ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

『アルバラスト』領主のアルバ

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『アルバラスト』領主のアルバ…元大規模義賊ギルド『救世』のリーダー【無血開城】の二つ名を持つ。
義賊、盗賊を纏め上げ、15年前に暗躍していた殺人ギルド『戮殺』を壊滅に追いやり、それと同時に数多くの仲間を失った。

『アルバラスト』と言う街は仲間内で人生の最後にこんな街を作ってみたい、という思いで作られた街である。



「手短にと言ったが少し長くなってしまったな…
皆の報告があるだろう、進めてくれ。」


領主アルバの一言で皆気を引き締めて報告を始める。


「では私、【忍】の朧から報告するわ。
野盗達は夜、商人が王都へ向かう為北門から出てきた所を攻めて来るわ、商人の馬車も多いし、例え迎撃されても遮蔽物として利用する様ね。」


「次は俺だ【隠密】のジャラだ。
内容は朧とあまり変わらないが【万能】持ちは全部で4人しかいない、既に北門に集結していたが<気配感知>で周囲を索敵していたから追跡出来なかった。」


「続いて私【義賊】のレミア。
奴等、盗った武器や防具を全て商人に渡していなかったみたいよ、野盗達皆武装して着々と準備を進めているわ。
アルバさん、あなたの話しはよく父親が話していたわ、あなたと仕事が出来て光栄よ。」


「最後は俺だな【盗賊】のベリラモだ。
憧れの存在と仕事出来るとはね…へへ。
奴等、冒険者から盗った金やら荷物やらは街から離れた小屋の中に隠してやがった。
確認しようとしたが周囲にアホみたいに罠が仕掛けられていたから回収は襲撃後だな。」


「報告ありがとう。
ふふ、こんなおっさんに憧れ持ってくれて嬉しいが、戦いからは身を引いて長いのでね、過度な期待は持たないでいてくれると助かる。
さて、他に報告は無いかな?」


このアルバからの発言に、ノアの横に立っていたジョーが名乗りを上げる。


「それじゃあ僕から1つ良いだろうか。」

「おお、ジョーさん!いつも世話んなってるよ。
紹介しよう、彼は王都周辺地域全てを牛耳っている大商人だ、彼の言葉は王都の連中より信じれるって程だ。よく覚えておいてくれ。」

「はは、大袈裟ですねぇ。
今アルバさんが紹介した通り私は商人のジョーと言う、私からの報告はこれから街を襲って来るであろう敵の総数だ。」 

「「「「え!?」」」」

「当初の予想だとこの街の周辺には144人の野盗が潜んでいるとの事だったが、私の仲間が周辺にある11の村から聞いた内容によると、各地にいる野盗がこの街に集結して来ているらしい。
どういった方法かは分からないが、何か合図でもあったのだろう。
報告を受けた段階では238人の野盗が集まってきているらしく、今も増え続けているとの事だ。
恐らくそろそろ報告が来るんじゃないかな?」


その言葉の後、ギルドの扉が開き兵士が数人入ってくる。


「報告します!東西南北各防壁からの監視の者によると各所から北門に向け、野盗が集結中!
現在総数が400を突破、尚も増加中です!」


報告を受けたアルバが直ぐ様兵士に指示を飛ばす。


「報告ご苦労!北門には冒険者が向かう、その他の門には残った兵士を配備、防衛にあたれ!
そしてこの街にいる商人全てに街から出ない様通達!」

「それは僕が伝えておいたよ。」


ジョーがアルバに報告。 


「相変わらず手際が良くて助かります。
直ぐに全ての門を閉め、迎撃態勢を取れ!
くそっ戦略を考える暇も無い!」


吐き捨てる様に言うアルバに声が掛かる。


「すみません、最前線に僕が出ても良いですか?」


ノアが手を上げるも直ぐに否定的な声が上がる。


「いくら何でも無茶だ、死にに行く様なものだぞ!?」

「君の実力が分からない以上無謀な事はさせられない!」


「流石に無理か」と言った顔をするノアに隣のジョーが言葉を発する。


「アルバさん、彼の頼みを聞いて貰えないかな?」


ジョーからの発言に言葉が詰まるアルバだが


「彼はつい最近オードゥスで起こった100体以上のモンスターによる街への押し付けをほぼ1人で防衛し、バーサークベアと女鏖蜂、鎧蜂の単騎撃破の実績がある。
この実績だけじゃ足りないかな?」


