ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

ルーシー姉妹

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ルーシー姉妹は2人共全く同じ動作で駆け出し、【獣化】した犬獣人に肉薄。

キィン!

刀の澄んだ音が響き渡ったかと思うと犬獣人は同時に崩れ落ちる。
犬獣人の両腕両脚を見ると筋に対して刀傷が走っていた。
筋を断った事で立つ事も手を動かす事も出来ずにいた。


「「あの商人の手下ですので無力化を選択しました。」」

『ふふん、上出来だ。』 

「「ノア様、もうそこまで来ていますよ?」」


ルーシー姉妹に言われ、横を見るとノア目掛けて突進してくる犬獣人が迫っていた。
しかし落ち着き払った『俺』は双子に告げる。


『よく覚えときな、正気を失った犬の躾はこうやるんだ、よっ!』


ゴギャッ!  ズゴバァッ!


振り上げた腕を犬獣人の突進に合わせて後頭部に叩き付け、悲鳴を上げる間も無く石畳を砕く程の勢いのまま突っ伏す。


『良いか?これが"伏せ"だ。』


絶対違うと思いながらもなんとか苦笑いを返すルーシー姉妹。


『さてと…おう、残念だったな。
お前さんの手下はこの通り戦闘不能だ。』

「おい、良いのか?化け物!
私を捕まえたらこの街周辺にいる野盗が全て結集して襲って来るかも知れんのだぞ?」

『いや、襲って来るぞ?』

「は?」

『お前さんの計画は穴が多くって、遅かれ早かれ捕まるだろうから、お前さんからの物資支給が止まったら即実行なんだと。
お前さんが雇った【拳士】のガーナードが全部ゲロったぞ。』

「な、何…」

『あと『俺』の事を化け物と呼ぶなつるっぱげ!』

ビシッ!「うごっ…」

商人の発言にイラッとした『俺』は顎の先端にデコピンを放ち、意識を吹き飛ばす。
ちなみにアリが目を覚ましたのは王都の牢屋の中だという。


ノアが前に出て『俺』がすごすご奥へ引き下がった後、レストに連絡をする。


「レストさん、内通者、手下を確保。
繰り返します、内通者、手下を確保しました。」


【よーし!良くやった!皆聞いた通り内通者確保!作戦の第一段階終了!】


レストさんからの連絡が入ると街の各所から冒険者の歓喜の声が上がる。
目に見える範囲の兵士の中には肩の荷が降りたと言いたげな者も何人か確認出来る。


【安心するのはまだ早いぞ!情報通りであれば街の外にいる野盗に内通者確保を気取られた場合、街に攻めて来る事になっているらしい。
手当たり次第に物資を奪われ、街が滅ぶ所か、第2第3の野盗の食い物にされる街を生むだけになる。】


この街にいる冒険者、職員全員がレストの話に耳を傾けているのか、不思議な程静まり返っている。


【今は可能な限り情報が欲しい。
この街にいる【隠密】【忍】【義賊】【盗賊】又は情報収集能力のある者は夕暮れ迄の僅かな時間、出来る限りの探りを入れて頂きたい!
それでは情報が入り次第追って報告する。】


レストからの報告が終わると各門に数人の冒険者が集まり、姿を消して街の外へと繰り出していった。


「ノア君私も行くとするよ。」

「お願いします。それと頼みがあるのですが…」


そこからノアは朧に2、3伝え、朧は了承してくれた。


「それで行けば良いのだな、了解した。」


そう言って朧は街の外へと駆け出して行った。


「お疲れ様、ノア君。」

「お疲れ様ですジョーさん。
あの男、商人じゃ無かったんですね。
もしかしてやたら調査が早かったのはそれが理由ですか?」

「そう言う事。
もう1人候補がいたでしょ?ダールって言う人。
彼はちゃんとした商人だから調査に3時間掛かったんだけど、アリディルダの方は2分で終わったってさ。
調査した者曰く、奴は馬車の中に雑に偽造書類やらを放ってあったらしいから何も苦が無かったみたい。」

「本当、よく今まで捕まらなかったな…」

「残りの時間で集めた武器や防具の隠し場所を割り出して今頃はもう押収しているだろうね。」

「あれ?武器や防具以外ありませんでしたか?
その、財布やら所持品を入れたカバンとか…」

「見付かってはいないけど、まぁ時間の問題だろうね。」


ノアとジョーがこうして会話をしているまさにその頃、街の周辺では色々と事態が動き始めていた。







「はぁ、はぁ、はぁ…」

「おぅ!お前は南門の方の奴か?」

「ああ、報せがあって来た、あの商人が捕まった。」

「お!?マジか!じゃあさっきの叫び声みたいなのはそう言う事か!」

「ああ、それで冒険者共が動き始めてる、例の計画をやるなら今日しか無いだろう!」

「分かった、他の奴等にも伝えておく。
お前も他の奴に伝えておけ、"北門に集結しろ"ってな!」

「夕方だったか!」

「そうだ、荷物満載の商人の馬車を襲い、その流れで街に攻め入るってな!」

「あいよ!」

(夕方に北門集結ね…ふむふむ。)


お気付きの方もいると思うが"商人が捕まった"と言った野盗は変装した朧である。

変に誤った事を言うよりも本当の事を話した方が相手から情報を引き出し易い場合もある。
又矢継ぎ早に話し掛け、考える余地も与えない様に誘導すると相手が混乱をしてポロっと話してしまう場合もあるのだが、元々口数が少ない朧には厳しいと判断して前者を選択した。

ちなみにノアは以前、母親から矢継ぎ早に質問され、当時好きだった子の名をポロっと喋ってしまった過去を持つ。



良い情報を手に入れた朧は他の冒険者に遭遇しない様注意を払いつつ残り2ヶ所の野盗らに情報を流していった。





そしてあれよあれよという間に空が赤みがかって来た頃、冒険者ギルドに街の全ての冒険者が集結していた。

中心にテーブルを寄せ集め、周辺地図を置く、そのテーブルの前にギルド長ワークス、レスト、それと50代位のおっちゃんが立っていた。

更にその3人の周囲にこの街で活動し、この日、情報を集めてきた総勢28人の【隠密】【忍】【義賊】【盗賊】が囲み、その周りを新人、中級冒険者が取り囲んでいた。

すると初見となる50代のおっちゃんが口を開く。


「初めて見る者もいるだろう。
時間も無いだろうから手短に話すが、私はこの街『アルバラスト』の領主のアルバだ。」


この発言を受け、周囲が少しざわつくも直ぐに静寂が訪れる。


「皆知っての通りこの街は、散々と言って良い程野盗からの被害を被って来た。
私の昔の情報網を使っても良い成果は出なかった…
周辺の街からは『野盗の財布』『野盗生産施設』等と呼ばれ、非常に腹立たしい事この上無い。
昨日の昼間に野盗が3人捕まったというだけで非常に喜んだものだがそこから矢継ぎ早に情報が入ってきた、内通者、今まで見付けられなかったからくり、街襲撃の情報…
そこにいる冒険者、ノア君、本当にここまで事を運んでくれて感謝のしようも無い。」


アルバの拳がふるふると震えているのが分かる。


「この街にいる各冒険者、職員達、兵士達協力感謝する。
若い者達が頑張ってくれたんだ、街襲撃の迎撃には私も参加しよう。
俺が作った街だ、野盗にくれてやるつもりは毛頭無い。」


アルバは黒の装束を身に纏ってそう言い放った。
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