ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

容赦無い

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「ク、クロラの彼…ノア君は容赦無いな…」

「ああ…鉱山での一件で只者では無いとは思ってたけど、まさかこれ程とは…」

「あ、あのね、お兄ちゃん!
今ノア君はあんなに殺気立ってるけど、普段は優しくて、頼りがいが「落ち着けクロラ。」


ノアとの面識が無いと思っている兄2人に向け、クロラがノアの人柄等を羅列しようとする。

それをクックがクロラの頭をポンポンと叩いて落ち着ける。


「実は最近ノア君に護衛依頼を受けて貰ったんだ、短い時間だったが彼の人となりは知ってる。」

「俺なんか彼に命を救われた。
彼には感謝しかない、だから心配するなクロラ。
さ、ノア君が無事に帰ってくる様応援してやんな。」

「お兄ちゃん…」

ォオオ!


兄2人の言葉に安心したクロラは、丁度動きがあった試合場の方に視線を移すのだった。





『さて、ここに来て初めて【鬼神】から仕掛ける様じゃが、どう言う手で来るかのぅ?』

『武器無し…無手か~…
正直な事言うと、【鬼神】君みたいな相手が無手でやって来るのが一番恐いんだよねぇ…』

『ほぅ。と言うと?』

『ふつー、剣を持って迫って来たら、ある程度何を仕掛けてくるか、間合いとか、持ち手が左か右かで、幾つか自身の次に取るべき行動が絞られてくるでしょ?』

『うむ。』

『無手だと次に取るべき行動が絞り込めないのよ。
格闘で来るのか、魔法で来るのか、相手の持つ武器を奪ってそれを利用するのか、って具合にね。』

『そんな物、距離を取って遠くから…あ。』

『そ。下手に【鬼神】君から距離を取ると、先程の精密射撃で射抜かれるわよ。
【鬼神】君の事だから矢が切れたからといって手詰まりって事も無さそうだしね。』

『お主…やっと実況らしい事したのぅ…』

『請けたからにはそりゃ、やるわよ。
それよりも、相手の方も動き出したみたいよ。』


ヤンが発したのと同時に『新鋭の翼』からミミが1人でノアに向け接近を図る。
ララも後を追うが、突如としてララの体が光り、4人に分身。

(幻影?いや、それぞれ微妙に動きが違う…
あの人の適正は【忍】…かな?
体が発光したが、前に似た現象を見た様な…)

突如としてララの体に起きた変化について考えていると、両手にナイフを逆手に持ったミミがノアまであと1歩まで迫る。

ズザァッ!

突然ミミがノアの右側面に向かって足先から滑り込む。
蹴りを食らわせても良かったのだが、先にララの方を対処する事にした。

ミミが滑り込んだと同時にララが4本のナイフを投擲し、ノアに迫っていたのだ。

パシッパシ!   ガシッパシッ!

投擲されたナイフをノアは事も無げに両手に2本ずつ掴み取る。
と、同時にしゃがみ込む。

ノアの右側面に滑り込み、背後に回ったミミが立ち上がりつつ、背後にいるノアに裏拳を繰り出す。

しゃがんだ事で盛大に空振ったミミの腕を取り、背負い投げの要領で投げ、地面に叩き付ける。

ズドン!「がふっ!?」

受け身を取る事が出来なかったミミは瞬間的に呼吸困難に陥り動けずにいる。

ヒュンッ!

ノアは先程掴み取ったナイフを動けないミミの首に向けて振り下ろし
    
ガキィインッ!

直ぐ様駆け付けた2人のララが、振り下ろされたナイフを別のナイフで受け止める。

「「シッ!」」ビュォンッ!

もう2人のララがノアの首目掛けてナイフを振るうも、1本分後ずさったノアは勢いそのままに後転。

2人のララが距離を取ったノアを追撃しに向かうも、後転中に<投擲術><集中><渾身>を発動したノアが起き上がり様に迫るララの胸目掛けてナイフを投擲。

ドドッ!「「ご…!?」」スゥ…

胸にナイフが突き立ったララの分身は姿を消す。

呼吸困難から復帰したミミも体が発光し、4人に分身。
ララ1人、ミミ3人がナイフを装備してノアへと猛然と迫る。

その場に残ったミミとララはアイテムボックスから2メル程の長さの金属製の棒を取り出す。


良く観察して見ると、どうやらアイテムボックスを持っているのが本体で、分身はアイテムボックスを装備していない様だ。
分身と言っても幻影では無く、しっかり実体を持ち、自律して動ける様で数が揃えば非常に厄介であろう。


先にノアに接近していたミミ、ララの分身4人は、それぞれ手にするナイフを振り4人同時攻撃を仕掛けていた。が

ガガガギガギギギガガガギギギガギガッ!

ノアは先程掴み取ったナイフと、装備の籠手を駆使して4人同時攻撃を凌ぎ続けていた。

突きに対しては切っ先や籠手の曲面を合わせて受け流し、大振りは皮一枚分体を引いて避け、手数重視の振りに対しては更に早い振りで迎撃。

シュピッ!「ぐっ…!」
スパッ!「うぅっ…!」

徐々に分身の腕や手に切り傷が付けられていき、表情に陰りが出来ていく。


「ふーん…この程度の傷では分身は消えないんですね…」

「「「くっ…何故これを捌ける…!!」」」

「何ででしょうね。」ビュンッ!

ドスッ!「ぎっ…!?」


ノアが手に持っていたナイフを1本、分身の膝に向けて投げる。
刺さりはしたものの、分身は消える事は無かった。


「ふーん…」

ドッガガガッ!「「「「ぐっ!?」」」」


先程よりも更に早い動きで殴打したノアは分身4人と一旦距離を取る。


「分身も致命傷食らわさないと消えないんですね。」


そう言いながらノアはカランビットナイフを抜き、分身4人に向けて凄まじい速さで接近。

それとほぼ同時に棒を装備したミミ、ララも駆け付け攻撃が開始された。

ボッ!

ノアの頭部目掛けて繰り出された突きに対して首を傾ける事で回避したノアは、棒に腕を巻き付けつつ棒に沿って体を滑らせ切っ先をミミの首元へ。

「ふっ!!」ボヒュッ!

ミミへの接近を阻む様に棒での突きを繰り出したララ。

ノアはそれを寸でで回避、ララは更に距離を取らせる為に棒を振り薙ぎ払いを行う。

そうして出来た距離を詰める様にノアが接近を図って来るので、4人の分身が障壁となって殺到する。

ズゴンッ!ドガァッ!

「「がっ!?」」「「うぐぁっ!?」」


試合場の地面を踏み抜く程の速度で駆け出したノアは、殺到した分身4人にタックルをかます。
猛牛にでも克ち上げられたかの様に、2人宙に打ち上げられる。

ガシッ!「なっ!?」

宙に打ち上げられた分身1人の足首を掴み<渾身>を発動、大砲でも発射されたのかと錯覚する程の破砕音を轟かせ地面に叩き付けた。

ドガァアンッ!

辺りは砂煙が舞い、一瞬視界が埋め尽くされる。


「ぉああああ『ザグッ!』
「あ"ぁああ『ズバッ!』
「くそぉおおお『ゾリッ!』


砂煙の中から叫び声や悲鳴の様な声が聞こえるが、それも直ぐに止み、辺りは静寂に包まれる。

スタスタ…

その砂煙の中からカランビットナイフを装備したノアが姿を現し、残る2人の元へ何事も無かったかの様に歩みを進めてきた。

砂煙が晴れた場所は人型に陥没し、粉々に砕かれた地面とナイフ以外何も残っていなかった。
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