ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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再びアルバラスト編

ギュッギュギュギュッ!

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ギュッギュギュギュッ!

「よし、これで全員捕縛完了、っと。
後は皆さんの所でお願いします。」

「あ、あぁ…
だが、野盗捕縛の報酬はどうするんだ?」

「この村の方で受け取って貰って構いません。
僕としてはベイゼルさんを助かったのならそれで良いので。」


自警団とその村の人々は申し訳無さそうにしていたが、一行が獣人国へ向かっている途中だと言う事を思い出し、渋々といった感じで受け取る事になった。

村の人々は、野盗の捕縛直後にノアを見て「あの話は本当だった」とか「誇張でも何でも無かったな」等と口々に話していた。


「一度ならず二度も助けて頂いて非常に感謝しています。」


ベイゼルと御者の少年は深々と頭を下げる。
数日の間に2度も野盗に襲われたのだから、この対応は致し方無いのだろう。

話を聞くと、ノアに荷馬車を取り戻して貰った後、アルバラストへ向かっている途中で襲われたらしい。

どうやらアルバラストの残党が王都に拠点を移そうとしたのだが『惑わしの森』の通り方が分からなかったのでたまたま通り掛かったベイゼルの荷馬車を襲ったとの事だ。

最悪、ベイゼルや御者の少年を囮にしようとしたのが後の"尋問"で判明した。


「それにしてもこの短期間で2回は多いですね、僕らもアルバラストに向かっているので良ければ一緒にどうですか?」

「こちらとしては大変喜ばしい事なのですが、宜しいのですか?」 

「ええ。
寧ろまた変な形で会いそうな気がして、気が気じゃなくなるので。」


という事で、アルバラストまで道程を共にする事になった。





「お兄ちゃん、今日はありがとー。」ブンブン


中断していた準備を再開し、宿の親子や村の人々、自警団の方々から見送られつつ、アルバラストへ向け再び歩き始めた。


だがこの村で衆人環視の中、野盗討伐した事でアルバラストまでの道中と、獣人国までの道のり含め、少し面倒な事が起きるとはこの時誰も思っていなかった。








それが起こったのは村を出て1時間後の事。


「なぁ、ノア君、あれ…」

「あぁ、間違い無くこっち見てるな…」


ジェイルとノアの目線の先、道を真っ直ぐ進んだ所に、太刀を背中に担ぎ道の真ん中で仁王立ちしている鎧姿の男性が立っていた。

男性の目線は真っ直ぐノアを見据えている。

ノアはその男性の顔に見覚えは無い。
だが、その男性はノアが近付く度に口角を上げ、笑みを浮かべている。

その反応に、ノアは何と無く覚えがある。

男性との距離が50メルを切った時に声が掛かった。


「その黒い二刀!貴殿を"野盗200人殺し"のノアと見受ける!」

スタタタタタッ!

「是非とも私と一戦『ズザザザザッ!』「シーッ!静かにして!そんな通り名を大声で叫ばないで下さい!
あと、僕は"殺していない"!」


大声で叫ばれた為、大急ぎで走り込んできたノアが通り名の間違いを訂正しに滑り込む。
だが、通り名の本当の意味を知っていたであろう男性は口角を更に上げる結果に。


「その言葉…やはり本物であったか…」

「あ…
…ええそうです。ですが見ての通り旅の途中です。それ程お相手出来ませんが構いませんか?」

「ええ、こちらから押し掛けた身です。お時間は取らせません!」


ベルドラッドの様に自己満足だけで戦いを挑みに来る輩は腹が立つ。
この男性も同じ自己満足もあるのだろうが、目が真剣に『強者と戦いたい』と言う目をしている。

その為無下にはぐらかしはせず、申し出を受ける事にした。

すると男性は、道の脇にある空き地に移動し、符の様な物を地面に置く。

すると直径30メル程の結界が張られた円形空間が発生する。
ノアはこれを初めて見た為、マジマジと眺めていると


「貴殿は一騎打ちは初めてでございましたかな?
この符は一騎打ち等の対人戦を目的とした時に使う符です。
結界が張られている故、命を落とす事も、武器や防具を破壊する事を防ぎます。
恐らくこれから"良く使う"事になるでしょう。
良ければ1枚お譲りします。」

