ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
330 / 1,124
再びアルバラスト編

『惑わしの森』

しおりを挟む
「よし、予定通り『惑わしの森』に着いたぞ。
他の冒険者も通行してる様だから俺達も通るとしよう。」


日も高く上がり始めた午前9時頃、一行は『惑わしの森』近くに到着。
道の先を見てみると、鬱蒼と生い茂る背の高い木々が横に長く広がっていた。

当初は迂回すれば良い、と考えていたノアだが、それではかなりの遠回りになるだろうと言う程の茂り具合であった。  

視界の奥では1組の冒険者パーティが恐る恐るといった感じで森の中を通っている為、『惑鷲』は巣穴で眠っているのだろう。

実際<気配感知>の範囲内に大型の鳥の反応があるが、遥か樹上に止まってジッとしていた。


「うん、確かに動きはない様だ。
このまま道なりに進んで良いのかな?」

「ああ、道なりに大体10分程歩けば森を出る。
そしたら直ぐ近くに村があるからそこで一旦休憩しようか。」

「「「さーんせーい。」」」


という訳で一行は森の中を進む。
背が高く鬱蒼と生い茂っている為、午前中なのに大分薄暗い。
『惑鷲』は眠っていると分かっていても慎重に行動せねば、と思わされる。

森の中は『惑鷲』以外のモンスターやの反応は無いが、リスや野うさぎ等の小動物はちらほらと散見される。

恐らく、それら小動物達も『惑鷲』が眠っている時を狙って行動しているのだろう。




ぞろぞろ…

「ん?この反応…子供か?」


5分程道なりに進んでいた時だった、森の中に1人、子供の反応を感知した。
反応はあるが、その場から動く気配が無かったので何かあったのでは、と思い、向かう事にした。


「ジェイル、森の中に子供が1人で居る様だ。
一旦僕は列を離れ、念の為確認してくるけど良いか?」

「あぁ、分かった。」

「ベレーザ、一緒に来てくれるか?」

「はいですにゃ。」

タッ!シュドッ!

ジェイルに許諾を貰ったノアは、ベレーザと共に駆け出して行った。


「相変わらずノア君のこーどー力って凄いよねー。」

「「「うん。」」」








「い、いたた…」


とある森の一角で、苔むした岩場を歩いていた少女が足を滑らせて転倒。
足を捻って動けなくなっていた。

少女の直ぐ近くには小さな籠と数種の山菜が落ちている。
この子は近隣の村に住む子で、『惑鷲』が眠ってる隙に山菜採りに来ていた様だ。

幸いな事に捻った足の程度は軽く、少し休んでいれば回復する物だった。

ただ、場所が宜しく無かった。

少女が蹲っている場所の樹上には、眠りの浅かった『惑鷲』が止まっており、眠りを妨げた少女を睨み付けていた。


「あ、あ…」


少女の母親からは"『惑鷲』には近付いてはいけない"と口酸っぱく言われていた。

基本的に『惑鷲』が眠る際、木の高い場所に行く為、時間さえ守っていれば出会す事は無かった。

ただ、今回に限り運が悪かった、としか言えない。

クァ…

『惑鷲』が徐々に口を開け、閉じていた羽を広げ始める。
『惑鷲』の催眠波は強力で、噂では人が怪物に、怪物が人に見えたりだとか、自身の体がグズグズに腐っていく様な幻覚さえ見ると言う。

実際は上下左右が反転した様に錯覚し、歩行が困難になるだけなのだが、年端もいかない少女が恐怖で動けなくなるには十分であった。

カロロロ…

「た、助け…お父さ…」


少女の悲痛な声も虚しく、『惑鷲』が大口を開けた。


ヒュンッ!

カロッ!?…ムグムグ…ゴクッ。


突如『惑鷲』の口の中に丸薬状の物が何処からか放り込まれる。

『惑鷲』はそのまま嚥下したが、直後ゆったりとした動きの後、木に寄り掛かる様にして倒れ込み動かなくなった。


「助けに来たに『ツルン。』ゃおん?」

バゴッ!

