ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
307 / 1,124
王都編

主従関係

しおりを挟む
「へぇ~じゃあ2人は主従関係じゃなくて、ただ預かってるだけなのね。」

「ええ、獣人の国『ヴァーリアスフェアレス』で"色々"と行った後に別れる予定ですよ。」


事情を知らなかったディオとマールに経緯を話したノアは、今後の予定を少しだけ話す。
その発言にディオが更に質問を飛ばす。


「ヒュマノ…ヴァーリアスフェアレス…なぁノア君。
もしかして昨日王都の冒険者ギルドに貼り出されていた"超特殊依頼(仮)"、まさかあの依頼主ってノア君じゃないか?」

「ええ、そうですよ。」

「え?あっ!"あの依頼"の事ね!」


ディオの発言を横で聞いていたマールも、思い出したかの様に声を上げる。


「【適正】縛りのある依頼だから皆驚いてたわよ。
ディオ確か【適正】該当していたから依頼内容見れたわよね?
アレ、どんな依頼だったの?」


そう話を振られたディオは凄く困った顔をする。


「いや~…アレは申し訳無いがおいそれと口には出せないぞ。
それにまだ"仮"だしな…」

「今王都を含めた10の大きな街や国にも同様の依頼を出して参加者を募っていますよ。」

「その様だな。
一応俺も参加する予定だが、昨日の段階で162人の参加希望者が募っているみたいだ。
…なぁノア君、"あの依頼内容"マジでアレやるのか?」

「ええ、僕は本気ですよ。
どうします?辞退しますか?」

「ハッ!寧ろ俄然やる気になったぜ!」

「では依頼が確定されたらその時は宜しくお願いします。」

「ねぇディオ、ノア君!その依頼が確定したらどんな内容なのか教えてね!?」


ノアとディオがお互いニマリと笑顔を見せる中、全く情報が無いマールはやきもきしていた。







その後も川を横目に上流を目指す事30分。
小高い丘を越えた所で視線の先にある山の中腹に滝の様な物が見えた。

すると

キュルルル!キュキュキュッ!

「"見えた!あの滝の所にボクの住み処があるよ!"と言ってます。」

「おー、あの辺りか。
…しかし、木でよく見えないな…ちょっくら木に登ってもう少し高い所から見てみるか。」

タッ!トンッ!トトッ!


そう言ってノアが近くにあった背の高い木に登りだすと、デカピパラ以外の全員が樹上の更に上を目指す。

ヴァモス、ベレーザは先程の襲撃によって練習する時間は少なかったにも関わらず、スルスルと登っていく。

恐らく獣人は元から木登り自体は得意なのかもしれない。


「うーん…登っては見たけど、それでも少し見辛いな…
距離は目測で300メル位しか離れてないから実際に足を運んでみる…ん?何だ?あれ。」

「砂埃が上がってるが…よく見えねぇな…」

「ホント…それなら私、飛んで見てこようか?」


ノアとディオが視界の端に何かを捉えた様だが、背の高い木と砂埃とでそれが何なのかが分からないと言った様子。

するとマールが偵察に向かうと言い出した。


「え?"飛んで"って…マールさん飛べるんですか?」

「フフフ、良くぞ聞いてくれたねノア君。
こう見えて私は【精霊魔法使い】、空を飛ぶ事なぞ造作も無い事なのさ。
あ、でも飛ぶのには集中力使うんだけどね。」

(なる程、ローブを着てたから【魔法使い】かなと思っていたけどまさか【精霊魔法使い】とはね、初めて見たな…)



【精霊魔法使い】…【魔法使い】を極めていく中で精霊に気に入られた、若しくは長く接した事で力を貸して貰える様になった者だけがなれる【適正】である。
自身の魔力を使って発動する魔法に比べ、純粋な魔力を保有する精霊から魔法を行使できる為
応用、威力、範囲等が【魔法使い】の時に比べ格段に上昇している。
尚、精霊自体【精霊◯◯】と付く適正以外は見えない存在の為、狙って【精霊魔法使い】になるのは困難を極めるという。



「んじゃマール、慣れてない内で悪ぃけど見てきてくれ。」

「はいはーい、"ピーナス・ディファーダ(妖精の羽)"」


マールが呪文の様なものを唱えると、背中に淡く光輝く羽が形成される。
その羽をはためかせたマールは光の帯を残しつつ上空へと上がっていった。


「おー…凄い、本当に飛んだ…」

「俺らには見えないが、光の精霊が羽を形作って、風の精霊が気流を作ってるとか何とか…
最近【精霊魔法使い】になったもんだからまだその辺りの調整に慣れてないらしい。」

「それで"慣れてない内で悪ぃ"と言ったんですね?」

「あぁ、流石に俺は飛べないから、慣れてなくてもこういう時はマールに頼むしかないんだ。」


未だ遠くに見える森の中では砂埃が上がり、何かが暴れているのか、時折轟音が響き渡っている。

上空に上がっていくマールを、ディオは心配そうに見上げていた。





パタパタ…

「何かしらアレ…長い…蛇…?でもそれにしては胴体が長い様な…」


上空に上がったマールだが、木々が邪魔で森の中で暴れている存在が何なのか見当が付いていなかった。


「仕方無い、もう少し高度を上げますか…」パタパタ…


「ん?おいマール、高く上がり過ぎだ、そんな高さじゃあっちからも見られるぞ!」

「あ、ごめん。見えなかったからつい…」


ディオから注意された為、マールは高度を下げる事にした。

メキメキメキ…

「「ん?何の音だ…?」」

辺りには…具体的には砂埃が上がっている方向から木の軋む様な音が響き渡っていた。







ブゴッ…フゴゴ…

森の一角に3メルを優に越える程丸々と肥えたホーミングボアが息も絶え絶えに横たわっていた。

ホーミングボアの胴体には、大木に叩き付けられたかの様な陥没痕がくっきりと残っており、威力の大きさを物語っている。

針金の様な体毛、生半可な刀剣では貫き通せない程の皮膚に、豊富な食糧によって蓄えられた分厚い脂肪、巨体を自由自在に稼働させる為に搭載された強靭な筋肉等の強固な鎧を易々と突破し、ホーミングボアの内臓や骨はたった一撃で粉砕された。

だがこの攻撃を繰り出した"何か"にとっては、小腹が空いた所に近くを通ったホーミングボアの動きを止める為に放った、何て事無い一撃であった。

フ、フゴ『ガブジュッ!!ベキボキミシッ!ゴグンッ。』

ガフゥッ…

苦悶の声を上げるホーミングボアを一口で容赦無な顎で圧殺し、そのまま嚥下した。

ゴルルルル…

ふと木々の隙間から、空に浮遊している淡い光りを放つ物体を視認した"何か"は、大木の様に太く、大蛇の様に長く、岩山の如くゴツゴツとした尻尾を操り、近くの大木を締め付けつつ引っこ抜く。

メキメキメキ…グボッ。

ズグッ、ズググッ…

バキバキッ!ビュオンッ!

地面を這っている"何か"は、地面に鋭い爪を食い込ませて体を固定させると、長い尻尾を振り回し淡く光る物体へ向け、周囲にある大木を薙ぎ倒しながらぶん投げた。

有り得ない速度で射出された大木が一直線にマールの元へと向かう。


「ム、ムールチプラス・ヴァフェイラス(多重障壁)!」

ヴォン!ヴォン!ヴォン!

焦りながらも自身の正面10メル先に障壁を展開したマールだが

ゴババババババッ!

「嘘…」


射出された大木は障壁を易々と突破。
速度が落ちる事無く信じられない、と言った表情のマールの元へと向かう。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...