ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
118 / 1,117
旅立ち~オードゥス出立まで

ダンジョンに入って22時間

しおりを挟む
ダンジョンに入って22時間。

下層手前で即席の休憩所を作ったノアは早速調理を開始する。


「あ、それがさっき言ってたキッチン?」

「はい、そうです。」

「え?それが?ただの黒い箱にしか見えないが…」


事前に話を聞いてないとこの箱がキッチンだとは誰も思わないだろう。
ノアが黒い箱に"オープン"と唱えると光が走りガチャガチャと音を立て展開されていく。


「「「「おおー。」」」」

「今晩はノア様、魔力残量は残り6割です。」

「「「「うわー喋ったー。」」」」


ノアが展開が終わったキッチン内に入り指示を出す。


「とりあえず僕の全身にクリーン掛けて、あと解体するから幅広目にまな板展開出来るかな?」

「全身にクリーン掛けますね。
解体対象をまな板に出して下さい、対象に合わせてまな板のサイズを調節します。」


キッチンにそう言われ、アイテムボックスからズルリと頭部が無い毒大蛇を取り出す。


「おお…でかいですね…」

「え?見えてるの?まだ置いてないんだけど。」

「あ、申し訳ありません置いて下さい。」


妙に人間臭いキッチンに促され毒大蛇をまな板上に置いていくが流石に長いのではみ出してしまうが仕方ないだろう。

ノアは太腿から刺突武器を取り出しクリーンを掛けた後、毒大蛇の背骨に沿って縦に切れ目を入れ、開いていく。
身に指が食い込む程押さえ付け、首の根元から徐々に皮を剥いでいく。


「血が出るから床に垂れない様に排水頼むよ。」

「畏まりました。
皮を剥いだ所からクリーン掛けますか?」

「あぁ、お願いします。」


尻尾の先まで皮を剥ぎ、内蔵を取り出す。
この個体が何も食べてなくて良かった、と心の中で少し安堵する。

ちなみにこの時剥がした皮や内蔵はアイテムボックスに仕舞う。

クリーン完了を待つ間ノアはキッチン手を付け魔力を流す。


「クリーン完了しました。」

「ありがとう。これから骨を外すから外した所からどんどんクリーン掛けていって。」

「畏まりました。」


そこからノアは首から尻尾の方まで骨を毟っていく。この骨もアイテムボックスへ。


「身の方は普通の蛇とあまり変わらないんだな。」

「その様ですね。」

「フライパン1つ中火で温めて貰えるかな?」

「畏まりました。」


フライパンが温まるまでの間毒大蛇の身をどんどん切っていく。


「もうよろしいかと。」

「ああ、ありがとう。」


アイテムボックスから塩コショウと獣脂を取り出し一欠片入れて蛇肉を焼き、一振程塩コショウをぱらり。

ぢゅううぅぅぅっ! パチッパチッ!