「あっ!?『ガシッ!』ぶないなぁ!ベレーザはぁっ!」ズザザザッ!


少女の元へ駆け込んできたベレーザは、苔むした岩場に足を滑らせた。

寸での所で、岩を踏み砕く程の脚力で突進してきたノアによって抱き抱えられる。


「ご、ごめんなさいにゃ…」

「ベレーザ、何か足元が心許ないね。
皆とは別メニューで"足腰強化"の効果がある『二の腕ナメクジ』でご飯作ってあげようか?」

「い、嫌にゃあっ!字面だけで食欲が湧かにゃいにゃ!今度から気を付けるにゃあ!」


頭をブンブンと振り回し、頑なな拒否反応を示すベレーザを尻目に、未だ足首を痛めて蹲る少女の元へと向かう。


「襲われそうだったけどどこか怪我は無いかい?」

「足首を捻っただけで…後は大丈夫です。」

「そうか、分かった。
それよりも君はどうしてここに?」

「ま、『惑鷲』が眠ってる内に、宿で使う野草や山菜を採りに…あと、抜け羽を拾ってたの。」

「抜け羽を?」


少女が落とした籠を見てみると、野草や山菜の他に『惑鷲』と思しき羽が数枚見えた。


「必要な枚数は揃ったのかな?」


ふるふると首を振る少女。

(ふむ…)スッ…

立ち上がったノアは、徐に周囲をザッと見回す。


「取り敢えず僕がそこらに落ちてる羽を拾うから、ベレーザはその子をおんぶしてあげて。」

「はいですにゃ。という訳で失礼するにゃよ~。」

「あ、はい。…うわぁ、ふわふわ。」

「準備は良いかな?それじゃあ行こうか。」

 
少女の体がモフモフのベレーザの体毛に埋もれたのを確認したノアは合図を送る。


「はいですに『ツルン。』ゃあ、あ…」







~数分後~

「おぉ、ノア様遅かったので心配を…って、それはどういう状況ですか?」


『惑わしの森』の出口で待っていた一行の元にノア達がやって来た。

出迎えたヴァモスの目の前には、少女を背負ったノアと、涙目でノアの腰にしがみ付くベレーザの姿があった。

何故かベレーザの事を半ば無視しているノアだが怒ってる様子は無く、寧ろ満面の笑みである。


「まぁ、その話は置いといて、この子が足を挫いてたから連れてきたよ。
何でも野草や山菜、後は『惑鷲』の抜けた羽を拾ってたんだってさ。」

「抜けた羽を?何でまた。」

「どうやらこの子の父親が村で装飾品を作ってるらしいんだが、足が悪くて採りに行けないから、代わりにこの子が採りに行ってあげようと思ったみたいだ。
ね?ララミアちゃん。」

「うん、お兄ちゃんのお陰でたーくさん採れたの!」


ノアの背に居る少女の籠には、『惑鷲』の抜け羽が山盛りとなっていた。


「流石少年だな、この短時間で少女をたらし込「その少女の前で人聞きの悪い事を言うなよポーラ…」

「あら、ごめんなさい。
それで、あなたのお家はどちらにあるのかしら?」

「あそこ。」


少女が指差した方向を見ると、道の先、約4~500メル先に家屋が数軒建ち並んでるのが見えた。


「君はあの村の子だったのか。」

「うん、ウチ宿やってるの。」

「そう言えばこの子、あそこの宿に泊まった時に配膳に来てくれた女の子じゃーん。」

「あら、ホントだわ。ごめんなさい、気付けなくて。」

「まぁ一先ずこの子をあの村の所まで送るとしようか。」

「「「「「了解。」」」」」


という訳で助けた少女を『惑わしの森』近くにある村まで送る事にした。


「あ、皆に言っとくけど、今日"から"ベレーザだけ食事メニュー変えるからそのつもりで。」

「今日"から"!?嫌にゃぁ!許してにゃぁあっ!」
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...