ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

音を立てて砕け散った

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振り下ろされたナイフが『大海獣の柔肌』に接触すると、硬い物に叩き付けたのかと錯覚する程の感触と共にナイフの刃が音を立てて砕け散った。

バギンッ!「「「「えっ!?」」」」

驚いたノアだが、直ぐ様『大海獣の柔肌』に触れてみる。

ブヨンブヨン「あれ?柔らかいな…」

触ってはみたものの、取り出した時と変わらず柔らかいままであった。

この様子を見ていたジョー達や【防具】ギルドの面々、デオも素材に触れてみるが、皆首を捻る。

が、ガーラが何か思い付いた様に声を上げる。


「おぅノアよ、お前さん強化魔法か何か掛けてこの素材ぶん殴ってみてくれないか?」

「これを、ですか…まぁ良いですけど…」


そう言うとノアは右腕のみに赤黒いオーラを纏わせて拳を握る。

『俺』から力を譲って貰ってから、部分的にオーラを纏わせたり、発現させる事が可能になった。
とは言え【鎧袖一贖】程の強化には至らないが、疲労感もそこまで無いので使い勝手は良い。


「じゃあいきますよ?」

「おぅ、やってくれ。」ペタリ

「ああ、そう言う事か。」ペタッ


殴る直前でガーラが『大海獣の柔肌』に触れたのを見て、何やら理解したデオも素材に触れる。


「お、りゃっ!!」ズシンッ!

「「うぉっ!?」」
「きゃっ!!」


ノアが素材をぶん殴ると、周囲を揺れが襲う。
これ程の威力とは思っていなかった【防具】ギルドの面々が悲鳴を上げる。


「「「あ。」」」


殴った本人であるノアと素材に触れているデオ、ガーラが一斉に声を上げる。
その後ノアが素材から手を引き、素材から拳を外すと


「「「お~…」」」


再び3人共声を上げた。


「何やら納得した様だが、何か分かったのかい?」


ジョーがソワソワした様子で3人に問い質す。


「この素材…
殴った瞬間、一気に硬くなったかと思いきや、拳を外すと直ぐに柔らかく変化しました。」

「周囲が揺れる程の力が加わったハズなのに…見てみな、真下の作業台は全くと言って良い程無傷だ、凹みすら無いだろ?」


ガーラが素材を捲り下の作業台を確認するが、素材を置く前と何ら変わらない状態のままである。

だが、衝撃を吸収している訳では無い様で、素材の端に接してる作業台には凹みが出来ている。


「ほ、本当だ、むむむ…中々面白い素材だな…」


ジョーが感嘆の声を上げている。


「しかし、凄ぇ素材だ、この薄さで恐ろしい迄に頑丈、金属鎧何か目じゃ無ぇ。
元がブヨブヨだから製作段階で曲線的な造りにすれば受け流し効果も自動的に付与されるだろうしな。」

「ただ関節区切りでパーツを製作すっから、そこは何かしら金属製の当て物を作らにゃならんがな…
ノアよぉ、何か他に素材持ってないか?」

「素材ですか…防具に使うならこれなんかどうですか?」


ノアはアイテムボックスを漁り、『大海獣の厚龍殻』と『大海獣の筋繊維』を取り出した。

新たな素材に目を見張る一同、デオとガーラは素材名を見て溜め息をつく。


「お前さんはまた…えらい物出しやがったな…」

「『防具に使うなら』って事は、まだ何か持ってるな?」

「ええ、まぁ一応…」


デオは再び深~い溜め息を吐いた後に頭を切り替え、巨大な『大海獣の厚龍殻』に触れて確認する。

ゴッゴッ!

「う~む…予想通り硬いには硬いが、軽石みたいに多孔質だからか非常に軽い。
これで肩当てや膝当て、籠手何かも造れるが、どうだ?」

「要望があるのですが、関節部を保護する肩当て何かはなるべく嵩張らない様にして欲しいのですが…」

「ふ、わぁってるよ。
お前さんの戦闘スタイルは高機動且つ高火力だもんな。
それに今ざっくり目算してみたが、装備の重量は今までより2割減と言った所だ。
今よりも更に機動力が上がるぜ?」