ジョーから伝えられた内容に騒然とする一同。
するとギルドにいたレオが呟く。


「通りで強い訳だ…アルバさん、俺からも勧めるぜ、その少年は【獣化】した俺に勝ったからな。」

「それに僕からも護衛の者を付けるよ、これで最前線を任せて貰えないかな?
この【鬼神】のノア君に。」

「あ、ちょっとジョーさん、その二つ名は…」

「ふ…それだけの実績とジョーさんからの推薦があるんだ、了承しない訳にはいかないな。
それじゃあ頼んだよ、【鬼神】のノア君?ただ無茶はするなよ。」


二つ名にむず痒さを感じるノアはポリポリと頭を掻く。


「さぁそれじゃ北門へと向かおうか!」


その声と共にギルドの入口や窓から次々と冒険者が北門へと向かい始める。
ノアも「さて行くか」と気持ちを切り替えた所で後ろから声が掛かる。


「ああは言ったけど無茶はしないでくれよノア君?」

「あの二つ名、結構恥ずかしいんですよ?」

「そう?お似合いだと思うけど。」

「いやいや…それより護衛って誰ですか?」

「ルーシー姉妹を付けるよ、好きに使ってくれて良いよ。
さっきの【獣化】した手下を王都の隊員に引き渡してる所だからもう少しで着くと思うよ。」

「分かりました。」


そう言ってギルドから出るジョー。
ノアも続いて街へ出ると


「おぅ、先陣頑張れよ【鬼神】!」
「【鬼神】らしい働き期待してるぜ!」
「頑張れよ【奇人】!」
「無茶すんなよ【鬼神】。」


等々今から戦いが始まるとは思えない和気藹々とした雰囲気で周囲の冒険者に出迎えられた。

(一部から違う呼び方されてる様な…)






北門に到着すると門は既に固く閉ざされてはいるが、門の向こうから圧の様な物を感じる。
ノアは<壁走り>と<縦横無尽>を発動して防壁を登ると眼前に異様な光景が広がっていた。


ちぐはぐな防具、武器を装着した500以上の野盗の集団が既に集まっており、襲撃を今か今かと待っている様だ。

下卑た笑い声や奇声を発する者が数多くおりそれが轟音となってノアの体を叩く。

遅れてアルバや他の冒険者が上がって来るも皆一様に動揺を隠せない様だ。  


「「ノア様、ジョーからの任を終え、只今参集しました。」」

「ご苦労様、僕の【適正】はご存知だと思うので僕の取り零しの対処をお願いします。」

「「御意。野盗は殺しますか?」」

「いや、不殺で頼むよ。」

「「では無血で」」

『いや、殺さない程度に壊せ。
悲鳴を上げさせろ、同種の悲鳴は不安や恐怖を増長させるのには手っ取り早いからな。
斬るのを躊躇うなら折るか、外せ、回復魔法でも時間が掛かるから丁度良いだろう。』


そう言って赤黒い眼をしたノアがルーシー姉妹に向き直ってニタリと嗤う。


「「ぎ、御意…」」


そうしているとアルバが防壁の外にいる野盗に聞こえる様に大声で叫ぶ。


「野盗共聞こえるかぁっ!散々この街で好き勝手してくれたなぁっ!
だがそれも今日までだっ!大人しく投降すれば痛い目を見ずに済むぞっ!」


この発言を受けた野盗の返答は


「馬鹿が!この数に勝てると思っているのか?
投降するのはお前らの方だぜ!ぎゃひひ!」

「全て奪って全て殺してやるぜぇ!あひひ!」

「可愛い奴もいるじゃねぇか!食うだけ食ったらアイツも頂こうぜ!」

「ぎゃははは!さっさと殺っちまおうぜ!」


等様々な嘲笑や叫び声が混じった声を上げる。

すると先頭の野盗が1人飛び出す。
それに続けともう1人、2人と次々に駆け出し、人波となって迫ってきた。


「き、来たぁ…」
「始まったか…」
「くそ…やってやるぞ…」


と後方から聞こえてくる。覚悟が固まってないのだろう。


「行きましょうか、ルーシーさん。」

「「はい!」」


防壁から飛び降り、手を付いて着地、門の前へと向かう。
防壁から朧やレオ、アルバ等の声が聞こえてくる。

ノアが先頭、ルーシーが20メル程後方で待機する形を取る。

先頭の野盗との距離が50メルまで縮まった所でノアが警告を出す。


「最後の警告だ!死ぬ覚悟がある奴はいるかっ!」

「ひゃっはぁ!ガキが何言ってやがる!お前こそ殺される覚悟はあんのかぁっ!」

「警告はしたからな!」


ノアは太もものカランビットナイフを両手に持ち、前へと進む。 
野盗とノアとの距離が20メルまで縮まった時だった、先頭の野盗の姿が忽然と消えたのだ。
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