離せよ」
「嫌だ。司を閉じ込めて絶対行かせない」
「なに言って…」
「俺、さっき言ったよね? 司と付き合いたいって」
「あれは…」
「本気なんだけど。本気で司が好きなのに、司はお見合いなんてするの?」
「……」
そう言われても。
俺にはよくわからないし。
答えを返せずにいると、慎一が俺を抱き締める。
「お願い、俺以外の誰のものにもならないで。一生俺がそばにいるから、司も俺のそばにいて」
「……そんなの…」
なんか違うんじゃないか。
慎一はただ寂しさを埋めたくて俺を求めてるだけに感じる。
あの日、抱いた相手が俺だったから俺しか見えないと思い込んでるだけで、俺以外だったら……。
「……?」
俺以外だったら…?
胸が引き攣る。
慎一が俺以外を抱いて、その相手にのめり込んで。
想像しただけで心臓が嫌な音を立てる。
「司、どうしたの?」
「………」
「司?」
「……腕、痛いから」
離せ、と強く言って離させる。
慎一に背を向けると、背後から包むように抱き締められた。
「司…」
「……」
「ごめんね、司」
「……」
なにを謝ってるのかわからないけど、とりあえず今は寝る。
明日になったら慎一も冷静になっているだろうと考えて。
……………
…………
………
……
…
翌日、目を覚ますと慎一はいなかった。
耳に残る『ごめんね』だけが、俺を包んでいた。
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