ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

閑話 【勇者】ミユキの居候生活1日目~昼~

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「ぜーっ…はーっ…ぜーっ…はーっ…」


地面に手を付き肩で息をするミユキ。
ノアの母親アミスティアと共に追加で30分程走り込みを行った所である。


「俺の見立てだと素の体力は新人冒険者が中級に足を入れ掛けた位だと思うんだが。」

「そうね、私もそれ位だと思うわ。
それに【勇者】補正が掛かってるって所かしら。」

「だな。
取り敢えず毎日の巡回は確定だな。
体力が無い訳では無いが、【勇者】補正に頼りっきりになるのは避けたい。
あとスキル獲得に山は最適だ。」

「巡回もそうだし、レー婆さんの所、畑広げたいって言ってたからあそこの開墾ミユキちゃんにお願いしようかしらね。
さ、ミユキちゃん、休憩終わったら戦闘力見たいから組手しましょ。」

「ア、アミスティアさん、ちょ、ちょーっと待って…貰っても良いですか…?
こき、呼吸が、ままなら…なくって…」


顔から汗を吹き出し、両足はガクガク。
呼吸が未だに正常に戻っていないミユキは、両親に対して必死に懇願している。


「あらやだごめんなさいね。
息子と同様の対応しちゃったわ。」

「そうそう、ノアが冒険者になる1年位前から休憩なんて挟まなかったから、すっかりその調子でやっちゃってたな、すまんすまん。」


そう言われてミユキは、フリアダビアの時の事を思い出してみる。
ノアは常に街の中を縦横無尽に駆け回っていた事を思い出す。

冒険者になるまでの期間、巡回や走り込みを毎日行い、スタミナの上限値が相当の物になっていると窺える。

そして巡回であるから周囲の索敵も行う必要があるので、感知スキルもこれで鍛えたのだろう。


「それじゃあ休憩がてら方針を決めちゃいましょ。
さっきも話したけど、どの程度まで鍛えるかはミユキちゃんに任せるわ。」


コース一覧

『新人冒険者コース』…村周辺の動物(主に鹿)を対象に狩りをしつつ<気配感知>等の有用スキルの取得を目指す。

『中級冒険者コース』…主に野営しつつ村周辺の厄介なモンスター、野盗等を間引く。

『上級冒険者コース』…武具や持ち物を縛った状態でスキルを駆使し、村周辺のモンスターの群れや野盗集団等を駆逐。

『地獄コース』…野営中、時折来る両親からの襲撃に三日三晩耐え抜く。

『ノアコース』…ガチ装備両親が殺す気満々でやって来るよ♪



「で、では取り敢えず『中級冒険者コース』でお願いします…」

「まぁそれが一番無難かな。
ちなみに野営の経験はあるかな?」

「あるにはありますが、設営等は奴隷の方にお任せしていたので無いに等しいかと…」

「じゃあ野営・設営は私の方で教えるわ。
旦那は戦闘面や毎日の巡回の方をお願いね。」

「ああ、了解した。」


ちなみに先程の巡回ではモンスターや野盗の反応は無かったので、訓練を兼ね、村を南下して少し遠出するとの事。


「南下した所に何かあるんですか?」

「昔廃村になった村があって、定期的に野盗やモンスターが蔓延ってる事があるんだ。
廃都にも近いから定期的に行かないと、大規模な野盗団とかが形成されてたりするんだ。」

「廃都ってアレですか?海に面してて、円形の街で、中央に巨大な棟がある…」

「おや、知ってたのか。
大昔に突如その地に現れ、一夜で滅んだ幻の超大国。
別名『魔王対勇者の決戦場』って言われてて、たまに学者等が調査にやって来たりするよ。」

「ヒュマノからも調査を送ってたみたいで、私がこの世界にやって来た時に『高次の存在となる為の遺産が発掘された』とかなんとか…」

「よくヒュマノの連中があんな所行けるわね、あそこって中級~上級冒険者が相手する様なモンスターばかりなのに。」

「奴らの事だ、奴隷を囮にでも使ったのだろうな…」


と、その辺りで話が脱線した事に気付き、話を戻す。


「とまぁ、南下した所にある廃村に野盗が居る事があるから、時折そこまで足を延ばしてみよう。」

「はい。」

「さて、呼吸も落ち着いたみたいだし、休憩はもう良いかな?」

「はい、取り敢えず大丈夫です。」

「では君の戦闘力が見たいから君が腰に提げている剣は勿論、体術なんかも使用して俺に攻撃を仕掛けて来てくれ。」


そう言ってミユキの下から10歩程離れた場所に立つレドリック。

シュィイン!

そのレドリックの正面に立つミユキは徐に腰から剣を抜く。
剣はヒュマノ製で、鍔の辺りに銀細工で花の装飾が施されている。

その剣を右手に持ち、下段に構える。


「行きます。」

「いつでもどうぞ。」

ズダッ!

ヒュボッ!

と駆け出したミユキは、レドリックとの距離を3歩程で詰め、左腰から右の鎖骨に抜ける様に剣を思いっきり振るう。が


「相変わらずヒュマノの剣は装飾がゴテゴテとしてて実用性が無いなぁ…」

「ホント、儀礼用の剣でももう少し派手さを抑えるわよ…?」


ミユキが振ったハズの剣は、いつの間にかレドリックの手の中にあり、夫婦2人して造りの感想を述べていた。

ミユキはいつ奪われたのかも分からず呆気に取られていた。


「おや?剣を取られた位でもう終わりかな?」


ハッとなったミユキは気持ちを切り替え、右足で上段の蹴りを繰り出す。

パシッ

「うん、その意気その意気。」


その蹴りはレドリックの左側頭部に迫っていたが、難なく受け止められる。

ズダッ!「シッ!」

ミユキは受け止められた右足を軸に左足で跳躍。
腰を捻って右側頭部に向けて蹴りを放つ。が


「それ。」グリッ

「きゃっ!?」ブォン!


レドリックが受け止めた足を少し捻ると、ミユキがバランスを崩してしまい、蹴りが空を切る。


「うん、その場の状況に応じた良い攻撃だ。
だが、この攻撃で逆に君の方が窮地に追いやられてしまったね。」


そうレドリックが言った通り、先程受け止められた右足はそのまま固定され、繰り出した左足の蹴りが空を切った為、ミユキは足を極められた状態となっている。


「あ、あだだだだだっ!?
レドリックざん離して、右足離じて!!」


右足を解放されたミユキは地面をゴロゴロと転がって足首をゆっくりとマッサージしている。


「うーん…攻撃を回避された後の事をもう少し考えようね?」

「い、今のは回避されたら手は無いですよ…」

「ちなみにノアも前似た様な事になったけど、空振った足を後頭部に絡めて強烈に引き、喉に手をやって絞めに来てたよ。」

「何でそんな戦法思い付くのよ…」

「まぁ訓練を重ねて行けばその内色々と思い付いていくよ。それに…」


チラリとアミスティアの方を見るレドリック。


「アミは正攻法が殆ど通用しないから、何かしら搦め手を考えないといつまで経っても合格させて貰えないからね。」


そんなアミスティアは2人のやり取りを腕組みしながらニコニコと眺めていた。
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