「おお~。」

「おぅ、デオ!この素材も使うぞ!」


ガーラが『大海獣の筋繊維』を摘まんでデオに見せる。


「これを皮の下に仕込みゃ、補強材としての意味合いと身体能力を上げる効果が付与されるハズだぜ。」

「よし、その意見を採用しよう。」


素材を取り出してまだ10分と経っていないのにも関わらず、着々と構想を立てていく2人。

デオは馴れた手付きで紙とペンを取り出してサラサラと図案を書いていく。
普段の口の悪さから想像出来ない程のテキパキとした動きに、普段から防具製作を行っているであろう【防具】ギルドの面々も目を見張っている。





「よーし、イメージは大体固まったな。
後はお前さんの採寸だな。」


デオとガーラが意見を出しつつ3分位で図案を書き上げた。
ノアは書かれた図案を見ると、先程話していた内容がそのまま書かれている感じである。

通常の皮鎧は幾つもの部位に分けて製作する物だ、その方が強靭且つ破損してもその部位を交換するだけで良い為、修繕がし易い。

だが圧倒的な防御力を誇るこの皮でそれをやると、繋ぎ目部分がもたず却って防御力を落としてしまうだろう。


なので大きく胴、腕、足とに分けて作製。
肩、肘、膝等の関節部を保護する様に『大海獣の厚龍殻』で作成した当て物を取り付ける。

序でに荒鬼神の握りを強くさせる為、指出しグローブの作成も決定。

ボロボロの装備の中で割と損傷の無かった腰のベルトはそのまま流用。
補強として鎧蜂の端材を使っていたのが功を奏した様だ。


「皮の型取りは簡単だが、どれ位縮むか分からねぇし、この『厚…』じゃねぇ、殻の型取りがどれ程難航するか分からん。」

「流石に2人だけじゃ直ぐ魔力が尽きちまうだろうし、手伝いも必要だから【防具】ギルドの手を借りるつもりだ。
この少年の製作依頼は骨が折れる、もしかしたら熟練度が上がって素材名が判明するかもしれないしな。
それで良いかい?」


これを聞いた【防具】ギルドの面々は俄にざわめく。
新素材を使った防具作成に立ち会えるのだから職人冥利に尽きるのだろう。


「「「全身全霊を籠めて手伝わせて頂きます!」」」






「さて製作期間だが、新素材という事と、少数での製作だ。
普通なら1週間は掛かる。」

(え?それでも大分早くない?)

「だが、以前お前さんに阿羅亀の剣2本やその他武器を作ったろ?
あれのお陰でスキルの熟練度がアホみたいに上がってな、それを考慮して3日!
3日で完成まで漕ぎ着けてやるよ!」

「み、3日ぁ!?幾ら何でも早過ぎないですか!?」

「三日三晩不眠不休でやってやるよ。
要請された時に聞いたが、3日後に御前試合があるんだってな?
そんな場に防具無しじゃあ、格好付かないだろ?
まぁその分急ぎ料金払って貰うからな?」

「あ、ありがとうございます!」


デオとガーラに頭を下げるノアだが、デオが手で制してジョーの背後に立つラーベを指差す。


「礼ならあそこの鬼の嬢ちゃんにも言ってやんな、俺らに要請出す時に『どうか、どうか』って懇願されたんだぜ?」

「「へー…」」

「あ、いや、あのですね…」


ジョー、ラベルタが「意外」とでも言いたそうな顔でラーベを見やる。


「ノ、ノア様の大事なお身体を思っての事で…」

「「へーぇ?」」


「本当に?」みたいなニヤニヤ顔で見られたラーベはたまらず顔を伏せる。


「まぁイチャコラするのは後にしてくれ、さっさと採寸すんぞ、採寸。」


デオとガーラはノアを連れて工房の奥へと進んでいった。







「それでは後の事お願いします。」

「おぅ、任せとけ。」

「そいじゃあ早速作業に取り掛かるぞ!先ずは…『バタン』


ギルドの扉を閉めたノアはジョー達の方に向き直る。


「皆さんのお陰で何とか御前試合に間に合いそうです。」

「いやいや、僕はラーベに要請を出す様に言っただけだし。」

「お礼を言うならお姉ちゃんに言って上げて下さい。」

ドン「わっ、わっ!」

ラベルタがラーベの背中を押してノアの前に誘い、ノアがラーベにお礼を言おうとした時だった。


「おや、【鬼神】殿!いつの間にか街に戻ってきてたのか。
てっきり逃げたもんだと思っていたよ。」


ノアが声のした方向を見ると、謁見以降姿を見なかった『新鋭の翼』のパーティが道の向こうからこっちを見ていた。
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