ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

まだやりますか?

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「まだやりますか?」


砂煙から姿を現したノアが開口一番に発した言葉がこれである。
手にはカランビットナイフを携え、意見を求めるかの様に手を広げて待機している。

棒を装備したミミとララは、あっという間に分身を始末され、途方に暮れている。
そんな2人の元に他の『新鋭の翼』メンバーがやって来た。


「どーするよデミ…ノア君滅茶苦茶強いよ…」

「実体有りの分身6人が瞬殺だよ?」

「その上、ノア君息一つ切らしてない…余裕綽々って所ね…」

「何度か対人戦はやった事があるが、ここまでの者は見た事無い。
デミ…あまり衆人環視に手の内を晒すのは好ましく無いが、このままじゃ棄権するしか無いぞ?」

「くっ…致し方無いか…」


何やら苦渋の顔をするデミ。


「その口振りだとまだ奥の手を隠し持ってる様ですが、晒したくないなら別に良いですよ、もう終わりにしても。
1回死んだのですから身に沁みたでしょう?
これで駄目なら心が折れるまで殺し続けなければなりませんが?」

「五月蝿い!まぐれで1回殺した位でいい気になるな!
こちらはまだ誰も『負け』を認めていない!
これからは全力で行く!」」

「だったら最初から全力で来い。
死んでから言ったって、負け惜しみにしか聞こえないぞ!」


ノアのこの言葉で観客席からも声が上がる。


「そーだ!実戦じゃ今頃死体袋だぜ!」
「いるんだよなぁ、後で『あの時は本気出してなかった』って言う奴…」
「お前が言ってる事、全部裏目に出てるから黙れー。」
「口動かすより手ぇ動かせー。さっきからお前全然戦ってねぇじゃねぇか!」


「黙れ!今に見てろ、今までの俺達と思うなよ!」


観客席にまで怒鳴るデミにノアが尚も問い掛ける。


「もう一度聞きますよ、まだやりますか?」

「しつこいぞ!続行に決まっているだろう!」


この答えにノアは深く溜め息を付く。


「はぁ~…分かりました。
これから先僕はもうあなたとは話しません。
止めろと言われようが、懇願しようが、試合終了の合図が出ない限り手を止めません。」

「良いだろう!今までの戦いでお前の動きは大体見切った。
これからは反撃の時間だ!」


こう言い切ったデミに対し、ノアはこの試合を見守る王の方を向く。


「ん?どうしたのだ【鬼神】殿。」

「これから僕は彼等の心を徹底的に折りに行きます。
負けを認めるまで続けるつもりですが、試合終了の判断はお任せします。」

「あ、あぁ…」


このやり取りを見ていたデミがノアを煽る。


「"心を折る"?えらく大見得を切ったもんだなぁ。やれるもんならやってみな。
ま、負けを認める事は無いだろうがな!」


そう言い放った直後、デミの体が発光したかと思うと、何やら呪文の様なものを唱える。
すると両腕に自身の胴体程の大きさもある金属製のガントレットが装着され、独特のステップを踏み始める。


リナも同様に体が発光したかと思うと、レイピアはそのままに、体の周囲に魔法陣が幾つも展開され、手に持つレイピアに炎が纏わり付く。


ガドラはローブの下から筋骨隆々な体を晒して体を発光させた後に、アイテムボックスから自身の身長とほぼ同程度の巨斧を2本取り出して肩に担ぐ。
目は漆黒に染まり、筋骨隆々な腕の太さが更に倍位に膨れ上がり、肌は浅黒く変化する。

先程まで【魔法使い】として試合開始直後に妨害魔法を放ってきたガドラが、フリアダビアの時に共に戦ったエルグランドの【狂戦士】と同じ様な変化を遂げる。

立て続けに起こるこの変化の正体を、ノアは漸く思いだす。


(ああ、何処かで見たと思ったらオードゥスでバッツとガッツも同様の事やってたな…
なる程、彼等の【適正】は【万能】か…)


