ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

『俺』

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『俺』がノアの代わりに見張りをして直ぐ休憩所の中から寝息が聞こえてきた。


『皆寝た様…ん?』

「ノア君は…寝ないの?」


ノアの元にクロラがやって来た。
クロラはノアの眼を見て一瞬ハッとする。


『そのノアは丁度寝た所だ。』

「そ、そうですか…あ、あなたは…何て呼んだら良いの?」

『んー?好きに呼んで貰って良いぜ、明確な名前が無いんでな、いつも通りノア君…いや、君付けはちょっとな…
ノア、中の人、あいつは専ら『俺』の事『俺』って言ってるがな…』

「じ、じゃあ俺さんで…あの、俺さんって何者なんですか?」

『何者、か…
嬢ちゃんは【弓】だからあまり分からないだろうが、【適正】の中には詳しい説明を要するものがある、【召喚】【人形師】【勇者】等だな。
案内役とかチュートリアルなんて言われたりするがその中でも【勇者】や【ソロ】は力の根源的存在が必要になる。』

「それが、俺さん、ですか?」

『そう言う事。
【勇者】の適正は授かったその瞬間から何もしなくても勝手に強くなっていくから良いが、【ソロ】はちと特殊でね、力は『俺』から与えてはいるがそれ以外の体の機能は本人由来が殆どだ。
ある程度体を作っとかないと本人の体がもたないから『俺』がそこも指導する。』

「だからノア君あんなに強いんですね。」

『いや、あいつ自身の頑張りが殆どだがね。』

「ノア君の?」

『あぁ、ダンジョンに入った時聞いたろ?
あいつが11歳まで体が弱かった、って。』

「あ、はい。」

『『俺』が目覚めた頃…大体11歳位か、あいつの状態は酷いもんだった。
剣を振るとかそれ以前の話だ、体はガリガリで体重も今の半分以下、食事する時に匙を持つ事すら儘ならなかった。
見るに見かねて『俺』の力の一部を分け与え、ある程度元気になったわ良いが冒険者になる何て考えられなかった。』

「そんなに…」

『本来【適正】の儀を受ける前に出て来る事は禁止なんだが、体を借りてあいつの親御さんに言ったんだ。
これから授かる【適正】の事。
『俺』からあいつに冒険者を強制する事はしない事。
もし冒険者になりたいと言ったら最大限手助けしてやって欲しい、という事をな。
そしたらあいつ俺の予想以上に鍛えちまうんだ、あいつが頑張ってんなら中の『俺』も応えなきゃ駄目だろ?』

「ふふっ、優しいんですね俺さん。」

『優し…くはないな、当初は冒険者を諦めさせる為に親御さんに話した様なもんだしな。』

「でも今だって力を貸してるじゃないですか、十分優しいですよ。」

『優しいねぇ…あんまピンと来ないがそう言う事にしておこう。
さ、嬢ちゃんも早く寝な寝な、下層に行くんだからゆっくり休んどけ。』

「はーい、それにしても俺さんがお喋りな人で良かったです。
またノア君の事聞かせて下さいね。」


そう告げて休憩所の中へ戻るクロラ。


『お喋りねぇ…あいつが喋らな過ぎなだけだ。』


ぽつりと一言溢した後見張りを再開する。


『あ、盾鹿の解体やっとくか…』








「んぬっ…ふぁ~~ぁむ。」ポキポキポキ


ノアが目を覚まし体を反らす。


(『お、起きたか、おはようさん、盾鹿の解体やっといたぞ。』)

(おはよう、あれ?盾鹿の解体出来たっけ?)

(『解体の内容は普通の鹿と変わらないんだ、何て事無かったぞ。』)

(そりゃ助かる。)

(『んじゃ後よろしく、美味い飯期待してるぜ。』)


そう言って立ち上がると休憩所の中を確認。
既に全員起きてはいるがボーッとしてまだ寝惚けている様だ。


「おはよう。」

「おはよう…」
「おはー…」
「おあよう…」
「おはようノア君。」


早速ノアは休憩所の隅っこでアイテムボックスから取り出したキッチンを展開。


「こんにちはノア様。魔力残量は3割程です。」

「こんにちは。」

(こんにちは、って事は外は昼頃か…)

「フライパン2つを温めといて、後手にクリーン。」

「畏まりました。」


ノアはアイテムボックスから解体後の盾鹿の肉を取り出す。

(お、綺麗に出来てる。)

(『当たり前だ、ずっと解体作業見てきたんだからこれ位楽勝だ。』)


まな板の上に鹿肉を置き、1人分の量に切る。


「ノア様、適温になりました。」


合図が来たのでそれぞれのフライパンに獣脂を一欠片入れ、肉を焼く。


ぢゅううぅぅぅっ! じゅううぅぅぅっ!


(さて、この間に昨日の蛇肉スープの配膳でも…)

「ノア君何か手伝える事あるかな?」

「あ、クロラさん。
それでは昨日のスープを皆に運んで貰って良いですか?」


そう言ってアイテムボックスからスープが入った皿を台に置いていく。
それを持ってクロラは皆に配膳する。
受け取った3人は各々スープを啜る。


「うめぇ…」
「染みるー」
「染みるわね…」

(近所のじいちゃんばあちゃんみたいな事言うな…)


等と思いつつフライパンを振り、肉をひっくり返し、軽く塩コショウを振る。
暫し焼いた後一旦まな板に上げ、食べやすい大きさに切り皿に盛り皆の元へ持っていく。


「はい、お待ちどうさま、盾鹿のステーキです。」


皆の前に盾鹿のステーキ2枚分を置く。


「「「「いただきまーす。」」」」

(朝からステーキはどうかとも思うが、スープの食欲増進効果で何とかなるだろう。)


ノアも含め皆、盾鹿のステーキを頬張る。


「お、旨い!」
「柔!美味!」
「うめー!」
「結構さっぱりしてるのね。」
「ふも!」


脂肪が少なくクセも普通の鹿肉よりも少ない為あっという間に平らげた一同。
塩コショウでこれだけ美味しいのだからもう少し食材を買い込んでおけば良かったと少し後悔する。

ちなみに盾鹿のステーキの食事効果は防御力上昇(中)、受け流し効果(小)、スタミナ継続回復(中)であった。
だが蛇肉のスープも一緒に食べた事で効果が上昇した。


毒耐性(中)、受け流し効果(中+小)→(大)、食欲増進、体力、自然治癒力継続回復(大)、防御力上昇(小+中)→(大)、スタミナ継続回復(中)


「さて、僕からはやれるだけの事はやりました。
準備が済み次第下層に向かいましょう。」

ノアの一言で各自準備を開始する。
ジェイルはカイトシールドを構え、剣を2~3回振って動きを確認し、ロゼも同様に二刀を構えつつ体を動かす。
ポーラは特段変わりは無く、落ち着いている。
クロラは弓、矢、装備を頻りに確認し、屈伸運動をしたりと入念に体を解している。


「凄いな…体が軽く感じる…」

「うん…今なら1人でバトルベアと戦えそーな気がする。」

「ロゼ、油断は禁物よ。」

「でも分かるよ、体軽いし動いても全然疲れないし…」

「この食事効果は長くて2時間程です。
いつも以上に動けるかもしれませんが皆無理は為さらずに。
ジェイルさん、探索の進退等の判断等お願いします。
ロゼさん、クロラさん、下層の樹上に何がいるか分かりませんので注意して下さい。
出来ればポーラさんを護衛する様な形で最初は動いた方が良いかもしれません。」

「了解。」
「分かったわ。」
「りょーかい。」
「うん、分かった。」

「それじゃ向かいましょうか。」
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