ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

閑話 【勇者】ミユキの居候生活1日目

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話はノアが村にいる両親にミユキを預け、王都へ向け巨鳥が飛び立った直後まで遡る。



「あ、あの、今日から暫くよろしくお願いします。
ええっと…」

「あ、そう言えば自己紹介して無かったわね。
私はノアの母親で【個人要塞】の二つ名を持つ【剣士】のアミスティアよ、よろしくね。」

「俺はノアの父親。
【精密射撃】の二つ名を持つ【弓】のレドリックだ、よろしくな。」


ミユキが両親からの自己紹介を受けていると、遠目で様子を窺っていた村の住人の1人が3人の元に集まってきた。


「よぅレド、アミ、今のはお前さんの倅のノアじゃないか?」

「やぁマドリック。
あぁそうだよ、何かフリアダビアで戦果上げて王都に向かう途中で寄ったんだとさ。」

「おいおい…村出てまだ1月位しか経ってないだろ…それが何でフリアダビアなんか行ってたんだ…?」

「育てた俺達が言うのも何だが、ノア程の過剰戦力がフリアダビアには必要だったんだろう。」

「はは、違いない。
…で?そちらのお嬢さんは…その鎧…ヒュマノの者か?」


マドリックと言われた男性は身長は軽く2メルを越え、ずんぐりとした体型の熊の獣人であったが、後方に立つ女性の鎧姿を見て眼光を鋭くする。

この世界に召喚されて初めて国外を訪れ、ヒュマノに対する評価を知ったミユキとしては、獣人の前に立つ事に対して負い目を感じていた。

そして今も例に漏れず、目の前に立つマドリックに見下ろされ、萎縮してしまっている。

ミユキは一体どんな罵声を浴びせ掛けられるのだろう、と身構えていると


「…そうか、君がヒュマノが異世界から召喚したと言う【勇者】のミユキか…
済まない、あのトチ狂った国の鎧姿だったもので、つい睨み付けてしまった。」

「え?」

「まぁ後で村の皆集めて改めて紹介するよ。
一応皆に声掛けておいて貰えるか?」

「ああ、了解した。」


そう言ってマドリックはのそのそと村の中央へと歩いていった。

意外な反応に呆気に取られているとアミスティアがミユキの肩をポンと叩きながら説明してきた。


「ヒュマノが【勇者】としてアナタを召喚した時、方々に大々的に宣伝してたのさ。
思惑としては自国の戦力を誇示したかったのかもしれなかったけど、お陰でアナタは自分が思ってる以上に広く知れ渡っているわ。
ここら辺では割とアナタの事を不憫に思ってる者ばかりだけど、他の村でもそうだと思わない方が良いわ。
その"白銀鎧"を纏ってたら問答無用で襲い掛かってくる所もあるから注意してね。」

「わ、分かりました。」

「取り敢えずその白銀鎧で皆に挨拶した後、村を案内がてら近くの洋裁店で服を見繕いに行こう。」


アミスティアはミユキの手を引いて村の中央へと向かっていった。







「…という訳で1ヶ月だけこの村に滞在して私ら夫婦の下で訓練を積む事になった【勇者】のミユキちゃんだ。
さ、ミユキちゃん、挨拶を。」

「は、はい。
今ご紹介に預かりました【勇者】のミユキです、短い間ですがお世話になります。」


簡潔に挨拶したミユキは村の中央に集まった全ての住人に頭を下げる。
住人は子供を合わせても200人に満たない。
人間の比率で言えば人間:8、獣人:2位の割合である。

先程のマドリック同様、村の住人からは応援する声や同情的な声が上がる。

するとマドリックより更に大柄な牛の獣人(見た目はほぼミノタウロス)の男性がミユキに質問を投げ掛ける。


「ミユキちゃんとやら、訓練を受けるのは良いんだが、それで得た力は今後起こるヒュマノでの戦争に使うのか?」

「使うつもりはありません。
この世界で生きていく為の1つの手段として考えています。
正直な話、私はあの国の方針に納得していませんし…」

「まぁその辺り心配するのは無理無いだろう。
だがモーガン安心してくれ、もし今後ミユキちゃんがここでの訓練で得た力を戦争で使用したと分かったら、ウチら夫婦の手で処分するつもりだ。
ミユキちゃんもそれで良いな?」


レドリックの一言に驚きつつも頷くミユキ。

それを聞いた牛獣人のモーガンは「2人が言うなら」と納得してくれた。






「さて、1ヶ月しか無いのでちゃっちゃと進めてしまおう。
私達夫婦はこの村の巡回の役目を担っている。
先ずはミユキちゃんの体力面を見ておきたいから巡回がてら軽く走ろうか。」

「は、はい、分かりました。」


村の住人への自己紹介が終わり、両親宅へお邪魔したミユキは白銀鎧を脱ぎ、ごく普通の服を着て帯剣した状態。
隣には腰にアイテムボックスだけ装着したレドリックと共に村外れまで歩いていた。


「それにしても村から1ケメルも離れましたけど、いつもこんなに遠くまで?」

「そう。でも一応村の一部は感知圏内に入ってるから大丈夫。
勿論体力面を見るのが目的だけど巡回も忘れずにね。」

「はい、分かりました。」

「んじゃ、そろそろ走ろうか。」







~30分後~

「ふーむ…この足跡は熊だな…
小さな足跡もひい、ふう…3頭はいるか…
今年は暖かくて木の実や果実も多いかったからな…
おっと、角ウサギの食い掛けが…
ははぁ、狩りの仕方を教えてたんだな。
よし、3ヶ所目終わりっと。
さ、4ヶ所目の巡回地点に向かおう…大丈夫かい?」

「はぁっ!!はぁっ!…ぐっ…はぁっ!だ、大丈夫です!
…が、少し、お待ち、を…」


レドリックが巡回と言って走り出すと、直後にそのまま山道に直行。
ほぼ獣道を縫う様に走り抜けつつ動物や野盗の痕跡を探すレドリック。

それに対しミユキは、とても痕跡を探す余裕は無く、体の所々に小さな傷を作りつつ全力でレドリックの後ろを着いて行くだけで精一杯だった。

1ヶ所目、2ヶ所目は何とか着いて来れたミユキだが3ヶ所目で完全に息が切れた。


「とても大丈夫そうには見えないが…
あと9ヶ所あるけど付いてこれるかな?」

「き、9!?…い、行けます!」

「よし、その意気だ。
とその前に…あったあった。」

ブチブチブチッ

レドリックは、その辺の木に生っていた木の実を採取し、息の上がったミユキに手渡す。


「ほい、アマズの実とスッペの実だ。
一粒だとそんなに効果無いが、体力、疲労、スタミナの回復に良いぞ。」

「い、頂きます…」

ザラザラ。プチプチ…

「酸っぱ!?
…あ、でも確かに少しづつ回復してきたかも…」

「よし、ではちゃっちゃと次に向かおうか。」

「はい!」


そうして気持ちを新たにミユキは駆け出していった。







~2時間後~

「あらお帰りなさい、遅かったわね…って、大丈夫ミユキちゃん?」

「は、はは、大丈夫です…
ひ、膝が笑っちゃって上手く歩けないだけですので…」


何とかノアの実家に辿り着いたミユキは、ガクガクと震える足の代わりに棒を支えにして何とか立っている状態であった。


「そう、大丈夫なら良いわ。
じゃあ少し休憩したら私も参加して一緒に軽く走り込みに行って、少し組み手をやりましょ、アナタの動きを見ておきたいから。」

「ま、まだ走るの…?」


そう、今のはレドリックによる確認と巡回が終わっただけである。
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