先程ミミとララに同様の事が起こっていた事から2人も【万能】なのだろう。

バッツとガッツの両名も【万能】ではあったが、碌に訓練をしなかったのか技術は稚拙な物だった。

だが先程のミミとララの戦い振りからしてそれぞれの【適正】での技術はかなり高い物である。

相手がノアでなければ圧倒していた事だろう。


そしてノンの体も発光する。
先程はミノタウロスを召喚させた事からそのまま【召喚】なのであろう。

発光が収まると、ノンの頭の両側に魔法陣が展開。
すると、『新鋭の翼』メンバー全員の頭にも同様の魔法陣が展開される。

正直な所彼女の適正が何なのかは全く想像が付かない。


最後にミミとララは棒を装備した状態で再び4人づつに分身。
恐らく実体を保ちつつ分身出来るのが3人なのだろう。





「それでは俺から行くぞ!」


そう言ってガントレットを装着したデミがノアに向け駆け出す。

(馬鹿正直に突っ込んで来たが…
ガントレットだから、【拳士】か…?)

そう考えつつもノアに迫って来ていたデミに向かって牽制でカランビットナイフを振るう。

ズザッ!ヒュオン!

ギリギリの所で急停止したデミの目の前でナイフが空を切る。

直ぐ様再発進したデミが猛然とノアに向け殴り掛かって来るが、ナイフを引き戻す動作を利用してデミの首を掻っ捌きに掛かる。が

ヒュオン!「え?」ガゴンッ!

首を狙ったハズのノアだが、ナイフがデミの体をすり抜け、そのままデミのガントレットがノアの顔面を捉える。


「……っ!?」


ノアは突然起こった不可解な現象に驚き、ナイフを確認する。

キンッ!キンッ!「普段通りだな…」

ナイフを確認してみたが、普段良く使う物と変わりは無い。


「くははっ!困惑しているな?だが考えてる暇は無いぞ?」

ズザッ!ザザッ!

デミは独特なステップでノアに迫って来るので再びナイフを振るう。

ズザッ!ヒュオン!

先程同様ギリギリの所で回避したデミは、地面を陥没させる程に踏み込んで拳を繰り出して来る。

ガゴッ!

ノアは、全く反応しないままデミの拳をまともに食らう。


「はっはー!先程の威勢はどうした!抵抗する気が失せたか?
おい!畳み掛けるぞ!」


そう言うと今度は【狂戦士】状態のガドラが巨斧を振り上げながら飛翔、ノアは着弾地点を予想してその場から離れると、直後に轟音と爆煙が辺りを埋め尽くす。

その爆煙の中を突き進み、ガドラに攻撃を繰り出そうとするが


「やらせないわよ!」


ノアの目の前に炎を纏った剣を持ったリナが接近、ノアに対して怒涛の十連撃を繰り出す。

ボボボボボボボボボボッ!

が、ノアはそれを自前の反射神経で避ける。

ヒュボッ!ガギィンッ!「おや?」

そして丁度攻撃の切れ間にナイフを振るうと、4人ずつに分身したミミとララが棒を振るいリナへと繰り出したノアの攻撃を防ぐ。

ブォン!ヒュボッ!ブンッ!スバッ!ヒュバッ!

8人同時に棒術を繰り出す。
流石のノアも8人同時攻撃等体験した事が無く、少し慌てるが取り敢えず全て回避した。


「くそぅ!せめて少しは被弾しなさいよ!」

「無茶言わないで下さい、よ!」


ミミから恨み節を言われるが、気にせず反撃するも

ババッ!ヒュンッ!「あれま。」

分身達が回避してノアの攻撃が空を切る。
回避された事でノアは顎に手をやって少し思案する。

(うーん…明らかに回避率が上がってきてるな…
本当に見切って来てるって事かな…
じゃあ本当に殺しに掛かるとしますか…)

と、ノアが考えていると、ミミとララの分身達が身構える。

この事にノアは少し違和感を感じる。
思案してはいたが、表情や動作等に出した覚えがないからだ。

(うーむ…もしかすると…まぁ良い、ちょっと試してみるか…)


丁度ノアにデミが迫って来ていたのでノアは何となしに思い付いた事を実践してみる為にデミに向け歩き始めた。 
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