ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
373 / 1,124
獣人国編

戻ってきた

しおりを挟む
「爵位が戻ってきた?」

「正確には"戻された"の方が正しいな。
ウチの領地は微妙な位置にあるからな、誰もやりたくないんだろう。」


『新鋭の翼』のデミが言うには、当初、父であるコモン・スロアによる王都での一連の騒動があって一時的に爵位を取り消しとなり、デミ・スロアは"ただの"デミとなった。

コモン・スロアの治めていた領地は、近隣の領地に取り込まれる予定であったが、何処も手を上げなかったらしい。

聞けばコモン・スロアの領地の一部が、ヒュマノ聖王国と獣人の国ヴァーリアスフェアレス両方に接している。

どの領主からも嫌われている国と接してる上に、戦争秒読み段階に入っている為、必ずと言って良い程巻き込まれる領地を誰も手にしたく無い様だ。

その結果、諜報部の人間からも『シロ』と判断された1人息子のデミに領地を任せれば良いのでは?という事になった様だ。

普通領地経営をする場合、何年も前から引き継ぎをするものだが、色々すっ飛ばしての領主となる事に、デミの心中を察するに余りある。

幸いな事にコモン・スロアが"新事業"と称して作っていた『造魔核』の作製に関わっていたのは闇ギルドの【研究者】と極少数の家臣のみで、コモンがその"新事業"で留守にしている間、実質的に領地経営をしていた女性執事がデミの指南役になるそうだ。


「それに、知らなかったとは言えヒュマノから奴隷を定期的に融通して貰ってた様だし、獣人の国からも白い目で見られるだろうな…」


これからの事を考え、少し遠い目で空を見詰めるデミ。
するとクロラ達に自己紹介を行っていた他の『新鋭の翼』メンバーのリナ、ミミ、ララ、ガドラ、ノンがやって来る。


「なーに始まる前から思い詰めてるの!」

「「御前試合の時の威勢はどこ行ったのよ?」」

「1人で背負うな、その為の俺達だろ?」

「私達も出来る限り協力するからさ。」

「み、皆…」


当初、デミが領主に任命された際『新鋭の翼』を解散しデミのみ戻るハズだったが、"領地経営が軌道に乗るまでは一緒にいる"との事で全員付いてきた様だ。

ノアは王都でのデミしか知らない為、詳しい事は分からないが、長い付き合いの5人としては解散する事に躊躇いがあるのだろう。


「済まない、また1人で思い詰めてしまったな…」


このデミの口振りからして、何度も悩みを吐露し、その度に仲間が元気付けている様で、仲間達もデミのそういった部分を心配して付いてきたのだろう。


「「それはそうと、ノア君はどうしてこっち(ヴァーリアスフェアレス)方面に来てるの?」」


ミミとララは、ここでノアと出会した事に疑問を持っている様だ。


「僕はこの子達を獣人の国に送ってあげる事と、ちょっとした依頼を行いに行く所です。」


と説明すると、思い当たる節があるのかミミが聞き返してくる。


「あ!もしかしてノア君も"例の大規模作戦"に参加するの?」

「待ってララ、あの依頼【義賊】【盗賊】【忍】【隠密】限定、しかも通常募集じゃなかったからノア君は受けれないハズよ。」

「あ、そっか。そう言えばそうだね。」ポンッ


と、"例の大規模作戦"とやらにノアの【適正】的に参加出来ないと言う事をミミがララに伝えると手を叩いて納得していた。




するとノアは


「うーん…」グッパッ、グッパッ。

「「え…?」」


突然ノアが伸びを行い、手を2回閉じたり開いたりを繰り返す。
周りからすれば体を解しているのだろうと思わせる動作だが…


「え、まさか…」プラプラ…
「…嘘でしょ…」こねくり、こねくり…


ミミとララの2人も手足を解すかの様に足先を振ったり、手を組んで回したりしていると


「ゴホン。」


と、ノアが咳き込む。すると


「「……えっ?」」

「……。」コクコク。

「……?」スッ、サッサッ。
「……!」サッ、ススッ、スッ。


「3人共どしたの?声帯死んだの?」


ノアが咳き込んで以降、ミミとララの2人は身振り手振りで何やら意志疎通を取っている。

そんな3人にリナがツッコミを入れるも、身振り手振りで無言の会話が3往復位続き…


「「なる程、そう言う事ね…」」

「そう言う事です。」

「「「「「「「「「「どういう事だよ…」」」」」」」」」」


全員訳が分からなかったが、取り敢えずミミとララの2人が納得した事で、この謎のやり取りが終了した。







その後、『新鋭の翼』も途中まで道は同じと言う事で同行する形を取る。

道中、特に問題も無く進んでいたが、本道から80メル程外れた野原にウルフが1頭彷徨っているのを視認。

ノアは歩みを止めると


「ヴァンディットさん、ウルフを見付けましたけどどうしましょう、捕らえますか?」

「あ、お願いします。
ただ血を流さない様に仕留めて頂けないでしょうか?」

「了解。」バチンッ!


と、ノアが徐に荒鬼神を腰から外し、投擲の構えを取る。

後ろを歩いていた『新鋭の翼』達は、足元から声が聞こえた事に驚いている様子であった。

ブォンッ!バシュッ!

<渾身><投擲術>を発動してウルフの頭上高く投擲したノアは、荒鬼神の所まで直ぐに転移した。

スゥウウウ…

その後落下していくノアは、体の向きや手足を使い位置を調整。

ストッ。ガシッ!ゴギンッ!

<忍び足>を発動させて殆ど音も無く着地したノアは、即座にウルフの首に手を回して凄まじい力でへし折った。

ウルフは叫び声を上げる事も無く地面に崩れ落ちた。





「…俺らの知ってる狩り方じゃない…」
「あれ、もう【暗殺】の域よ…」

「まぁ、その、慣れて下さい…」

「皆あの子とは友達なのよね?
彼、一体どんな訓練受けたらあんな動き出来るの?」

「ほら、クロラ、旦那の事聞かれてるわよ?」

「だだだだ、旦那ってポーラちゃん…
…私もそこまで詳しく聞いた事は無いんですけど、両親からかなり厳しい訓練を受けたみたいです…」

「「「「どんな両親だよ…」」」」


全員の視線の先では、ノアが仕留めたウルフを影の中に入れている所である。


「アレ、さっきの声の人にあげてるんだよね、多分…」
「あぁ、そうだろうな。」
「声からして女性みたいだけど…」
「…あれ?仲間のウルフかな、ノア君の方に向かってってるね。」


ララが目を凝らして見てみると、ノアの後方から3頭のウルフが駆けて来ている。
ノアは一瞬その3頭に視線を送り、何やら一言言った直後、地面からグリードが飛び出して3頭纏めて食らい付き、地面の中に引きずり込んでいった。


「「「「「「……。」」」」」」


グリードの姿を見た6人は、驚きで声も出ない、と言った様子である。


「「「「「「アレ何…」」」」」」


御前試合の直後、避難していた6人としては、初めて見るグリードの姿に困惑していた。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...