ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
294 / 1,124
王都編

来るのが早過ぎた

しおりを挟む
「うーん…来るのが早過ぎたかなぁ…」

(『そりゃあそうだろ、まだ空が白んでもいないんだぜ?』)


王都の城門前にある植込みに座り込むノアは、幾つものギルドと合同で行う素材採取依頼の為、集合場所である城門前に来ていたのだが、予定よりも1時間以上前に到着してしまった。

クロラと神出鬼没のポーラと別れた後、宿に戻ったノアは、依頼に備えてベッドに寝に入ったのだが約1時間後、部屋の扉を叩く者が現れ、あるお願い事をされたのだった。


「まさかにゃんこさんが来て、"獣人の子供2人を預かってくれ"って言うとはね…」


そう言ってノアが視線を下げると、膝を枕にすやすやと眠る見た目が10才位の2人の獣人が居た。

にゃんこさんの話だと、王城で目を覚ました2人は周りにいるにゃんこさんや隊員に怯え、部屋の隅で縮こまってしまったらしい。

どうやらノアと一緒に居たいらしく、土下座までして懇願されたので仕方無くノアの元に連れてきたとの事だ。


(『普通こういうのは同種族と一緒に居た方が安心すると思うんだがなぁ…』)

(うん、僕もそう思ったんだけどねぇ…
ま、この子らがそうしたいって言ったのならそうしますか。)


そうして宿に連れて来られた獣人2人は泥だらけだったので取り敢えずクリーンを掛けてやる事に。

その時分かったのだが、獣人の1人は毛並みが白っぽい狼の男の子で、もう1人は黄色と黒色の縞模様の毛並みを持った虎の女の子であった。

ただ2人とも栄養失調である為毛は細く、ボロボロで見るに耐えない。

その後、かなり衰弱している様子だったので、何かお腹に入れようと、キッチンを展開してパン粥を作ってあげた。

猫とか犬にそのまま牛乳を与えるのは良くない、と誰かが言っていたので水で作り、少量ずつ与えていった。

食事を与えてる最中、ヴァンディットに何処か悪い所が無いか診て貰い、一先ず安静にしようという結論に至った。

正直獣人2人を連れて素材採取依頼を行くのはどうかとも思った。
何せこの獣人2人は寝ているハズなのに、ノアが5メル以上離れると目を覚ましトテトテと歩いてノアの元までやって来るのだ。

ちなみにヴァンディットに預けてみると、大人しくしてはいるが、ずっと不安そうにノアの方を見てくるので居たたまれなくなったノアが結局預かる事になった。

これでは行動範囲が狭まる事が懸念されたが、これは意外な打開策で解決する事になった。


「街の外に出たら2人の事頼んだぞ、グリード。」

グルル。

理由は分からないが、何故か獣人2人はノア以外にグリードに対しても心を許している様で、グリードが傍に居ればノアが離れても何ら反応は無かったのだ。


リョー、ガイ。(了解。)

「それにしても、昨日の今日で話すのが上手くなったなぁ…」

デショ。(でしょ。)


前日にグリードが話し始めた直後は、どもったり、濁点が多かったりと多少聞き取り辛かったのだが、それが大分改善されていた。

人間の口の形状とは明らかに違うハズなのにどうやって喋っているのだろう、と改めて龍種等の高位存在に驚かされる。

もしかすると明日には流暢に喋っているかもしれないな、等と考えていると


「わふ…」

「んみゅ…」


ノアの膝で眠っていた獣人2人が可愛らしい声を上げて起き上がってきた。


「あ!ごめんなさい!人間様の膝で寝てしまって…」

「罪は償いますのでどうか罰は…」


そう言ってノアの膝から飛び下りた2人の獣人は、地面に土下座の体勢に入ろうとしたので

ヒョイ

「気にしてないからそんな事しなくて大丈夫。
それと僕を"人間様"って言わなくて良い、僕はノアって言うから宜しくね。」


下から掬い上げる様に拾い上げて抱き抱える。


「君達の名前は何て言うのかな?」

「「なまえ?」」

「そう、名前。何て呼ばれてるのかな?」

「僕は"オイ"。こっちの子は"クズ「あ、待った待った、その呼び名はもう止めよう。」

(ああいった思考の奴等がマトモな名前を付ける訳無いか…
こうなったら…)