「ノア君手際良いね。」

「料理は昔からやってたからね。」

「今は何してるんだい?」

「とりあえずまず焼いてみて味をみようかなってね。
あ、大鍋に水を張って下さい、量は大鍋の半分程で。」

「畏まりました。」


台からニュッと大鍋が出て来て水が張られていく。


「皆さんはキノコ大丈夫ですか?」

「普通だ。」
「イケる口だよ。」
「大好きだよ。」
「大好物だぜ少年。」


大丈夫との事なので使っていきましょう。
アイテムボックスから乾燥出汁とあれからまた増えていた無限キノコを10個程取り出し柄と傘に分けてどんどん切っていく。

スッタンタンタンタンタンタンタンタンタン

「大鍋中火に掛けて下さい。」

「畏まりました。」


フライパンを振ってじっくり焼いている蛇肉をひっくり返す。
そして追加で塩コショウをぱらり。
程よくきつね色になった蛇肉を見てポーラがそわそわしだす。


「始め蛇肉を食べるって言った時どうかと思ったけどこりゃ堪らん…」


他の3人も同様に焼かれる蛇肉に釘付けの様だ。

切り終わった無限キノコと乾燥出汁を大鍋に投入、<調理時間短縮>を発動しあっという間にコトコトと煮込まれていく。


「そろそろ良いかな、皿を一枚。」

「はい、どうぞ。」


両面綺麗なきつね色に焼かれた蛇肉を皿に上げる。


「フライパンをクリーンして、フォーク貰えますか?」

「了解しました。こちらをどうぞ。」


フォークを手に取ったノアは大振りに切り、口へ運ぶ。

ホクッ  ムグムグムグッ…    ゴクン

ノアの反応を食い入る様に見る一同。
これで異変があったりでもしたら皆は食べられないのだから。


「うん、美味しい、<毒耐性>も発動してませんし皆が食べても大丈夫でしょう。
フォークを追加で4本取り出して下さい、他の料理が出来るまで少し摘まんでて下さい。」


ノアから食べても大丈夫と太鼓判を押された事で食べ始める一同。


「んん!?美味っ!」
「うわー焼いただけなのに美味しー!」
「んめぇ!」
「ふもも!?」


中々好評の様なのであと2枚程焼こう。
ちなみにただ焼いて塩コショウで味付けしただけだが毒耐性(中)と受け流し効果(小)、食欲増進の食事効果が発動していた。


「フライパンをもう1つ温めて下さい。」


ノアはフライパンに蛇肉を乗せ、再び焼き始める。
更に一口大に切った蛇肉を次々と大鍋に投入、<調理時間短縮>でトロトロになるまで煮込まれる。

ノアは匙を取り出しスープを一口。


「うん、こっちもこんなものかな、深皿4枚とお玉頂戴。」

「はい、どうぞ。」


ノアは深皿に蛇肉を4つずつ盛り、上からスープを掛ける。
既に蛇肉のステーキはペロリと食べきられており、スープを今か今かと待ちわびていた様で、受け取ると直ぐ様蛇肉を頬張る。

余程美味かったのか、いつも冷静なポーラが床をバシバシと叩いている。
他3人もただただ無言で食べ続けている。

キッチンに戻ったノアは大鍋を一旦端に避け、フライパンを取り出し、下層に行く前に食べる分の蛇肉のステーキをどんどん焼いていく。

火に掛けている間に深皿にスープを次々寄せていく。
最終的に8皿分になったので1皿だけ残し残りはアイテムボックスへ。

ステーキを焼く合間にスープを頂く。


ズズズッ…   「うわ、何だこりゃ。」


ノアが驚いたのも無理は無い、食事効果が5個も付いていたからだ。


食事効果:毒耐性(中)、受け流し効果(中)、食欲増進、体力、自然治癒力継続回復(大)、防御力上昇(小)


皆の方を見ると体力、自然治癒力継続回復(大)の効果なのか体が淡く光っていた。


「はい、追加のステーキ2皿ですどうぞ。」


食欲増進の効果なのか皆の食欲が全く落ちないのでアイテムボックスを開き、煮込みハンバーグサンドを渡しておく。


「足りない時はそちらを食べて下さい、残りは出発前にしましょう。」

「盾鹿はどうするんだい?」

「流石に食事中に解体はしないつもりなので後で合間見てやっておきますよ。」

「すまないな、こちらは食べてばかりで…」

「あぁ、気にしないで下さい。自分は結構もてなすのが好きみたいで、こうやって振る舞ってるのが楽しいんですよ。」


元々ノアは自分が作った料理を食べて貰う事が好きで料理を始めた為、自分が食事をするのは二の次で振る舞う事に徹している。
その為か調理中もチラリとクロラが食べてる所を見て癒されたりしている。


「あー美味しかったー。」
「久々にこんなガッツリ食べたかもー。」
「ダンジョンの中でこんな食事を食べられるとは思わなかったわ…」
「むふー…(満足)」

「本当よく食べたよね。後片付けしますので休む準備してて良いですよ。」

「少年、宿屋を開業しないかい?常連になるよ。」

「はは、お世辞でも嬉しいよ。」


「お世辞じゃないんだけどな」という顔をするポーラを尻目に片付けを行う。
他の皆は装備を緩めたりして寝る準備を始める。

キッチンを仕舞い、後片付けを終えたノアは休憩所の外に出て見張りを行う為、簡単な椅子を作りドカッと座る。


(『よぅ『俺』ご苦労さん、毒大蛇っての中々美味かったぜ。』)

(そりゃどうも。)

(『今日は気分が良い、それに体力、自然治癒力継続回復(大)のお陰で回復力が上回ってるから俺が前に出て見張りやっといてやる『俺』は寝ておけ。』)

(おや、何でまた。)

(『何年一緒にいると思ってんだ『俺』、気ぃ張り過ぎだ。
そんなんじゃもたないぜ、今の内寝溜めしておけ。』)

(それじゃお言葉に甘えて…)


ノアは瞼を閉じる、再び目を開けるとノアの眼が赤黒くなっていた。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...