ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

例の"アレ"

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「切り札…例の"アレ"か?」

「ええ。正直自分でも使うのは初めてだったので威力が分からず、あの様に多方面に要請を掛けてからぶっ放しました。」

「いや、そのお陰で街に被害が出ずに助かった。
…しかし、アレは何だったのだ?」

「あれは先程ジョーさんから話があったと思いますが、海洋種のクラーケンからお礼と言う形で頂いた素材を使用した防具に備わっていた必殺技です。」

「ク、クラーケンだとぉっ!?」


ノアが発した『クラーケン』と言う名前に、エルニストラ王は、驚き3割、興味津々7割の表情でいの一番に食い付く。


「王、大変興味がおありでしょうが今は報告の場です。
一先ず落ち着いて下さい。」

「はっ!…う、うむ…」

「…それで、予想外だった事に、海洋種の長が街に来ていた様で、あまりに必殺技が強力だったようで結界を張ってくれたみたいです。
それで昨日お礼を兼ねて国交の話を進めようと、ジョーさんと一緒に海洋種の方々が住まう場所に向かった、と言う訳です。
取り敢えず報告は以上です。」


側近のシアロに制され、落ち着きを取り戻した王を尻目に、ノアは報告を締め括った。


「ふむ、あの巨大な水の塊はその海洋種の方が展開した物だったか…
いやぁ、【鬼神】殿ご苦労であった。
色々と補完出来て助かった。」

「いえいえ、お役に立てたのなら幸いです。
ですので今度"僕の事を利用する時"は事前に言って頂いても構いませんか?」

ピクッ

ノアの言葉に王や側近、周囲の隊員らの動きが止まる。


「…気付いて…いたのだな…」


王の口から重苦しそうに言葉が紡がれる。


「利用している、と気付いたのはたまたまですがね。
鉱山で昇降機爆破した奴らから情報を引き出した時に"コモン・スロア"と言う存在を知りまして、息子であるデミ・スロアに問い質そうと思って向かおうとしたらライリさんとベルドラッドさんから今回の計画を聞きました。」


これを受けて全員がライリとベルドラッドへ視線を送る。


「怒らないであげて下さい。
あの時は僕も頭に血が昇っていたので、そうでもしないと収拾出来なかったでしょうから。」

「…それで、何故私が君を利用していると?」

「始めに違和感を感じたのは謁見の時です。
僕は以前から、ベルドラッドさんの件もあって絡まれたくないから王都に来たくないと再三再四言ってきました。
にも関わらず謁見の場、僕と『新鋭の翼』『槍サーの姫君』、バラス・アルキラー夫妻が居る所で僕の戦果だけ事細かに発していました。
自分が挙げた戦果ですが、端から聞いたらおかしな戦果ですから、デミの様な性格であれば絡んでくるのは分かりきっていたハズ。
王ともあろう御方が、デミのあの性格を知らないなんて事無いでしょうしね。」

「う、む…」

「初めは"知ってて故意にやってるな"と思ってたのですが、御前試合が決まったら決まったで、ライリさん経由で伝えてくれたり、ルール決めを僕に決定権を持たせてくれたりと、何処と無く気を配ってくれてる様な気がしました。
だから途中から"知ってて意図的に何かやってるな"と考えると、色々と腑に落ちたんですよ。」

「…なる程な…」


王は深い溜め息を吐くと、今回の事に付いて話し始める。


「…【鬼神】殿の言う通り確かに今回私は君を利用した。
こちらの調査で奴が非人道的な悪行を行っていると言う情報と国盗りを画策している事を掴んだ。
しかし確固たる証拠を得るには奴をこの王都に引っ張り出す必要があった。
そんな時、君が王都に来て謁見を受ける事が分かった。
デミは最近コモンに感化され、傀儡状態となっている為、【鬼神】殿に噛み付いて来る事は分かりきっていた。
…そこから先はご想像の通りだよ。」

「その後ライリさんとベルドラッドさんの2人から計画を聞いた僕は、街にいるコモンの目を全て僕に向けさせる為、監視共を襲撃したりコモンを煽りに行ったりしましたよ。
そしたら怒り狂って私兵全員呼ぶんですよ?
上手く行き過ぎて笑っちゃいましたよ。」


ノアがケラケラと笑いながら話していると、諜報部の内の1人がノアに向け歩み寄ってきた。

ザッ、ザリッ…

「正直あれは調査が大幅に捗りとても助かった、感謝する。」


声音からして女性だろうが、目深に被ったフードで人相が全く分からない。


「お役に立てたのなら幸いです。
…とまぁこういった連携を取り易くする為にも、事前に一声掛けてくれると助かります。」

「ああ、善処しよう。」


念押しするかの様に言うと、王は了承してくれたので、次に期待するとしよう。
その後は細かな補完や今後の動きなどを話し、ノアの報告が完了したのは、それから30分後の事だった。








「それでは自分はこれで失礼します。」

「協力感謝する【鬼神】殿。」


ノアは全員の方を向き礼をすると、そのまま王室を出ていった。
 

「…それにしても、【鬼神】殿が終始柔和な心持ちで助かったな…」

「普通利用されていた、と分かったら多少怒鳴り散らしても良いものですがね…」

「途中から気付いていたのもあるでしょうね…
ただその代わりに『新鋭の翼』に八つ当たりする、と当時申していました。」

「確かにボコボコにしていたな…
それにしても、【鬼神】殿は一体どんな戦闘訓練を積んだらあの様な戦い方が出来るのだ…
『調』、お主は【鬼神】殿の出自を知っておるか?」


『調』と呼ばれた先程の女性諜報部員は手をヒラヒラさせて返答する。


「あの辺りは局長の担当故、私は知らぬ。」

スタッ

「はい、局長ですよ。」


ジョーの隣にフードを目深に被った諜報部員が降り立つも、見慣れた光景なのか、ジョーは驚きもせずただただ立ち尽くしていた。


「全く、相変わらず丁度良い時に現れるな。
諜報部局長よ、お主【鬼神】殿の出自を知っておるかな?」

「ええ、勿論。
彼は王都より南方にある村の出です。
母親は元上級冒険者二つ名【個人要塞】で【剣士】のアミスティア。
父親は【精密射撃】の二つ名を持ち、同じく上級冒険者の【弓】のレドリック。
お互い強さで言えば中の上ではあるが、アミスティアは『圧倒的な武器保有量と手数』による『超至近距離戦闘』を得意とする。
レドリックは『感知系スキル全て最高ランク』まで鍛え、『広大な索敵範囲』を持つと言う。
今彼らの家に【勇者】が居るとの情報が入り、調査をしに行ったら、見事捕縛されてしまった…」

「ほぅ…お主程の者がなぁ…
しかしその様な両親からの戦闘訓練を受けておれば、あの様な強さになるのやも知れぬな…
うむ、報告ご苦労であった、下がって良いぞ。」

「それでは。」


そう言って局長と呼ばれた諜報部員はおろか、先程まで室内にいた女性諜報部員の姿も消えていた。


「ジョー殿、済まなかったな待たせてしまって。」

「いえいえ、お構い無く。」

「それでは報告会は一先ず終了としよう。
皆引き続き調査を頼むぞ。」


こうして事後報告会は幕を下ろした。
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