ノアは2人の獣人を見て一緒にいる間の名前を考える事にした。


「よし、白っぼい毛並みの狼のボクは元気に育って欲しいから"ヴァモス"。
虎の女の子、キミは毛並みも綺麗だし将来美人さんになる様"ベレーザ"と言う名前はどうかな?」

「ヴァモス…?」

「ベレーザ…?」

「うん。一緒に居る間だけだから、気に入らなければ後で変えても良いからね。」


 2人は、ノアから提案された名前を何度か小さく繰り返し呟き


「うん!ボク、ヴァモス!」
「わたし、ベレーザ!」


と、2人が元気一杯に叫ぶと、ノアの頭の中に色々と情報が流れ込んできた。



特殊契約の手順を踏んで『ヴァモス』『ベレーザ』2人の"名付け親"となりました。
"名付け親"である契約者と『ヴァモス』『ベレーザ』とは異種族である為、あくまで仮契約となります。

称号【悪夢からの救い手】を獲得しました。

尚、 契約者のステータスの一部を『ヴァモス』『ベレーザ』のステータスに適用します。

ですがあくまで"仮契約"ですので適用されるステータスは最大の2割程度になります。



この情報が頭の中に流れた直後、『ヴァモス』と『ベレーザ』2人の体が淡く光だす。


「えぇ…」

(『ほへぇ…』)


目の前で起こった変化にノアも『俺』呆然としていると

スタッ

「お、ノア君じゃないか、ここで何を…」

「あ、にゃんこさん。」

「にゃんこさん言うな。
それよりこれは…あ!?ノア君もしや"名前"付けたのか?」

「え?ええ…
それ以外の呼び名が酷かったので、一緒に居る間だけでも、と思って…何かマズかったですか?」

「いや、悪い事では無い。
だが、人間以外の種族にとって名前を与えられると言うのは少し特別な事ではある。
頭の中に"契約"とか流れなかったか?」

「あ、はい、仮契約と…」

「うむ。どの種族もそうだが、産まれて直ぐは皆弱いものだな?
親から"名前"を授かる事で体力等の一部ステータスを貰い受ける事が出来る。
それによって生存率を上げているのだ。」

「へぇ…それだけ聞くと良い事しかありませんね。」

「うむ…悪い事では無い…
ただ、ノア君の様な強者から名前を授かると"強化個体"になりやすいんだ…」

「強く育ってくれるのは良い事じゃないですか。」

「うむ…そうなんだが、まぁ良いか…」


などと話していると2人の体から発していた光が収まり、変化が終わった様で、自身の体を見回している。


「うわぁ…うわぁ~…」
「な、何これ~…」


当の本人達が一番驚いている様だ。
無理も無いだろう、先程まで全身ガリガリで、腕や足が枯れ枝同然であったのが年相応か、それ以上の筋量を備え、全身引き締まった良い体をしている。

過度の栄養失調でボロボロだった毛並みも、狼の『ヴァモス』は真っ白で艶やかで光沢のある毛並みに。

虎の『ベレーザ』は黄色の毛に少し朱が入り、美麗で気品のある毛並みとなった。

何よりも驚いたのは、先程まで10才位だと思っていたのだが健康体になった事で体格が変わり、13~15才位の見た目に変化した事だった。


「体調は大丈夫かい?」


ノアが『ヴァモス』と『ベレーザ』に歩み寄っていくと、それに気付いた2人が再び土下座の体勢になろうとしたので、しゃがみ込みつつ2人の肩を押さえて制する。


「そういうのは良いですって。」

「…ですがボク達に立派な名前を…」

「そうです!貴方様のお陰でこの様な…」

「名前付けたけど、こうなるとは想定していなかったから気にしないで。
それよりも2人は今後どうするのかな?」


中々引き下がってくれなさそうだったので、ノアは無理矢理話題を変える事にした。

すると、ヴァモスが少し逡巡した後


「も、勿論、命を助けて頂いた貴方様の為、身を粉に「本音は?」

「「え…?」」


話の途中で本心を聞かれたヴァモスは目を泳がせながらも返答する。


「い、今言った通り貴方「力が漲って、驚く程体が軽く感じているハズだ。
さっきまで僕から離れるのを拒んでいたのも、何か僕に頼みたい事があったんじゃないのかい?
大方、ヒュマノにいる同胞も助けて欲しい、とかかな?」

「…はい…その通りです。
拒まれた時は助けて頂いた恩を仇で返してでも1人で向かうつもりでした…」
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...