「あ、どうもです。」


そう言って符を渡す男性。
"良く使う"の部分が引っ掛かるが、皆が待っているのでさっさと始めよう。


「ルールは?」

「この結界から出る、結界の緊急措置が発動する程のダメージを負う、降参する。
のどれかになります。」

「単純明快ですね。
分かりました、始めましょう。」


男性を前にしたノアは、眼差しを真剣な物として見据え、自然体で立っている。

その場に流れる空気に、この光景を見守る一同も息を飲む。


「…おお…良き剣気、殺気、闘気…
お受け頂き感謝しますぞ…」チャキッ…


担いでいた太刀の柄を持ち、同様にノアを見据える。

ズドッ

「一撃で決めさせて頂くぞ!」

太刀を肩に担いだ状態で突進を開始。
1歩でノアとの距離を10メル程まで詰める。

ボゴォッ!

地面を踏み砕く程の速度でノアも突進を開始。
しかし男性の突進とは全く別物であった。

(…え?見え…)

ガヂョッ!「ぬおあっ!?」

男性の纏っていた鎧の胴体に強い衝撃が走った後、男性は軽々と吹き飛ばされて結界を突き抜ける。

目線の先では結界ギリギリの位置にノアが立っているのが見えた。

姿が掻き消える程の速度で突進したノアは、胴にただ一振り、荒鬼神の一撃を入れてこの勝負を終わらせた。

男性は結界の外、20メル程吹き飛ばされて地面に落下した。







「いやぁ、"野盗200人殺し"の実力、身を持って体験させて頂きました。急なお願いに応じてくれて感謝しますぞ。」

「いや、それは良いんですけど、何で僕がここに居ると分かったんですか?」

「ああ、知り合いの【記者】が、野盗を退治していたと言うお主を見たとの連絡があったのだ。
これから大変だぞ?
貴殿の様な"通り名"持ちと戦いたい者達が大挙して押し寄せるであろうな。」

「ええーっ!?何でまた!」

「私は真面目に戦いたいと思ってやって来たが、実力を疑ってる者や話題性に乗っかった者、貴族連中が手中に収めようと狙ってくる事も予想される。
…と、噂をすれば何とやら、早速お出でなすった様だな。」

「えぇ…」


男性に言われて道の先を見ると、上半身裸のむさ苦しい男共の集団や、剣を下げたパーティが馬や従魔に乗って駆けてくる。
その者らがノアを視認すると、笑みを浮かべる。


「ってか何で顔バレしてるんですか!?」

「おや?貴殿はアルバラストの"アレ"は見ておらんのですか?」

「…それ、王都の冒険者ギルドや色んな所でも言われましたけど一体何があるんですか?」

「銅像。」

「え?」

「貴殿の銅像。」

「はぁあああ~っ!!!??」

バッ!    サササッ!


ノアが『知ってたの?』と言う顔をして後方を振り向くと、ジェイルやポーラ達が凄い勢いで顔を反らす。


「実際に会ってみて分かったが、恐ろしく精巧な造りをしていたので一目で分かりましたぞ!」

「うわぁ…アルバラストに行きたくなくなってきた…」

「いやいや、行ってみた方が良いですぞ。
面白いギミックもありましたし。」

「うーむ…」ガシガシガシッ…


ガシガシと頭を掻いたノアは気持ちを切り替える。
その後振り返って他の者に今後の旅程を伝える事に。


「…何か今後面倒な事になるっぽいです。
一応戦闘を終えたら直ぐに合流するようにはしますので、皆はこのままアルバラストを目指して下さい。」

「あ、あぁ分かった…」

「一応護衛代わりの相棒が"下"に居ますから野盗100人位が来ても大丈夫ですので。」


ジェイルに今後の旅程を伝え終わると、道の先から向かって来る輩を見据えて立ち塞がる。


「はぁ…僕っていつになったらのんびり出来るんだろ。」

(『老後じゃね?』)
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